謎の少女「カティア」ともに死の罠から脱出。制作秘話も語られた、VRゲーム「Last Labyrinth」SPECIALファンミーティング
車いすに縛り付けられた状態から、謎の少女「カティア」の助けを借りつつ、脱出するVRアドベンチャーゲーム「Last Labyrinth」のSPECIALファンミーティングが、2019年12月1日に東京都内にて開催された。同作のKickstarterバッカーミッション達成の特典として予定されていたもので、抽選で選ばれた幸運なファンがミニライブやトークセッションを楽しんだ。
「Last Labyrinth」は、PC、PS4、Oculus Quest用のVRアドベンチャーゲーム。車いすに縛り付けられてしまったプレイヤーは、謎の少女「カティア」の助けを借りつつ、脱出を目指す。カティアには言葉が通じず、自分も身動きが取れないのが、手にしたレーザーポインターでカティアに指示を出すことで謎を解いていく。実際にうなずいたり、首を振ったりしてカティアに意志を伝えるという、VRゲームならではの仕掛けがプレイヤーの心を揺さぶる作品となっている。2016年の東京ゲームショウに出展して注目を集めた後、2019年11月13日からいよいよ配信がスタートした。
ファンミーティングは、カティアを演じるステファニー・ヨーステンさんが、テーマソング「Last Labyrinth」を歌うミニライブでスタートした。ヨーステンさんは、オランダのモデル・女優・声優・歌手。「METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN」の「クワイエット」実写モデル・声優・モーションアクターを勤めたことで有名だ。また、テーマ曲を作ったのは「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」「ソウルキャリバーV」といった名作の音楽を手がけた菊田裕樹さんである。一流の才能どうしが融合したのが「Last Labyrinth」のテーマ曲というわけだ。ゲーム内で使われる架空言語による美しい歌声に、会場のファンたちは一心に聴き入っていた。
続いてはトークショーがスタート。まずはヨーステンさんに「Last Labyrinth」のディレクター・プロデューサーである高橋宏典さん、菊田さん、そしてサウンドデザイナーの花岡拓也さんを加えて、音楽に関する開発秘話が明かされた。本作の主題歌は、高橋さんが菊田さんの個人的なファンだったことから菊田さんに依頼することが決まったという。最初の打ち合わせでゲームの概要を聞いた菊田さん、即座に「メロディが降りてきた」のだというからさすがベテラン。こうして作られた主題歌は、高橋さんが抱くイメージにピッタリのもので、高橋さんは「菊田さんは超能力者だ」と絶賛した。
この主題歌には架空言語が使われているが、それだけにヨーステンさんにも歌うのが難しいものだったという。この言語をどう発音するかというところからのスタートで、ヨーステンさんの母国語であるオランダ語的な音の雰囲気も加えて現在の形になったそうだ。なお、気になる歌詞の意味についてだが、開発サイドには正解が存在するものの、これを明かすことはないとのこと。高橋さんは「謎ということにさせてください」とプレイヤーに解釈をゆだねた。花岡さんはさまざまな効果音を制作したが、罠の音についてはその材質や機構、サイズを理解したうえで作業が進められたという。罠の音の中には、電化製品の音を加工したものもあるというから面白い。プレイヤーの感情を揺さぶる、生理的にイヤな音がテーマになったそうで、花岡さんは「自分でもこんな怖い音は作りたくない」と思いつつの仕事だったという。
続いては、「死の館」をテーマに、高橋さんとヨーステンさん、リードエンバイロメントアーティストを勤めた草場美智子さん、レベルデザイナーの雨森 梓さんおよびパク・デゴンさんによる、ゲーム部分についてのトークがおこなわれた。
舞台となる館には、たくさんの恐ろしい罠がしかけられている。高橋さんからレベルデザイナーへのオファーは「簡単そうだけど、引っかかってしまった」ということだったそうだから、なかなかに難しい。メンバーはVRゲームの開発が初めてだったこともあり、「机上で作った罠がVRにすると意外につまらなかった」というケースも発生。作っては調整するを繰り返すうち、皆がHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を額に乗せて作業するのがうまくなったというから面白い。
罠については、パズル部分のメカニズムが先行するものと、失敗したときの死に方から作っていくものの両方があり、特に死に方については「VRでしかできない経験や、臨死体験をしたい」をキーワードにメンバーみんながこだわったそうだ。たとえば、プレイヤーの身体に刃物が刺さるシーンでは、「こんな角度じゃ刺さるのが浅くて、プレイヤーが死なない!」「プレイヤーが避けられないように胸元に突き刺さないと!」と試行錯誤したというからまさに執念。なかには「首をギロチンで切られた後、自分の胴体を見上げる」という恐ろしいアイデアもあったものの、レーティングの問題で没になったという。ヨーステンさんが開発現場を訪れた際、スタッフが喜々として死に方を説明するようなこともあったそうで、大層驚かれたそうだ。
死に方の話題については特に雨森さんが生き生きと話しており、前述のギロチンは「夢の死に方」、刃物は「お気に入りの死に様」と熱く語った。そのいっぽうで、雨森さんのお気に入りポイントは、カティアを放って置いた際に見せるかわいらしい動きだという。死に方とカティアのかわいらしさ、どちらへのこだわりもゲームをよくするためのものであり、つまりは職人魂の発露というわけだ。
ちなみに、初期の「Last Labyrinth」では、七つ道具を持ったカティアがプレイヤーと協力しつつ謎解きをするような内容で、失敗しての死は後から追加された要素なのだそう。ホラー的な要素はメインではなく、ヨーステンさんも「ホラーが苦手な人向けのホラーですね」と語っていたので、カティアのかわいらしさを目当てにプレイするのもアリだろう。
最後のテーマは「カティアという存在」。高橋さんとヨーステンさん、そしてカティアのキャラクターデザインを担当したテクニカルアーティストの田中達麻さん、謎の男「ファントム」をデザインしたキャラクターアーティストのタバリ・キミアさん、リードアニメーターの福山敦子さん、アニメーター兼テクニカルアーティストのブロードヘッド・アレクシス・ジャスミンさんというメンバーで、「Last Labyrinth」のキャラクター談義が行われた。
カティアのデザインはあまたの社内コンペで決められたもの。通常は2Dでイラストを描くのだが、今回はVR空間での存在感を重視し、いきなり3Dキャラクターの制作に入ったという。こうして生まれたカティアに命を吹き込むのがヨーステンさんの演技だ。架空言語による会話よりも、カティアがひどい目に遭わされた悲鳴を収録する際にテンションを保つのが難しく、演じていてかわいそうになってきたという。
そんなカティアに関わるのがファントム。この謎の男については、実際に遊んだプレイヤーから「恐ろしい」という声が多く寄せられるものの、ホラー感や恐怖を重視したデザインではないというから驚きだ。そのコンセプトは「謎の人」「誰でもファントムになれる感じ」。館の風景が暗いため、これにマッチさせる形でデザインが進められたという。制作ツール上では問題なく見えても、VR空間に配置したところ、イメージとは違ったということもよく起こったそうで、こちらでも作っては調整することを繰り返したという。ヨーステンさんも「ファントムの存在感が凄く、近づいてくるだけで怖い。(カティアが)死ぬシーンよりも怖い」と語っており、苦労した甲斐はあったといえるだろう。
「お気に入りのシーンはどこか」という質問で、スタッフたちが声を揃えてあげたのが、コラボレーションした「どうぶつしょうぎ」をするところ。イライラするファントムに細かい芝居が付けられているそうなので、プレイする際は改めてチェックしてみるといいだろう。
イベント終了後、高橋さん、菊田さん、ヨーステンさんへの合同インタビューが行われた。以下は、その内容となる。
――まずはイベントを終えられての感想をお願いします。
高橋 ファンの方々はあったかいなと思いましたね。
ヨーステン みなさんゲームをシッカリ遊ばれているようで、いろいろな感想が聞けて嬉しかったです。
菊田 ゲームとプレイヤーの距離感が近くて、ちょっと昔っぽいですよね。顔を合わせて話ができるのは近い感じがしてすごくいいなと思います。
――ユーザーの反応や、開発スタッフの話で印象深いものはありますか?
高橋 カティアやファントムに対し、こちらが思っている以上に愛着を持っていただいていて嬉しいです。
ヨーステン スタッフさんがすごく愛を込めて作っておられるのが伝わってきました。「カティアと言葉が通じなくてもコミュニケーションができているようだ」というお声がすごく嬉しかったですね。
菊田 今回のゲームはもっと血も涙もない感じになるのかなと思っていました。プレイヤーさんもスタッフさんもすごく愛情を持って接しておられるので、(音楽も)血も涙もない感じにしなくてよかったと思いました(笑)。カティアにスムーズに感情移入してもらうようにするというのが、僕の一番重要な仕事だったと思います。VRは新しいメディアですし、僕が音楽を作ることで、プレイヤーさんとゲームの距離を縮めるお手伝いができてよかったです。
高橋 菊田さんから曲の演出意図などのメモをいただいていたんですが、そうしたところをエンディングに反映するようなこともありました。菊田さんの曲で作品世界がより明確になったところはありますね。
――「どうぶつしょうぎ」とのコラボレーションは話題を呼びましたが、どのようなきっかけで成立したものなのでしょうか?
高橋 元々はオリジナルのゲームを入れることも考えていたんですが、「シンプルだけど奥深く、勝負に使えるようなもの」ということで「どうぶつしょうぎ」を採用しました。「駒を動かして王(ライオン)を取る」基本がわかれば、ルールはやっているうちに理解していただけるだろうと。
――プレイヤーに解釈をゆだねる作りだけに、SNSなどでも考察が盛り上がっています。こうしたものを見られての感想は?
高橋 ニヤニヤしながら見ていますね(笑)。作っている側として設定や意図はあるんですが、どのように感じられるかはユーザーさんごとに変わってもいいと思います。そこが映像として提案した意味です。これは作り手としてのエゴかもしれませんが、みんなに考えてほしいというところはありますね。
――もしみなさんが「Last Labyrinth」の世界に入るとしたら、主人公とカティア、ファントムの誰になりたいですか?
高橋 どれもイヤだな(笑)。……強いていうなら主人公ですかね。自分の責任の下で頑張れば脱出できますから。
ヨーステン なんとも難しいですね。主人公は厳しい選択をたくさんしないといけないですし。
菊田 僕はカティアがいいかな。ゲームのカティアはとってもいい女の子ですけど、僕はイヤなカティアになりたい(笑)。ウソを平気でついたり、冷たそうな顔をして笑ったり、主人公と一緒に死んだりする。服の色も違う感じで。
高橋 ニセカティアですね。
ヨーステン そんなカティアちゃんがいたら、ゲームをするのがイヤになりそうですね(笑)。
――今後、ゲームを体験できる機会は設けられますか?
高橋 年内に1~2回、体験会をする予定があります。また、Steam以外のプラットフォームでも体験版を配信する予定です。これに加え、TSUKUMOさんでの試遊も継続します。VR機材を置いてあるTSUKUMOさんであれば、申し出ていただければプレイすることが可能です。
――ありがとうございました。
なお、2019年11月29日より、菊田さんが作曲、ヨーステンさんが歌うテーマソング「Last Labyrinth」が主要ストリーミング&ダウンロードサイトで配信されている。興味のある人はダウンロードしてみてはいかがだろうか。
(箭本 進一)- 【配信情報】
- 楽曲名:「Last Labyrinth」 / Stefanie Joosten/Hiroki Kikuta
- 主要ストリーミング&ダウンロードサービスにて配信中
- 主要ダウンロードサービス: iTunes Store、レコチョク、mora 他
- 主要ストリーミングサービス: Apple Music、 Spotify、 LINE MUSIC、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、RecMusic、YouTube Music 他
↓以下URLより、各配信サイトよりダウンロード、視聴可能です。
- 【『Last Labyrinth』ゲーム概要】
- タイトル:Last Labyrinth (ラストラビリンス) ジャンル:VR脱出アドベンチャーゲーム
- 対応HMD:PlayStation VR、HTC Vive、HTC Vive Pro、HTC Vive Cosmos、Oculus Rift、Oculus Rift S、Oculus Quest、Windows Mixed Reality Headset、Valve Index
- 対応機種:PlayStation 4、上記HMD推奨PC相当(Intel Core i5 4590/NVIDIA GeForce GTX 1060以上)
- 配信ストア(ダウンロード専用):PlayStation Store、Steam、Oculus Store、Microsoft Store(後日公開予定)
- プレイ人数:1人 オンラインモード:非対応
- 発売中
- CERO:D
- 価格:3,980円(税別)~ ※配信ストアにより異なります。
- 公式サイト:https://lastlabyrinth.jp
- 著作権表記:(C)2016 AMATA K.K. / LL Project
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