スーパーアイドルの来訪で物語はどう動く!? 「バミューダトライアングル~カラフル・パストラーレ~」ゆるふわ感想文第7話「だから全部いただくわ」

アニメ「バミューダトライアングル~カラフル・パストラーレ~」第7話には、人魚界のスーパーアイドル・チェルが登場。まさかの新人魚の登場で、物語があらたに動き出します。

冒頭、これまで各話エンディングとして流されてきた「シャボン」が古い映画のテーマ曲であり、最近は歌姫として知られるアイドル「チェル」もカバーしていることが語られます。シリーズ前半は人魚の少女たちと不思議な映画館を軸に物語が紡がれてきた「カラパレ」に、いよいよ「アイドル」という存在が本格的に登場します。TCG「カードファイト!! ヴァンガード」に登場するクラン(組織)「バミューダ△」は人魚のアイドル集団であり、本作はそのスピンオフ作品なのです。

物語は、パーレル村をひとりの人魚の少女が訪れたことから始まります。少女の名はチェル。そう、村のアイドル好き・コーダもイチ推し、「シャボン」を歌っているスーパーアイドルです。チェルはソナタたちに村の案内を頼むと、フェルマの店のケーキを買い占めたり、フィナの部屋を勝手に自分の部屋にしたりとわがまま放題。「都会から事情があって逃げて来たらしい」「何やらアイドルと関係があるらしい」という点で、共通点がある扱いをされたカノンは複雑そうな顔です。

チェルのわがままを苦笑いしながら許していたソナタたちですが、5人が大切にしている映画館をチェルに馬鹿にされた時、毅然として怒ったのがカノンでした。それぞれがこの場所に注いできた想いがあり、一緒に作ってきたたくさんの思い出がある。そこに大切な何かが「ある」ことを伝えるのが、最初はパーレル村には何もないと思っていたカノンであることにグッと来ます。

そしてその言葉に、チェルは子供のように取り乱します。小さなころから言われるままにアイドルをしてきたチェルにとって、表現したいものがない、やりたいことがないように思える自分はコンプレックスであり、おそらくアイドルを続けるうえでの壁でもあったのでしょう。

そんなチェルですが、カノンのまっすぐな言葉を聞いて、村の子供たちが赤ちゃん人魚のために歌う姿や映画館でミュージカル映画を見つめる村の人たちを見て、そしておそらく久しぶりにぐっすりと睡眠をとったことで、何か心境の変化があったようです。

ミュージカル映画の上映中、古びた上映機材のトラブルで、映画の中の歌声が聞こえなくなってしまいます。歌を求めてざわつく人々を見ていたチェルは、何かを決心してスクリーンの前に向かおうとします。が、このタイミングで音と映像が一部復旧。劇場に集まった村人や子供たちは、映画と一緒に歌い出すのでした。

個人的に、このシーンの見せ方が大好きです。チェルはおそらく、この人たちのために歌おう、なんとかしたいと思ったと思うんですね。でも、実際には歌わない。有名な歌姫が本人登場してサプライズ歌唱で騒然となるべき場面ではないし、何よりあの場所はソナタたちが作り上げた劇場であって、チェルのステージではないのです。

でも、目の前にいる歌を求めてる観客のために、チェル自身が歌いたいと感じて、行動に移そうとした。それだけで実際には何も起こっていなかったとしても、彼女自身の世界は変わっているんですね。このように、全部は語らない、説明しないけれど、確かにそこに描かれている想いやストーリーがある……という、この作品の控えめでていねいな描写がとても気に入っています。

ところで、ミュージカル映画の中の「シャボン」は、初田悦子さんという本職の歌手の方が歌っているんですね。山崎泰之さんがクラシカルなミュージカル映画仕様に再編曲していたりと、こだわりが感じられます。そしてエンディングテーマの「シャボン」は、まさかのチェルバージョン。歌唱は大久保瑠美さんです。やっぱりうまい! このやさしくて表現力豊かな歌声は、パーレル村でささやかな経験をしたあとのチェルのものじゃないかなと、ふと思いました。

アニメ「バミューダトライアングル~カラフル・パストラーレ~」は、2019年3月23日(土)~4月7日(日)23:59まで、YouTubeヴァンガードchにて全話無料配信中です。ちょっと癒やしが欲しい時、やさしい世界でたゆたってみませんか?

(文/中里キリ)

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