海辺の島で二足歩行! 「バミューダトライアングル~カラフル・パストラーレ~」第8話ゆるふわ感想文

アニメ「バミューダトライアングル~カラフル・パストラーレ~」第8話。冒頭から「陸上がり」という気になるワードが登場します。

童話の「人魚姫」では人魚は声と引き換えに尻尾を足に変えますが、この世界では「トウィンクル・パウダー」という魔法の液体を使うことで「足」を手に入れることができるのです。村の先輩人魚たちの言葉を聞く限り、陸上がりとは一人前の大人の人魚になるための儀式、試練のようなもののようですね。

地上の浜辺に上がったソナタたちが「トウィンクル・パウダー」を振りかけると、尻尾が人間の足に早変わり。にょきっと伸びた2本の足が新鮮です。初めて二足歩行をした4人は生まれたばかりの小鹿のようです。そう、4人。初めての陸にとまどう4人の中に、セレナの姿がありません。

波打ち際に取り残されたセレナは、なんと子供の姿。しかも言葉が話せないようです。人魚の伝承を思い出してドキッとしますが、これは人魚が地上で話すための「プリズムパール」をセレナが落としてしまったからでした。こうやってアイテムの説明をざくっと簡略化する演出、よいと思います。

セレナは「トウィンクル・パウダー」の副作用で子供になってしまったようです。パウダリングがうまくいかない体質だとたまに起こる現象のようですが、この世界の人魚の不老性を考えると少し興味深いです。フィナは、小さいセレナのかわいさに大喜びです。

5人に任されたお使いは、島に住むグラディスさんに珊瑚糖を届け、かわりに塩ゼリーをもらってくること。グラディスさんの家を探して地上の島を探検するソナタたちは、地上の植生や南国の蝶の美しさに魅せられます。「ケモノ」や「トリー」のイントネーションを変えることで未知の存在を表現するのは小技がきいています。

歩き回る5人を見てびっくりするのは、カノンが子供セレナに近いぐらい小さいことと、5人の中で一番背が高いのがキャロなことです。キャロの活発な印象と2本の足はイメージが合いますね。膝の描き方にこだわりを感じました。

探索中の5人は、森で南国風の少女と、謎のしゃべるトリーに出会います。彼女たちに導かれて、アルディたちに頼まれたお使い先であるる「ギンリンテイ(銀鱗亭?)」に向かうソナタたち。目的の建物に人魚文字の看板が出ていて、主が海の生まれであることを示しているのも小さなポイントですね。

洗濯物を干したり、地上ならではのお手伝いをしたソナタたちに、南国の少女は自分こそがグラディスであることを明かします。セレナと同じように、「トウィンクル・パウダー」のパウダリングがうまくいかず、実年齢より若い姿になってしまっていたのです。

色とりどりの鉱物や、珍しいリクガメ。グラディス宅の地上にしかないものたちの中で、一際セレナの心をつかんだのは「ななめになった細長い入れ物と細長い台に、色とりどりの紐がついていた。どれも2つでセット」なもの。人魚にとって「靴」は未知なアイテムで、それでも女の子をときめかせるフォルムなんですね。

翌朝。グラディスに起こされた5人は、浜辺を覆う「濃霧」という自然現象を目撃します。言われるがままにかがり火を炊くソナタたちは、立ちのぼる「炎」を初めて目にします。我々の感覚では、かがり火ひとつで濃霧をどうにかできるとは思えません。その疑問は、濃霧の中をよぎる大型の旅客船の影によって解決されました。グラディスは、灯台代わりのかがり火をたくことで、船の座礁を防いだのですね。ですが、ただでさえ未知の体験が続いたソナタたちにとって、巨大な船は刺激が強すぎたようでした。

濃霧が去ると、グラディスは塩ゼリーを作ってくれました。仕上げに振りかけたのは、パーレル村の珊瑚糖をひとつまみ。グラディスが地上に住み続けるのは、ここで出会った友達との思い出があるからのようです。「靴」という人魚の文化にはない贈り物をくれた友達は、きっと定命の人間だったのでしょう。

海に戻ったソナタたちは塩ゼリーを大事に持つと、水を得た魚のように生き生きと楽しげに、パーレル村へと帰っていったのでした。

地上に上がることで人魚の文化ギャップをていねいに描き出した今回のお話。脚本に連名で横手美智子さんの名前があったことに納得でした。同時に愉快なインコ=リマがまたしても松井恵理子さんだったことにびっくりしたスタッフロールでした。

それにしても塩ゼリー、どんな味なんでしょう?

(文/中里キリ)

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