【アニサマ2019テーマソング「CROSSING STORIES」インタビュー!】作曲・編曲の佐藤純一(fhána)が語る「CROSSING STORIES」に込めた物語とメッセージ
先日の「AnimeJapan2019」におけるステージ「アニサマ2019 15th Kick-off Party」にて、「Animelo Summer Live 2019」(アニサマ2019)の概要が発表された。
そこで今年のテーマが“STORY”と発表された。そのテーマソング「CROSSING STORIES」は、fhánaの佐藤純一さんが手がけることも同時に発表され、早くも大きな反響を呼んでいる。
そこで今回、ほぼすべてのレコーディングを終えた彼に、今回の楽曲がどのように制作されていったのかを聞いた。
――レコーディングお疲れ様でした。まず、アニサマのテーマソングという大役のオファーが来たとき、どう思いましたか?
佐藤 実は昨年のアニサマの中打ち(会場での打ち上げ)で、TRUEさんが「来年は絶対(テーマ曲を作るのは)佐藤さんだよ」とお話していたんですね。僕も「どうなんですかね?」って、そのときはあまり考えていなかったんですけど、そのあとに本当にオファーをいただいて、「当たった!」と(笑)。TRUEさんは勘だったらしいんですけど、そのことを齋藤P(アニサマゼネラルプロデューサー)に話したら、その時は全然考えてなかったと言っていたので、予言が当たったという。
――プレッシャーもあったのではないですか?
佐藤 びっくりはしましたけど、プレッシャーは実はそれほどなくて、オファーをしていただいてすぐに、じゃあこういう曲にしたいなって、いろいろなアイデアが湧いてきた感じなんです。
――これまでのテーマソングの流れも踏まえて、こういう曲がいいんじゃないか?みたいなことですか。
佐藤 それも踏まえつつ、今回は壮大な感動系の曲で、でも普通のバラードではなくリズムを感じられるような、いい意味でアニソン的ではない、J-ROCKっぽさがあるような曲にしたら、新鮮でいいんじゃないのかなと思ったんです。2016年に「君の名は。」が大ヒットして、RADWIMPSの「スパークル」がアニメと一緒に流れて、それが普段アニメを見ない人にも浸透してきている空気を感じていたんです。それなら、「アニサマ」というアニソンの一番大きなフェスのテーマソングに、これまでとは違ったコンテクストの曲調を入れてみたら面白いんじゃないのかな?と。
――確かに、これまでと少し雰囲気が違う感じはしますね。ちなみに「アニサマ」自体には、どんな印象を持っていますか?
佐藤 fhánaのデビューした年に出演させていただいて、昨年fhánaは5周年でベストアルバムも出したんですけど、「アニサマ」の出演も昨年が5回目なんです。なので、デビューからずっと一緒に歩ませていただいたというか、育てていただいたという気持ちがあって、fhánaとしては、暖かいホームのように思っているんですね。アニサマを通してfhánaを知ってくれた人もすごくたくさんいるし、おこがましいかもしれないですけど帰って来られる場所というイメージはあります。それに僕たち自身も、他の出演者のアーティストの皆さんと知り合ったり、こういう歌を歌う人たちがいるんだなって知ることができる場所というか。そういういろんな可能性が広がる場所なんですよね。
――そこで刺激をもらえたり。
佐藤 やっぱりありますね。ステージのパフォーマンスもそうだし、「アニサマ」って最後にテーマソングをみんなで歌うときに、ステージ上でわちゃわちゃ盛り上がったりとかして(笑)、出演者同士の交流が生まれたりするんです。バックステージでお話をしたり、刺激をもらっていますね。
――難しい質問かもしれませんが、「アニサマ」の意義ってどんなところにあると思いますか?
佐藤 何でしょうね……。単純に今人気のアニソンのアーティストや声優さんが集結しているだけでは済まない、独自の魅力がありますよね。「アニサマ」って毎年ひとつのテーマとか物語があって、それを踏まえたうえで、そのときのアニソンシーンの状況であったり、出演者ひとりひとりのドラマ、たとえば誰かが休養に入って復帰したとか、そういうあらゆる物語を総括した上で、針の穴を通すように繊細に、ひとつのタペストリーのような大きな物語を作っていると思います。そういうフェスが出来るのは「アニサマ」だからこそだと思うので、これからもその歴史が引き継がれて続いていってほしいです。
――また、テーマソングの話になりますが、佐藤さんが考えていたことのほかに、アニサマサイドからの要望はあったのですか?
佐藤 オファーをいただいた時点で、まず齋藤Pとお話をしたんです。そこで、「今回こういう曲がいいと思っているんです」と、僕から提案したんです。それで「いいねいいね」って盛り上がり。
――そこで方向性が決まったんですね(笑)。
佐藤 そうなんですよ。だから最初に「こういう曲を作ってくれませんか?」という要望があったわけではなく、こちらから「こういう曲にしましょう」と提案させていただいて、共同プロデュースみたいな感じで進んでいきました。
――歌詞も、fhánaで作詞を手がけている林英樹さんによるものですが。
佐藤 そうですね、アニサマテーマソングは、その年の「アニサマ」のテーマを背負った曲だし、多人数で歌う曲でもあるし、林くんにお願いした際、「これは大仕事ですね……」と言ってました(笑)。
――具体的に、どんなことを伝えていきましたか?
佐藤 まず林くんに依頼する前に、“STORY”というテーマが僕と齋藤Pの話し合いの中でフィックスしていたので、それを踏まえて、「アニサマ」が15周年であること、アニサマに出演するいろいろなアーティストや、お客さん、スタッフの皆さん、そんな沢山の物語たちが、一期一会のように、「アニサマ」という場所でそれぞれの物語で交差するイメージ……そんな歌詞を書いてほしいというという説明をしてお願いしました。
――ちなみに“ストーリー”というテーマになった経緯も教えていただけますか?
佐藤 「STORY」というワードは最初の打ち合わせで僕から提案したんです。齋藤Pが考えていた2019年の「アニサマ」のテーマが、まずは文章としてあったんです。それを落とし込むワードを一緒に考えましょうということで“STORY”というのを出したんですけど、今年1月にリリースされたfhánaのベストアルバムでも「STORIES」というタイトルを考えいたので……(笑)。これは大丈夫ですかね?って確認もしつつ、やはり「STORY」というワードが齋藤Pの考えていたテーマを落とし込むのにぴったりだなと。なのでこれで行きましょうということになりました。
――まさにいろんな物語が交差するというのが、そのまま歌詞になっている印象は受けました。歌詞作りに関してはスムーズに進んだのですか?
佐藤 初稿が届いて、そこから僕と齋藤Pの2人でディレクションをして、林くんに調整してもらい、最終的にはGoogleスプレッドシートを介して歌詞を出して、ネットで話しながらリアルタイムで調整していったんです。最初は“物語”や“ストーリー”というワードがたくさん出てきていたのを、もう少し溜めてから出したいということで減らしたり、ワードのチョイスを変えたりして。また、歌詞の変更に合わせてメロディや譜割もその場で微調整したり。齋藤Pと一緒に最終調整していくという感じでした。
――「CROSSING STORIES」の歌詞は、〈誰もが君の生きる舞台の主役なんだよ〉とか、すごくいい言葉が多いですね。
佐藤 そこは、ZAQさんの「Playing The World」(「アニサマ 2017」テーマソング)の〈次は君の出番だよ〉に呼応していたりするので、ZAQさんに歌ってもらったりしているんです。いつも歌割りは齋藤Pが全て決めているんですけど、今回は齋藤Pがこれまでの「アニサマ」の流れや物語を踏まえた大きな視点で、僕は声質やメロディなど音楽的な視点から、歌割りも一緒にブラッシュアップしていきました。
――つまり、その人がその歌詞を歌うことによって生まれるストーリーもあるわけですね?
佐藤 そうですね。今回ならスフィアさんのパートもまさにそういうところが出ていると思います。あと〈ここまでたどり着いて 今気付く〉という歌詞があるのですが、まだどのアーティストが歌っているかは発表できないですが、「たどり着いて」と言うくらいなので、普通なら長いキャリアのある方が歌うところなのかな?と思うんですけど、「アニサマ」のお客さんには10代の子もたくさんいますし、若いなりに今まで背負ってきた苦しみも喜びもあって、ここまでたどり着いたというの思いがあるはずだと。だからこそ、この歌詞にシンパシーを感じる若い子もたくさんいると思うんですと話をして、そのアーティストに歌ってもらうことになったりしました。
――亜咲花さんも歌に参加されてますが、昨年のアニサマでのMCが印象的でした。歌詞を見たとき、それを思い出したんです。
佐藤 まさに〈誰もが君の生きる舞台の主役なんだよ〉みたいなことですよね。2014年にangelaさんの「アニサマ」でのライブを見て、「世界一気持ちいいから(ここに)上がってこいよ」というMCを聞いて、実際にそのステージに立ったという、そこにもストーリーがあるわけですよね。「アニサマ」って、3日間の中でもストーリーが繋がるし、毎年来ていると、そういうストーリーもあるんですよね。それが今回のテーマにピッタリだなと思うんです。三森すずこさんも昨年3日間出て、ミルキィホームズは今年解散したけど、違った形で、また今年アニサマに出るというストーリーがあるし。
――歌割りもじっくり見てほしいですね。
佐藤 そうですね。それと、「アニサマ」のストーリーで言うともうひとつ。今回作曲をして、このレコーディングをどうしましょうという話になったときに、ぜひ「アニサマバンドで録りたい」という希望を伝えたんです。“ストーリー”というテーマだから、そのテーマソングはこれまでアニサマを支えてきた、アニサマバンドで録るしかないと思ったので、この曲はアニサマバンド全員参加でレコーディングをしています。さらにストリングスもダブルカルテットで録っていて、かなり豪華に仕上がりになると思います。
――それと、ボーカルのレコーディングで、特に気になった方はいましたか?
佐藤 スフィアさんはメンバー全員のハーモニーで聴かせているパートと、それぞれのソロパートがあるのですが、ひとりひとりの歌声もすごく魅力があって、あらためて感動しました。スピラ・スピカの幹葉さんは、笑顔が印象的な方で口角を上げて歌うイメージがあるので、そういう歌詞のところを歌ってもらったり、towanaに関してもあらためてリズム感がいいなと思ったりしましたね。また、Dメロではハイトーンボイスでフレッシュなメンバーに歌ってもらっています。今回歌っていただいた全員についてそれぞれに語りたいポイントがたくさんあるし、すごくいい歌が録れたと思うのでぜひ楽しみにしていてください(笑)。
――最後にMVはどんなものになりますか?
佐藤 MVのプランニングも今回一緒にやっているんですけど、今年はなんとレコーディングのスタジオにカメラは入っていません。これまでとは違ったやり方で歌詞と曲の世界を表現しているので、そこも楽しみにしていてほしいです。
(取材・文/塚越淳一)
【イベント情報】
■Animelo Summer Live 2019 -STORY-
今回インタビューをさせていただいた佐藤純一さん率いるfhánaさんは8/30(金)に出演!
・日時:8/30(金)、8/31(土)、9/1(日) 各日14:00開場、16:00開演
・会場:さいたまスーパーアリーナ
・公式WEBサイト(PC・モバイル共通):https://anisama.tv/
【CD情報】
■アニサマ2019テーマソング「CROSSING STORIES」
・作詞:林英樹
・作曲・編曲:佐藤純一(fhána)
・歌:亜咲花、石原夏織、オーイシマサヨシ、ZAQ、鈴木このみ、スフィア、TRUE、towana(fhána)、幹葉(スピラ・スピカ)、三森すずこ 他
・演奏:アニサマバンド&真部 裕ストリングス
■カップリング曲「ONENESS (15th Stories)」
・作詞・作曲:奥井雅美
・編曲:毛利泰士
・歌:奥井雅美、Minami、ZAQ、TRUE、三森すずこ、オーイシマサヨシ、鈴木このみ、仲村宗悟
・演奏:アニサマバンド(松尾洋一、山崎淳、村上聖、今山内masshoi優、毛利泰士)
・発売日:5/17(金)より、アニメイト、ゲーマーズの各店舗・オンラインにて限定発売!
・価格: 700円(税別)
・配信:5/24(金)より、ANiUTa、animelo mixにて配信!
(c)Animelo Summer Live 2019
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