AKB48から「荒野のコトブキ飛行隊」ケイト役へ――アイドルから一念発起、背水の陣で声優の門を叩いた! 仲谷明香インタビュー【アイドルからの声優道 第4回】
「アイドル」という別世界から飛び込んできた人々に話を聞き、「声優」という職業を別視点から切り取ってみる連載企画「アイドルからの声優道」。
第4回となる今回は「AKB48」出身の仲谷明香さんにご登場いただいた。
渡辺麻友さん、柏木由紀さんらとともに第三期生としてAKB48入りした仲谷明香さん。「非選抜アイドル」(小学館)、「非選抜だった私を救った48のことば」(中経出版)といった自叙伝を出版するなど、アイドルにとどまらない活躍を見せた彼女だったが、2011年には秋元康さんと河森正治さんがコンビを組んだことで話題となったアニメ「AKB0048」の声優選抜メンバーに選ばれるなど、声優としての片鱗もすでに見せている。2013年にAKB48を卒業し、声優へと転身後、最近になって「アイドル事変」(桃井梅)、「CHAOS;CHILD」(香月華)などに出演を果たし、前クールでは「荒野のコトブキ飛行隊」のケイト役を演じきった。小さいころから声優を目指していた彼女は、どのような気持ちでAKB時代を過ごし、今の自身を見つめているのだろうか。
実力がないなら上乗せするつもりでAKBに
――声優を目指したきっかけは「ポケットモンスター」だったとお聞きしました。
仲谷 そうなんです。ちょうど5歳の時に(アニメの)「ポケモン」が始まって。見ていたら子供ながらに、中の人というか、ピカチュウをするお仕事みたいなものがあると思ったんです。それでお母さんに聞いたら、声優という職業があって、ピカチュウの声を演じている人がいるということを教えてくれました。それで、「いつかピカチュウになる」って宣言して(笑)。それから声優についてだったり、オーディションのことだったりをマンガ喫茶で調べ始めました。でも、オーディションを受けられるのは早くても12歳くらいだったので「まだまだ受けられないなー」って思いながら何回もマンガ喫茶に通って、って感じでした。子役というものを知らなかったので。
――それからずっと声優を目指して? ほかの仕事に憧れることはなかったですか?
仲谷 なかったですね。でも、卒園式のアルバムにはなぜか「お花屋さんになりたい」って書いているんですよ。秘めていたのかもしれませんね。
――「ピカチュウになる」ことと声優、つまり「演じる人になる」ことには少し違いがありますが、そのあたりで違いを感じることはなかったですか?
仲谷 そう言われると不思議なんですけど、ずっと「声優になったらピカチュウになれるんじゃないか」という単純な考えでした。でも、ピカチュウになれないことは、大きくなってなんとなくわかったんですよ。ずっと同じ声優さんがやっているので。
――大谷育江さんという大きすぎる存在が。
仲谷 それでも「声優になればピカチュウにも近づけるかな」みたいな考えで。だから、ずっと夢は声優でした。
――声優になるために何か具体的に行動されましたか?
仲谷 AKBに入ったのが14、5歳だったんですけど、その前に一度養成所に入りました。でも、ほんのちょっとで辞めてしまいました。
――声優になるための授業は楽しかったですか?
仲谷 楽しかったんですけど、毎日アニメという「すごいお芝居」を見ているので、養成所にいる人たちの演技を見たとき、「もっと上に行きたい」って思ったんですよ。すごく偉そうなんですけど(笑)。基礎が大事だと思って入ったんですけど、もっともっとお芝居の技術を吸収したいという気持ちになってしまって。そんな時、お母さんからもう学費を払えないと言われて、辞めてしまいました。
――周囲のレベルに失望したのかと思うんですが、それこそ自分はもっとできる自信があったということですか? 演技ができなくて悩むとかはなく。
仲谷 いえ、自信というか、ただ「上に行きたい」という欲が強くて。
――内から情熱が湧いてくる感じ?
仲谷 そうそう。それが先に出てしまっていました。でも、確かに悩むことはなかったですね。
――そのあと、AKBというルートから声優を攻めようと考えたのはなぜですか?
仲谷 その頃、平野綾さんとかがすごく話題になっていて。
――AKBのオーディションを受けたのは2006年なので、まさに「涼宮ハルヒの憂鬱」がアニメ化された年ですね。
仲谷 あと、田村ゆかりさんや堀江由衣さんとかがすごい人気で、アーティスト活動も声優も、という方がいっぱいいらっしゃったんです。それを見て、「ダンスも歌もできたほうが有利だ」って思いました。そこからですね。
――演技経験を積むという方向は選ばなかったんですね。
仲谷 周りを見て、アニメを見て、自分は特段うまくもないとは知っていたんです。だったら武器になるものを作りたいと思ったんですね。演技がうまくなくても、歌とダンスを上乗せできたらもしかして……という考えですね。
――AKBに入るとき、何年で選抜メンバーに、とか、何年で声優に、という計画は立てていましたか?
仲谷 実はメインメンバーになるつもりはなかったんです。上に行けるなら行きたいとは思いましたけど、(歌やダンスの技術を)吸収することが目的だったので。だから、3年くらいで覚えて……とは思っていました。
「AKB0048」の声優に選ばれなかったら辞めるつもりで
――実際に入ってみていかがでしたか? アイドル活動が楽しくなってくるとか。
仲谷 最初は人前に出るのが本当に苦手で、お腹が痛くなって「(公演に)出たくないです」としょっちゅう言っていました(笑)。それが「楽しみ」に変わったのはいつくらいかな。でも握手会か何かで、「僕はずっと応援してるから」みたいに言われたとき、「よし、じゃあこの人たちのためにがんばろう」と思いました。
――3年を超えて、倍の年数所属した理由はそのあたりですか?
仲谷 応援してくださる方も確かに影響しましたけど、でも、ステップアップできていない、ジャンプできる状態じゃない、と思ったのでずっといました。
――逆に、やめる直接的なきっかけは?
仲谷 「AKB0048」をやらせていただいたとき、温かい場所から抜け出して声優さんたちみたいにひとりでやってみたい、と思ったんです。あと、一緒にお仕事したいという気持ちもありました。
――それはどういうところで?
仲谷 単純に皆さんがいい人だったので(笑)。いろいろ教えてくださったり、メンバーに対してやさしかったり。
――実際に声優仕事を体験し、難しさは感じませんでしたか?
仲谷 それはもう、マイク前の立ち位置から本のめくりから全部で。マイクワークは、ずっと声優さんのお尻を見ながら「すごいなー」って思ってました。でも、一番苦労したのは、どうしてもセリフが軽く聞こえてしまうときが多かったことですね。一応かわいいキャラクターだったので声を作って挑んだんですけど、感情が乗らないというか「この子はこういう感じかな」という演じているフィルターが自分の中にできてしまって。声を作っています、という感じに聞こえると音響監督さんに言われました。ひとりで居残りというのもやりました。
――かなり指導されることが多かったですか?
仲谷 そうですね。でも、音響監督さんも監督も誘導というか、こうしろというよりは「こうしたらいいんじゃない?」みたいな優しい言い方でした。それは声優さんたちも同じですね。
――そのあたりはやはりお客様扱いですね。受けたアドバイスで印象に残っていることはありますか?
仲谷 あるメンバーがどうしても言えないセリフがあったとき、共演していた先輩声優さんが「次の文字を意識すると言えるよ」とおっしゃったんです。たとえば、「せられる」の「られ」が言えないときは次の「る」を意識して、というようなことを言ったらスッと言えてしまって。「おぉ、メモ、メモ!」ってなりました。それはすごく覚えています。
――「AKB0048」の声優選抜メンバーがオーディションで選ばれると知ったときはどんな気持ちでしたか?
仲谷 私のためのオーディションだと思いました。声優になりたいと言い続けていましたし。と同時に「もう次はないな」という感覚でしたね。ここで選ばれなかったらもう(AKBを)辞めるつもりでした。でも、最初のオーディションテープは握手会会場に車で到着したあとの静かになった車内で録ったんですよ(笑)。スタッフさんが、「じゃあ録るから。これオーディションだからがんばってね。せーの、はい」って。
――なかなか実力の発揮しづらい環境ですね。
仲谷 そうですね。でも熱意だけは、と思った気はします。
――参加したメンバーも声優志望だったりアニメ好きだったり、そういう人たちが選ばれた感じはしました。
仲谷 そうですね。やる気のある人が集まったな、とは思っていました。しゃわこ(=秦佐和子)とか、まおきゅん(=三田麻央)もアニメが好きなのは知っていましたし、(佐藤)亜美菜もそうだったので。
――当時、グループ内で声優を目指していることについて誰かに相談することはなかったですか?
仲谷 全然なかったです。自分で考えるタイプだったので。人から相談を受けることはあっても、自分のことはあんまり相談しなかったですね。
――AKBを辞めるということも自分だけで決めて?
仲谷 はい。卒業する直接のきっかけ、というオーディションがあって、それは応募要項に「事務所に所属していない人」というのがあったんです。それを受けるために辞めることにしました。
――どなたに報告したんですか? 秋元さんですか?
仲谷 秋元さんにはメールで(笑)。会う機会がなかったので。(AKSの)社長には、ライブに来てくれたときに話をしました。「卒業したいんだって?」みたいに言われて(笑)。もともと声優になるのが夢だということを社長は知っていましたから、「なら行ってこい」ぐらいの感じでしたね。
あんまり考え込まない性格で度胸がある
――AKBを両立できる形でオーディションを受け続けるという可能性はなかったですか?
仲谷 レコード会社さんが「こういうオーディションがあるよ」って紹介してくれることはあったので、できるならという気持ちもありました。でも、全部捨ててやりたいという気持ちになったんですよね。だから、そのオーディションを受けたんだと思います。それに、そのオーディションは合格すれば事務所に入れるものだったので。
――逆に不合格のときのことを考えると、AKBを辞めてから受けるというのは背水の陣ですね。
仲谷 でも、落ちたら落ちたで自分で営業するとか知り合いづたいに探すつもりでした。あと実は、そのときの事務所に入ったのは、レコード会社にかけあってあげるとか、俺の知り合いがいるからいつかソロデビューさせてあげる、という謳い文句があったからなんですけど、結局何も実現しなくて。だったら自分で動こうと思って、見つけてきたオーディションだったんです。
――アニメのオーディションは当然声優事務所に行くので、芸能事務所ではあってもなかなかオファー自体を見つけることが難しいですよね。
仲谷 うんうん、そうなんですよ。でも、やりようはあったんじゃないかと思うんです。足を使って回るとか。でもそれもなかったので。意地ですね(笑)。
――できないならできないと言ってほしかった?
仲谷 そうですね。「やりませんか」とも言ったんですけど、「ちょっとスケジュールが……」みたいに言われたので(笑)。
――声優学校に改めて入るという考えはなかったですか?
仲谷 なかったですね。さっきも話したように基礎が大事というのはわかっていましたけど、同じようなお芝居になっちゃうような気がして……。ごつごつしている自分がいろいろな環境の中で丸く削られていく、というのがいいなと思っていました。なので、また入ろうとは思わなかったです。
――AKB時代に女優のレッスンを受けることはあったんですか?
仲谷 全然なかったです。歌のレッスンをたまーに入れてくれてたりはしたんですけど。お芝居についてはなかったです。
――失礼な言い方になりますが、その状態で自分の未経験さへの不安や恐れを感じないというのは度胸がありますね。
仲谷 あんまり考えない性格だとは思います(笑)。「やってみなきゃわからない」というのがあるんですよね。AKBにいたとき、度胸はすごくついたんですよ。歌とダンスだけではなく、いろいろな経験をさせてもらったので。
――自分に対する自信が持てたということですか?
仲谷 自信というか、経験を全部集めるとひとつ大きな玉ができるので、これを持って飛び出そう、という感じでした。
――「仲谷明香」という何かができた感覚ですか?(笑)。
仲谷 そうそう(笑)。
――AKBに入ったことでよかったことというとほかにどんなことが?
仲谷 一番はその度胸だと思いますけど、あとは、緊張したらもったいないという心?(笑)ライブで緊張して全然うまくできなかったとき、いい場所で自分を生かせないのは「もったいない」と思ったんですよ。性格がケチというか(笑)。
――大きい舞台に立てるというのは貴重な経験だと思います。そういう性格ならそれ以降は緊張や気負いはなかったですか?
仲谷 なかったですね。お芝居をやったりオーディションで落ちたりしていて、できないことはできないということもわかっていたので。逆にやれることは全部全力、という感じでいました。
――AKBを辞めるきっかけになったオーディションは不合格だったということですが、辞めたあとは苦労しなかったですか?
仲谷 苦労? うーん、適当というかポジティブなのであんまり……(笑)。とりあえず事務所を探そうと思って知り合いに連絡はしてみたんですけど、(AKSの)社長がアミュレートさんを紹介してくれたんですね。でも多分、知り合いというわけではなく、わざわざ探してくれたんだと思います。それで挨拶に行ったら大歓迎ということで入れていただきました。
張りつめた中で演技する場を求めて舞台も
――声優への道に入ってみて実感したことはありますか?
仲谷 現場入ったときによく聞かれたんですよ。「すごくいい環境だったのにどうしてやめたの?」「声優より給料もよかったでしょ?」って(笑)。お芝居をちゃんとやりたい、現場で学ぶことのほうが多いから辞めた、という気持ちを伝えると「じゃあがんばってね」と言っていただけました。やっぱりやさしい人が多いと思ったんです。厳しいんですけどやさしい。
――やさしさがキーポイントなんですね。AKB時代のキャッチフレーズが「私の半分は優しさでできています」だけに(笑)。
仲谷 そうですね(笑)。でも、48グループではもう古株だったし、1期や2期もそれこそたかみな(=高橋みなみ)くらいしか怒ってくれる人がいなかったので、厳しいことを言われることがもうなかったんです。それがまた1からのスタートということですごく新鮮な気持ちでした。
――現場で学んだこととしてはどんなことがありましたか?
仲谷 なんだろうな(笑)。でも、ブレスひとつとっても、入れる場所だったり、入れたり入れなかったり、人それぞれお芝居が違うということは実感しました。
――印象に残っている声優さんはいますか?
仲谷 「0048」の前の話になるんですけど、アニメの「もしドラ」(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」)をやったときの皆様は印象に残っています。一度、感情が乗りすぎた声優さんが泣いてしまって、「ごめんなさい」って(収録を)いったん止めてもらったことがあったんですよ。そうしたら現場にいた声優さんが「止めなきゃよかったのに!」って言ったんです、すごくいいお芝居だったから。それで、マイクは声だけではなく空気も全部録っているというようなことを言われたとき、お芝居しているということを肌で感じました。ブースが舞台のような。それはすごく印象に残っています。
――声優として新出発する前は名前のある役が多かったですが、あらためてモブのような名前のない役から始めることになりました。どういった気持ちでいましたか? やっぱり上を目指す感じでしょうか?
仲谷 そうですね。ずっと貪欲で、「お仕事ありませんか」「私は番組レギュラーでもモブでもいいので」とはマネージャーさんに言っていました。ただ、AKB48にいたことで名前が知られているので、その名前を落とすことがないようにマネージャーさんたちでいろいろと考えてくださっていたみたいです。
――でも、自分としては経験を積みたい気持ちですよね。芝居に何が足りないという感覚だったんですか?
仲谷 全部じゃないですか?(笑) だから舞台も始めてみました。もっと現場の張りつめた空気感に触れていたいという気持ちで、「舞台もやりたいのでいっぱい入れてください」とお願いしたんです。臨機応変さというか対応力は、舞台で学びましたね。声優さんの現場だと緊張するばかりで。緊張するのはもったいないと言い聞かせていたんですけど、やっぱり久々の現場となると緊張するんですよね。
――舞台で印象に残っていることはありますか?
仲谷 最近、(劇団時間制作の)谷碧仁さんという演出家さんと(「プライベート~信じたモノはナニカ~」で)ご一緒したんですけど、自分が作ってきたプランで台本を読んだとき、「お芝居しないでもらっていいですか」って言われました。
――また難しいことを。
仲谷 そう(笑)。「あなたはもう栗生智子という人なんです」と言われて悩みました。演じているというフィルターを外すということなのかと思ってチャレンジしましたけど。
――舞台は声優とはまた違う演技の場ですからね。
仲谷 あと、私は台本を覚えるのが得意じゃなくて。小さい頃、声優になりたいと思った理由のひとつに、台本を覚えなくていいというところもあったんですよ。でも、「結局覚えてんじゃん」とも思っています(笑)。
何十人、何百人という大人が集まって子供たちのために
――声優になってから想像と違って苦しんだり悩んだりということはありませんでしたか?
仲谷 全然ないです。のんびり屋さんなんですかね、私。むしろ「わぁ、楽しいー」って感じです。
――アニメのキャラクターを演じられるのが楽しい?
仲谷 もありますし、現場の雰囲気がいいので。厳しい監督さんもいるとは先輩から聞くんですけどまだ殺伐とした現場には出会っていないです。
――AKBのときはありました?
仲谷 全然なかったです。でも皆、我関せず、だったのかもしれませんけど(笑)。あっちは個人個人というところが強くて。アニメのほうが現場の一体感は強いかもしれないです。それこそ「荒野のコトブキ飛行隊」も和気あいあいな感じで、笑いながら収録に挑んでいました。
――難しい役柄に出会ったと感じることはありましたか?
仲谷 うーん。どうだろう。静かな役やほわほわした役がわりと多いんですよね。そのときに難しかったのはマイク前で動けないことかな。セリフと一緒に体が動くタイプなんですけどあまり感情がないので動けないし、感情を抑えるためにも動いてはいけないという考えになるので。
――「荒野のコトブキ飛行隊」のケイトもそうですね。
仲谷 そうなんです。(感情を)ちょっと出し過ぎたら監督に「もうちょっと抑えて」「もっとケイトは“無”で大丈夫だよ」とか言われました。
――自分のイメージと求められるイメージが全く違っていたという経験は?
仲谷 あ、それはあります。「トリアージX」というアニメで牧石要という役をやったんですけど、それが全然できなくて。それは声優になってから初めて居残りしたキャラクターですね。頭がいい女の子ということで、ふわふわしてはいてもかっちりした雰囲気をイメージしていたんですけど、現場に入ったら「もっとふにゃふにゃで、もっとぺにゃぺにゃでやる気のない感じでいいです」と言われて、そこの型から全然抜けられませんでした。だから、「もしドラ」でも共演したツダケン(=津田健次郎)さんにも言われたんですけど、いろいろなパターンをオーディションや現場とかに持っていくほうがいいとは思っています。もし今同じような役が来たら、ふにゃふにゃでぺにゃぺにゃのも持っていきますね(笑)。
――自分のイメージの、前後だったり左右だったりのパターンをいろいろと用意しておくということですね。
仲谷 あるいは、真逆の可能性もあるので。いろいろと考えて持っていくしかないと思います。
――声優になった今、声優というのはどういう仕事だと感じていますか?
仲谷 うーん……。皆はなんて言ってるんですか?(笑)
――秦さんは、声優というのはツールのひとつでしかないと仰っていました。絵における絵の具のような。
⇒「ポプテピピック」で凱旋? 秦佐和子がSKE48時代から秘めていた、声優に対する熱い想い!!【アイドルからの声優道 第2回】
仲谷 そんなきれいなことは言えないな(笑)。でも、元々アニメを好きな理由として、何十人、何百人が集まってひとつの作品を作るというところがあるんです。エンディングを見ているといろいろな名前が出てきますよね。その一体感が好きだったんです。しかも、大人の人たちががんばって、自分たち子供に向けて作っているというところに惹かれました。なので、声優さんもその中の「パーツ」でしかないとは思っています。
――むしろパーツになれるのが楽しい?
仲谷 そう、ひとりで作るのは大変だし(笑)。ひとりで作る楽しさもあるとは思うんですけど、集合体という面白さはありますね。48が続けられていたのもそこかもしれないです。
ひとつひとつの作品に愛を込めて長く演じられたら
――今、演じてみたい役はありますか? ピカチュウ以外で(笑)。
仲谷 それこそ妖精やモンスター系ですね。めちゃくちゃかわいく作った声はアニメでやったことがないので、いわゆる萌えキャラはやってみたいと思います。
――声優という仕事には現実の自分とかけ離れた役ができる楽しさはありますね。
仲谷 そこはアニメならではだと思います。
――AKBを経て、声優という長く目指した夢はかなえたわけですが、次の夢や目標は? 将来的に目指す声優像とか。
仲谷 なんでしょうね(笑)。
――全然考えたことはないですか?
仲谷 やっぱり目の前のことを潰していくタイプなので。でもずっと(声優を)続けたいとは思っています。
――憧れていた声優はいませんでしたか?
仲谷 それこそ、「コトブキ」でご一緒した矢島晶子さんとか。かわいらしいキャラクターを演じられるし、真逆のマダム・ルゥルゥみたいなきれいなお姉さんもできるのですごいと思います。大谷育江さんもそうですね。いろいろな面があって。声優さんにはマストな部分だと思いますけど。
――「ずっと続けたい」とおっしゃいましたが、そのおふた方は長く愛されるキャラクターに作り上げるという力を持っている方でもありますね。
仲谷 そうですね。キャラクターや作品と一緒に成長していけたらいいな、とは思います。作品ひとつひとつに愛を持って。消耗品というわけではないですけど、今のアニメはすぐに終わって、別のアニメが始まって、また終わって、の繰り返しじゃないですか。だから、気持ちを込めて長くやれると嬉しいですね。
――声優に憧れるアイドルや芸能人も多いですが、この仕事をほかの方に勧めたいと思いますか?
仲谷 その人の性格にもよるかな(笑)。
――どういう性格が向いていると思いますか?
仲谷 どうなんでしょうね。でも、真面目すぎると疲れちゃいそうな気はします。私の性格がこうなので、多少気楽なくらいがいいのかな、と思います。
(取材・文/清水耕司)
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