Wake Up, Girls!がいない明日に、記憶をつなぐ笑顔の光。「Wake Up, Girls! FINAL TOUR -HOME-」仙台千秋楽公演昼夜レポート
声優ユニットWake Up, Girls!最後のライブツアー「Wake Up, Girls! FINAL TOUR -HOME-」仙台公演が、2019年2月23日~24日、仙台サンプラザホールにて開催された。ここでは24日の千秋楽公演昼夜をレポートする。
同公演にはWake Up, Girls!メンバーの吉岡茉祐さん、永野愛理さん、田中美海さん、青山吉能さん、山下七海さん、奥野香耶さん、高木美佑さんが出演した。
Wake Up, Girls!は、2013年に開催された「avex×81produce Wake Up, Girls!AUDITION 第2回アニソン・ヴォーカルオーディション」合格者によって結成された声優ユニットだ。同オーディションの合格者は、アニメ「Wake Up, Girls!」のメインキャストとしてデビューすることが確約された。Wake Up, Girls!とは作品名であり、同時に声優ユニットでもある。
それから6年を駆け抜けた声優ユニット・Wake Up, Girls!は2019年3月8日、さいたまスーパーアリーナで開催される「Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」をもって解散する。そんな彼女たちの最後を飾る、全12会場・33公演の史上最大のライブツアーが「Wake Up, Girls! FINAL TOUR -HOME-」であり、そのファイナルがアニメ「Wake Up, Girls!」の舞台である聖地・仙台での公演だ。
ライブ開演前には、7人が演じるキャラクターによる開演前ナレーションが行なわれた。この脚本を書いているのは、WUGのセンターである吉岡さんだ。吉岡さんは、WUG最初のライブツアー「Wake Up, Girls!1st Live Tour 素人臭くてごめんね!」でも開演前ナレーションを書きおろしている。今回のナレーションは7人のアイドルが仙台のさまざまな魅力を紹介するもので、昼の部では仙台駅前のペデストリアンデッキや、仙台七夕、光のページェント、喫茶ビジュウ、ミツバチ、てんぱり、熊谷屋。夜の部では勾当台公園やお店によって違いがある牛たん、秋保温泉といった名物や、WUGゆかりの場所が登場した。愛情を持ってキャラクターを描きながら、時折「中の人」がネタとしてこぼれてくるバランス感がいい。
この影ナレで繰り返し紡がれたのが、WUGの「これから」を語る言葉だ。また仙台に戻ってきたい。7人は、みんなと同じように年齢を重ねてきた。思い出と魂は続いていき、誰かの中に記憶と想いがある限り、永遠の記録になる。それはツアー最後のライブで、永遠に記憶に残るWake Up, Girls!を見せるという決意と願いの言葉だった。
開演前には、作品中のワグナー代表、大田邦良(CV:下野紘さん)より、ライブをともに盛り上げるワグナーたちへの檄が飛ばされた。アニメ「Wake Up, Girls!」を知らない人でも、“とめどなく涙を流しながら緑のライトを振る太ったオタク”大田の画像を見たことがある人は多いはずだ。
舞台裏から、WUG7人の円陣の声が響く。音頭を取るのはリーダー・青山さんだ。昼の部は「仙台最終日、私たちの思いをみんなに届けましょう」と、少し抑えた、緊張感のある声音。夜の部は想いのすべてを叩きつけるような叫びだ。「行くぞ、がんばっぺ、Wake Up, Girls!」。
ステージに登場した7人はTUNAGO衣装。スカートの緑色の線や花冠など、歴代のWUG衣装の要素を取り入れながら、メンバーが意見を出しあって作り上げた衣装だ。オープニングを飾ったのは「少女交響曲」と「素顔でKISS ME」。「Wake Up, Girls! 続・劇場版 前篇 青春の影」ゆかりの2曲だ。怖いくらいにぴたりと揃ったフォーメーションとダンスは、彼女たちが33公演という長旅によってさらに鍛えあげられたことを実感させる。いっぽう、ボーカル面に関しては、吉岡さんが内なる激情をそのまま乗せたような歌唱を見せたり、「素顔でKISS ME」での青山さんのソロがふれれば切れんばかりの鋭さだったりと、それぞれが個性を抑えることなく暴れさせた。
オープニングの挨拶は、昼の部はいつも通りの楽しく、リラックスしたWUGとして。夜の部には少し特別なニュアンスがこもった。夜の部の言葉を一部、紹介する。
高木さん「この公演で33公演目となります。ほんとに駆け抜けてきました! WUGちゃんとスタッフさん、ワグナーさんのみんなで作ってきた公演だと思います」
山下さん「島田真夢が言っていたように、人を幸せにするのはみっつのタイプがあるみたいです。身近な人を幸せにできる人。世の中の多くの人を幸せにできる人。自分自身を幸せにできる人。そのみっつを、この夜公演で全部達成したいと思います!」
田中さん「みんなと一緒なら大丈夫だって安心しました。今日は悔いのないように叫びきって、絞り切ってください。よろしくお願いします!!」
吉岡さん「改めてこの景色は当たり前じゃない。今しかない景色なんだと思うと感慨深いです。素敵な奇跡のワンピースに、君たちがなってるんだよ。ありがとう。ラストです、灰になる準備はできてますか!」
永野さん「限りある人生の中で、皆さんとこの瞬間を一緒に生きれることを誇りに思いながら、素敵な思い出を作って皆さんと笑顔を交換していきたいと思います」
奥野さん「みなさん、元気ですか! 昨日の夜、今日が来るのが嫌すぎて、なかなか眠れませんでした。だけど、♪失うことになれるときは来ないからさ(「Into The Light」の一節)。だから今この数時間、みなさんと共有する時間をここで生きるという意識で頑張っていきたいです」
青山さん「みなさん、わたし元気でーす! みなさんあふれでる元気を使い切って、しおれたニンジンのようになって帰ってください。今日は搾り取られるぞー!」
3曲目と4曲目は、昼公演がTVアニメ「Wake Up, Girls!」OPテーマ「7 Girls War」とEDテーマ「言の葉 青葉」。「7 Girls War」間奏の永野さんのブレイクダンスは、永野さんのマイクを吉岡さんが受け取り、永野さんがブレイクダンスを見せたあとにさっと返すスムーズな流れが確立されている。「言の葉 青葉」には大切な何かを受け渡していく振り付けがあるが、今回は階段に腰かけた7人が想いのリレーをつないだ。
夜公演ではこの2曲が、TVアニメ「Wake Up, Girls! 新章」OPテーマ「7 Senses」とEDテーマ「雫の冠」に変わった。旧章のOPEDに重ねたモチーフを選んだ新章楽曲を持ってきて、昼夜でセットになる構成だ。ここで驚いたのは、田中さんが想いを歌声に変えて弾けさせるような歌い方を見せたこと。MCで田中さん自身も話していたが、レコーディング時に近い正確な歌唱が持ち味の彼女が、感情を爆発させるような歌い方をしたのである。仙台公演ではセンターの吉岡さんがかかり気味というか、内なる想いが激しすぎて突出して見える時があった。この曲での田中さんの歌唱の変化は、「7 Senses」の歌詞にある「もしも誰かひとりが暴走しても 進める準備してきたはずだ 笑顔をくれる きみの声がわたしたちを もっと大胆にするよ」のフレーズそのものに思えた。
会場の光とエネルギーを全身で受ける永野さんの、充実しきった、夢見るような表情。奥野さんと田中さんが拳を見せながら見つめあう姿。そして会場全体が合唱する、まるで大団円を迎えるような空気とエネルギーは、3曲目にしてクライマックスのそれだった。
5曲目と6曲目はタイアップのコーナー。昼の部は「僕らのフロンティア」と「One In A Billion」を披露した。「僕らのフロンティア」はTVアニメ「灼熱の卓球娘」のEDテーマであり、WUGが声優ユニットとして他作品の主題歌を担当するという新しいアプローチの道を拓いた楽曲だ。同作品に上矢あがり役として出演した田中さんが、センターにすっくと立ち歌う姿が頼もしい。「One In A Billion」は、WUGとMay'nがコラボしたスペシャルコラボユニットWake Up, May'n!としての楽曲だ。このツアーが始まった頃は、May'n部長がいないと駄目だとは言わせない、7人で最高の出力を生み出すんだという気迫がみなぎっているようだったが、ファイナルを迎えた今はこれがこの7人で歌う「One In A Billion」なんだ、という確信と自信が感じられた。肩に手を置いて笑いあう青山さんと吉岡さんの姿が眩しかった。
夜の部はタイアップコーナーが「スキノスキル」と「恋?で愛?で暴君です!」に。「スキノスキル」は歌いだしが奥野さんのソロから入る。「スキノスキル」衣装がとても似合うこともあいまって、奥野さんの代表曲といってもいい楽曲だ。そして、この曲のもうひとりのセンターが永野さん。永野さんの今日のパフォーマンスは、際立って感じられた。林田藍里そのものの、一番キュートな歌声で安定したソロを響かせる姿は、このツアーで開眼したものなのではと感じさせられた。全員が歌いながら笑っているのが印象的で、微笑みながら自分のパート以外のフレーズも口ずさんでいる高木さんが記憶に残った。「恋?で愛?で暴君です!」は、青山さんがグリ役として主演した特別なTVアニメ「恋愛暴君」のOPテーマ。ユニットとしてのWUGの切り札ともいうべき、底抜けに楽しいパフォーマンスだった。
仙台の企画コーナーは、ご当地仙台出身・永野さんが主役だ。ソロダンスパフォーマンスでは、昼の部で「U.S.A.」、夜の部は「overture」に合わせたダンスを披露。「U.S.A.」は去年一世を風靡したDA PUMPの楽曲だ。永野さんは「カーモンベイビーWUGちゃん!」の声に乗せて楽しそうなダンスを見せた。だが、ダンサー・永野愛理の真骨頂が見られたのは夜の部の「overture」だと思う。この曲はTVアニメ「Wake Up, Girls!」でI-1 club登場時に奏でられたテーマBGMで、岩崎志保センターの一番強かったI-1 clubを象徴するような音楽だ。この曲はモデルになるダンスがない作品オリジナル曲だからこそ、本能のままに踊り狂う永野さんのダンスのキレとセンスを心行くまで堪能できた。
ここで昼の部では、踊り終えた永野さんに田中さんと高木さんが加わって、「タイトロープラナウェイ」を披露。この曲はツアーから生まれたライブ専用曲だが、くるっと回転してスカートがふわりと舞う様子がTUNAGO衣装によく似合う。夜の部では吉岡さん、青山さん、山下さん、奥野さんが「outlander rhapsody」を披露。山下さんと吉岡さんがソロパートを捧げあう珍しい組み合わせは4人編成ならではだろうか。山下さんは夜の部開幕からほぼずっと涙ぐんでいるのだが、それでも歌もMCも絶対に崩れないのが彼女らしい。
「タイトロープラナウェイ」と「outlander rhapsody」はどちらも永野さんの振り付け担当曲。ここではコレオグラファーとしての永野愛理を見せたということだろう。この2曲は、7人が毎年ワグナーと共にツアーを巡った「夏」のイメージと結びついた楽曲だ。
そして「minority emotions」「ハートライン」「桜色クレッシェンド」の並びでは、桜をモチーフにしながらめぐる季節を描いたのだと思う。「minority emotions」の“オレンジの中にひとつだけ光る”という歌詞は仙台の冬の名物「光のページェント」で、約60万個のイルミネーションの中にたったひとつ、ピンク色の光が混ざっているという物語を思い出させる。やがて咲く桜への憧れの歌から、咲き誇る桜の歌へ。「皆さんのおかげで、冬の仙台に桜が咲きました」。
ダンスと振り付けという自分だけの武器を見つけることで自信を身につけた少女が、最後はキャラクターを背負った魅力的な歌声の力で見せていたことに、今までの積み重ねを感じた。永野さんが最後に見せたかった「桜色クレッシェンド」では、2番からスクリーンに東北楽天ゴールデンイーグルス、仙台おもてなし集団・伊達武将隊、たびのレシピ、喫茶ビジュウ、そして林田藍里の生家とされている熊谷屋からのメッセージムービーが流された。
昼の部では、仙台を背負って永野さんからワグナーへの感謝が届けられた。そして夜の部では、メッセージムービーのはじまりとともに永野さんはくるりと後ろを向き、ワグナーたちを背負って、仙台への感謝を届けた。「仙台のみなさん、本当にありがとうございましたー!」。
ここでステージには、永野愛理のこれまでを振り返るムービーが流された。日によってフィーチャーされるメンバーが変わる映像だが、仙台の千秋楽を飾るのは永野さんしかないだろう。映像の最後には「TODAY'S PRINCESS」の文字が記される。
「HIGAWARI PRINCESS」は、ライブによってメインを務める「プリンセス」が変わる楽曲で、プリンセスはご当地メンバーが担当することが多い。今日のプリンセスはもちろん、永野愛理。元は黄金のステッキをアイテムとして使う楽曲だったが、ファイナルツアーでは柄がステッキになった傘を使用。6人が白い傘、プリンセスはピンク色の傘。プリンセスの傘は桜が花開いたようで、永野さんの企画コーナーから美しくイメージがつながる。ステージ上段の下手に永野さん、6人が下段の上手に立って、1人と6人が歌いあう姿が印象に残った。
「16歳のアガペー」は永野さんのソロパートが印象的な楽曲だが、かつてはもっと素朴な歌声だったと思う。この日の永野さんののびやかできれいな歌声は、林田藍里を背負いながら、より成長した藍里の姿をイメージさせた。メンバーの誰もが縁の下の力持ち、一番頼れるメンバーとして名前をあげる永野さんが、最後の仙台ライブで主役として、プリンセスとして光輝いたのだった。
企画コーナーのあとは、ベストアルバム「Wake Up, Best! MEMORIAL」のジャケット衣装にチェンジ。同アルバムには4曲の新曲が収録されていることから、ここでは初日昼夜、2日目昼夜で別々の新曲を披露した。千秋楽昼公演は「土曜日のフライト」。「最後」の次の朝をイメージさせる楽曲だからこそ、千秋楽のこの日はより特別な意味を持って響く。最後の決めで、斜め上の同じ方角を見つめる7人の姿が記憶に残った。
そして夜公演は、これしかない楽曲「さようならのパレード」だ。胸にそっと手を添えた基本姿勢とステージ上に花が開くようなイメージ、そして振り付けの各所に散りばめられたこれまでの数々の楽曲の振り付けが印象的だ。そして「光のないディストピアに記憶を残したい 光で」というフレーズが、冒頭の影ナレの言葉の数々とつながる。Wake Up, Girls!という光なき世界に、それでも記憶と魂は、残り続ける。
本編ラストスパートの3曲、「Beyond the Bottom」「タチアガレ!」「TUNAGO」という並びは、仙台という土地と、「Wake Up, Girls!」という作品のはじまりと切り離せない。「Wake Up, Girls!」は、2011年3月11日に起こった大震災から、再び立ち上がろうとする東北と、仙台の復興を後押しする志の下、スタートした。「Wake Up, Girls! 続・劇場版 後篇 Beyond the Bottom」のラストを飾った、絶望のどん底を超えた先にあるものを描いた楽曲「Beyond the Bottom」。「タチアガレ!」は始まりの作品、劇場版「Wake Up, Girls!! 七人のアイドル」のオープニングで放たれた、東北に対する檄であり、祈りだ。
そして「TUNAGO」は、震災の傷がようやく癒え始めた2017年に、復興を歌った東北六県の絆の歌だ。「Beyond the Bottom」から「タチアガレ!」、そして「TUNAGO」へ。今のWake Up, Girls!のライブでは、メンバー自身の意見を大きな柱としてセットリストが構成されている。「声優ユニット」としてのWake Up, Girls!のツアーファイナルの最後を、東北へのメッセージで締めくくった。それが、デビューから6年を過ごした7人の選択だった。
アンコール、鳴りやまない「Wake Up, Girls!」コールに応えて登場した7人は、自分たちで歌詞を紡いだ「Wake Up, Girls! 新章」を象徴する楽曲「Polaris」を披露。吉岡さんのソロパートで深紅に染まった会場が、ぱっと散るようにメンバーカラーの七色に戻るのが心地よい。
「地下鉄ラビリンス」は、声優ユニットWake Up, Girls!にとって初のライブオリジナル楽曲であり、永野さんが振り付けをして、メンバーにダンスを指導した初めての楽曲でもある。歌いだしをぴょんぴょんと元気に飛び跳ねる、笑顔の高木さんが引っ張っていく。そして今のWUGならではのこの曲の進化が、ラップパートを客席とのコールアンドレスポンスで組み上げる壮大な構成だ。メンバーとワグナーが全力で想いをぶつけあい、明るくハッピーに、今を楽しむフィナーレの形だった。
千秋楽夜の部の最後の挨拶。この時を、7人と客席が笑顔で迎えられる結末を、予想していた人は少ないだろう。その空気を先導したのは、高木さんだったと思う。メンバーの誰に聞いても、一番泣き虫だと言われる高木さん。それが最終日の夜の部では、冒頭から今日は絶対に泣かないという強い意志を感じるぐらい、キラキラの笑顔であふれていた。別に泣いたって、ぜんぜん構わないのである。しかし、泣かないと決めて、笑顔でライブを走り切ったという誇りを彼女自身が手に入れるために、どうか頑張ってほしいと思った。夜の部の高木さんは「今日は間違いなく人生で一番幸せな日でした、ありがとうございました! こんなに愛されるユニットないって思いました。こんなに幸せなことってあるんだと思いました。人生最高の思い出になりました」と、最後まで駆け抜けたのだった。
泣き虫の末っ子が笑顔で頑張り通したのだから、ほかのメンバーの背筋も自然と伸びるものだ。山下さんは冒頭の挨拶を引用しながら、客席と仲間とスタッフに幸せだったかを問いかけた。答は満開の笑顔と、会場いっぱいの歓声だった。それを聞き届けた山下さんは「私自身も、すっごく幸せでした!」と締めくくった。田中さんは33公演を誰ひとり欠けずに完走できた奇跡を語ると、「すっごい楽しかった。みんなのおかげだな。Wake Up, Girls!でよかった。みんなに出会えて、本当によかったです!」と語った。
奥野さんは、挨拶の締めをご当地の永野さんに回すために「(次は永野さんを飛ばして)わーたし!」と楽しそうに宣言。永野さんが「なんで!?」と本気で驚いているのが面白い。奥野さんは「来年からはWUGのツアーはないんですけど、元気がない時にWUGを思い出して、ライブのDVDとかを見てもらえたらと思います。Wake Up, Girls!は、いつでもみんなの心にいるよー!」と語ると、7人全員で、動画カメラの向こうにいる未来のワグナーたちに挨拶した。駆け寄った7人が同じカメラの画角に収まる時、高木さんが「ゴン!」とマイクにどこかをぶつけて、空気が一気に軽くなったのが本当にミラクルだった。そのことを笑いあった奥野さんは、「今すごく不思議な気持ちで、ツアーの最後に自分が笑えてるのがうれしいです。みんなのおかげです、ありがとう。ありがとう!」と語り、さいたまスーパーアリーナでまた会いましょうと締めくくった。
青山さんは「私も最後の最後なのに笑えていることがすごく不思議です」と語ると、ライブの最初からずっと泣きそうだったことを明かした。しかし、「私って泣いてる顔より笑顔がかわいいじゃない?」と強気に宣言して、仲間と会場をなごませた。「今日が一番最高のWUGちゃんだったから、私に悔いはないし、今日のライブが最後になるみんな、あなたにも、あなたにも悔いは残らないと私は信じています。この気持ちを胸に、さいたまスーパーアリーナでもっともっと一番を更新していきます。絶対に、ついてきてください!」とWUGのリーダーとして、高らかに宣言したのだった。
千秋楽は、普段泣くメンバーが泣かず、泣かないメンバーが涙するちょっと不思議な1日だった。その意味で、最後の挨拶で吉岡さんが泣き崩れたのは、誰もが、そしてたぶん吉岡さん本人が一番意外だったと思う。「私ね、WUGが始まった時から、WUGが終わるまで泣かないって決めてたんです」という彼女が、子供のように泣きじゃくった。その理由は想像することしかできないし、こぼれでた言葉をここには記さないことにする。ワグナーたちの前で抱えてきた想いを解き放った彼女は、重しが下りた表情で「泣くのは終わり。みんなを笑顔にするのが私の仕事だから」とスイッチを切り替えた。「楽しかった? 私に負けないぐらい楽しかった? その声が聴けて本当に私は今、幸せです。ありがとうございました!!」と凛々しく叫ぶ姿は、誰もが知るWake Up, Girls!のセンター、吉岡茉祐だった。
最後を締めたのは、もちろん永野さんだ。仙台での公演を見届けてくれた感謝から話し始めた永野さん。自分が主役の公演でも仙台と東北への愛と感謝を語り、ユニットが終わった先も愛してほしいと語るのが本当に永野さんらしい。「いつまでもみなさんの心に咲いている限り、Wake Up, Girls!はWake Up, Girls!だと思います。この7人で、Wake Up, Girls!です。HOMEツアー、一緒に駆け抜けてくれて、本当に本当にありがとうございました。今日は本当に楽しかったです!」。
挨拶が終わって最後の楽曲に行く前、まるで終わってしまうことを惜しむように雑談が始まる。その中心にいたのはリーダー、青山さんだった。吉岡さんがその流れをびしっと切って「最後はここ仙台で、満開の笑顔で終わりませんか!」と切り出すと、田中さんが「よーっしゃー!」とテンションを引っ張り上げる。本当にいいチームだと思う。
ラストナンバーは「極上スマイル」。33公演を巡るツアーの最後、ホーム・仙台でWake Up, Girls!を待っていたのは、7人と会場いっぱいの満開の笑顔だった。だが実は夜の部のみ、ライブに続きがあった。ダブルアンコールに登場した7人からの、せっかくだからもう1曲歌いたいという小さなわがまま。終演時間的に考えて本当に予定になかった可能性が高い提案に、応えたスタッフの心意気を感じる。
選曲は夜公演で歌っていない楽曲ということで、「7 Girls War」に決定。ダンスもフォーメーションもそっちのけ、全力で楽しむだけのステージ。楽しさと幸せだけに包まれて終わったファイナル、千秋楽。それは最後の最後まで全力を尽くして戦い抜いた彼女たちに贈られた奇跡の夜だった。
(取材・文:中里キリ)
【セットリスト】
M01:少女交響曲
M02:素顔でKISS ME
M03:(昼の部)7 Girls War/(夜の部)7 Senses
M04:(昼の部)言の葉 青葉/(夜の部)雫の冠
M05:(昼の部)僕らのフロンティア/(夜の部)スキノスキル
M06:(昼の部)One In A Biilion/(夜の部)恋?? で愛?? で暴君です!
M07:永野愛理ダンスソロ(昼の部)「U.S.A.」/(夜の部)「overture」
M08:(昼の部)タイトロープラナウェイ/(夜の部)outlander rhapsody
M09:minority emotions
M10:ハートライン
M11:桜色クレッシェンド
M12:HIGAWARI PRINCESS(Airi ver.)
M13:16歳のアガペー
M14:(昼の部)土曜日のフライト/(夜の部)さようならのパレード
M15:Beyond the Bottom
M16:タチアガレ!
M17:TUNAGO
-ENCORE-
EN01:Polaris
EN02:地下鉄ラビリンス
EN03:極上スマイル
-W ENCORE-(夜の部のみ)
WEN01:7 Girls War
【チケット情報】
■タイトル
「Wake Up, Girls!FINAL LIVE ~想い出のパレード~」
■日時
2019年3月8日(金)
開場17:30 開演18:30
※開場・開演時間は変更になる可能性があります。
■会場
埼玉・さいたまスーパーアリーナ
■主催
エイベックス・ピクチャーズ株式会社
■内容
声優ユニット「Wake Up, Girls!」によるFINAL LIVE
※内容は変更になる可能性があります。
■出演者
Wake Up, Girls!(吉岡茉祐、永野愛理、田中美海、青山吉能、山下七海、奥野香耶、高木美佑)
※出演者は予告なく変更となる場合がございます。出演者変更に伴うチケットの払戻しはいたしません。
チケット販売に関する情報は公式ポータルサイトからご確認ください。
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