スーパー戦隊親善大使・松本寛也×アニソン・特撮DJ・出口博之スペシャル対談! 「リュウソウジャー」は僕らの予想をすべて裏切って、心配させてほしい!
恐竜、騎士とカッコいい要素を2つも兼ね備えた、スーパー戦隊シリーズ第43作目の「騎士竜戦隊リュウソウジャー」。そんな本作を全力で応援してくれるのが、「スーパー戦隊親善大使」の松本寛也さんだ!
松本さんは、2005年に「魔法戦隊マジレンジャー」に小津翼/マジイエロー役で出演して以降、「特命戦隊ゴーバスターズ」では先輩ヒーロー・陣マサト/ビートバスター役、「宇宙戦隊キュウレンジャー」では全宇宙一のアイドル・ホシ★ミナト役で出演するなど、スーパー戦隊に非常に縁深い俳優である。
と同時に、2017年より「スーパー戦隊親善大使」に就任。スーパー戦隊シリーズを盛り上げ、広める役割を務める松本さんは、毎週の実況放送、CDリリースイベントや番組関連イベントでのMC、TTFC(東映特撮ファンクラブ)での番組配信など、精力的に活動を繰り広げている。
そんな松本さんに、特撮大好きDJ&ベーシストの出口博之さんがインタビューを敢行!
シリーズ最新作「騎士竜戦隊リュウソウジャー」への期待や、過去に出演した作品の裏話などをじっくりと聞いてもらった。
前回の幡野智弘さん、Sister MAYOさんのインタビューもあわせてお楽しみください!
⇒カッコよく歌って、楽しく踊って! 大好評の王道スーパー戦隊43作目「騎士竜戦隊リュウソウジャー」主題歌を歌う幡野智宏&Sister MAYOに出口博之がインタビュー!
スーパー戦隊親善大使が生まれるまで
――実はTTFCで何度かニアミスしているんです。その時にきちんとごあいさつができなかったので、今日のインタビューはとっても嬉しいです。
松本 そうだったんですか! こちらこそ改めてよろしくお願いします。
――よろしくお願いします。まずは改めて「スーパー戦隊親善大使」とはなんぞや、というところからうかがいたいと思います。
松本 自分も今ひとつわかっていないところがあるんですが(笑)、始まりが「宇宙戦隊キュウレンジャー」からなんですね。「特命戦隊ゴーバスターズ」のセカンドプロデューサーだった望月卓が出世して、「宇宙戦隊キュウレンジャー」のメインプロデューサーに就任したんです。彼とは最初は仕事の付き合いだったんですけど、「ゴーバスターズ」後も普段から会うようになって、「キュウレンジャー」の頃は素直に「おめでとう」って祝福して、「せっかくだから何か手伝えることはある?」って聞くくらい友達の関係だったんです。友達であり仕事仲間が出世しておめでとう、くらいの気持ちだったんですけど、その望月卓が「親善大使やらない?」って話を持ち出してきたんです。それがだんだん肉付き始めた頃に、「親善大使をやるからには作品にも出ておこう」ということになって、「キュウレンジャー」に出演することになって、そしたら日本コロムビアさんもノリノリになって歌まで作ってくれたんです。そういう不明瞭なスタートから、今もまだ模索中といったところですね。次は何をやるのって指示を出したり出されたりしつつ、3年続いてます。
――TTFCではさまざまな企画に出演されてますよね。
松本 そうですね。「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」の時はほとんど稼働してなくて、いろんな人に早く何かやってよと言われたりしたんですが、「キュウレンジャー」の時に唐橋充(「キュウレンジャー」企画兼ディレクター兼カメラマン)と一緒に旅する企画をやったんですが、僕、そこですごい赤字を抱えてですね(笑)。まあ、でもそういうエッジの効いたことはこれからもやっていきたいなと思っているんですが、それだけでとどまりたくないなと思って、今は主題歌CDリリースイベントの司会として出演させていただいたりしているんです。
MCをやる時も、一般の人にはできないことを心がけていて、食い込んだ話もしたいですが、かといってマニアックなお客様だけを喜ばせるのもつまらないので、全然「スーパー戦隊」を知らなくても「なんか面白いじゃん」って思われるところに行き着きたいんですよね。
「スーパー戦隊」を知らない人が観て面白いと思ってもらえるというのが、今の自分の「勝ち」なんですよ。「スーパー戦隊親善大使」っていう名前も、ちょっとクローズな感じがするんですけどね。別に名前を変えることもないと思うんですけど、最終的に「スーパー戦隊」がもっと一般の方に受けたらいいなとすごい考えてて。
僕自身「サブカルチャー」って言葉が大好きで、アニメも好きで観てたりするんですが、そのいっぽうでサブカルだけにとどまりたくなくて、「スーパー戦隊」をもっとポピュラーにしていきたいという狙いがあります。
たとえば今年の「騎士竜戦隊リュウソウジャー」にはダンスがあるんですけど、影響のある人に踊ってもらったりね。個人的には「インフルエンサー」って言葉が死ぬほど嫌いなんですけど(笑)、この際、使えるものはすべて使おうと。今年の「スーパー戦隊親善大使」の目標はそこですね。
――松本さんは、もともと「魔法戦隊マジレンジャー」「ゴーバスターズ」では出る側というか、ヒーローだったわけじゃないですか。「スーパー戦隊親善大使」って、それまでの仕事とは一線を画していますよね。
松本 そうですね。僕って過去作で盛り上がるのが嫌いなんですよ。何というか……それは自分のエゴに聞こえてしまうから、僕はそこじゃないところにいきたいんです。そりゃ求められたらやりますけど、でも自分から「何々レンジャーの何をやっていたんですよ」っていうのはちょっと時代遅れなんじゃないかなって。
もちろん好きな人は盛り上がるけど、知らない人からすると「へー」で終わってしまう。それはいやなので、自分からは過去作については発信しないようにしてます。むしろ、最近の「スーパー戦隊」にはイヤな風習があって、過去のヒーローがOBだとか先輩、レジェンドと呼ばれることに対してすごく不満があるんです。やっぱり現行で動いているヒーローが一番すごいんだぞ、っていう気持ちになってほしいんですよ。
まあ「キュウレンジャー」は今もまだ稼働してるので、作品についてはしゃべったりはするんですけど、今「マジレンジャー」のことをしゃべって誰が得するのかっていうと、それを好きな人しかいないじゃないですか。たとえば先日、池袋のサンシャインの噴水広場でイベントをやったんですけど、そこで「マジレンジャー」やってましたって言うのがちょっと恥ずかしくて。だからSister MAYOさんと「そういえばやっていたよね」「そうなんですよ。知ってる人いますか?」みたいに、そこはすごくシームレスにやっていきたいなと。いきなり「ゴーバスターズ」の松本です!とか言っても知らない人もいるし、昔流行ったことを武器にはしたくないんです。
子どもたちにとって、常に現行のヒーローが一番なんだから、そこを忘れちゃいけないなと。だから過去の話は、振られたらやるくらいの気持ちでいますし、最終的には現行のヒーローに戻していくことを意識していますね
それがいいか悪いかなんてわからないですし、過去の作品のことを大事に思って語り続けていくのもひとつの正解なのかもしれないけど、僕の中ではそれは違うなって。きっとそれをわかったうえで、望月っていうプロデューサーは僕を選んでくれたのかなと思います。
陣マサトはアイアンマンから生まれた!?
――それは共感できます。作品としても、40年以上続くシリーズだからどうしてもテンプレート的なものはあるし、「これは過去にあったもの」とツッコミを入れる視聴者もいると思いますが、現行の作品がその既成概念を壊してもいいよねっていうのはすごく健全なことだと思います。それこそ「ゴーバスターズ」で松本さんが演じられた陣マサト/ビートバスターも、「戦隊ヒーロー像」を壊しにきてるなって思いました。
松本 それは僕が役者をやる時にも大事にしていることで、「ヒーローってこうじゃないといけない」っていうのは、観る側が決めることだと思っています。それと「ゴーバスターズ」のオーディションを受けた時、映画「アイアンマン」にけっこう衝撃を受けて、トニー・スターク役のロバート・ダウニー・Jrの影響をすごく受けていたんです。それまで「スパイダーマン」みたいな弱い奴がだんだんヒーローになっていく映画を当たり前に観ていたんだけど、「アイアンマン」ってそういうヒーローとも、いわゆるダークヒーローともちょっと違っていて、女好きで金持ちで社長でっていう「これでヒーローやっていいの?」ってびっくりして。
オーディション前に「ダークヒーローを演じていただきたい」って言われて、そのつもりで会場に行ったんだけど、現場に着いたら真逆のことを言われて、どうしようって困っていたらロバート・ダウニー・Jrがピンときて、それからずっと「アイアンマン」のロバートを意識してやりましたね。ロバートって薬物で何度も捕まってるんだけど、でもそれはよくないって更正して、「俺は絶対にこの役をやる」と言って「アイアンマン」のオーディションを受けて……。前科者が何を言ってるの、と思ったりもするんですが、僕はその生き方ですらヒーローのように思えたんですよね。その心意気とお芝居とキャラクターを見た時、「いいじゃん!」って衝撃を受けました。なんか嫌みじゃないしね。
僕にもけっこう苦節の時代があって一時期スレていたところもあったりしたんですけど、そこもけっこうロバートにシンパシーを感じていました。相手はハリウッドスターなんですけどね(笑)。そこから陣マサトというキャラクターができていきました。
――陣マサトのルーツは「アイアンマン」!
松本 そうそう。だから、本番でも「もう受かったし、やっちゃいけないことをやってやろう」っていろんなことを試しましたね。そんなわけで、けっこうカットされた部分があって。「おっぱい」とか普通に言ってたしね(笑)。「デッドプール」なんかも好きで、そういう要素も取り入れたかったんです。今や「スーパー戦隊」も「パワーレンジャー」として海外で展開しているし、もっと海外を意識して発信してもいいじゃん! っていうところは考えていました。
エスケイプ(演:水崎綾女)の衣装を見た時なんて、「絶対にみんな思ってるけど、口に出さないだけでしょ」って思って「おっぱい丸出しだな!」って言ったりして。これはどこかのシーンでちらっと使っていただいてありがたかったですね。つまるところお芝居なんだけど、「陣マサト」という人間が実際に生きていたらどう動くのか、どこまで戦隊ヒーローというものを壊せるか、というところに挑戦させてもらいました。
もちろん、きっとプロデューサー陣も毎年「壊したい」と思っているはずだし、いきなり「ゴーバスターズ」で、しかも役者ひとりの手で壊せるわけはないってことはもちろんわかってるんだけど。
――それで陣さんだけ、非常に生々しいというか、生っぽいキャラクターだったんですね。
松本 だからよく「7時30分の放送にはよくないよ」ってダメ出しされてましたよ。(笑)。
――だからこそ僕はすごく好きでした。そして陣さんは、最後に自分を犠牲にして散ってしまったじゃないですか。最後にそれをやられたら、もう勝てないよって。
松本 あの最終回も裏話があって、最初、陣マサトは死なないはずだった気がします。佐藤太輔っていうビート・J・スタッグのスーツアクターとは、「こういう展開になったらいいよね」みたいなことをけっこう話してました。役者がそういう話をしてもいいのかっていう問題もあるんだけど、当時はどうしてもいい作品にしたいと思っていて、それでプロデューサーや監督を呼び出して「どうしても死にたい」って訴えたんです。
これは役者としては絶対にやっちゃいけないことなんです! それはわかっていたんですけど、当時は東日本大震災があって、それを下敷きにした作品をやっている以上、震災も「ゴーバスターズ」も風化していくものにしたくなかった。2012年の放送当時、人が死ぬってことはすごく大事なテーマだと思っていて、最後に主人公3人の親も陣マサトも生き返るような展開は絶対にやっちゃダメだと、そういう思いが40数話くらいまで心の中にあって、いざ小林靖子さんが脚本を書き始めるって段階になってから、プロデューサーとかに「頼むからこういう展開にしてほしい」「生き返りたくないです」って説明したんです。
なぜなら当時、震災を味わって家族を失った子達のご両親は生き返らないですよね。それでも立ち上がり、這い上がってくるのが、レッドバスター、ブルーバスター、イエローバスターなんです。そして陣マサトはどっちかというと親寄りのキャラクターだったので、やはりその現実は絶対に崩したくなかったんです。確かに「キャラクターが死ぬのなんていやだ」っていう意見もたくさんもらったんですが、今でもあれは間違いじゃなかったと思っています。
――今考えても、あのラストはものすごい勇気が必要だったと思います。
松本 本当にすごい勇気だったと思いますよ。小林靖子だから、という人もいるんですけど、小林さんもがんばったと思います。もちろん商品が売れたとか、売れなかったとかありますよ。でもそれを考えて撮り始めると、ただの物を売るPRドラマになってしまう。やりたいのはそういうことじゃないでしょ。「ゴーバスターズ」は、第1話からここまで尖ったことをやってきたんだから、最後まで尖っていようよってずっと思ってて、ただの役者が絶対に言っちゃいけないことをけっこう言っていました。全部わかったうえでね。
「リュウソウジャー」には心配させられたい!
――そういう思いを持っている方が親善大使を務めているというのは、すごく安心できます。
松本 もちろん「キュウレンジャー」も壊しにかかってて、何人いるのこの戦隊は!って。実は「キュウレンジャー」って危機ではなく、絶望から始まってるんですよ。絶望しきっているところから立ち上がるっていうのは、それまであんまりなかったんじゃないかな。
そういう意味では、「リュウソウジャー」も第1話の名乗りが最後ってどうなのよって(笑)。でもそれってパワーの源かなって、偉い人からそう言われて。「ああなるほど」って思いました。たぶん役者も監督もプロデューサーも、つい居心地のいい場所を探しちゃうんですよ。でも、そこにとどまってないことが画面から伝わってきたのが「リュウソウジャー」です。「キュウレンジャー」「ルパパト」と尖った作品をやってきて、「リュウソウジャー」のCMを見たら「いつもの戦隊に戻ったね!」ってみんな思ったはずです。実は僕も思いました。だけど1話を観たらそんなことはなく、むしろエネルギーを感じる作品でしたね。
――自分も1話を見た時にとんでもないものが始まったと感じました。
松本 死のテーマという点や、戦闘シーンのアングルであったり、小さい怪人とは別に巨大な敵が出るところなど「ゴーバスターズ」を思わせる要素もありつつ、説明不足感がちょうどいい塩梅ですね。どの作品も第1話って説明不足で、その謎を回収するのが毎回観る動機になっていくと思っていて、「もっとちょうだい」って前のめりになって観られる第1話になっていたのはよかったですね。
――「スーパー戦隊最強バトル!!」で、グリーンとブラックが独自に動いていたのもフックになっているし、それが第1話で「以前、村から出て行った奴らが」いう説明で処理するのもうまいなと思いましたね。
松本 確かに! そこで回収するのはうまいと思った。あと吹越満さんが好きだから(笑)、そこはファン目線になっちゃう。あそこはアドリブ?ってプロデューサー陣に直接聞いたりして、役者としても勉強させてもらっています。
――じゃあ松本さんとしては「リュウソウジャー」は安心して観られる?
松本 安心だけど、心配でいなきゃいけないと思います。毎回「これ、どうなるの?」っていう心配をさせてもらいたいですね。最後の最後まで、次も見続ける動機をつなげてもらいたい作品です。
――ところでTTFCで、「低予算で作品を作ろう」という企画でプレゼンされてましたよね。「王家の血」でしたっけ? そこで世代交代するヒーローという話をされていましたけど、くしくも「リュウソウジャー」がまさにそうじゃないですか。
松本 言われてみたらそうですね! よく覚えてくれてましたね。本当に突貫で作った資料なので、あんなので人を集めてよかったのかなって。確か時代劇と世代交代をモチーフにした戦隊をやったらいいじゃん、っていうすごく安直な内容だったんですけど。
――そのテイストがちょうど「リュウソウジャー」にもあるから、やっぱ「スーパー戦隊親善大使ってすげえ!」って(笑)。
松本 たぶん自分が観たいものとか求めているものが、たまたま当てはまっただけなのかも。その時、本当に突貫でプレゼン資料を作ったんだけど、それって純粋に観たいものが抽出されたことでもあるので、そういうことも相まって「リュウソウジャー」って強く惹かれているのかもしれないですね。
――たとえば自分なら今後「リュウソウジャー」はこういう展開にする!というのはありますか?
松本 まず第1話で死んだマスター達が、リュウソウジャーになる話はきっとやると思うんですよ。スピンオフでもいいから観てみたいですね。あとは、どうやって現行のリュウソウジャーが選ばれたのかっていうのを見てみたいかな。それにブラックとグリーンのマスターもいるの?とか、かつて長老もリュウソウジャーだったんじゃないの?っていう。そういう世代間のドラマってスーパー戦隊ではあまりないんじゃないかな。もっとマスターたちを掘り下げたドラマを観てみたいですね。そうすることで、きっと物語がより重厚になると思います。
ただ、基本的にこちらの裏をかいてほしいなという思いがあって、「マジか!」って言わせてもらいたい。僕、実況生放送もやってるんですけど、あれってかなり素のリアクションなんです。今まで「やっぱりね」ということもけっこう言っちゃったりもしているので(笑)、予想を裏切る展開を期待したいです。
――敵陣営もまだまだ全貌が見えないというか。
松本 大ボスがまだ描かれてないじゃないですか。今いるのは中ボスなのかな。大ボスはどんな存在なの?って引きはすごく強いと思います。もしかしたらまだ手探り状態で作ってないんじゃないの?とか、逆に本当は身近にもういるんじゃないの?とか、いろんなことを考えちゃってますね。
ファンの考えるストーリー・才能に思わず感動!
――松本さんが「スーパー戦隊」に求めるのはどういう要素ですか?
松本 テーマは時代に合ったものにしてほしいと思っています。今の日本がどういう流れにあるのかっていうのをくみ取りつつ、作品の世界観を組み立ててもらいたいと思います。
――これは深読みしすぎかもしれないんですが、元号が「平成」から「令和」に変わるということで、その境目にある「リュウソウジャー」でも何か仕込んでるんじゃないかなと思ったりするんですが。
松本 うん。何かからくりがあると思うんだけどね。ただ、僕は「実はこういうことだったんだよ」っていうのが好きなので。ドーンとやられちゃうとお腹いっぱいってなっちゃうかも。だからけっこうすれてる人間なので(笑)。
――そう。そんなに大々的でなく「実は~」みたいなノリでやってほしいですよね。たぶん「スーパー戦隊」に限らず、今、いろんなコンテンツを楽しむ人のマインドってそこかもしれないですよね。受け手が頭いいというか、いろんな情報がある中で自分の好みを常に選択している時代だから、「どうぞ見てください!」って言われても引いちゃう。むしろ「実はこう見えて……」っていう方が興味を持たれるかも。
松本 個人的にはプロデューサー陣に、「リュウソウジャー」をエゴサーチしてほしいですね。もうやっているとは思うんですが。それで、みんながしている予想と、もう全部違うことをやってほしいですね。「ルパパト」もエゴサしてたんですけど、実は最終回こうなってるんじゃないの?って予想している人がごまんといたわけですよ。そういうのを全部つぶしていってほしい。全部裏切ってほしい。世の中には「はい、俺の予想したとおり」って思ってる人がいるわけでしょ? それが最少人数になってほしい(笑)。
――そこは我々も望むところですよね。本当にそうなってほしいですよね。
松本 SNSに投稿している絵師の人たちの発想力ってものすごくて、感動的なものもあるんですよ。その感動のさらに上をいってもらいたい(笑)。なかには「ルパパト」最終回後の世界を考えている人とかもいるんですよ。もう東映も、そういうの全部買い取って自分のところで作っちゃえばいいのに。その才能を買うとか粋なことをしてほしいですよね。
僕は「いいね!」が20くらいしかついていない誰かのツイートをみて、感動したりしてますからね。才能ってすごいですよね。すごい大きい劇場で舞台をやったあとに、小劇場を見に行って「こんな才能の人が世の中にいたんだ」って衝撃を受ける感覚に近いかも。言い方は悪いかもしれないし、もしかしたら大きな劇場での仕事を断って小劇場でやっているかもしれないんですけど、世の中にはまだまだ未知数の才能がこんなにいるんだ、とゾッとしますね。
――自分もバンドをやっていたので、弾いてみた動画とかを動画サイトで見た時に、正直「俺、やめようかな」と思うくらいうまい高校生とかいますからね。全然プロはだしのことをやっているのに本人が気づいてないから、「ダメダメ、そのまま気づかないで!」って(笑)。そういう馬力が違う若い役者もどんどん出てくる中で、松本さんはどういう戦い方をしているのでしょうか。
松本 自分はけっこうそこは放棄している人間で、「勝つ」っていうよりは「認める」。僕はたぶんいろいろなものを吸収することで強くなると思っていて、後輩が自分よりもイイ演技をしていたとしたら、僕はそれを吸収することに特化しているかもしれない。ずるいかもしれないですけどね。
昔は「これ絶対に俺しかできないでしょ」って思っていたけど、今はそうではなくて、たぶん誰でもできる。「陣マサトがすごかった」ってよく言われるけど、いや、お前でもできるよ。逆にお前の陣マサトを見てみたいって思う。たぶんそれが僕の続ける強さなのかなと思っています。絵師さんの作品がすごいなって感じるのと同じで、そういう考えがあるんだ、俺もやってみようって思えるのが自分の強さかな。
そこで変に戦おうとすると、かっこわるいうえに負けることが多いんですよ。いろんなことを踏まえて、そこにたどり着いたかな。
──そこが松本さんの勝てる部分だと。
松本 勝ってしまった、という言い方が正しくて、昔って役者は個性が強ければ強いほど輝くって言われていたんですけど、今の役者ってあまり個性がないんですよ。それって悪く聞こえがちなんですけど、すごいことなんですよ。個性を消せるなんて、10数年前から役者をやっている人からすると信じられない。
僕が若い頃は、個性がなじんできて芝居に生きるっていうことがよくあったんだけど、今の子達は最初から個性を丸つぶしにして「自分は2.5次元です」「このキャラクターになれます」って言う。言わば何にでもなれるキャンパスなんですね。カメレオン俳優って呼ばれている人が2.5次元とか特撮界隈に多いんですが、それは僕には無理!
自分は癖が強い役者だと思ってるので。自分のことを熟知したうえで、今の子達やカメレオン俳優と呼ばれる人たちの芝居を盗める人になっていきたい。あとこれは勝敗じゃないんですけど、他人が絶対にまねできないその人のものを見つけてきますね。こいつのこの演技は絶対にまねできない、だから盗もう。俺もやってみようって思います。
あとはやっぱり経験値だけは負けないかな。だってずっとやってきてるんだもん。「ここでこうすればお客さんは笑ってくれるよ」とか、そういう古典的な技はもっと広めていきたいし、共有していきたい。
それが強みになっていると思います。
(聞き手/出口博之 構成/編集A)
【おまけ】
インタビューに答えていただいた幡野智宏さん、Sister MAYOさん、スーパー戦隊大使の松本寛也さん。そしてインタビュワーの出口博之さんに、アキバ総研のために「ケボーンダンス!」を踊っていただきました!
まさかのコラボに注目だ!
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