ラブコメ作品の人気の決め手は男性主人公だった? 中国の1月新作アニメ事情【中国オタクのアニメ事情】

中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の1月期新作アニメの人気作品や、先日中国で発生した日本のコンテンツ関連の事件から見えてくる事情などについて紹介させていただきます。

落ち着いた雰囲気の中で注目が集まったラブコメ作品、人気の決め手は男性主人公?


1月スタートの今シーズンアニメは、中国で「大作」とされるような前評判やブランド性の高い作品がなかったことに加えて、中国の年末年始である春節と重なり、オタク層の中心となる学生も里帰りして学校内のコミュニティが一時的に停止する時期に重なったことなどから、よくも悪くも「燃え上がる」作品は出なかったようです。

ほとんどの作品は序盤の人気から大きく変動することなく、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」、「五等分の花嫁」、「どろろ」、「盾の勇者の成り上がり」といったあたりの作品を中心に、順調に話題になったり再生数を稼いだりといった状況となっているようです。
また、10月から始まった作品では、「転生したらスライムだった件」、「ソードアート・オンライン アリシゼーション」、「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風(第5部)」などが1月以降も話題性を維持し、ストーリー上の盛り上がりに合わせてまた注目が集まるといったことになっている模様です。

1月はこのようにおおむね人気の変動が小さい状況が続きましたが、そんな中でも序盤の評価や注目度合いから人気や評価をさらに伸ばしたのが「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」です。

「かぐや様」に関する反応で興味深いのは、主人公のひとりである白銀御行(しろがねみゆき)に対する評価が高く、それがそのまま作品に対する好意的な評価にもつながっているという点でしょうか。
中国のオタクな方の話によると、「かぐや様」の男性主人公である白銀御行に関しては
「恋愛系にありがちな、『やさしい』と評価されて決断も行動もしない不快なキャラではない」
「単純なハイスペックではなく、さらに善良さや努力の発揮、人間関係への取り組み方がよい」
「気分よく見ていられる主人公なのがよい」
といった評価があるとのことです。

もちろん「かぐや様」に限らず1月新作アニメのラブコメ系の作品では、各ヒロインに対する萌えやらなにやらの混じった声もこれまでと同じように出ていますが、メインヒロイン枠が複数いる作品では人気や話題はどうしても分散しがちですし、そういった横並び的な状況において「作品の中心になる男性主人公の好感度が高い」というのはちょっとした武器になっているようです。

実は近年の中国では、ラブコメ系作品に限らず主人公が作中における言動などから叩かれることも多く、作品評価に関しても「あの主人公だからイヤだ」的なことになってしまうケースも少なくありません。特に見ている側が納得できない形でストレスのかかる展開は嫌われているようで、「愚かな主人公やその仲間の行動による悪影響」も嫌悪されやすい要素のひとつとなっているそうです。

そんな空気の中で、「かぐや様」は、登場人物の言動に関するもどかしさもなく、特に主人公のひとりである白銀御行に関しては不快にならず、笑ったりカッコイイと思えたりすることから、多くの人が「気分よく見られる作品」として人気が広がり続けているとのことです。

ちなみに当コラムでは以前、中国のオタク界隈では、自分の推しヒロイン側について作品を追いかけながらヒロインの勝ち負けについて討論したりする「党争」がラブコメの楽しみ方として確立されていると書いたことがありますが、広い範囲で見ていくとジャンルのファンが好む党争よりも、気分よく見ていられるということが人気に関して重要になってくるといった話も聞こえてきます。

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