アニメライターが選ぶ、GW公開中の必見映画「響け!ユーフォニアム」から「ノルシュテイン」まで
ゴールデンウィークの連休中に見逃せないアニメ関連の映画をレビュー。京都アニメーション制作の「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」、毎年お馴染みの「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」、29年ぶりに復活した「東映まんがまつり」、劇場版第23弾「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」、ロシアの巨匠のドキュメンタリー「映画 ユーリー・ノルシュテイン 外套をつくる」を紹介します。
北宇治高校吹奏楽部を描いた「響け!ユーフォニアム」シリーズの最新作。主人公・黄前久美子は2年生に進学し、新入部員の指導係を任されたものの、1年生は一筋縄ではいかない曲者揃い。個性的な後輩たちとの交流を経て、久美子自身も少しずつ変わっていく。
本編では全国大会金賞を目指す吹奏楽部の様子に加えて、オフショットをとらえた映像がしばしば挿入される。部員たちがスマートフォンで撮ったと思われる縦長の映像は、手ぶれやハレーション混じりではあるが、それゆえに青春の瑞々しさが伝わってくるほど。日記映画という言葉さえ思い出すような、今ここしかない時間が切り取られている。昨年公開された「リズと青い鳥」の楽曲がフル演奏されるのもうれしいポイントだ。
映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~
「クレヨンしんちゃん」映画第27弾はオーストラリアが舞台。少し遅めの新婚旅行に出かけた野原一家だったが、ひろしが謎の仮面族にさらわれてしまい、一家離散の危機に陥る。はたしてしんのすけたちは、ひろしを助け出すことができるのか。
夫を取り戻そうと奮闘するみさえが凄まじく、ひまわりに授乳しながら危機を乗り越える姿はコミカルでありながら、なぜか心を揺さぶられてしまう。クライマックスで披露する懐メロは選曲も含めて印象的。その高らかな歌声を聴いていると、野原一家をもっとも長く演じてきたのは、みさえ役のならはしみきだという事実に気付かされる。よくわからない言語を喋り続ける大塚芳忠や、意外な役柄の悠木碧、11年ぶりに出演する小島よしおとキャスティングの妙も光る一作。
東映まんがまつり
東映動画(現・東映アニメーション)のオムニバス興行シリーズ「東映まんがまつり」が29年ぶりに復活。「うちの3姉妹」「爆釣バーハンター」「りさいくるずー」「おしりたんてい」の短編4作品をラインアップした。シリーズの復活にあたり「本当の子ども向けの映画をみんなで楽しんでいただきたい」とのコメントが発表されていたが、蓋を開けてみれば4作すべてにおしっこ、おなら、ウンコなどの下ネタが散りばめられており、「本当の子ども向け」の意味を考えさせられる内容となっている。
敵が三角形のビーム攻撃を繰り出してくるという、東映のロゴマークを思うと意味深な「爆釣バーハンター」も気になるが、注目は絵本が原作の「おしりたんてい」だ。テレビシリーズと同じように、本編に隠された「おしり」を探すという参加型のギミックがあり、作品から一瞬も目が離せない点において、実は映画向けのタイトルである。「まぁ表層批評を学んだ私なら訳ないだろう」とアニメ探偵を気取っていたが、これが意外や難しい。ストーリーそっちのけでおしり探しに悪戦苦闘していると、「見つけた!」という子どもたちの声が劇場のあちこちで上がりはじめる。笑顔でスクリーンを指差すキッズを横目に、結局おしりを見つけられないままカットは切り替わってしまう。なぜだ! おれの方がアニメを沢山見てるはずなのに! 「こんな肛門期丸出しの子どもに負けるなんて……」と無力感を味わえる。
こちらの舞台はシンガポール。世界最大のブルーサファイア「紺青の拳」をめぐる陰謀にコナンたちが巻き込まれてしまう。事件が起きるのはシンガポールのランドマークであるマリーナ・ベイ・サンズ。ビルに巨大な船が乗ったインパクト抜群の外観をはじめ、観光地がていねいに描写されており、まるで高級リゾートを堪能しているような気分に。
空を自由に駆け巡る怪盗キッドというキャラクターは美しい景色をよりきらびやかにしており、劇中で英語のセリフがふんだんに使われているのもシリーズで初めて海外を舞台にした本作ならでは。ゲストキャラは400戦無敗の空手家・京極真。「コナン」には蘭をはじめ腕っぷしの強い登場人物が多いが、異次元のパワーがどう表現されているのか注目!
映画 ユーリー・ノルシュテイン 外套をつくる
ロシアを代表するアニメーション作家 ユーリー・ノルシュテインの真髄に迫るドキュメンタリー映画。ゴーゴリ原作の「外套(がいとう)」を30年以上の歳月にわたって作り続けている巨匠だが、映画には実際に撮影している場面はほぼなく、ノルシュテインのインタビューと過去作品の映像を中心に構成されている。多くのファンが完成を待ちわびていることを責められて、「いざ撮り始めたらすぐに終わる」や「私より早撮りできる監督はいなかった」と言い連ねる姿に、「この作品のタイトルは「ユーリー・ノルシュテイン 明日から本気出す」のほうが相応しいのではないか」ととまどうものの、「この30年、『外套』のことだけ考えてきた」という言葉に偽りがないことは、スタジオの壁にびっしりと貼られた大量のスケッチから一目瞭然だ。
学生時代にノルシュテインの講義を受けて握手をしたことがあるが、180センチはゆうに超える体躯とがっしりとした手が記憶に残っている。さらに「なんで『十兵衛ちゃん』で声優やったんスか?」というぶしつけな質問にもていねいに答えてくれて感動したものだ。本編ではノルシュテインの大きな手が、小さな切り絵を重ね合わせてキャラクターを作り出すシーンが収められている。アニメーションが生まれるこの瞬間を垣間見れば、「外套」への期待がいやがうえにも高まっていく。
(文・高橋克則)
(C) 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
(C) 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2019
(C) 2019東映まんがまつり製作委員会
(C) 2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
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