【グッズプレゼントあり！】アニメが切り開くメガネの新たな市場とは!? アニメコラボメガネ専門店「アニメガネ」【コラボのゲンバ第7回】

アニメや声優などのサブカルチャーとさまざまな業界のコラボレーションが活発化する今日この頃、「おっ！やってくれるな」「何？そうきたか！」とファンの心を刺激してくる商品、コラボ企画が続々と登場している。そこで、アキバ総研的に気になる「コラボ」の企画現場に伺い、企画の魅力やおもしろエピソード、苦労話などの制作裏話を、あれこれ伺っていこう！という連載が「コラボのゲンバ」だ。

第7回に登場するのは、アニメコラボ専門店「アニメガネ」。アニメとメガネのコラボは多々あれど、ここのコラボメガネはひと味違う！　メガネ専門店から脱サラして起業したという、運営会社である株式会社t.n.tの代表取締役社長・朝倉鏡介さんに起業の経緯やコラボメガネ制作時の苦労話、アニメガネの強みや人気のメガネについて伺った。

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—— まずは会社概要について教えてください

朝倉　私自身、もともと別のメガネ専門店に勤めていました。その後、メガネ専門店を立ち上げようと独立し、１店舗目の「執事眼鏡 eyemirror」をスタートさせました。店名を聞くと執事系キャラのコラボ眼鏡を思い浮かべるかもしれませんが、ここでは通常のブランドの商品をメインに取り扱っています。全体の70%は一般ブランドを扱っています。その次にオープンした「アニメガネ」は、100%コラボ眼鏡のお店です。

—— コラボではなく「メガネありき」で始まったお店なのですね

朝倉　そうです。さまざまな一般のブランドを販売したいという思いでたちあげました。立ち上げ時の10年くらい前というと、スリープライスショップ――いわゆるお求め安いメガネを取り扱うチェーン店が出始めた頃で、従来のメガネ専門店が衰退しているという状況でした。若者にとって値段的に買いやすいお店が登場したことで、メガネ専門店からは若者の足が遠のき、結果的に若者向けメガネが扱われなくなっていきました。実は、若者向けのブランドもたくさんあるのに、知らない人が多く、実際にメガネ専門店に来店したお客様が、「え？　このブランドにもメガネがあるんだ」と驚く事も少なくありません。たくさんおしゃれでかっこいいメガネがあるのに、知ってもらう、手に取ってもらう機会がない。これはメガネ業界にとってはよくないこと。もっと手に取ってもらうためには……と考えたところ浮かんだのがアニメとのコラボでした。あくまでひとつのきっかけ、呼び水という意味合いがありましたね。アニメを通してメガネの楽しさを知ってほしいという思いでした。

—— もともとアニメが好きだったのですか？

朝倉　大きな声では言えないですが……、コミケには晴海時代から参加する程度には好きです。

—— それは、かなり好きですね（笑）

朝倉　ははは（笑）。実は同人誌やコスプレもやっていたりしています。最初のコラボメガネとなった「東方Project[東方MEGANE]」もコミケがきっかけになっています。

—— メガネキャラ以外とのコラボメガネも、たくさん出ているようですがーー

朝倉　はい。そういう反応も多くあります。でも、バッグやTシャツ、シューズなどさまざまなコラボ商品が登場していますよね。コラボしたキャラクターにそれらのイメージがないのに、そういった商品とコラボしても何も言われない。でも、なぜかメガネだけが「メガネキャラじゃないのに……」といつも指摘されます（笑）。　

—— 眼鏡は身体のパーツのひとつとして認識されるからですかね？

朝倉　なぜメガネだけ？と思ってしまいます。実際のところ、メガネキャラのメガネよりも、キャラクターをイメージしたメガネの方が、評判がいいということが多いですね。

—— どんなメガネが人気ですか？

朝倉　イメージ眼鏡というキャラクターのイメージを眼鏡にデザインしたものが人気です。「Fate」シリーズのセイバー（アルトリア）や遠坂凛モデルなどの人気が高いです。もともとメガネをかけたキャラクターの眼鏡は、シンプルなものが多く一般的な眼鏡との違いがわかりづらいために、大きく売れるということは少ないです。

メガネキャラがかけているものが売れるためには、キャラクターに人気があること、そして個性のあるメガネであることが条件です。ただそういったパターンはほとんどありません。今でも売れているメガネキャラのモデルは「TIGER & BUNNY」のバーナビーモデルや「魔法少女まどか☆マギカ」の暁美ほむらモデルです。

—— かっこいいですよね。お値段の売れ筋はありますか？

朝倉　フレームのみの値段で14,000円くらいの商品をメインに扱っていますが、売れ筋もその価格帯です。レンズをつけるとプラス6,000円となり、大体20,000円前後が一番人気です。格安眼鏡量販店で購入するよりも少し高く感じるかもしれません。

—— ファーストメガネからお手軽な価格帯に慣れているお客様でも、付加価値に納得すれば購入！という感じでしょうか？

朝倉　はい。ありがたいことに、当店はリピーターの方がとても多いです。メガネの魅力を知ってほしいと、業界の将来を考えて作ったメガネ屋なので、リピーターの方が多いことをとてもうれしく思っています。

—— アニメとのコラボメガネを制作するうえでの苦労したことはありますか？　メガネのプロが立ち上げた会社なので、そういった苦労があまりなさそうですがーー

朝倉　たくさんありますよ。そもそも権利関係で企画がうまく進まないことは当たり前ですし、工場がそもそも作ってくれないことが多かったです。「アニメとメガネを組み合わせる意味がわからない」と言われることもあり、売れる前提じゃないと作ってもらえないというのが現実でした。メガネ業界は古い業界なので、新しいことに関しては、首を縦に振ってくれる人が少ない。売れる確信はあっても、作ってもらえないことには始まりませんから。

—— 「東方project」が最初のコラボ作品だとおっしゃってましたが

朝倉　東方projectとメガネの親和性については、鍋島テツヒロ先生が書かれた「TOHO　MEGANE」という同人誌を見て感じていました。そこで、鍋島先生に声をかけ許諾を得て、「東方project」の版元様におうかがいを立てました。作家さんと一緒にデザインからしっかり提案できたこと、何より「東方project」さんが、新しい発想に理解があり、フレキシブルであったことも幸運でした。もちろん、苦労もありました。デザイン重視にすると、メガネとしての機能が低下する。その辺りの擦り合わせには本当に手間と時間がかかりました。今ではトータル20種類以上販売していて、12,000本以上売れ続けるヒット商品となっています。

—— コラボがひとつ成功すると、次からは楽だったのでは？

朝倉　実績があるので提案がしやすくなったことは事実です。現在は年間に25〜30種類を発売しています。ひとつのタイトルで数キャラ分のメガネを作るので、本数的にはそのくらいの数字になりますね。

—— 売れるタイトルを選ぶときのポイントはありますか？

朝倉　円盤の売れ行きとか、Twitterの動向、同人イベントとかサークル参加数とかいろいろありますけど、決め手となるのは私の感性です（笑）。アニメコラボは狭いジャンルですが、デザインの幅は広いなと感じています。キャラモチーフだけでなく、デザイン性の高いもの、ギミックのあるメガネは根強い人気です。

—— メガネのプロが始めたコラボメガネというだけで、「ちょっと違う」と感じますが、実際「強み」はどこにありますか？

朝倉　電車に乗っていて「当店のメガネだ」と気づくことが多いです。コラボメガネはたくさんありますが、当店の作り方は同じ形のプラスチックフレームに色をつけて何色もラインアップを並べるという作り方ではありません。金型から起こしています。価格帯はチェーン店のコラボメガネよりも少し高めになりますが、金型から作っているので、一度比べていただければ、「こだわり」を感じていただける自信があります。若者にメガネの楽しさを知ってほしいという気持ちから始めたので、ありきたりのデザインに色だけ変えるというやり方はしたくなかった。それに明らかにキャラクター物を身につける時代でもないですよね。オタクが一般化してきている、そんなところも狙って、最終的には「職場にもつけていける」というメガネ作りにこだわっています。コラボと知らずに普通にデザインが気に入ったからと、購入していくお客様もいます。付属のメガネ拭きをおつけしたら、「いりません」とおっしゃる方もいるくらい（笑）。デザインだけでも勝負できる自信があります。

—— 今後の展開について教えてください

朝倉　海外ユーザーからのお問い合わせも多いので、海外で人気が高いアニメにも注目しています。お客様から商品化のリクエストをいただくことも多いのですが、名前があがる作品は、だいたいすでに動いているか、他社が始めているかという感じです。人気のアニメは争奪戦になるのは避けられませんし。でも、当社は「メガネ屋」の強みをいかしたデザイン性、メガネとしての機能を追求して、よい商品をお届けしたいと思っています。実際に手にとって見ていただきたいという気持ちが強いので、地方にも店舗を！と考えています。

—— ありがとうございました。気になるメガネがあるので、次回作るときにはおじゃまします！　