意図を知ればニヤリとする!? じっくり聴いて楽しみたい秋アニメのアニソン10選! 「いいから黙ってアニソン聴け! in 2019秋」

全国1千万人のアニメソングファンの皆様こんにちは。流浪のベーシスト、アニメソング・特撮楽曲DJの出口博之です。新クールのアニメ作品が出揃う頃に音もなく忍び寄る主観が過ぎるコラムこと「いいから黙ってアニソン聴け!」、今回は2019年秋の陣でございます。

今期はアニメ作品、楽曲両方とも個性が非常に強い作品が揃いました。現状ではギャグ系の作品が頭ひとつ抜けている印象。深夜アニメというアドバンテージを最大限に生かした鋭いギャグは、ここ最近の「よいまとまり方」に落ち着く作品が多い中、特に面白く映ります。「慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~」がわかりやすく尖っていて、これがまぁ面白い。

この面白さは「知ってる人に刺さりまくる」類の面白さであり、見る側にある程度の素養(「慎重勇者」では異世界ものの文脈や、その回の作画についてなどアニメのコアな見方)が求められます。わからなくても楽しめるけど、わかっているともっと面白い。大小差はありますがこのような構図はここ最近のアニメ作品、アニメソングの特徴となっています。

たとえば、実写化もされた「かぐや様は告らせたい」のオープニング「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」は、「え!? マーチンがアニソン!?」という驚きと「なるほどな!」と腑に落ちる流れは、「鈴木雅之」というアーティストを知っている人だけがニヤリとする面白さがありました。鈴木雅之さんのアニソン参入は、これまでアニメに関わらなかったアーティストが、実はアニソンとの親和性が異常に高かったことを証明した形になりました。

今期はアニメ作品、アニメソングともに「知っていれば数倍面白くなる仕掛け」が多い作品が目立った印象です。

ということで、今期インプレッションはここまで。

インプレッションを鑑みて諸々吟味して断腸の思いで選びに選びぬいた今期アニメソング10曲がこちらになります!

・あひるの空

OP「Happy Go Ducky!/the pillows」

・アフリカのサラリーマン

OP「Soul Flag/下野紘」

・歌舞伎町シャーロック

OP「CAPTURE/EGO-WRAPPIN’」

・ガンダムビルドダイバーズRe:RISE

ED「MAGIC TIME/スダンナユズユリー」

・超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!

OP「はじめてのかくめい!/DIALOGUE+」

・ノー・ガンズ・ライフ

OP「MOTOR CITY/浅井健一」

・ハイスコアガールII

OP「flash/sora tob sakana」

・旗揚!けものみち

OP「闘魂! ケモナーマスク/NoB with ケモナーマスク(CV.小西克幸)」 

・BEASTARS

OP「Wild Side/ALI」

・魔入りました!入間くん

OP「Magical Babyrinth/DA PUMP」

さあ、いかがでしょうか。

これが今期の10曲です!!!!

今回は「知っているともっと面白い」をなんとなく、うすぼんやりした裏テーマにして選曲しました。

その面白さがわかりやすく現れていたのが、「超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!」のOP「はじめてのかくめい!」です。

現在のアニソンのいいところを全部詰め込んだような佳曲。あまりにも楽曲を構成するさまざまな要素のバランスがよくて、初見で聞いたときは笑ってしまいました。いろいろと「あざとさ」があって、それが逆に愛嬌になっているのがまたニクい。

楽曲を紐解いていくと、作曲が田淵智也、編曲が田中秀和。もうこれだけで「わかる人にはわかる」面白さ。今のアニメソング界の最先端を担う2人の作家が、その作家性を遺憾なく発揮して、ところどころ過剰にはみ出しながらも楽曲として高次元にまとめ上げる手腕は脱帽のひと言。

作曲をする人、編曲をする人にとっては「そうきたか!!」感とグヌヌ感を抱くレベルでいい。

すごくいい。

グヌヌ。

続いては「旗揚!けものみち」のOP「闘魂! ケモナーマスク」

前クールの「ダンベル何キロモテる?」や、特撮ドラマ「ウルトラマンタイガ」に登場するU40出身のマッチョすぎるウルトラマンこと「ウルトラマンタイタス」など、ここ最近の「筋肉ブーム」にフィットする筋肉ものと、今や定番となった異世界もののいいところ全部のせなアニメ。面白い。

歌うは特撮ソング好きにはおなじみのNoBさん。ハードロック、メタル由来の芯が太い攻撃的なボーカルは、作品にも非常にマッチしています。

ケモナーマスク/柴田源蔵の声を担当するのは小西克幸さん。多くのアニメ作品に出演されていますが、特撮ドラマ「天装戦隊ゴセイジャー」のゴセイナイトの声でもなじみ深い方も多いと思います。

その「ゴセイジャー」のOP「天装戦隊ゴセイジャー」を担当しているのが、NoBさんなんです。

「NoB with ケモナーマスク(CV.小西克幸)」の表記にテンション上がる人は、完全にわかってる人、ということになります。

ちなみに、ゴセイジャーにはそれぞれ固有のシンボルがあり、ゴセイナイトのシンボルは「獅子」。以上のことから、ケモナーマスクは9年前から存在したことになります(なりません)。

アフリカのサラリーマン」のOP「Soul Flag」は、ファンク系アニソンど真ん中の安定した楽曲でいい。

アッパーなブラスセクションと軽快なモータウンビートのコンビネーションは、実はアニソンにおいて超定番のアレンジです。ファンク系のアレンジはアニソンと親和性が高く、たとえばオーイシマサヨシさんはファンク系特有の「黒っぽさ」をうまく楽曲の中に取り入れています。

世界的に見て現在のヒット曲のほとんどはファンクが基盤となっていて、音楽全体のトレンドがブラックミュージック方面に向いているんです。その影響がファンク系アニソンにも現れているのが、この曲を通しておわかりいただけると思います。

ブラックミュージックとはなんぞや、と思われる方もいらっしゃると思いますので、「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」のED「MAGIC TIME」を聴いてください。

歌うのはE-girls、Happinessに所属するメンバーによる1Vo2MCのHIP HOPユニット「スダンナユズユリー」(メンバーの名前そのまま使ったユニット名なのにポップで適度にストレンジ感あるのがすごい)。90年代辺りのHIP HOP、R&Bを高い純度で再現していて、パッと聴くと質感は完全に洋楽のそれです。

ブラックミュージックの醍醐味は、この曲でわかりやすく感じられる「間」というかノリにあります。テンポが早い遅いは関係なく、おしなべてブラックミュージックは間の取り方、いわゆるノリが腰を直撃するから踊れるんです。外国の人たちが音楽を聴いたらすぐ踊りだすのは、小さいころから日常的にブラックミュージックを、原始的な意味で踊れる音楽を聴いているから。

この辺の説明は実際に聴き比べるとわかりやすいんですが、言葉にするのがとても難しい。

とにかく聴いて「お、黒いね!」と感じてもらえれば幸いです。

放送前から注目度の高かった「BEASTARS」OPの「Wild Side」も素晴らしくよかった。

ALIEN LIBERTY INTERNATIONALことALIのメンバーは、日本、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカなどをルーツに持つ、全員混血児によるバンドです。ジャズとHIP HOPを混ぜ込んだいい意味でまったく日本っぽくないサウンドは、メンバーの出自によるところが大きく関係していると思われます。

ジャズとアニソンは昔から親和性が高く、クラシックなアニソンのほとんどはジャズを基調として作られています。たとえば「一休さん」のOP「とんちんかんちん一休さん」が4ビートのジャズであるように。

その後アニソンはポップスが中心となり、しばらくジャズ系アニソンは影をひそめてしまいますが、90年代末に「カウボーイビバップ」の「Tank!」がジャズ系アニソンをアップデートして衝撃を与えました。「Wild Side」には、「Tank!」で感じた「本物来ちゃった感」があり、ジャズ系アニソンの最新アップデート版といえるでしょう。誰も真似できない強烈なオリジナリティあふれるサウンドには、アニメソングらしさがまったくありません。しかし、だからこそ正しくアニメソングになっている。作品と異常にマッチしているのが面白い。

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