【「Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」レポート】さいたまスーパーアリーナが、大きな愛に包まれた日――感謝と涙と笑顔のラストライブ!
声優ユニット・Wake Up, Girls!のファイナルライブが、約束の地であるさいたまスーパーアリーナで行われた。たくさんの観客がその瞬間を目撃し、吉岡茉祐さん、永野愛理さん、田中美海さん、青山吉能さん、山下七海さん、奥野香耶さん、高木美佑さんの旅立ちを祝った。そんな感動のライブの模様をレポートする。
Wake Up, Girls!(以下、WUG)は、アニメ「Wake Up, Girls!」の制作決定時に、主演声優を決めるオーディションによって選ばれた7人によるユニットである。そのオーディションの開催の発表が2012年で、7人のメンバーが決定したのが2013年の4月1日。実に今から6年ほど前の話である。そこから劇場版の公開、TVアニメの放送と続き、それと並行してWake Up, Girls!はユニットとして、その活動の幅を広げていった。アニメで描かれていた下積みの活動を、実際の彼女たちも経験していて、リアルとアニメのシンクロが当時は新鮮で、コンテンツとして注目していたことを覚えている。
そんな彼女たちが、そこからもいろいろな活動や経験を経て、葛藤をし続けて、最後に約束の地であるさいたまスーパーアリーナに辿り着き、そのライブをもって解散する。
ワグナー(=WUGのファン)は、いろいろな思い出や感情を胸にこの会場に来たことだろう。メンバーが好きだったり、アニメが好きだったり、ライブが好きだったり、本当にさまざまだと思う。個人的にも、個性を出し、輝き始めたメンバーが好きだったという思いもある。
でも、なぜWUGだったのかといろいろ考えると、きっかけはアニメだが、やはり曲がめちゃくちゃよかったからではないかと思うのだ。もちろん誰が歌ってもいいというわけではなく、WUGが歌うWUGの曲がよかった。そして、それを作っていたのがMONACAであり、作詞家の只野菜摘さんだった。この相性のよさって、すごくない?と。
だって最後のアルバムに収録された新曲4曲の中にAORのような曲が入ってるんですよ。そんな最後までチャレンジするユニットってある?……と思ってしまう。アニメ発のアイドルユニットだが、音楽は10年先も20年先も残りそうな曲ばかりというところが、WUGのひとつの大きな軸であり武器であったことは確かで、そういう意味で、今回の「Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」は、WUG楽曲を存分に楽しむことができるライブとなった。もちろん時に涙を浮かべながら。
開幕はやはり「タチアガレ!」から。制服姿で登場すると会場が一気にヒートアップ。これまでライブで何度も何度も何度も歌ってきた曲だ。だが、何度聴いてもいい!というのがこの曲のすごいところで、作曲は神前暁さんなのだが、始まりの曲にして、この普遍感は、これ以上ないものだと思っている。途中で吉岡さんと青山さんのソロがあるが、このバチバチ感というのが毎回たまらなくて、今回は2人とも最初から相当振り切っていた。
そして「16歳のアガペー」と続く。この曲は、個人的に一番好きな曲であり続けた曲なのだが、「みんな今日は来てくれてありがとう!」と奥野さんが叫んでからの永野さんの落ちサビソロが最高に切なかった。続く「7 Girls War」は、作曲が神前さんと田中秀和さんというところも注目で、ここから田中秀和楽曲というのが「Wake Up, Girls!」という作品の中で大きなウエイトを占めるようになってきたと勝手に思っている。すごくアイドルらしい、ライブで盛り上がる曲の強さを思い知った印象だ。
最初の挨拶では、今日は楽しむだけだ!とメンバーが口々に叫ぶ。吉岡さんも「WUGの終わりであり始まりの今日を、思う存分楽しんでください!」と語っていた。
続いては、少ししっとりとした「ゆき模様 恋のもよう」「言の葉 青葉」。ここでは7人の歌声と光の演出が素晴らしかった。
劇場3作品の映像が流れたあと、「そして物語は次のページへ」というメッセージがスクリーンに映し出される。ここからはWUGが「Wake Up, Girls!」という作品を離れたときの楽曲も多く歌われた。個人的に、作品を飛び出したユニットとしてのWUGの楽曲は、どれもものすごくよかったと思っている。まずは「One In A Billion」から。TVアニメ「異世界食堂」の主題歌で、Wake Up, May’nとして、アーティスト・May'nさんとコラボして歌った楽曲だが、ステージに落ちるスポットライトで、May'nさんのスペースを作るという粋な演出をしていたのが感動的だった。さらにアウトロで「ワグナーさん、私達を応援してくれてありがとう。そしてMay'nちゃん、出会ってくれて、(全員で)ありがとう!」と山下さんが叫ぶところは、かなりエモかった。
「素顔でKISS ME」も、ほかとちょっとテイストが違う、クラブノリのナンバーだが、舞浜のアンフィシアターでの2ndライブで最初に見たときから比べると、もう完全に自分たちの曲にしていて圧巻のカッコよさだった。続く「恋?で愛?で暴君です!」も田中秀和さんの作・編曲で、畑亜貴さんが作詞の、なかなか変態チックな楽曲だが、これも作品を離れたことによって生まれたユニットとしての振り幅なのかなと思っている。多分作品の中ではできないような曲だろう。それにしてもライブでの破壊力は、さいたまスーパーアリーナでも抜群だった。
キャラクターソングメドレーでは、メンバーがひとり乗りのトロッコで移動しながら歌っていく。7人がバラバラで移動していたのだが、メンバーが近くに来ると、観客がペンライトをそのメンバーカラーにするので、さいたまスーパーアリーナで7色の個性の花が咲き乱れてるような感じで、上から見てて美しかった。「ワグ・ズーズー」は全員で後ろにステージを作り後方にいるワグナーにもしっかりと歌を届けていく。
別作品のタイアップ楽曲でいうと「スキノスキル」(作詞:只野菜摘 作曲:広川恵一[MONACA])や「僕らのフロンティア」(作詞:只野菜摘 作曲:田中秀和[MONACA])もあるのだが、アニメ作品「Wake Up, Girls!」としてのストーリーがなくとも、ライブで育っていったことを実感するくらい、完成されたパフォーマンスだった。
そしてライブは後半に突入。まずはTVアニメ「Wake Up, Girls! 新章」のOPテーマ「7 Senses」から。最初は少しおとなしく見えたメンバーの個性が輝き出したのはいつからだろうか。新章は、それぞれの個性について考えるような内容があったが、リアルが先を行ったかと思えば、アニメがそれに追いつき追い越すなど、アニメのキャラクターと本人たちは一心同体だが、その距離感はとてもよかったと思う。
その新章のOP映像をバックに、2つのトロッコに分かれ、ファンの近くまで行って歌声を届けていた。そして曲の最後の〈約束の地で待ってて/約束の時 待ってて/約束の地でみていて/約束の時 みていて〉をコール&レスポンス。まさにこの歌詞が今現在なのだと実感する。
「極上スマイル」まで歌うと、I-1club、ネクストストーム、Run Girls, Run!のひとりひとりから、WUGへ映像メッセージが贈られる。そのメッセージを受け、再び登場したWUGが歌ったのは「雫の冠」。この曲は、只野菜摘さんの歌詞がとにかくいい! まさにこれまでのWUGに当てはまるし、今まさにWUGから巣立とうとしている彼女たちにも当てはまる歌なのではないかと思う。〈誰かが座った椅子に 残されていた温もりも あの日は 拭い去りたいなと思ってた〉という歌詞があるが、まさに拭い去りたいと思っていた側から、今度はその温もりを残す側になったというか。視点が変わっても当てはまる歌詞というところに深さを感じた。この歌詞を本人たちがどういう気持ちで歌っていたのかはわからないが、WUGにとって、只野菜摘さんの歌詞というのは大きな財産なのではないかなと思う。
そして「少女交響曲」「Beyond the Bottom」という大きな曲へ向かっていく。「少女交響曲」は、改めて吉岡さんと青山さんのソロがWUGの軸だと言わんばかりのパフォーマンスだった。これまで何度も見てきた曲だが、大きな会場で、ワグナーだけしかいない中で歌うこの曲は、やはりスケールが大きかった。さらに「Beyond the Bottom」は、誰もが劇場版「Wake Up, Girls! Beyond the Bottom」のラストシーンの実現を待ち望んでいたことだろう。約束の地で、「WUG最高―!!」と田中さんが叫びながら花道を駆けていく。やるとわかっていても泣けるシーンだった。
そしてここからは、アルバム「Wake Up, Best! MEMORIAL」に収録の新曲4曲だ。「海そしてシャッター通り」「言葉の結晶」「土曜日のフライト」「さようならのパレード」。これは、WUGとともに歩んできたクリエイター陣じゃなければ書けない楽曲だと言えるだろう。作詞はすべて只野菜摘さんで、作曲はそれぞれMONACAの高橋邦彦さん、広川恵一さん、田中秀和さん、神前暁さんと繋いでいく。それにしても、ラスト4曲でここまで挑戦的でクリエイティブな曲を用意してくるところがすごい。今のWUGであれば、このくらいは表現してくれるという強い信頼もあるのだろう。
只野さんの歌詞をひとつひとつ大事に歌った最初の2曲。「海そしてシャッター通り」はこれまでの活動が浮かび上がり、「言葉の結晶」は、この強い言葉たちを最後のサビまでフラットに歌っていく表現力。最後に青山さんが、〈言葉の絶唱〉を静かに歌う表現も新しい。そして後ろの2曲は旅立ちを感じる。「土曜日のフライト」はソロでコロコロと繋いでいく歌割りに愛を感じるし、メンバーもたまにグッと来ながら歌っていた。「さようならのパレード」は6年間の活動を思い浮かべながら。この曲も涙をこらえながら歌う個所があったが、全員がしっかりと歌い切る。間奏で観客から“Wake Up, Girls!”の大合唱が起こるのも感動的だったし、この曲は歌詞カードを何度も何度も読んでほしいと思った。それくらい愛にあふれている。そしてやはり神前さんの曲で始まり、神前さんの曲で終わるというのは、美しいなと思った。
何か大きな余韻を残して終わった本編。再び“Wake Up, Girls!”の大合唱が起こる。アンコールは「SHIFT」から。レトロなファッションに身を包み、ミュージカルっぽく見せる演出で盛り上げると、早替えからトロッコに乗り込み「地下鉄ラビリンス」で盛り上がる。そして東北への感謝の想いを込めて「TUNAGO」を披露。この曲は、聴けば聴くほど心にしみる歌だ。「この6年間、私たちが紡いできたものが、いろんな人の気持ちと重なって、東北に光となって差し込んで…。Wake Up, Girls!の活動が終わっても、これからも私達の意思は変わらないので、いろんな方に繋がっていけばいいなと思っています。本日は夢のような時間を本当にありがとうございました」と最後に奥野が伝えて、ステージをあとにする。
だがファイナルライブは、これでは終わらない。というか終われない。まだあの大事な曲をやっていないという思いもあっただろう。Wake Up, Girls!の7人が作詞をした「Polaris」だ。そしてここで、7人からワグナーのみんなへ手紙が読まれる。誰もがハッピーになれる笑顔で、たくさんありがとうを伝えた高木美佑さん、ファンへの感謝をユーモアを交えて伝え、WUGは自分の核だと宣言した山下七海さん、人生で一番泣いた日は解散を決めた日、そして6人を最前線で応援すると語った田中美海さん、いつもクールにカッコよく、この7人は最強なんだ!と語った吉岡茉祐さん、WUGでいれて嬉しい、最強で最高の7人だと力強く言った永野愛理さん、東北出身として、いつでも心は故郷にと語った奥野香耶さんは、メンバーに対するコメントも面白かった。そして最後はリーダーの青山吉能さん。挫折ばかりの日々を振り返り、WUGもワグナーも家族でホームだと語る。自身が演じた「七瀬佳乃」に向けて「単推しです」と言ったのは面白かったし、「WUGがみんなの心に一生、生き続けますように」という言葉は、多くのワグナーの心に刺さったことだろう。
それぞれが、それぞれらしく感謝の気持ちを伝えたあとに満天の星空の中で歌われた「Polaris」。これまで7人で歩いてきたWUGが、これからはそれぞれ歩んで行くことになる。決して簡単な道のりではないだろう。だが、この会場でlalalaと声を合わせたワグナーは、きっと7人を応援し続けるだろう。
大きな夢の舞台は3度目のアンコールへ。最後は笑顔で終わるべきだ!と歌ったのは、もう一度「タチアガレ!」。最初のMCで吉岡さんが言っていた、終わりは始まりということだろう。7人の門出の日に、いつまでも“Wake Up, Girls!”のコールは響き続けた。
【セットリスト】
01.タチアガレ!
02.16歳のアガペー
03.7 Girls War
04.ゆき模様 恋のもよう
05.言の葉 青葉
06.One In A Billion
07.素顔でKISS ME
08.恋?で愛?で暴君です!
09.キャラソンサビメドレー
ハジマル(吉岡茉祐)
可笑しの国(永野愛理)
ステラ・ドライブ(青山吉能)
スキ キライ ナイト(奥野香耶)
オオカミとピアノ(山下七海)
歌と魚とハダシとわたし(田中美海)
WOO YEAH!(高木美佑)
Non stop diamond hope(ALL)
M10.ワグ・ズーズー
M11.HIGAWARI PRINCESS
M12.スキノスキル
M13.僕らのフロンティア
M14.7 Senses
M15.極上スマイル
M16.雫の冠
M17.少女交響曲
M18.Beyond the Bottom
M19.海そしてシャッター通り
M20.言葉の結晶
M21.土曜日のフライト
M22.さようならのパレード
EN1.SHIFT
EN2.地下鉄ラビリンス
EN3.TUNAGO
DEN.Polaris
TEN.タチアガレ!
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