本日発売!褪せた町に色を取り戻す。PS4「アッシュと魔法の筆」を最速レビュー

「Entwined(エントワインド)」を手がけたスタジオ、Pixelopus(ピクセルオーパス)の、5年ぶりの新作となる「アッシュと魔法の筆」が、本日発売された。その先行プレイする機会を得たので、本作のレビューをお届けする。

物語の舞台となるのは、港町デンスカ。町とはいうがそれは昔のことで、今は荒れ果て、人も住んでいない。主人公アッシュにとっての故郷でもあるこの港町に、彼はよく足を運んでは、風景画や、空想上の友だち「かいぶつ」を描いていた。ある時、彼は、描いたものに命を吹き込める魔法の筆を手に入れる。生き物となった「かいぶつ」と力を合わせ、アッシュはデンスカをよみがえらせていく。


描いた絵が命を宿す



本作の最大の特徴は、まさにその魔法の筆。デンスカの家の壁や、港にあるコンテナ、店の看板といった至るところに絵を描くことができる。命が宿っているので、草木は揺れているし、蝶々や鳥は羽ばたいて、どこかへ飛んでいく。塗料というよりは電光装飾のような質感なので、遠くから見ても明るく見やすい。デンスカがあまりに廃れて閑散としているせいもあってか、絵もいっそう映える。




描ける絵はすべてパーツになっており、プレイヤーがいちから作成する必要はない。1度ボタンを押せば、あとは離すだけ。技術はなにも求められない。ボタンを押したままコントローラーを上下に動かせば、サイズを調整することも可能だ。




さらに、デンスカの町に描いた絵はずっと残る。物語序盤、試しにと描いた花畑と星空が、路面電車のチケットを売る店の壁に、本編をクリアした後も残っていた。好きに描いた絵が、プレイヤーとアッシュの足跡になっているのもいい。また、各地に散らばったスケッチブックのページを集めるごとに、描ける絵のパーツも増えていく。マップにはページの在り処も記されているので、とくに詰まることなく、スムーズに集められる。


「かいぶつ」を愛でて、いっしょに冒険



「かいぶつ」は、プレイヤーの描いた絵にさまざまな反応を見せる。たんぽぽがあると種子を吹き飛ばしたり、りんごがあれば食べたりすることも。バリエーションが豊富で、「かいぶつ」とただ遊んでいるだけでも飽きない。描けるパーツが増えていくにつれ、「これを描いたら、『かいぶつ』はどんな反応をするんだろう」と、思えるようになる。ちなみに、「かいぶつ」には見た目の異なる全18種が存在。風景のパーツと同様、各地に散ったページを集めていくと、さまざまな角や尻尾を付けられるようになる。




また、「かいぶつ」はこちらの絵に反応するだけではない。壁の中の散歩や、主人公への絵のおねだり、床に座っての休憩など、決して機能的とはいえない所作が随所に盛り込まれているのだ。「かいぶつ」は配下や従者ではなく、生き物で友だちなのだと実感させてくれる。



各地の電球に絵を描くことで明かりを灯し、黒いツタを除いて先へ進むのが本作の基本的な流れで、そこにさまざまな謎解きが存在する。解くカギは「かいぶつ」が握っており、木片が打ち込まれた壁には火属性の「かいぶつ」を、電力が落ちているなら、雷属性の「かいぶつ」を連れてくるといった具合だ。周囲の構造や、「かいぶつ」の特性を把握することが重要なのだが、どの謎もさほど難しくなく、サクサク進められる。しばらく苦戦していると画面にヒントが出てきて、解き方をほのめかしてくれるという親切ぶり。


また、デンスカにはアッシュをいじめる子どもたちもおり、こちらを見つけると追いかけてくる。捕まった場合、魔法の筆を隠され、ごみ箱に放り投げられてしまう。ただ、声を出して誘導することができるうえ、捕まっても魔法の筆の場所は画面に表示されるので、特にデメリットはない。誘導さえしてしまえば、まず見つかることはないだろう。



ここまで書くと、アッシュと「かいぶつ」の仲良し冒険談のようで一見和気あいあいとしているが、物語を進めていくと一変。魔法の筆を使った行動に攻撃や回避が追加され、アクションゲームになる。となれば、当然、戦わなければならないわけだが……。



プレイヤーが世界を創造するVRモード


本作には、本編から独立したVRコンテンツが搭載されており、PlaySation VR本体と、モーションコントローラー2本を使ってプレイできる。物語に登場する「かいぶつ」、ポタリと遊びながら絵を描いていく「ポタリと不思議な キャンバス」と、プレイヤーが好きに絵を描ける「VRフリーペイントモード」があるのだが、その中にある3Dマップでのペインティングは、衝撃的だ。プレイヤーが本作の世界に入り込み、本編同様に絵を描くだけだが、操作の仕様がとてもいい。モーションコントローラーのうち1本は魔法の筆、もう片方は、描くパーツを選ぶためのスケッチブックになる。「筆」と「パレット」を持った姿は、まさに絵描きだ。



そして3Dマップに入ると、プレイヤーは神になれる。筆を振るえば、選んだ絵がそのまま描かれる。太陽を描けば朝になり、月を出せば夜になる。世界を好きに創れるのだ。アッシュを通してやっていたことをプレイヤーが直接行えるので、臨場感も格別。機材を揃えるのはややハードルが高いが、もし手元に機器が一式あるのなら、ぜひ体験してみてほしい。



本編クリアにかかった時間は8時間ほどで、ボリュームが多いとはいえない。だが、「かいぶつ」との触れ合いの奥深さや、リアリティともアニメ調とも違う幻想的な雰囲気は、独特だ。物語の短さが、かえってその独特な作風に合い、ひと夏に起こった不思議な出来事を体験しているような、そんな心地もした。「雰囲気ゲー」の類が好きな人には、まずオススメできる作品だ。

(文・夏無内好)

【商品情報】
■アッシュと魔法の筆
ジャンル:アクションアドベンチャー
対応機種:PlayStation 4
プレイ人数:1人
発売日:現在発売中
価格:パッケージ版 2,900円(税別)
ダウンロード版 通常版 3132円(税込)/デジタルデラックス版4,212円(税込)
CERO:B 発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

(C)Sony Interactive Entertainment LLC

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