【サンライズフェスティバル2019特集】獣神サンダー・ライガーが劇場に降臨! マスクマン・ライガー誕生の秘話を語りつくした「獣神ライガー」トークイベントレポート

数多くのアニメーション作品を製作してきたサンライズの作品を、映画館で連日上映する毎年恒例のイベント「サンライズフェスティバル2019風月」が、2019年9月13日から2019年9月27日にかけて開催。その中で、「獣神ライガー」上映イベントが2019年9月23日(月祝)、東京・テアトル新宿にて開催された。

上映前に行なわれたトークショーには鹿島典夫監督、新日本プロレスの獣神サンダー・ライガー選手が登壇。秘蔵の裏話が軽快な口調で語られ、会場を盛り上げた。
そのイベントの模様をレポートしよう。

なお、サンライズフェスティバル特集を記念して、来場者特典「獣神ライガー」ポスターを抽選で5名様にプレゼント!

詳細は以下のリンク先の記事からご確認いただきたい。



「獣神ライガー」は永井豪さん原作、サンライズ製作で1989年に放送されたTVアニメ。同作とのタイアップで1989年、マスクマンとしてマットに“デビュー”したのが獣神サンダー・ライガー選手だ。今回のイベントは「獣神ライガー」、そして獣神サンダー・ライガーのデビュー30周年にして、初めて開催されたアニメ「獣神ライガー」のトークイベントとなる。

呼びこみを受けて、まずは鹿島典夫監督が登場。続いて獣神サンダー・ライガー選手が入場テーマ「怒りの獣神」とともに入場すると、会場からは歓声と手拍子が起こった。ライガー選手はマスクだけでなく、全身コスチュームと銀色のマントを身に着けた完全武装でトークに臨んだ。

ステージに上がったライガー選手はイベントの前日、新日本プロレス神戸大会において“鬼神ライガー”として鈴木みのる選手を襲撃した話をみずからネタにすると、マスク越しにもわかるほど上機嫌で楽しそうに数々の秘話を明かしてくれた。

作品が生まれた経緯について鹿島監督は、まずはサンライズ企画部と原作者・永井豪さんの間で企画が立ち上がったことを説明。永井さんのメカコンセプトやキャラデザインなどがあり、そこから先のストーリーは監督たちが中心に作りあげた。気になる新日本プロレスとのタイアップは当初企画になく、プロジェクト始動後2、3か月たって、「ライガー」がプロレスラーとしてデビューすると言われたとのことだ。



いっぽう、ライガー選手は当時イギリスのリバプールで海外修行中。会社(新日本プロレス)から国際電話で「(マスクマンを)やる気はあるか?」と聞かれたライガー選手は、これを快諾。「当時からマスクマンになりたかった。自分の素顔が嫌だったから、とにかくマスクをかぶれるのが嬉しかった」と意外な理由を明かした。「獣神ライガー」は怒りがテーマの作品だが、ライガー選手は「いろいろ教えてくれたアントニオ猪木さんにも、怒りを忘れちゃダメだといつも言われていたんです」と作品への共感を示した。マスクマンとしての活動については「マスクをかぶっているのは楽しいので、マスク越しでも感情が出てると思いますよ。ファンの皆さんに言うのも変ですが、プロレスは見るよりやるものですよ」と、マスクマンレスラーとしてのやりがいと充実を語っていた。

ライガー選手は、「獣神ライガー」放送開始後に帰国したため、本放送は途中から見たという。その時の印象は「ライガーがビルより大きくてびっくりした」で、このギャップは生身では埋められないから、好きにやろうと吹っ切れたそうだ。

「獣神ライガー」では、第1話でいきなりヒロイン的な立ち振る舞いをするキャラクターが殺される、という衝撃の展開がある。鹿島監督はその理由について、「小学生の子供が、そんなに簡単に正義の使者になるかという疑問があったんです。友達を救いたいという子供なりの気持ちがあって、それを殺されてしまった怒りの感情を、ライガーの怒りに転化できればと思ったんです。当時はクレームが来ましたが、きっと永井先生のダーティーヒーロー精神、怒りが作品の根底にあったのだと思います」と明かしていた。

ここでトークは、マスクだけでなく全身にバトルスーツをまとった、プロレスラー「獣神サンダー・ライガー」のルーツについての話題に。マスクマンになることが決まったライガー選手だったが、会社からは特に資料やコンセプトが示されることもなく、ほぼ本人に丸投げ状態。「だから自分で、マスク職人さんとああでもないと相談しました。後ろに髪を出してかっこいいデザインも研究しました。コスチュームの生地から相談したんです。だからこそ、ライガーには思い入れがあります」。かなりオリジナルなテイストも入れていったライガー選手だったが、永井豪さんは笑顔でこれを許可。ライガー選手は「先日、永井先生とお食事をさせていただいた時に、引退してからもライガーでいていいよと言っていただいたんです。自分がプロレスラーとしてデビューすることが決まってから、作品をより肉体同士がぶつかるほうに寄せてくださったそうです」と感謝の気持ちを語っていた。

「獣神ライガー」では、獣神ライガーは物語の進行によりファイヤーライガー、サンダーライガーと進化していく。獣神ライガーの初期案は永井豪さんがデザインしているのだが、実はサンダーライガーはキャラクターデザインの内田順久さんがデザインしていたことを鹿島監督が明かしていたこの日、客席に観覧していた内田さんは、壇上の監督からコメントを求められ、「永井先生からは悪のほうにイメージを持っていかないでくれと言われました。最初の案は凶悪すぎるとリテイクされたんです」。鹿島監督によれば、頬のラインがえぐれているデザインは悪役に見える、というのが永井さんのこだわりだったそうだ。

いっぽう、途中でライガーがサンダーライガーへとデザインが変わることを知らなかったライガー選手は、渋る職人さんを説き伏せて、あわてて新しいデザインのマスクを用意したそうだ。なお、デビュー当時の「獣神ライガー」は地毛を出していたが、「中の選手の髪の状態で見た目が変わらないほうがいいんじゃない?」という佐々木健介選手のアドバイスで、マスクと付け髪が一体化したデザインになったとのこと。 

ライガー選手からは、「最初はライガーのライバル(魔竜王ドルガ)がプロレスデビューするアイデアもあったんです。でも龍だから尻尾があって、それはレスラーとしてはかっこわるいだろうとボツになりました」との裏話も明かされた。

今年2019年で30周年を迎えたアニメ「獣神ライガー」とプロレスラー「獣神サンダー・ライガー」。鹿島監督は「レスラーとしての“ライガー”は1年ぐらいしたら消えているのかな、と思っていたんです。だからアニメの制作がようやく落ち着いてから、何回か試合を見に行きました。でもそれが、もう30年。そのことを僕はすっごく感謝しているんです。今日こうやって上映会ができたのも、ライガーさんがこの名前を残してくれたからです」と感謝を伝えた。

ライガー選手は、これまで活動を続けてこれた理由について、「マスクも含めて、自分も一緒に作り上げた愛着があった。それと素顔で試合をするのがとにかく嫌で続けられた」と語って会場を笑わせていた。

ここで、司会のDJ急行さんより、サプライズで原作者・永井豪さんからの手紙が読み上げられたので紹介しよう。

●永井豪先生の「獣神ライガー」(獣神サンダー・ライガー)30周年記念コメント

「私のアニメから生まれたプロレスラー、獣神サンダー・ライガーが30年の長きに渡り、大活躍してくれたことは本当に嬉しい。元のアニメキャラを進化させ、次々と新しいマスクを作り出し、独自のレスリングスタイルでファンを魅了し続けたライガーさん。時には命に関わる怪我も乗り越え、リングに復帰する負けじ魂に感動した。プロレス史上稀にみる名選手だ。これほどの選手に関われたことは、私の最高の喜びだった。30周年、おめでとう」

しんみりと聞いていたライガー選手が「温和でやさしい永井豪先生らしい文章だと思います。勝手にツノを増やしたりしても笑って許してくれて、いつも身体を気遣ってくれます」と語ると、鹿島監督もうなずき、「最初、あの『デビルマン』の永井豪さんだと思ってびびっていたら、ぱっと手を広げて迎えいれてくれたんです。制作も信頼して任せて、応援してくれました」と永井さんの人柄を語っていた。

2020年1月4日、1月5日の新日本プロレス東京ドーム大会で、プロレスラーとしてのライガー選手は引退する。引退にまつわるトークでは、アニメ最終話でライガーがドルガと合体してケンタウロスのようなフォームの「善神アーガマ」に変化ことから、ライガー選手から「最後の試合はケンタウロスになれるか、職人さんにまた相談してみようかな?」とのアイデアも飛び出した。引退試合の意気込みについてライガーさんは「(引退試合でも)普段通りでいいんです。いつも通り体調を整えて試合をやろうと思います。だからファンの皆さんも、日常の中で試合を楽しんでほしいです」とおだやかに語っていた。

トーク後には、来場したファンに向けた抽選会も。憧れのライガー選手との対面にファンが大感激したりしながら、なごやかにイベントは幕となった。



鹿島典夫監督、獣神サンダー・ライガー選手、イベント後コメント

──今日のイベントの感想をお願いします。

鹿島監督 実はライガー選手と直接対面するのは今日が初めてだったんです。だからとにかく、お会いできたことが一番の収穫でした。たくさんのファンの方が来てくださって、ありがたかったです。

ライガー これから上映会なんですが、実は(この日上映される)最終回はまだ見たことがないんです。だから僕もファンの皆さんと一緒に楽しみたいと思います。まだライガーとしては3か月現役生活があるんでね、がんばっていきたいです。

──「獣神ライガー」という作品がご自身にとってどういう作品か、改めて教えてください。

鹿島監督 こんなに世の中に、皆さんの記憶に残る作品になるとは思っていませんでした。それは、プロレスラーとしてのライガーさんがこれだけ活躍し続けてくれたことが全てだと思います。そういう作品に出会えて、本当に幸せだと思っています。

ライガー 僕自身ですね。ライガーとして30年、やってきてます。だからアニメのライガーと自分のライガーを分けるんじゃなくて、ライガーという存在のそれぞれ一部分だと思っています。

──主題歌の「怒りの獣神」はライガー選手の入場曲であり、勝利した時に流れる曲でもあるわけですが、やはりこの曲を聴くとテンションが上がるものですか?

ライガー 上がりますね! 外国のリングで試合をしても、海外のファンが日本語で歌ってくれるんですよ。モヤセモヤセ~って。すっごく嬉しいです。

鹿島監督 ライガーさんの入場曲を聴くたびに、本当にこの曲を主題歌にしてよかったと思うんです。普通は曲が先にあって、あとから詞を合わせる(曲先)ことが多いんですが、先に「獣神ライガー」のテーマを込めた詞を作って、そこに曲を乗せて作りました。

ライガー そうだったんですね、ありがとうございます!

鹿島監督 それをこんなに長く使ってくれて、本当に感謝しています。

ライガー 自分の入場テーマ曲は、これしか考えられません。

──最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

鹿島監督 皆さんの記憶に残って、まだまだ「ライガー」という存在が続くように宣伝してください!

ライガー アニメのライガーも、プロレスラー獣神サンダー・ライガーもよろしくお願いします。まだまだ、走ります!

(取材・文/中里キリ)


■抽選で5名様にサンライズフェスティバル来場者特典「獣神ライガー」ポスターをプレゼント!

詳細は以下のリンク先からご確認ください!

おすすめ記事