充電完了、夢の続きへ一緒に! スフィア熱に火をつけた「Sphere 10th anniversary Live 2019“Ignition”」ライブレポート

寿美菜子さん、高垣彩陽さん、戸松遥さん、豊崎愛生さんによるユニット・スフィアの10周年を記念したライブ「LAWSON presents Sphere 10th anniversary Live 2019“Ignition”」が、2019年2月17日(日)舞浜アンフィシアターにて開催された。

2017年11月の「LAWSON presents Sphere live tour 2017 “We are SPHERE!!!!!”」幕張公演をもって、結成10周年に向けて音楽活動の充電(=一時休止)期間に入っていたスフィア。4人はミュージックレインの“第1回スーパー声優オーディション”に合格した同期で、初めは「ミュージックレインgirls」としてイベントを行っていた。2009年2月15日に開催したイベントでスフィアの結成を発表すると、翌年には声優ユニットとしては初、声優アーティストとしては当時史上最速となる日本武道館での単独ライブを開催するなど、パイオニアとして休むことなく走り続けてきた。充電期間中は、表向きには音楽活動を行わないものの、水面下で再始動に向けての打ち合わせを重ねてきたという。そのスフィアのライブを約1年3か月ぶりに見られるということで、会場にはこの日を待ちわびた大勢のファンが集まった。開演前、紗幕にはライブのロゴマークが映し出され、その奥にバンドセットのないシンプルなステージとSPHEREの文字が大きく刻まれたパネルがかすかにのぞく。

<10年前にはうまれたての光 10年先へとまたここから、一緒に>

客電が落ちると、そんな「Endless Anniversary」のワンフレーズが流れ出した。4人それぞれの「10周年を迎える自分たちへの想い」を綴った手紙をもとにして生まれた、パーソナルが詰まった1曲。充電前ラストに発表され歌われたのもこの「Endless Anniversary」であり、奇跡の物語の続きが始まろうとしている。

壮大な宇宙を思わせるオープニングムービーが紗幕に投影され、ステージ中央に4色の光で照らされた4人の姿が浮かび上がると、デビュー曲の「Future Stream」で記念すべきアニバーサリーライブの幕開けを飾った。充電明けは「Endless Anniversary」、そして「Future Stream」でスタートしたいというメンバーの願いもかなった最高のスタートだ。ファンも4人の想いに全力で応え、客席からはいつも以上の熱気と気合を感じる。そこから1stアルバムリード曲「A.T.M.O.S.P.H.E.R.E」へつなげると、円形のステージいっぱいに広がって元気よく歌声を届ける。続けて、4人の魅力が詰め込まれたこの4人だからこそ歌える「Ding! Dong! Ding! Dong!」、冠番組「スフィアクラブ」主題歌の「LET・ME・DO!!」を披露した。

4曲歌い終えてのMCパートで、さっそく「皆さんこんばんはー! LAWSON presents Sphere 10th あにびゃ……(笑)」と変わらずのゆるさを発揮するのは高垣さん。ひと言目でいきなり噛むというまさかの滑り出しには戸松さん、豊崎さんも崩れ落ち、タイムスリップで仕切り直すことに。タイトルコールをしっかり決めてから挨拶していき、最後はスフィアポーズとともに「私たち、スフィアです!」と声を揃えると、「やっぱりこれやで!」(戸松)ととびきりの笑顔を見せてくれた。

そしてここで、高垣さんが「ある人物から、謝罪がございます」とひと言。大爆笑の客席と、戸松さんから少し距離を置く3人……。どこか見覚えのある光景の中、戸松がさん土下座した。充電期間前・20thシングル制作中に寿さんからプレゼントされた土星のあしらわれたおそろいの指輪を、このライブの前日に行われたラジオ公開録音イベント「チョコ祭り2019」のときに4人でつける約束をしていたそう。しかし、戸松さんはそれを失念していたうえ、自宅のどこを探してもその指輪がなかったというのだ。

「4人一緒につけられないなら意味がないということで、今日は全員マジックで指輪を描きました」――そう言うと、4人は各々の左手人差し指に描かれた指輪をアピールした。ほかの3人には豊崎さんが、戸松さんには寿さんが書いたそうで、戸松さんはその出来を若干ディスりつつ「でも、私みんなのこと好きだよ」とメンバーへの素直な気持ちをあらわに。最後は高垣さんが「10周年を記念して4人で新しいアクセサリーを買おう? スニーカーも色違いで買ったし」とうまくまとめあげた。10周年の絆は確かなようだ。

改めて「10周年のその先に向けて思いっきり点火していきましょう!」(高垣)と意気込むと、5thアルバムより「SPHERE-ISM」でスフィアの主義・主張を宣言。「GO AHEAD!!」では客席にもマイクを向けながらかけ合いを楽しんだ。そしてライブの定番「MOON SIGNAL」を、一段と磨きのかかった歌声で披露。それもこれまで何度も歌い込んできた証だろう。この曲について以前「私たちにとって鎧のような、武装するための曲」と語っていた寿さんは、客席の反応へ満足気に耳を傾けていた。

暗転し、一度退場するメンバー。ほどなくして、ロングドレスに早着替えした高垣さんがピンク色に染められたステージへ歩み出る。それぞれがソロアーティストとしても活動するスフィアのライブ恒例、ソロコーナーの時間だ。光の中に凛とたたずみ、力強いボーカルの「愛の陽」でファンを圧倒する高垣さん。次に寿さんがEDMナンバー「Another Wonderland」を披露し、会場を大きく揺らした。そして寿さんがはけ、このまま3人目のソロ曲……と思いきや、「らくがきDictionary」がスタート。まずは白を基調としたドレスに衣装チェンジをした寿がステージに現れ、楽曲冒頭のソロパートを歌唱。そこからひとりずつそれぞれの歌唱パートにあわせて登場するという、これまでにない演出が組み込まれていた。楽曲の後半では新たな振り付けも追加され、切ない歌詞をしっとりと歌い上げた。続く「Spring is here」は紗幕にCG映像が映し出され、鮮やかな花や満開の桜が4人のパフォーマンスに彩りを添える。まだ桜の季節には早いが、春の訪れを感じさせてくれた。

再びのMCパートでまず話題になったのは、セットリストについて。約70曲からそれぞれが「絶対にこの曲を歌いたい」という楽曲を10曲ずつピックアップして、それをもとに決めたそうだ。デビューからの10年間を振り返るなかで、ひとりだけ記憶が曖昧だった戸松さん。途中で豊崎さんから「遥、世の中には“説得力”っていう言葉があるの」と諭され、「今日は何か困ったら人差し指(の指輪)を見て戒めたいと思います」と笑いを誘った。

4人それぞれからデビュー10周年を迎えた心境が語られたあと、ここからはソロコーナーの後半戦。豊崎さんは淡いグリーンの衣装に身を包み、客席にあふれるいっぱいの光と笑顔にやさしくほほえみを向けながら「クローバー」を歌った。白いTシャツにオレンジ色のつなぎというポップなスタイルで登場した戸松さんは、「オレンジレボリューション」をチョイス。“伝説の鳥”をしたり、ステージを走り回ったりと戸松さんらしいステージを展開した。

戸松さんと入れ替わって、白地にグラデーションチェックが映える衣装へと着替えた寿さん、高垣さん、豊崎さんが登場すると、メンバーひとり不在の状態で「NEVER ENDING PARTY!!!!」のイントロが始まるというドキドキの演出で勢いづける。もちろん戸松さんも、早着替えして歌い出しの直前に駆け込む。設置されたミラーボール5台もフル稼働し、7色の光がパーティータイムを華やかに彩った。

続く「Miracle shooter」では曲頭の通称“ゴリラダンス”パートから全力で体を動かし、会場のボルテージは高まるいっぽう。そしてHとP、2つのパネルがステージ上に残ると、「HIGH POWERED」が歌われる。曲名を略せば「HP」と、セットを利用した遊び心が楽しい。パネルに手をかけたり、戸松さんが「すしざんまい」のポーズを決める小芝居も挟みつつ、さわやかに歌いきる。

SPHEREのパネルが揃うと、ライブはラストスパートへ。「vivid brilliant door!」で「みんなのところに会いに行くよ!」(戸松)とステージから飛び出した4人は、客席の通路に設置された4つのお立ち台へ。トロッコ以外で客席に降りるのは今回が初めてだ。2番では立ち位置を入れ替わり、ファンと近い距離で笑顔を交わしあった。ステージに戻ると、「Planet Freedom」「Non stop road」で美しいユニゾンを響かせる。久々に訪れた「わかりあう」瞬間は幸せに包まれていた。

最後に「本当に今日はどうもありがとうございました!」(寿)、「ここからがスタートだからね!」(高垣)、「楽しいひとときをありがとう!」(戸松)、「また必ず、会いましょう!」(豊崎)と思い思いのメッセージを残してせり下がっていったスフィア。しかし、ライブはこれだけでは終わらない。自然とアンコールが湧き上がった。

鳴り止まないアンコールの中、ライブTシャツ姿の4人が再登場してさっそく「キミが太陽」を歌うと、豊崎さんの「みんなの声、いっぱい届いてました。ありがとう。まだまだ歌いたかったんだもんね~!」という言葉に3人も「ね~♪」と声をあわせ、お知らせのコーナーへ。

戸松さんが「この4人じゃなきゃユニット組むの嫌だったんだよ、私」と結成日の名言を再現したはいいが、高垣さんが「展示を一点一“点じ”ーっと見てほしい」とこの日初めてのダジャレを披露して、両手でスフィアポーズかかげたり、突然「好きなローソンの食べ物」をあげだしたり……と、とにかく自由奔放だ。告知の最後は、全国ツアーの開催が初解禁。嬉しいお知らせに大歓声が上がる。4人でツアータイトル「Sphere 10th anniversary Live tour 2019 "A10tion!"」を発表すると、ステージ上をはしゃぎまわった。スイーツにたとえるならフルーツパフェ。そんなスフィアの4人を、客席もあたたかく見守った。

アンコール2曲目の「Super Noisy Nova」ではステージが回転し、舞浜アンフィシアターならではのパフォーマンスとなった。熱は増すいっぽうだが、次の曲が本当にラストということで客席からは「えー!?」の声が上がる。それに対して戸松さんが「私たちだってまだ歌っていたいんだけど、ねぇ。あのー、何でしたっけ。あの……。終わりがなければ終わってくれないんだよ!」と謎の発言をすると、4人がメインキャストを務めたアニメ「夏色キセキ」で、水越紗季を演じた高垣さんが本家「終わらないと思い出になってくれない」を披露してくれた。ちなみにそんな「夏色キセキ」は、第1話のアフレコが2012年2月14日に行われていたという。思い返せば4人の初対面も2月半ばであったと語られており、2月はメンバーにとって思い出の多い季節のよう。

そして、最後の1曲を前に、ひとりずつ思いを語っていく。

戸松さんはまず「今日をとっても楽しみにしていました。最初に皆さんの『おかえり!』っていう表情を見たとき、心から溢れ出てくるものがすごくあって。本当に楽しい1日でした」とライブを振り返る。そして、開催予定のツアーに触れながら、「もっともっといろんな展開をしていきたいと思っています。これからのベテランアイドルの活動を楽しみにしていてください」とコメント。

今があるのはみんなのおかげ、スフィアでよかったとたびたび口にしている豊崎さんは、この日も真っ先に「皆さんの愛に囲まれてスフィアは育ってきました」と感謝を述べる。それから、「この大好きなスフィアを作ってくれた皆さんに、これからもいろんな表現方法で声を、想いを届けていける1年にしたいと思います。10周年、これからよろしくお願いします」と10周年イヤーの意気込みを表明した。

「チョコ祭り2019」当日の深夜2時頃に「We are SPHERE!!!!!」のライブ映像を見ようと思い立ち、そのままDISC2を通して見てしまったという高垣さん。「めっちゃくちゃ高まって、3時半ぐらいにスフィアのLINEグループに『今We are SPHERE!!!!!見てる。めっちゃエモい、すごい。あ、寝てるか……』って送って」という高垣さんらしいエピソードから続けて、「これから先、どんなことが起こるかなんてまだ誰にもわからないけれど、自分たちにとっても、皆さんにとっても、スフィアという輪がいつでも帰っていける最高の居場所であったらいいなと思っています。みんなと一緒に最高の10周年イヤーにしなきゃ、いやー! これからもよろしくねー!」と、スフィアの“長”としてありがたいお話を贈った。

ステージに出る直前、珍しく緊張していたという最年少の寿さんは、そんな“長”から締めを任され、「ツアー幕張公演のときは、この日をどういう形で迎えられるのか、ぶっちゃけ、まだ決まっていなかったんです。だからちょっと怖さもあったんですが、無事に今日ここでみんなと一緒に“Ignition”できて、本当に本当に嬉しく思います。これからも4人でしか見られない景色を皆さんと一緒に見ていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!」と挨拶を締めくくる。

いよいよ迎えたラストナンバーには、4人でタイトルコールをしてから新曲の「Music Power→!!!!」を初披露する。10周年の幕開けにふさわしい、10th Anniversary Album「10s」のリード曲だ。

ユニット結成や武道館ライブの発表など、初期には“しりとり”映像によるサプライズ発表が定番だったスフィア。充電期間中は常に「初心を忘れずに」ということを意識していたといい、このアルバムの発売も、「チョコ祭り2019」でしりとり映像を使って発表された。また、武道館ライブ以降、楽曲の初披露といえば必ずといっていいほどバンドメンバーによる演奏で行われてきたが、今回のライブにはバンドメンバーの姿はない。それも原点回帰を意識してのことだ。

さて、そんな「Music Power→!!!!」は、rinoさんとスフィアの共作詞によるもの。同じくrinoさん作詞の「Sincerely」など、これまでも4人が作詞協力した楽曲はあったが、4人の念願かなって今回初めて作詞が実現した。Aメロ、Bメロのソロパートはメンバーそれぞれが、サビはこれまでも多くの楽曲を提供してきたrinoさんが詞を書いているだけあり、彼女たちの想いはストレートに伝わってくる。ソロパートで1人ひとりバトンをつないでいき、サビでは心地よいユニゾンを聴かせるという楽曲の構成がまた素晴らしく、スフィアがスフィアでよかったと心から思わせてくれる1曲に仕上がっていた。

最後は銀テープを1枚拾うと、それを仲良く一緒に持ちながら「ありがとうございました!」と一礼。ステージをあとにする4人の姿には、この10年間で築かれてきたであろう確かな自信と希望が感じられた。

(取材・文/友安美琴、撮影/佐藤 薫)

■セットリスト

01. Future Stream

02. A.T.M.O.S.P.H.E.R.E

03. Ding! Dong! Ding! Dong!

04. LET・ME・DO!!

05. SPHERE-ISM

06. GO AHEAD!!

07. MOON SIGNAL

08. 愛の陽(高垣彩陽)

09. Another Wonderland(寿美菜子)

10. らくがきDictionary

11. Spring is here

12. クローバー(豊崎愛生)

13. オレンジレボリューション(戸松遥)

14. NEVER ENDING PARTY!!!!

15. Miracle shooter

16. HIGH POWERED

17. vivid brilliant door!

18. Planet Freedom

19. Non stop road

<アンコール>

20. キミが太陽

21. Super Noisy Nova

22. Music Power→!!!!

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