アオシマが「未来少年コナン」のプラモデル化で模索した「アニメ」から「模型」への最適解【ホビー業界インサイド第52回】

1978年にNHKで放送され、今なお評価の高いアニメ作品「未来少年コナン」(監督:宮崎駿)のプラモデルを精力的に開発しているのが、青島文化教材社である。まず、2013年に「空中要塞ギガント」が発売され、その後、「ファルコ」、「バラクーダ号」、「フライングマシンI & II」と続き、今月末発売の「ロボノイド ダイス船長版」と12月発売の「ロボノイド コナン版」で、シリーズはひと区切りを迎えるようだ。
しかし、アニメーションならではの、のびのびした描線とやわらかなタッチのメカニックをプラモデルという工業製品に落とし込むには、並々ならぬ苦労があったという。開発担当の飯塚秀実さん(青島文化教材社・開発事業本部)にお話をうかがった。

ギガント発売まで、1年もかかった理由とは……


──以前、飯塚さんには「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の1/24アスラーダG.S.Xのプラモデル化で、お話をうかがいましたね。

飯塚 ええ、過去に発売した「サイバーフォーミュラ」のキットが売れ出したのを受けて、最新技術を盛り込んだ、実車のようなアスラーダG.S.Xのプラモデルを目指しました。そのG.S.Xのキットが好評だったので、今度はF1カーのテイストを盛り込んだスーパーアスラーダを開発中です。

──「サイバーフォーミュラ」以外では、どんなキャラクターキットの企画開発に携わったのでしょう?

飯塚 プラモデルでは「サンダーバード」や「メガゾーン23」、完成モデルの新世紀合金シリーズでは「ふしぎの海のナディア」のノーチラス号、「宇宙海賊キャプテンハーロック」のアルカディア号、東宝メカニックではメーサー殺獣光線車や轟天号などを担当しました。その後、再びプラモデル事業に戻って「未来少年コナン」の空中要塞ギガントを自分が担当することになりました。古いムックを買い集めて、開田裕治さんの描き下ろしたイラストを見つけて、最初はそのイラストを模型化するつもりでした。ところが、開田さんの絵は、アニメの劇中とはまったく形が違うんです。ですから、モックアップをホビーショーで1度発表した後、ゼロから形を作り直しています。昔から、ギカントはガレージキットになっていましたから、模型にすること自体はすんなりと受け入れられたのですが、とにかく形がとらえづらいんです。


──バンダイから、100円の小さなプラモデルも出ていましたね(ギガント、ファルコ、ロボノイド、バラクーダ号の4種)。

飯塚 ええ、他社のご担当の方も「アオシマさんにギガントをリニューアルされちゃったなあ」と、悔しそうにおっしゃっていました。ギガントを開発するときによかったことは、まずレーザー加工機の導入でスジボリをV字型ではなく凹型に彫れるようになったこと。もうひとつ、ネオジム磁石が安く供給されるようになって、垂直尾翼とジェット噴射口を取り外し可能にできたことです。僕は過去にミニ四駆のパーツも担当していてネオジム磁石の威力は知っていましたから、絶対にギガントにはネオジム磁石を付属させるつもりでいました。しかし、ファンの方からの意見も聞きながら根本的にプロポーションやディテールを考え直したので、開発に1年ぐらいかかってしまったんです。また、最初の企画時点では、ギガントのみをプラモデル化して終わりの予定でした。苦労の甲斐あってギガントの売り上げは好調で、「コナン」のシリーズは続くことになります。

──翌年、ファルコ、バラクーダ号と続きますね。ファルコは航空機なので1/72スケールで納得なのですが、バラクーダ号はなぜ1/200なのですか?

飯塚 自分が1/700ウォーターラインシリーズで英国艦船も手がけていたこと、イマイ社の帆船模型を身近で見られることもあり、バラクーダ号には帆船模型のテイストを加えたくて企画しました。1/200は、帆船や軍艦のスケールとしては標準的なんです。洋上仕様とフルハル仕様を選べるようにして、船の模型らしさを目指しました。模型として完成させたときのサイズ感も重視して、スケールを決めています。

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