【特集】新人声優5人の魅力と演技力が爆発! 熊田茜音、堀内まり菜ら「声優のたまご」が挑戦したボイたまプロジェクト朗読劇vol.2 「white Swan+」レポート!
新人声優たちが、世界に羽ばたく声優アーティストを目指し、さまざまなことにチャレンジしていくプロジェクト「ボイたまプロジェクト」が、2019年11月2日、3日に朗読劇vol.2「white Swan+」を開催した。
ボイたまプロジェクト朗読劇vol.2 「white Swan+」は、2019年3月27日に恵比寿天窓.switchで開催された朗読劇イベント「white Swan」の再演であり、前回と同じ配役の「Ver.デネヴ」と、配役をシャッフルした「Ver.アルビレオ」の2バージョンを上演。
出演するのは新人女性声優の荒井瑠里さん、熊田茜音さん、後本萌葉さん、堀内まり菜さん、吉武千颯さんの5名。壁にぶつかりながらも夢に向かって日々努力する彼女たちが、自分たちと同じ新人声優を演じるというこの朗読劇は、演技あり歌ありでエンターテインメント要素が満載である。
今回アキバ総研は、昼の部に「Ver.デネヴ」、夜の部に「Ver.アルビレオ」を上演した11月3日の公演を取材。異なる配役で挑んだ朗読劇の模様をレポートしたい。
会場のアミューズカフェシアターは、浅草六区にあるドン・キホーテ浅草店7階で展開しているカフェ&シアターだ。店内の真ん中にはアイランドスタイルのカウンターがあり、向かいには舞台が。そして観客席はその間に、という具合に非常に近い距離でステージを楽しむことのできるレイアウトとなっている。
まさに眼前で声優のたまごたちの熱演を鑑賞できる、というわけだ。
さて、今回上演される「white Swan+」は、先述の通り3月に上演された「white Swan」の再演である。今回はタイトルに「+」とあるように、新たなシーン、演出が追加されたほか、配役をシャッフルした別バージョンも上演されるということで、前回鑑賞した人も新鮮な気持ちで楽しめる内容となっている。そんな事前情報もあったせいか、客席は毎回満席。大きな期待の中でステージは繰り広げられた。
そんな「white Swan+」のストーリーは以下の通り。
とある有名な芸能事務所の新企画「ボイたまプロジェクト」。それは声優を目指す卵のような新人たち──「ボイスのたまご」達がさまざまな経験を通じて成長していくプロジェクトである。
その一環として新たに、朗読劇「みにくいアヒルの子」の公演を成功に導くプロジェクトに挑むことになった。集められた5人の新人声優たちは、それぞれの思いを抱え稽古に挑み、時に支えあい、時にぶつかりあいながらも本番に臨む。というもの。
読んでおわかりの通り、演じる声優自身とかなりシンクロする部分のある、非常に面白い構造の朗読劇となっているのだ。
各出演者の思いや意気込みは、すでにインタビューで答えてもらっているが、舞台ではそれらがどのような形で表現されるのだろうか。Ver.アルビレオの写真とあわせて、レポートををお楽しみいただきたい。
より深化した演技と新たな演出でパワーアップした「Ver.デネヴ」
そんな中、いよいよ「Ver.デネヴ」が開演。ピアノ演奏の麓朝光さんによる鮮やかな伴奏とともに5人がステージに立つ。
今回は、前回と同じ配役で、一番年上のリーダー「るい」を堀内さん。元気いっぱいで体育会系なノリの「ゆき」を荒井さん。ピュア性格で、マスコット的存在の「ひまり」を吉武さん。一番大きな才能を秘めながらも緊張しがちな性格で引っ込み思案の「ちひろ」を後本さん。声優アイドルを目指しながらも、声優については何も知らない現代っ子「さやか」を熊田さんがそれぞれ担当。すでに一度舞台を踏んだ組み合わせということもあり、演技もふとした所作も、完全にキャラクターとキャストがシンクロしているようだ。まるで、本当にそこにキャラクターがいるかのような。本当に5人が本番に向けての練習をしているかのような錯覚に陥ることも一度や二度ではなかった。
朗読劇、ということで基本的に5人はステージに立ち、台本を片手に声だけで物語が紡がれていくのだが、「white Swan+」は劇の合間にストーリーを盛り上げるオリジナルソングが披露されるのが特徴だ。物語の幕開けでは、まるでアニメのオープニングテーマのようなアップテンポな楽曲が披露され、感情的な演技が要求される場面ではエモーショナルなスローナンバーが披露される。
また本作の劇伴は、先述したピアニスト・麓朝光さんによるピアノ生演奏である。物語の展開に従い、そして演者たちのタイミングに合わせて刻々と音楽が展開していくライブ感は、非常に新鮮である。
作・演出を務めた天真みちるさんが元タカラジェンヌということもあるのだろう。物語と感情と音楽の演出が、絶妙にクロスオーバーする見ごたえのある舞台が展開していく。
さて、物語は新人5人が手探りで本番に向けて練習を重ねていく中、序盤から漂っていた不穏な空気が中盤で大爆発! お互いの不満や不安をぶつけ合い、朗読劇の開催も危ぶまれる中、改めてお互いの意見をしっかりと受け止めたことで練習再開。
なんとか本番にこぎつけるものの、過去の舞台上での失敗のトラウマから、またも演技に精彩を欠くちひろ。しかしさやかが力強くサポートし、舞台は大成功を収め大団円となる。
劇中では声優業界ならではの専門用語も飛び交い、舞台に立つこと、演技に対する悩みや葛藤が数多く描かれる。「普段は楽しそうに活躍している声優さんたちも、裏ではいろんなことを考えて演技をしているんだろうなあ」と想像させられてなかなか面白い。
また5人の新人声優の演技にもそれぞれ注目するところがあり、堀内さんの本当に包容力のある声質や間の取り方は絶妙だし、パワフルな荒井さんの演技や愛されキャラ感が半端ない吉武さんの醸し出す雰囲気や、相手が誰だろうと臆することなく意見できる「現代っ子」っぽさが全開の熊田さんなどは「演技をしているのか素なのかわからない」レベル。
個人的に圧倒されたのは、後本さんだ。終盤まで続く自身がないモードからクライマックスの覚醒モードへの切り替えは、正直言って鳥肌ものだった。これで17歳というから驚きである。今後、どんな役者に成長していくのだろうか。おそろしい子!
そして今回から追加された演出も、各キャラクターの心理をさらに掘り下げる。中盤、堀内さん演じる「るい」が、朗読劇の開催が危ぶまれる中でなんとか成功させたいという思いを切々とソロで歌うシーンがあるのだが、「white Swan+」ではステージの回転するギミックを生かし、4人がかわるがわる内面を吐露するくだりを追加。より楽曲の持つメッセージや、5人の抱える悩みが深く理解できるようになっている。
このように、今回初めて観覧した人はもちろん前回観た人も、よりじっくりと作品を楽しめる内容になっていたのではないだろうか。
異なる配役で新たな魅力を発揮した「Ver.アルビレオ」
そしてもういっぽうのニューバージョンである「Ver.アルビレオ」は、「るい」を荒井さん。「ゆき」を吉武さん。「ひまり」を堀内さん。「ちひろ」を熊田さん。「さやか」を後本さんに配役をチェンジ。キャラクターとキャストの個性ががっちりとかみ合った「Ver.デネヴ」を観た後だと、まったくイメージの異なる配役もあったりして、いったいどんな劇が展開するのか想像もつかなかった。
しかし、いざふたを開けてみれば「すごい!」のひと言である。それぞれ異なるキャラを演じるだけでなく、「Ver.デネヴ」で提示されたものとはまた別の魅力を各キャラクターから引き出し、同じシナリオなのに、全然別の朗読劇を観ているかのような印象を受けた。
荒井さんの「るい」は同年代の子をなんとかまとめようとがんばっている感がよかったし、堀内さんの「ひまり」は不思議ちゃんテイストが強調され、物語全体の空気もちょっと違っていたように思える。吉武さんによる「ゆき」は、やはり醸し出すかわいらしさが元気系キャラにマッチしていた。
物語の中心に立つ「さやか」と「ちひろ」については、熊田さんと後本さんが役をコンバート。「ちひろ」を熊田さんが、「さやか」を後本さんが担当した。
「Ver.デネヴ」では衣装や髪形も含め、いかにも自己主張しない印象だった後本さんだが、今回はギャルっぽい衣装と二つ結びの髪型でアクティブな雰囲気にガラリと変化。対する熊田さんは、ロングスカートとひとつ結びの髪型でいかにも大人しそうな文学少女然とした雰囲気に。もちろん演技も全然違うものになり、後本さんの「リアルなギャル感」や熊田さんの「こちらが不憫な気持ちになるほどの自信のなさ」は、「Ver.デネヴ」を観ていた人ほどそのギャップに驚いたはずだ。
「役者が変わるだけで、こんなにも作品に対する印象が変わるのか」と驚かされるばかりで、こうなったらぜひほかの配役パターンの舞台も観てみたいと思ったのは自分だけではないはずだ。
2日にわたるボイたまプロジェクト朗読劇vol.2 「white Swan+」は、結論から言って、ボイたまプロジェクトに参加する女性声優5人の成長ぶりと圧倒的なポテンシャルを十二分に発揮した、非常に見ごたえのあるものだった。彼女たちに「新人声優」という肩書なんて、もう必要ないんじゃないだろうか? 彼女たちが声優業界の台風の目となる日も、そう遠くないはずだ。
冒頭でも記したように、「ボイたまプロジェクト」は世界に羽ばたく声優アーティストを目指し、さまざまなことにチャレンジしていくプロジェクトということで、今後はどんな企画で我々を楽しませてくれるのだろうか。今回の記事で興味を持たれた方は、次回の企画の際はぜひ参加していただきたい!
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