【サンライズフェスティバル2019特集】白鳥哲が「前日からキャラに入り込み臨んだ」アフレコ現場で思ったことは!? 20年目にして飛び出す裏話に注目の「無限のリヴァイアス」トークステージ!
数多くのアニメーション作品を製作してきたサンライズの作品を、映画館で連日上映する毎年恒例のイベント「サンライズフェスティバル2019風月」が、2019年9月13日から2019年9月27日にかけて開催された。
今回は9月21日(土)に開催された「無限のリヴァイアス」ステージの模様をレポート。ちょうどテレビ放送から20周年というメモリアルイヤーということもあってか、改めて注目を集めている本作だが、会場にも多数のファンが来場。開場前のロビーは、足の踏み場もないほどだった。
また当時、青島文化教材社から発売されていたプラモデルや、メカデザイナー・山根公利さんが作ったリヴァイアスのモックアップなどレアなアイテムも展示され、写真に収めようとするファンの長蛇の列が形成された。
そんな熱気があふれる中、ステージに登壇したのは谷口悟朗監督、黒田洋介さん(シリーズ構成)、白鳥哲さん(相葉昴治役)、檜山修之さん(エアーズ・ブルー役)の4名。非常にわきあいあいとした雰囲気で進行した。
そんなステージの模様をレポートでお届けしよう。
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詳細は以下のリンク先の記事からご確認いただきたい。
スタッフも声優もプロデューサーも、本気でぶつかりあった現場
トークステージは、監督と黒田さんの出会いのエピソードから始まった。
黒田さんが本作を知ったのは、所属するスタジオオルフェに「リヴァイアス」と、別作品の2本の企画書が持ち込まれた時。当時オルフェには、黒田さんのほかに「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などで知られる倉田英之さんが所属しており、2人で企画を分け合うことになったそうだが、この段階から黒田さんは「リヴァイアス」に魅力を感じていたという。
その後、谷口監督と対面することになったが、両者の初対面時、黒田さんは髪の毛を緑色に染めていたそうだ。これは黒田さんが酒の席での賭けに負けた罰ゲームだったそうだが、それを知らなかった谷口監督は、「この人はポリシーで髪を染めているのか」と思ったという。そんなインパクトの大きな初対面だったそうだ。
そんな中でスタートした「リヴァイアス」の企画だが、500人ほどの少年・少女が宇宙戦艦に乗って漂流するという作品ということで、黒田さんは「それが描きたいというわけではなく」と前置きしたうえで「無秩序になるだろうから、レイプなどもありますよね?」と質問したところ、谷口監督からは「あるでしょう」という回答を得たことを明かす。そこで「そういう状況を避けずに書いていいんだ」と思い、監督についていこうと決意したという。
そんな本作だが、放送時間帯は毎週水曜日夕方6時というゴールデンタイム。檜山さんと白鳥さんは「ここまでやるなんて、すごい作品だな」と思っていたそうだが、すでに数年前に同枠であの「新世紀エヴァンゲリオン」が放送されており、数々の問題シーンが放送された後であったこと。そして当時のテレビ東京のプロデューサーが、覚悟をもって制作に臨む人物だったからこそ、本企画が実現したと谷口監督は語る。
そのいっぽうで、「役者から面と向かって怒られたのは本作が初めてだった」と黒田さん。そのくらい、出演していた声優陣にとっても衝撃の大きな作品だったことがうかがえる。
生っぽさを志向した脚本は、いかにして生まれたのか
話題がアフレコ時のエピソードへと移ると、毎回、谷口監督と黒田さんがアフレコスタジオを訪れていたことが語られた。
谷口監督によると、声優の演技が脚本に影響を与えたり、セリフを修正する際に、現場に脚本家がいるとその場で直せるので都合がよかったからだという。
対して、アフレコブースの中からスタッフ陣を見ていた白鳥さんは「あの頃は(谷口監督と黒田さんが)2人でひとつみたいな空気感がありましたね」と回顧する。
また、「リヴァイアス」の頃、谷口監督はスタッフルームの奥に座ってなかなかブース内には入ってこなかったという。その理由として、初監督作品ということもあり、指示をあちこちから出すのではなく、音響監督を務めた故・浦上靖夫さんに指示を集約させ、自分は俯瞰して作品を見ようと心がけていたから、ということが語られた。それもあって、当時は声優陣とあまり仲良くなる必要はない、と思い、一線を引いていたそうだ。
しかし、白鳥さん、檜山さんいわく「(谷口監督は)最近の作品ではどんどんアフレコブース内に入ってくる」そうで、今は適度な距離感を保ちつつも、ちょうどいい関係性を声優陣と築いていることがうかがえた。
今度は声優陣の思い出のターン。
役に入りこむことで知られる白鳥さんは、アフレコ前日から相葉昴治の気分で生活していたという。そんなわけで、昴治をさんざんののしる弟の相葉祐希を演じる保志総一朗さんに、当時は「本当に会いたくなかった」し「近づきたくなかった」ことを告白。
また檜山さんは、コンラッド・ヴィスケス役の若本規夫さんが、アフレコ中に「ブラティカ……」と小さな声で練習し続けていたこと。そして、その声を実はマイクがこっそり拾っていて、まるでお経のように「ブラティカ」がリピートしていたことが思い出深いとコメントし、会場を沸かせた。
谷口監督や黒田さんいわく、「若本さんは練習熱心」「周りの演技とのバランスいい演技を探しているのではないか」とのこと。共演者が多く、また先輩声優との共演も多い作品だけにさまざまな世代、スタイルの演技が入り乱れる現場だったようである。
そして話題は当時、黒田さんはよく現場で台本を修正・追加していた、というエピソードに。
今だとメールでお手軽に修正原稿をやりとりできるのだが、当時はまだそこまでメールというツールが浸透していなかったということもあって、現場で台本を書き直す方が早い! ということで、その場で台本を修正して声優陣に手渡すということをしていたという。
「だから、ノリ重視のセリフが多かったんですかね」と白鳥さんが尋ねると、谷口監督は「ノリで書くのって大事だと思います。わざと重複表現などを入れないと、生っぽくならない」と答える。そういう制作スタンスもあってか、「黒田さんのセリフは役者としては面白い」と白鳥さんは語った。そういう意味では、シナリオで遊びまくっていたCDドラマの収録は「特に面白かった」と檜山さんも大きく頷いていた。
次の20年後の再会を願って……
本作ならではの思い出として「分厚いガヤ台本」についても語られた。もともと専門用語が多かったり、メインキャラ以外にもモブキャラクターが非常に多かったりする本作だけあって、ガヤのセリフもきちんと用意されていたという。それをまとめた台本もかなりボリューミーで、最初は20ページくらいだったガヤ台本も、最終話頃には40ページに増大。
「これからドラマCDでも録るのかと思った」「(ガヤ収録だけで)1時間かかった」と檜山さんは冗談交じりに回顧した。
イベント終盤、ファンから寄せられた質問に答える出演者一同。「『リヴァイアス』のキャラと似たような経験をしたことがありますか?」という質問に対して、白鳥さんは「思春期の頃は結構煮詰まることが多くて、その感覚が昴治とダブる」と演じたキャラクターへの共感を語るいっぽう、黒田さんは終盤、昴治が怪我のために片腕があがらなくなってしまうという展開について、幼少期の事故のために片腕が上がらなくなってしまった実兄が少なからず影響を与えていたことを明かした。身近な体験が、本作のリアルな表現を支えていたことをうかがわせる裏話に、観客席からも驚きの声があがった。
なお、トークステージ後に上映されたエピソードは第6話「ぼくのせつな」、第10話「しんじられなくても」、第25話「おれであるために」の3本。谷口監督が「檜山さんが活躍している回」という基準でチョイスしたそうだ。
檜山さんが演じたメインキャラのひとり・ブルーは、そんなに多くのエピソードに登場したわけではない。しかし、檜山さん自身はさまざまな役柄、モブを兼任していたことから、実は全話に出演している。ということで、「檜山さんが(さまざまな役柄で)活躍している」エピソードが選ばれたという。
最後に白鳥さんは、「『リヴァイアス』は20年続いた作品なので、次の20年後にも皆さんとお会いできるようにがんばりましょう」とコメント。スタッフ、ファンが再会する日を願って、トークステージは終了した。
イベント後、谷口監督に突撃インタビュー!
──今回のイベント開催にあたって、率直な気持ちをお聞かせください
谷口 まずは最初のテレビ放送の時から、20年間応援してくださっているファンに感謝いたします。ファンの皆さんがいないとこういうイベントもできないですからね。もしかしたら途中からいろんな形で本作に触れてくれた方もいるかと思いますが、そういった皆さんにも感謝いたしております。
この作品は5年後、10年後に見直した時、また異なる感想が得られるようにと思って作った作品ですので、スルメのように楽しめるかと思います。何度も味わっていただけると幸いです。
今後、30周年イベントもやれればいいんですけど、果たしてメンバーの何人が業界に残っているかわからないので、今回をひとまずひと区切りと考えています。それを皆さんと一緒に過ごせてよかったなと思います。
──谷口監督にとって本作はどういう位置づけの作品でしょうか。
谷口 引退を覚悟して作った作品です。これで最後というつもりで作りました。きっともうオファーは来ないだろうなと思っていました。
──だからこそ、あそこまで振り切った作品になったわけですね。
谷口 それもですし、そこに共感してついてきてくれたスタッフやお客さんあってのものなので、私個人がどうこうというのはおこがましくて言えません。ただ、終わった後のことは考えてはいませんでした。
──最後にファンの皆さんへのコメントをお願いします。
谷口 見始めた時は気が重いかもしれません。でも、いざ物語が動き出してしまえばそんなことは忘れてしまいます。
もしかしたら、誰に対して感情を乗せているのか、誰を主軸にして「リヴァイアス」を観るのかによって変わってくるのかもしれません。相葉昴治を主軸にして観ると確かに辛いところはあるかもしれません。でも他の人物を主軸にして観ると、また違った感想を抱かれると思います。そういう観方をするつもりで、何回も見ていただけると幸いです。
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