『マナリアフレンズ』 最終回直前企画! 美麗なキャラクター&美術はいかにして作られたのか? 岡本英樹(監督)×吉田南(キャラデザ)×川本亜夕(美術監督)インタビュー
いよいよ今週末の放送で、『マナリアフレンズ』が最終話を迎える。
本作は、Cygamesが開発・運営を行う『神撃のバハムート』内のイベント“マナリア魔法学院編”から生まれた人気キャラクター、アンとグレアの2人を主人公にしたアニメ作品で、美麗なキャラクターはもちろん、美しくも重厚に描かれたマナリア魔法学院をはじめ、美術面でも見ごたえがあるファンタジー作品だ。
そこで、今回アキバ総研では、『マナリアフレンズ』をビジュアル面から支えた吉田南さん(キャラクラーデザイン)、川本亜夕さん(美術監督)。そして、作品全体を統括した岡本英樹監督に、いかにして本作の映像が作られていったのかをうかがった。
照明の明るさまでも考慮した学院の美術設定
――まず、最初に簡単な自己紹介をお願いします。
監督・岡本英樹(以下、岡本) 監督の岡本英樹です。『マナリアフレンズ』は、ゲーム「神撃のバハムート」や『シャドウバース』、『グランブルーファンタジー』に登場する人気キャラクターであるグレアとアンの物語で、完全なオリジナルアニメではありません。なので、ゲームを製作しているCygamesさんで積み上げてきたものを引き継ぎ、「いかにゲームスタッフやゲームのファンの方に納得してもらえるような作品が作れるか」というところから作り始めて、最終的にフィルムとしてまとめる作業をさせていただきました。
キャラクターデザイン・吉田南(以下、吉田) キャラクターデザインと総作画監督の吉田です。もともとゲームのキャラクターとしてグレアやアンは存在していたので、アニメ用にキャラクターを画に起こすところを担当しました。総作画監督としては、実際に作画さんが描いて上がってきた画について、最終的な修正をするといった仕事をしています。
美術監督・川本亜夕(以下、川本) 美術監督を務めた川本です。美術設定は
CygamesPicturesの橋本真樹さん、狹田修さんがされていたので、私は主に美術に色をつける作業などを担当していました。背景の実作業や美術ボードに色をつけて、全体のイメージを決定するという仕事です。
――『マナリアフレンズ』という作品は、かなりリッチな画作りをされている作品、という印象です。本日は、その画作りについてお三方にお話をうかがっていければと思います。 今、岡本監督がおっしゃったように、『マナリアフレンズ』は『神撃のバハムート』をはじめとするCygames社のゲームに登場する人気キャラのアンとグレアを主人公に据えた作品となっています。まず、ゲーム作品のキャラクターから派生する形で、アニメを制作するにあたって、苦労した点や工夫したポイントなどをお教えください。
岡本 『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』などのゲームでは、すでにかなり膨大な量のシナリオがあり、多くのイラストとともにお話が展開していきます。ですので、ファンの方々はアニメ化する前から、主人公2人に関する膨大な情報量を持っていらっしゃると思うんです。なので、まず一番気にしたのは、アニメに落とし込むにあたって、ゲーム内の情報とどれだけ齟齬をなくすか、というところでした。
そうなった時に、アンとグレアが所属し、本作のメイン舞台となる学校「マナリア魔法学院」の全体構造を把握する必要がありました。でも、制作当時はその美術設定が存在しませんでした。もちろん、教室の画や設定はあるのですが、建物全体としてどこにこの教室があって、図書館はここにあって……という全体像はなかったんですね。ただ、これはアニメ制作のとっかかりとなる大事な部分となるので、まず僕たちは原作と齟齬がなくてアニメとして見やすいことを心がけながら、マナリア魔法学院の全体像を作りましょう、という話になりました。
こうした全体の骨となる部分を広げていって、キャラクターや美術、小物などを作っていけるよう、強く意識して作業を始めていったんです。
やはりシナリオを書くにあたって、舞台設定がないとどこで何をしているかわからないからシナリオを書くのも難しいんですよ。なので、かなり初期の段階から美術設定の橋本さんに関わっていただいて、制作スタッフが理解するための設定作りを進めていきました。
川本さんには、「マナリア魔法学院」の設定ができあがった後で「こんな学校を作ってしまったので、この舞台を現実に存在するような美術として作っていただけますか」という風にオーダーしました(笑)。
――「マナリア魔法学院」が美術設定として立ち上がり、そこにリアリティを作っていくのが美術監督の役割ということでした。川本さんはどういった点を意識しながら作業されましたか?
川本 『マナリアフレンズ』は、グレアとアンという2人の女の子が出てきてかわいらしい部分もある作品なので、最初はキレイで明るい色調にすることも考えていました。
でも、監督との打ち合わせの中で、時代設定的に(学院内の)光源がロウソクだったりするので、暗い部分はがっつりと色を暗く落としたりといったリアリティを重視するような表現にしたいというお話があったんです。なので、お話の内容としてはダークなわけではないんですが、重厚感を捨てずに表現するイメージでやっていましたね。
岡本 『マナリアフレンズ』は魔法などが存在するファンタジーの世界観です。全体的なイメージとして、時代感や「マナリア魔法学院」らしさを表現するとしたら、18〜19世紀初頭くらいまでのイギリスの雰囲気が似合うんじゃないだろうか、という話はさせていただきました。
ですので、参考として「ハリー・ポッター」シリーズなどをあげました。そういった世界には蛍光灯もなければ、プラスチック製品もありませんので、その世界にないものをどんどん排除していって……。また、「マナリア魔法学院」は建設されて100〜200年が経った城なので、壁が苔むしていたり、ホコリが溜まっていたりします。そういった質感を美術に取り入れてもらって、時代感を感じられるようにしたい、ということもお伝えしましたね。
川本 そのお話を聞いて、あらためて「ハリー・ポッター」を見たり、当時の資料を集めてみたりもしました。
さまざまなゲームに登場する人気キャラゆえのキャラデザの難しさ
――美術へのこだわりはかなりのものだったのですね。いっぽう、ゲーム『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』などは、美麗なキャライラストでも有名です。キャラクターデザインの吉田さんにとって、そこからキャラクターをアニメのデザインに落とし込むのは苦労されたのでは?
吉田 『神撃のバハムート』や『シャドウバース』では、キャラクターごとに描いているイラストレーターさんが違うので、絵柄もバラバラだったりします。なので、『神撃のバハムート』で「ぽんず」さんが描かれたアンは幼くてかわいい感じですが、『グランブルーファンタジー』のアンは等身が高くて大人っぽかったりするんです。
なので、どちらのファンが『マナリアフレンズ』のキャラを見ても、「印象が違う!」とならないところに落とし込むのが大変でした。『神撃のバハムート』ファンが見てもアンだし、『グランブルーファンタジー』ファンが見てもアンである、そんな絵柄を探していった感じです。
――さきほど監督や川本さんがおっしゃったような、背景は中世のイギリスの雰囲気で描かれています。キャラクターデザインをする際に、そういった美術面を意識されたところはありますか?
吉田 キャラクターが背景に自然に載るよう、美術の情報量に負けないようにするためにデザインの手数を入れたりはしましたね。
ただ、どちらかというと、キャラクターデザインではストーリーのほうに意識を向けていました。原作のゲームと違って、『マナリアフレンズ』ではあまりバトルシーンがなく、「マナリア魔法学院」での生活を描くお話になっています。そのため、戦うためのキャラクターデザインではなく、女の子たちの友情やドラマを描くための、ある種のやわらかさをキャラクターデザインに反映させています。
――キャラクターの情報量が増えると、アニメとして動かすための作画も大変になりますよね。作画に関して、岡本監督と吉田さんでお話をされた部分などはありましたか?
吉田 『マナリアフレンズ』では歩いたり、体を傾けたりといった日常芝居が多いんですよ。でも、そういった普通の仕草というのは、アニメではアクションを描くよりも難しかったりします。なので、日常芝居に関してはたくさんのリテイクが出ました(笑)。原画の枚数も多かったですし。
岡本 芝居もそうですが、キャラの立ち姿や目線、表情だったり、口角がどの程度上がってれば笑ってるとか……まずは、そういった微妙なところを決めましょう、というお話はしましたね。
そもそも、決まった画がないとキャラクターに演技をさせることも出来ないんです。決まった表情を生かすために、どんなタイミングでどれくらいの時間をかければいいのか。そういった演技や表現については、かなり意見を言い合いながら作り上げていった覚えがあります。
吉田 『マナリアフレンズ』はキャラクターの心情表現がメインとなってくるので、表情や日常芝居を描くのにはすごく苦労しましたね。
――ちなみに、キャラクターデザインの段階でリテイクなどはありましたか?
吉田 最初にキャラ表を作った際、グレアをやわらかい表情で描いていました。でも、第1話の段階でグレアとアンはすごく親密にはなっていないので、監督から「グレアはもっとキリッとした表情にしてください」と言われたことを覚えています。
岡本 グレアというキャラクターは、みずからの内に入っていく性格だったり、お姫様でキツい目をした竜の姿で、周りから見ると少し壁のある怖い人という印象です。いっぽうのアンは外交的で親しみやすいんだけど、どこか踏み込めない部分もある。この2人が共通して持っている孤独感を表現するためには、最初の頃のグレアは硬い子じゃないといけないんじゃないか、と思っていたんです。
物語を通じて仲良くなっていくことで、2人はどんどんと変化していく。なので、1話を制作する段階のキャラ表では、グレアにはキツイ感じを出してもらうよう何度かお願いしましたね。
吉田 だから、キャラ表のグレアはちょっと表情が暗いです(笑)。そこから、本編の話が進むにつれて、グレアとアンの表情も崩れていきましたね。
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