【TAAF2019】高畑勲追悼特集4:この映画を完成させられたのは“あきらめた”から。「かぐや姫の物語」上映会&トークイベントレポート
2019年3月8日~11日にかけての4日間、東京・池袋にて開催された「東京アニメアワードフェスティバル2019(TAAF2019)」。今回のTAAF2019では、昨年惜しくも他界された、日本を代表するアニメーション監督、高畑勲さんをしのぶ「高畑勲追悼企画」が行われている。ここではそのうち、3月10日(日)に池袋シネマ・ロサで行われた「高畑勲追悼企画4 -高畑勲が向かおうとしたところ- 『かぐや姫の物語』」の上映会とその後に行われたトークイベントについてレポートする。
「かぐや姫の物語」は、2013年に公開された、高畑監督による劇場版長編アニメーション作品。1999年に劇場公開された「ホーホケキョ となりの山田くん」以来、実に14年ぶりとなる高畑監督による作品であり、図らずも遺作となった作品でもある。本作に関するエピソードは数多く、企画開始から8年という長い歳月がかかったことや、その間に50億円を超える制作費が投じられたこと、さらに全編を通じて、筆で描いたような淡いタッチの絵で表現し抜いたことなど、まさに高畑作品の総決算とも言えるような大作となっている。なお、本作で翁(おきな)の声を演じた俳優の地井武男さんが収録中にお亡くなりになり、その後を俳優の三宅裕司さんが受けて、違和感なく見事に演じきったというエピソードも、当時大きな話題となった。
ストーリーは、日本人の多くに親しまれている古典中の古典「竹取物語」をほぼ忠実になぞったもの。竹から生まれたかぐや姫が、翁(おきな)と媼(おうな)によってすくすくと育てられるが、成人へと成長していくにつれ、そのあまりの美貌に、さまざまな貴族たちから求婚されるようになる。その求婚をはねつけるように、かぐや姫はその貴族たちに、決して成功しないであろう無理難題を突きつけ、さらには帝(みかど)からも求婚を迫られるが、そのことをきっかけに、かぐや姫は己の運命を知り、やがて月へと帰って行く。
誰もが知っているであろうこの古典文学をベースに、高畑勲的視点を交え、かぐや姫がそのとき何を思ったのか、どのような葛藤を経て、どのような結末を選ぶのか、といった物語には書かれなかったドラマを、まさに日本そのものを現しているとも言える見事な筆致のアニメーションで描ききった本作。前述したように、本作の製作にはかなりの年月と費用が費やされたわけだが、その間、高畑監督は何を考え、どうふるまっていたのか。本作のプロデューサーとして高畑監督を間近で見ていた、元スタジオジブリ所属で、現・スタジオポノック代表取締役である西村義明さんと、東京藝術大学・特任准教授のアニメーション研究家、イラン・グェンさんとのフリートークが、上映後に催された。
トークの話題は、やはりお2人の高畑監督との思い出話から始まった。西村さんによれば、最初の高畑さんのイメージは「怖い人」だったという。当時のスタジオジブリには、80~100名ほどのアニメーターが在籍していたが、高畑さんと目を合わせるような人はほぼいなかったという。高畑さんはスタジオジブリの社員ではなかったため、たまにふらっとスタジオを訪れては、話のわかる人とだけ雑談をして帰る、というような日々を送っていたようだ。高畑さんと話をするためには、それなりの教養なりを身につけていなければいけない。そのように西村さんたち、スタジオジブリの若手社員は感じていたようで、だからこそ容易に寄りつけない存在だったという。
そのことを物語るエピソードとして西村さんがあげたのは、ある出版社の記者が、高畑さんについての本を作ろうと訪れた際のこと。高畑さんが、熱心にあれこれ語ることに対して、その記者が「はい」「うん」とあいずちで答えていたところ、高畑さんは、「今言ったこと理解したんですか? だったら説明してください」と説明を求めたという。このエピソードに対しては、イランさんも似たような経験があるといい、高畑さんと話をすると、何を言っても否定・疑問から入るという、非常にフランス人的な議論が好きな方だったと語る。そうした議論の中で、さまざまな反応が起こり、それによって議論が正解に近づいていく、そういう弁証法的な考え方が身についていたのだという。
また、かつて押井守監督との対談で、押井監督が「高畑監督は常に日常というものを描いてらっしゃいますよね?」と問いかけたところ、高畑さんは「あなたのおっしゃる日常は何なのか?」と返したという。このように、高畑さんという人は、言葉の定義には非常にこだわる方であり、そこをクリアしないと先へ進めないという部分があったと語る。こうして議論には何時間もかけて妥協しない、それが高畑さんのスタイルであったという。
ただ、イランさんによれば、初めて高畑監督と会ったときも、非常にオープンに議論を展開してくれて、そのことが、どこの人間ともわからない自分を受け入れてくれた、と感じたという。一般的なイメージとしては怖い人と思われているし、実際にそういう部分もあるが、逆に非常に開かれた人であり、世界に対して多大な好奇心を持った人であったと振り返った。
また、本作「かぐや姫の物語」に関しては、何人ものプロデューサーがついたが、なかなかうまく進まず、製作期間が8年という長期に及んでしまったという経緯がある。そんな中で、西村さんだけがどのようにして本作を世に出せたのかとイランさんから質問されると、西村さんは少し考えてから、ひと言「それはあきらめたからです」と答えた。高畑さんと仕事をしていると、そのペースに巻き込まれてしまって感覚が麻痺してしまう。だから、この人の映画はできないんだろうなとあきらめるしかなかった。つまり、作品の完成をあきらめて、映画の完成を目指すという、矛盾をはらんだ形でしか本作を完成できなかっただろうと語った。
「かぐや姫の物語」は当初から少数精鋭のチームで製作すると決めていたという。しかし、いつまで経っても絵コンテすら上がってこない日々が続いた。そこで西村さんは、高畑さんの本当に作りたい作品をあきらめ、商業映画としての完成を目指したという。そのとき西村さんが採った方法は、スタッフをどんどん集めてチームを大きくしていったこと。ある日それに気づいた高畑さんが「これはどういうことか?」と言ってきたので、西村さんは「映画を完成させるつもりです。僕はプロデューサーですから」と返したそうだ。それで映画の完成に向けてようやく動き出したのだという。高畑さんのいいところは、年齢とかで人を見るのではなく、その人の役割とか仕事を尊重していたこと。だから、高畑さんは監督、僕はプロデューサーという役割でそれぞれの仕事を全うすることに対しては認めてくれたと回想した。
また、イランさんによれば、高畑さんという人は、日本のアニメーションの歴史に多大な影響を与えた先駆者であるのに、自分からは何も言わないので、その仕事や業績が正しく評価されているとは言えない。すごくいろいろな仕事をしているけども、陰でひっそりやっていて、クレジットに出ない仕事もたくさんあった。しかも自分からこれがやりたいというのでもなく、ほとんどの場合、誰かから頼まれたからというスタンスで仕事をしていた。しかも、頼まれた仕事に対してはものすごく細かくいろんなことを調べ上げて答えを出す。それが高畑さんのやり方だったと語った。
トークの最後に、西村さんは、「かぐや姫の物語」は作るのに8年もかかってしまった作品であるが、いまでも世界中の映画館で上映されて愛されている作品。そんな作品に関われたことについて、あらためて高畑さんに感謝している、とコメント。イランさんは、高畑さんの作品は何度見ても新たな発見がある。これからもそんな高畑作品を見てもらえればと思う、とコメントし、本イベントは喝采の内に幕を閉じた。
・「TAAF2019」公式サイト内「かぐや姫の物語」詳細ページ
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・東京アニメアワードフェスティバル2019(TAAF2019)公式サイト
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(C) 2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK
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