【TAAF2019】長編コンペティション部門ノミネート作品「パチャママ」上映レポート

2019年3月8日~11日にかけての4日間、東京・池袋にて開催中の「東京アニメアワードフェスティバル2019(TAAF2019)」。「TAFF2019」では、長編・短編それぞれのコンペティション部門が設けられており、世界中から集められたすぐれたアニメ-ション作品がノミネートされ、会期中に上映されるとともに、審査員による審査が行われる。


本コンペティションへの応募条件は、長編が60分以上、短編が30分未満のアニメーション作品で、2017年1月1日以降に完成したアニメーション作品(日本未公開)。エントリーされた作品は、一次選考委員による一次選考を経た後、数作品のみがノミネートされ、期間中に上映される。そこでの審査員による評価が審査の後、グランプリ、優秀賞が決定され、表彰されるという流れだ。


ここでは、そのうち、長編コンペティション部門にノミネートされた「パチャママ」の上映会およびその後に行われたトークの様子をお伝えする。


「パチャママ(Pachamama)」は、2018年に、フランス・カナダ・ルクセンブルグの3国共同製作で作られた長編アニメーション映画。監督は、南米アルゼンチン出身のファン・アンティン氏。アンティン氏はこれまで70以上のアニメ映画の監督を務めており、初めて手がけた長編映画「火星人メルカーノ」が、アヌシー国際アニメーション映画祭など多くの映画祭で表彰を受けている。


「パチャママ」とは、南米アンデス地方の神様のこと。スペインによるインカ帝国侵略の時代のアンデス地方を舞台に、シャーマン(呪術師)になることを夢見る少年・テップルパイと、幼なじみの少女・ナエラが繰り広げる冒険を描いたアニメーション作品だ。ある日、彼らが住む村から、神聖な宝物「マナ」が、インカ帝国の領主によって奪われる。そのマナを取り戻すため、そして自分にシャーマンにふさわしい有機があることを証明するために、テップルパイは旅立つ。彼を心配するナエラもテップルパイの後を追い、やがて彼らはインカの首都・クスコにたどり着くが、そこには、馬に乗り、鉄の甲冑に実を包んだ侵略者スペインの騎士たちが迫っていたのだった……。


アンデスの少年と少女が、侵略者たる大人を相手に活躍する冒険物語「パチャママ」は、どこか「天空の城ラピュタ」を思わせるような、児童文学の王道と言っていい作品であろう。注目すべきはその世界観の美しさ。CGで描かれたその作画は非常になめらかで、ディズニー作品を思わせるような出来。特に色彩設計が見事で、旧インカ帝国地域に特徴的な太陽や月、ピューマ、コンドルなどのモチーフを、ファンタジックかつミステリアスな色彩を用いて描いており、その夢のような世界に、観る側はついつい引き込まれていってしまう。そんな作品だ。

「パチャママ」上映後のトークイベント


上映後には、本作のファン・アンティン監督と、その妻でグラフィックデザインを担当したマリアさんが登壇してのトークイベントが催された。アンティン監督によれば、本作は完成までに実に10年を費やした大作とのことで、その間、紆余曲折があったようだ。アルゼンチン人であるアンティン監督は、14年前からインカ地方などへのさまざまな調査を開始。そこで、インディオの人たちの持つ文化や美術の素晴らしさ、また人の温かさにも触れ、その素晴らしさを多くの人に知ってもらうため、特に子どもでも簡単に理解できるように、この作品を作ろうと決意したという。


なお、本作品の企画当初は、もっとシンプルなストップモーションによる作品にする予定だったが、現地の映画祭に出店したところ、あるフランスのプロデューサーの目にとまり、もっとふくらませて大きな作品にしたほうがいいということで、家族でフランスに渡って作業を行ったという。しかし、そのうちにプロデューサーや製作会社が変わるなど、さまざまな変遷があり、結果としては10年以上の歳月をかけて完成に至ったということだ。

ファン・アンティン監督(左)と、奥さんでグラフィックデザイン担当のマリアさん(右)

・「TAAF2019」公式サイト内「パチャママ」詳細ページ
#


・東京アニメアワードフェスティバル2019(TAAF2019)公式サイト
#


(C) 2018 Folivari / O2B Films / Doghouse Films / Kaïbou Production Pachamama Inc / Blue Spirit Studio / Haut et Court Distribution

おすすめ記事