【インタビュー】自作小説とともに味わう、三月のパンタシアのニューアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」
ボーカリスト「みあ」の音楽ユニット、三月のパンタシアが、2ndアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」をリリース。全12曲を収録したこのアルバムは、アニメタイアップのシングル曲を含みつつ、コンセプチュアルな1枚となった。それは、みあが書き下ろした小説をもとに、さまざまなクリエイターが楽曲を提供するというもの。また、ビジュアルを人気イラストレーターのダイスケリチャードが担当。小説×音楽×イラストで、三月のパンタシアの世界にどっぷり浸れるアルバムだ。
歌うとき番大切にしているのは、その曲から感じる「気分」です
──アキバ総研には、初めてご登場いただきます。ということで、基本的なことからおうかがいしたいのですが、「三月のパンタシア」とは、どういう形態を取っているユニットなのでしょう?
みあ ボーカリスト「みあ」が、さまざまなコンポーザーやイラストレーターの方とコラボレーションするユニットで、メンバーは基本的に私ひとりです。「三月のパンタシア」を始めるにあたって、私がもともと好きなボカロPの方々とコラボしてみたらいいんじゃないかという話になって、インディーズからこの形態で活動をスタートさせたんです。まずは、私が敬愛するボカロPさんの曲をカバーしたデモをご本人にお送りして、「ぜひ一緒に作品を作らせていただきたいです」とお声がけさせていただくところから始まりました。
──いろいろな方と、曲ごとに組んでいくという形態は、今も変わっていないわけですよね。
みあ はい。たとえば今回のアルバムの新曲は私が書いた小説がもとになっているんですけど、それぞれのコンポーザーの方と直接打ち合わせするところから制作に入っていきました。
──メジャーデビュー曲の「はじまりの速度」はTVアニメ「キズナイーバー」のエンディングテーマでした。今までに7曲、アニメのタイアップ曲を歌われていますね。
みあ タイアップ曲に関しては、作品の世界を意識しながら制作をしてきました。主人公がどんな子なのか想像して、この子はこういうときに一番ときめくんだろうなとか、日常の中でこんなことを感じているんだろうなとか、自分とは違う人物像に寄り添うというか、自分とつながれる部分、共感できる部分を見つけながら歌ってきたという感じです。
──三月のパンタシアの楽曲である以上、みあさん自身の感覚も曲に入れているということですね。今までのタイアップ曲を聴くと、三月のパンタシアならではの世界観がしっかり表現されているように感じました。
みあ 私と作品とのいい距離感をいつも意識しています。作品の主題歌なのですから、作品のファンの方にまずは愛していただきたいですし、楽曲単体になったときにもいい曲だなと思っていただけるものを発表していきたいという思いは、初期の頃からありました。ですから、何をテーマに楽曲を作るのかというのを一番大事にしています。たとえば、「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」というTVアニメではオープニングテーマを担当させていただいたんですけど、言いたくても言えない気持ちとか、そういうもどかしさや葛藤を音楽にしていこうと思いました。そうしてでき上がったのが「ピンクレモネード」という曲です。
──「ピンクレモネード」は今回のアルバムにも収録されています。作詞はアーティストの分島花音さんですね。
みあ すごく素敵な歌詞を書いてくださいました。細やかな心情が女性らしい目線で描かれていて、花音さんらしい詞だなと思いました。
──ニューアルバム「ガールズブルー・ハッピーサッド」は、アニメタイアップのシングル曲とアルバムの新曲がいいバランスで混ざって構成されています。「ピンクレモネード」のほかに、「風の声を聴きながら」「ルビコン」「コラージュ」の3曲がシングル曲ですね。
みあ 「風の声を聴きながら」は、TVアニメ「スロウスタート」のエンディングテーマです。これも原作を読ませていただいてから制作に入ったんですけど、一番印象に残ったのは、主人公の女の子が中学浪人をしていて、友だちより1歳年上であることを友だちに打ち明けられずにいたことでした。最初は秘密を抱えて悩んでいた主人公が、人の温かさに触れて少しずつ心を開いていくところに共感して、ゆっくりでもいいから自分のペースで歩いて行こう、という曲にしたいなと。そんな思いを40mPさんにお話しして作詞・作曲・編曲していただいたのが、この曲です。
──まさに、今のお話通りの曲になってますよね。
みあ やさしく温かみのある音色にしてくださいました。
──「ルビコン」は、TVアニメ「Re:CREATORS」の第2クールのエンディングテーマです。
みあ 懐かしいですね。「ルビコン」が今回のアルバムで一番古い曲です。「Re:CREATORS」は原作のないオリジナル作品だったので、先のストーリーがわからない状態で楽曲を作ったんです。二次元のキャラクターたちが現実世界に現れるという話だったので、2つの世界があるということをテーマにしてみようと思いました。普段生きている中で、あの人は別の世界の人だと感じることがあるじゃないですか。たとえば、別れてしまった恋人は、今はもう別々に生きているんですけど、自分の心の中ではあの頃と同じ姿で生き続けているというように。
──作詞作曲はaokadoさんで、詞は今、みあさんが語ってくださったストーリーそのままです。「Re:CREATORS」のエンディングとしてはすごくリアルな世界観の曲だなとずっと感じていたので、納得しました。タイトルの「ルビコン」って、ルビコン川のことですよね? カエサルが「賽は投げられた」と言って渡ったことで有名な。
みあ そうです。もう後には引けない、みたいな。その逸話からタイトルを付けました。でも、「ルビコン」ってどういう意味ですか? ってたくさんの人から尋ねられました(笑)。
──そして、「コラージュ」。アニメ「衛宮さんちの今日のごはん」のエンディングテーマです。
みあ 「コラージュ」は温かみのある、多幸感にあふれる楽曲です。「衛宮さんちの今日のごはん」は「Fate」シリーズのスピンオフ作品なんですけど、実は私はそれまで「Fate」を見たことがなくて、「衛宮ごはん」で初めてシリーズに触れたんです。だから、素直に幸せな気持ちで「コラージュ」を歌うことができたんですけど、その後で「Fate/stay night」を見たら「衛宮ごはん」のみんなが激しく戦っていて、衝撃を受けました(笑)。
──それはびっくりしますよね(笑)。
みあ 「衛宮ごはん」の裏側にあるキャラクターたちの思いを知らずに歌えて、むしろよかったと思いました。
──タイアップ曲だけでもいろいろなタイプの曲を歌っていて、ボーカルも曲ごとに表情が違います。歌い分けというのは、どのくらい意識していますか?
みあ 歌う中で一番大切にしているのは、その曲から感じる「気分」なんです。たとえば、アルバムリード曲の「三月がずっと続けばいい」は、強がっている女の子の歌なんですね。本当は別れたくないし、さよならも言いたくないけど、明るく「さよなら」を言おうとする女の子で、その子の気持ちを感じて歌うことでボーカルのアプローチが決まっていきました。この曲はこういう歌い方にしよう、こういう声質で歌おうと頭で考えるよりも、歌うにあたっての「気分」に素直に従って、その結果、いろいろな歌い方が出てくるんだと思います。
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