富野由悠季監督×ドリカム・中村正人がドツキ漫才!? 抱腹絶倒の劇場版「GのレコンギスタI 行け!コア・ファイター」舞台挨拶!
富野由悠季監督の最新作となる劇場版「GのレコンギスタI 行け!コア・ファイター」が、2019年11月29日より公開。初日には新宿ピカデリーにて、富野監督も登壇する舞台挨拶が行われた。
2014年にTVで放送された「ガンダム Gのレコンギスタ」(全26話)に新作カットを追加し、映像を再編集したのが、劇場版「Gのレコンギスタ」(全5部作)。その第1部となるのが、今回上映開始される「行け!コア・ファイター」だ。
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本編上映後、舞台に登壇したのは富野由悠季監督、主人公のベリル・ゼナム役の石井マークさん、そして小形尚弘プロデューサーの3名。映画の興奮冷めやらぬ満場の観客による、盛大な拍手に迎えられて登場した3人は、非常に和やかなムードの中で和気あいあいとしたトークを繰り広げた。
「Gレコ」TVシリーズ放送開始前、1~3話を劇場で先行上映するというイベントが開催されていたのだが、石井さんは控室で当時のことを思い返していたと語り、小形プロデューサーも満席の会場を見渡し感謝のことを述べる。
なお本作はすでにパリ、ニューヨークで開催されたコンベンションや現在全国巡回中の「富野由悠季展」で一部先行上映されていたが、それらは未完成部分もあるバージョンだったこともあり、本日が正真正銘の「初日」である。この事実には、富野監督も感慨深げだ。
放送終了から4年の時を経て、劇場版「GレコI」完成したことに対する感想を尋ねられた富野監督は、「4年の時間を与えられたことはありがたかった。この時間があったおかげで、本作を新作の気分で公開することができた」としみじみ語る。おそらくこのコメントは、偽らざる気持ちなのだろう。しかし富野監督といえば、舌鋒鋭い語り口でも知られる人物だ。
殊勝な言葉の数々に「ずいぶんと富野監督も丸くなったものだなあ」と思っていると、「今回は新作カットだけでなく、TVシリーズで使われたシーンもセリフを新たに収録し直した意図は?」という質問については、「5年前と同じ声が出せる人がいないから、しょうがなくやりました」と身もふたもない返事で、ファンを喜ばせる。
また、再び「Gレコ」に参加した気持ちを尋ねられた石井さんは、「いつも初心に帰られるホームだと思っています!」と本作への愛着を語った。「いいことを言うんだよ」とやさしくアドバイスし、じっと横顔を見つめる富野監督の視線に、ちょっぴりタジタジになっていたのは気のせい?
そのいっぽうで、TVシリーズに続いて本作のターゲットは子供たちなのか、という質問に対して「(TVシリーズは)自分の悪い癖が出ている部分があったので、子どもを対象にしないときれいな映画サイズにならないという意識があった。子どもたちを意識することで年寄りながらボケた動画にしないですんだのではないか。そういう意味ではキーワードは『子供たちに』です」と作品に込めた思いとともに、TVシリーズに対する反省が述べられた。
またこの舞台挨拶で、劇場版「Gのレコンギスタ」テーマソングアーティストがDREAMS COME TRUE(以下、ドリカム)に決定したことを改めて発表。サプライズゲストとして、メンバーの中村正人さんが登壇した。
富野監督と中村さんの出会いは、2010年に放送されたラジオ番組「電気事業連合会 presents エレクトリカルサタデーナイト 中村正人の夜は庭イヂリ」に、富野監督がゲスト出演した時だという。出会いから9年目にして、ついにアニメ作品の仕事をともに行うことになったのである。
ただ中村さん自身はこれまでガンダムに触れることなくきたそうだが、日本のエンターテインメントの礎を築いてきた富野監督世代のクリエイターに憧れてミュージシャンを志し、業界に入ってきたということで「監督にあった瞬間、神に抱かれた息子のような気分になった」と初対面時の心境を語る。
そんな中村さんは今年の夏頃、富野監督が「ガンダム」という文字とともに夢枕に立ったことを告白。その直後に、今回のテーマソングの依頼がきたというニュータイプの共鳴的なエピソードがあったことが明かされた。
いっぽう、ドリカムの起用については「映画版として仕上げていくときに足りないものがあった。新しい力がいると思ってお願いした」と語る富野監督だが、当初は「ドリカムに依頼するという発想がなかった」とコメント。ではなぜ依頼することになったのかと言うと、富野夫人である亜阿子さんが「だったらドリカムでしょ」とアドバイスしてくれたからだそうだ。
楽曲制作のうえでは劇場版「Gレコ」のテーマソングを作るにあたり、富野監督からは「(Iの)ポスターが全て」と言われたことから、ボーカルの吉田美和さんとともにポスターから聴こえてくる音を全部入れ込んだという。
ちなみにこの舞台挨拶には、テーマソングのレコーディング作業を抜け出して参加したということで、絶賛制作中の様子。通常、ドリカムの歌録りは3日で終わることが多いそうだが、当日は歌録り4日目。さらに「おそらくあと2日はかかるだろう」ということで、かなり気合を入れて制作していることがうかがえる。中村さんいわく「歌詞も音も、すべて『Gレコ』のために作った」そうだ。
なお「『Gレコ』テーマソングをドリカムが」というニュースについて、早くもネット上で賛否両論が巻き起こっていることは把握している様子の一同。これに対し、富野監督は「神(富野)がいいっていうんだから、黙れ!」と咆哮! 会場を大いに沸かせた。
そのテーマソングは、「I」の最後に流れる次回予告BGMとしてインストゥルメンタル版が使用されている。その曲の感想を尋ねられた富野監督は「(歌がないから)何にもわからん!」とバッサリ。さらに、最初に曲を聴いた時の監督の感想は「僕は、これは嫌いだな」だったそうで、思わず石井さんも「うそ―!」と絶叫(最終的に富野監督は「好きになれるように作ってね」とフォロー?してくれたそうだが)。
おまけに最初の打ち合わせの時、あらかじめドリカムのライブ映像を見てきというた監督は「ああいう感じじゃないんだよな」「ああいうガーッとした感じじゃないんだよ」と中村さんへのダメだしから入ったそうだ。これは30年ドリカムをやってきて初めての仕事のオファーされ方だったと、中村さんは苦笑しつつも「神(井荻麟)が作詞したほうがよかったんじゃないかと思っているんですけど(笑)。ドリカムファンの世代について監督から聞かれたので『ガンダムファンと同じくらいです』とお答えしたら『やっぱり失敗だったかなぁ』と言われたので『だったら米津 玄師に頼みましょうよ!』『YouTubeからGレコを広げよう!』と本当に提案したんです(笑)」とカウンター。
まるでどつき漫才のような切れ味鋭いトークの応酬に、登壇者たちは冷や冷や、観客たちはニヤニヤといったところ。富野監督も「全部真に受けないで!」と観客に釘を刺すというひと幕もあり、また会場は大きな笑いに包まれた。
それにしても面白いのが富野監督と中村さんの距離感の近さである。トップクリエイター同士、ひかれあう部分もあるのかもしれない。まるで長年の盟友のように肩を組んだり、向き合って話している姿を見ていると、こちらもなんだか楽しい気分になる。
この「なんだか楽しい気分」というポジティブな感情こそ、「Gレコ」的だと思うのだがいかがだろうか。こんな空気の中で制作されたテーマソングがどんな楽曲になるのか、完成が楽しみだ。
なお、劇場版「GのレコンギスタII ベルリ 激進」は2020年2月21日より公開予定。生まれかわった「Gレコ」がどんなドラマを紡ぐのか、引き続き注目だ。
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