【サンライズフェスティバル2019特集】キャストは顔で決めていた!? 15年目にして語られる意外な制作裏話に清水愛もびっくり!「舞-HiME」トークイベントレポート

数多くのアニメーション作品を製作してきたサンライズの作品を、映画館で連日上映する毎年恒例のイベント「サンライズフェスティバル2019風月」が、2019年9月13日から2019年9月27日にかけて開催。その中で、「舞-HiME」上映イベントが9月22日、東京・テアトル新宿にて開催された。

上映前に行なわれたトークショーには古里尚丈プロデューサー、美袋命(みなぎみこと)役の清水愛さんが登壇。キャスティング裏話や、制作現場の秘蔵トークが時間いっぱい披露され、会場を盛り上げた。そんなステージの模様をレポートでお届けしよう。

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声優のパーソナリティーが反映されたキャラクターデザイン

「舞-HiME」放送当時、美袋命役の清水さんは、声優デビューから4年目ころ。本作の出演は「いろいろと勉強になった」と語る。もともと高めの地声の清水さんだが、演じる命は少年っぽい声ということで、低めの声にチューニングするのが大変だったという。そのうえ、本作ではほかのキャラクターは「チャイルド」という守り神を使役して戦っていたところ、命は大剣・ミロクで肉弾戦を行うキャラということで、その声のまま叫んだり、息を吐いたりしなくてはならかったので、毎週「喉が焼き切れる!」と思っていたことを告白した。

さらに音響監督の三間雅文さんより「かわいい声禁止令」が出ていたそうで、「これが私の地声なのに、どうしたらいいんだろう」と悩んでもいたそうだ。

そのいっぽうで古里さんは、実は大半のキャストは「この人に演じてほしい」と決め打ちでオファーしていたことが明かされた。

古里さんと清水さんは「舞-HiME」の収録が始まる前の時期に、とあるラジオ番組収録で初めて出会ったそうだが、古里さんによるとマイク前に座る姿や顔のイメージがまさに命のイメージそのままだったということで、抜擢が決定。まさかの「顔キャス」だったことに、清水さんは驚きの声を上げた。

そのほか、玖我なつき役の千葉紗子さんは、オーディションも兼ねて初めてランティスの会議室で会った時、壁にもたれかかっていたそうで、その姿がそのまま「なつきだった」という。そのたたずまいがあまりにもサマになっていたので、「彼女がいい!」と古里さんは声を聞く前に、そう思ったそうだ。後日、千葉さんは「何を話せばいいかわからなくて、壁際にたたずんでいた」と語っていたそうだが、「その思考がもうなつき!」と清水さん。

いっぽう古里さんは、命役の清水さんも、なつき役の千葉さんも、顔などがキャラクターデザインに似ているということは、それぞれの顔の輪郭、顎骨格、背丈や体型などから想像される声質が近いのでは?という顔キャスの意味を語ってくれた。

また、本作のキャスティングについて古里さんは「舞-HiME」以前は、主に男児向けキッズアニメを手がけていたことから、あまり萌え系の声優を知らなかったという。そのため、いろいろな萌え系作品を見て勉強したという。また、以前の作品で起用した、ゆかなさん、木村亜希子さんといった顔ぶれを引き続き起用。「GEAR戦士電童」では北斗役を演じた進藤尚美さんは京都出身ということで、京都弁のキャラクター・藤乃静留を作ったとのこと。また「キャラクターデザインの久行宏和くんに、静留役には進藤さんを起用したいと話していたので、反映されたデザインになっているのかな?」という制作裏話を披露した。

珠洲城遥(すずしろはるか)役の柚木涼香さんは、古里さんが以前に手がけたアニメ「星方天使エンジェルリンクス」の主人公・李美鳳(リ・メイフォン)を演じていたが、当時はまだ声優としてそこまでキャリアがあったわけではなかったという。そんな現場で、素足でアフレコに臨む彼女の姿に熱意を感じたと振り返る。「率直でド根性な性格が遥というキャラクターにあっているということで、キャスティングした」といった具合に、キャストとキャラクターの深い関係についてのエピソードに会場は驚きの声に包まれた。

音響監督の三間雅文さんは当時、非常に多忙だったそうで、本作の収録に割けるスケジュールは限られていたという。そこで、三間さんのスケジュールに合わせて、実に20人以上の人気声優がスタジオに集合。なんと「抜き録り(スケジュールの合わないキャストのみ、別日に収録すること)」はなかった、というから驚きだ。

やはり「実際に顔を突き合わせて演技をするほうが、感情が演技に乗る」と清水さん。「本当に恵まれた収録現場だった」「今思い出しても、集まった子たちが一生懸命芝居してくれて、嬉しかった」と古里さんも回顧した。

また、数少ないマイクをそれだけの人数のキャストでシェアすることになるため、次々とマイクの前にキャストが滑り込む様子が、まるでダンスを踊ってるようだった、と振り返る2人。清水さんが、その時の体勢を再現して会場をわかせる一幕もあった。

そんな中、清水さんは「ひとつ懺悔があります」と切り出す。

当時、多忙のあまりほとんど寝る時間がなかったという清水さん。連日夜遅くに帰宅し、それから翌日の収録の台本チェックをするという日々だったそうだが、ついに「舞-HiME」最終回の収録前日、台本片手に寝落ちしてしまったという。結局半分程度しかチェックできないまま本番に突入してしまったことを告白。

そんな事実を初めて知った古里さんだが、「全然気づかなかった」と回答。その理由として、「(清水さんを含め、全キャストが)キャラになっていたから」と語り、改めて本作のキャストがベストな布陣だったことを確認した。

そのほか、2019年10月8日から10月22日まで、SHIBUYA TSUTAYA、TSUTAYA BOOK STORE五反田店の両店舗にて「舞-HiME」ポップアップショップを展開することが発表された。

15周年を迎えての新たな展開に対して、「15年経っても、お客さんに集まってもらえるし、オリジナル商品を作ってもらえるし、幸せな作品に携われたことを嬉しく思います」と古里さんはコメント。清水さんも「懐かしい話を皆さんの前でできる場を設けていただき、ありがたい」と笑顔で語り、トークステージは終幕となった。

古里さんいわく、「まだまだ話せていない裏話はある」そうなので、またの機会を楽しみにしたい。

イベント終了後、古里プロデューサー&清水愛インタビュー!

──イベントの感想をお願いします。

清水 古里さんとお会いするのもしばらくぶりで、楽屋でも懐かしいお話をたくさんしたんですけど、それを聞きに来てくださる「舞-HiME」ファンの皆さんの前でもお話しできたのが嬉しかったです。

古里 まだまだ5時間、6時間でもお話しできるくらいネタがあるので、逆に45分のステージにまとめるのが大変でしたね(笑)。

当時、清水さんとコミケなどいろんなイベントに出たり、ラジオに出たりしていたので、そういった意味でリアルに懐かしいですよ。あたりまえだけど「舞-HiME」が終わってからは、一緒に行動することがなかったので。

清水 うん。

古里 これは今日ステージでは話せなかったんですけど、「舞-HiME」放送時、同じように女の子のバトルものアニメが複数、ほぼ同タイミングで放送されていたんですよ。偶然のタイミングですがびっくりしましたね。同時に「やっぱり来たか」と思いましたね。時代の要請ってあるんですよね。

──お2人にとって「舞-HiME」は、どういう作品ですか?

清水 デビューして初めてやるような役をやらせていただいて、本当に勉強になったのがアフレコの時で、今になっては「あれ好きでした」「青春時代に観てました!」って言ってもらえることが多い作品なので、誇らしいとか嬉しいという気持ちのある作品です。

古里 僕の位置づけは明確です。「ヒット作を作る!!」「作れないならサンライズを辞める!」という覚悟だったんです。それまでは玩具と連動したアニメを手がけることが多くて、それ自体は大好きな仕事だったのですが、全て自分で企画から予算集め・制作・宣伝をするオリジナルアニメを作ってみたかったんです。自分を試すと言うか、長年一緒にやってきたスタッフと面白いアニメ、ヒット作、見てくれるお客様の心に残るアニメを作りたかったというのが本音です。


清水
 「絶対にヒット作を作るぞ」となって、今までこれなら売れるだろうという鉄板企画じゃなくて、新しいことをやろうとしたのはなぜなんですか?

古里 鉄板ですか? サンライズの鉄板は「SFロボットアニメ」と言うことですか? それらの作品はすでにほかのスタジオさんがバシバシ作っていました。

そんな中でサンライズ内の作品群を見回し、また世間の時流を見て選んだのが、少女を主役にしたアニメだったんです。時は「萌え」。これは1999年に「星方天使エンジェルリンクス」をやった時から感じていました、絶対に次はこれが来ると。それをサンライズの持っているテクニックとノウハウで作り直すと。だから「舞-HiME」には変形合体・超能力といった要素が入っているんです。ロボットには乗らないけど、小原監督は「舞衣ちゃんはガンダムを拾ってしまったがゆえに、乗りたくもないのに乗ってる」ってとらえていました。そのうえで、サンライズで育ったロボットアクションを描きたいクリエーターに「萌え」を「燃え」に変えて、新しい作品を作ってもらったのです。と言えばカッコいいですが、実際はスタッフたちが「萌え」がわからないので「燃え」になったわけです……(笑)。

結局「サイバーフォーミュラ」「電童」などといったサンライズ流のレースバトル、ロボットアクションなど。そして「エンジェルリンクス」で培った美少女ヒロインものの融合なんです。でも「エンジェルリンクス」は主人公の女の子がひとりだった。これがミスだったと思うんですよ。当時(1999年)の時流は数名所属のアイドルグループ。つまり「モーニング娘。」だったんです。モー娘。を研究して、主役の人数を増やしていくことでいろいろ勉強しました。「電童」は主役2名。「クラッシュギアターボ」では主役4人チーム。「マシンロボレスキュー」では11人の男女のグループを作って、最終的に10人以上の女の子を用意するアニメを作ることを決めたんです。

2000年代、アイドルグループはモー娘。から「AKB 48」が来て、想定以上にグループ内の人数が増えていきました。そして、アニメのほうも、大人数の少女が活躍するアニメが増えていきました。「舞-HiME」は、それらの中で少しは爪痕を残せたのかな?と思っています。そして、わたしがからんでおります他社制作の作品ですが「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」へと連綿と続いているなと感じるのです。ちなみに、宣伝です。

──そういうお話をうかがうと、「舞-HiME」という作品が古里さんにおける大きなターニングポイントとなる作品だというのがよくわかります。それでは最後にファンの皆さんにコメントをお願いいたします。

清水 ここまできたら、一生愛してください! この先もずっと、子孫にも「舞-HiME」というアニメがあるということを伝えてください。

古里 僕は、常に何らかの新しいことに挑戦しないともったいないと考えています。サンライズの持つ鉄板アニメに新しいことを取り入れる、まさに新たなジャンルの開拓です。そういう思いで「舞-HiME」を作ったので、それが今も続くサンライズ作品のアイドル路線の始まりになれたという意味では幸せに思います。サンライズにいた時、社長に常に言われていたのは、「ガンダムに頼るな!」。そして、「10年持つオリジナル作品を生み出せ!」でした。

2000年当時、サンライズはさまざまなジャンルのオリジナル作品がありました、ガンダムシリーズを始めSFアクション物、ロボット物、超能力物と各スタジオは素晴らしいアニメを作っていたのです。後発の第8スタジオの僕とスタッフが活躍できるジャンルとして選んだのが、それこそ「舞-HiME」を始めとしたオリジナル美少女萌え燃え系アクションアニメでした。

それが15年経って、今もなおキャラクターやストーリーが愛されているとしたら、記憶に残るオリジナルアニメを作れたのかな?と思いますし、それこそプロデューサー冥利に尽きる。そのひと言に尽きますね。

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