いってらっしゃい、橘田さん! 「アニメ、餃子、百合──魅力的な日本文化を世界に伝える人になりたい」声優・橘田いずみ、渡英直前インタビュー

2009年から声優ユニット・ミルキィホームズのメンバーとして活動してきた声優・橘田いずみさん。橘田さんは近年、「美人すぎる餃子評論家」として「橘田いずみのザ・餃子」「本日も餃子日和。」といった書籍を出版したり、百合専門家としてコミック「リバティ」の原作を担当したりと活躍の幅を広げていた。

しかし2019年1月にミルキィホームズとしてのユニット活動を終了した橘田さんは、その後、この6月からイギリスに留学して本格的に英語を学ぶことを発表。ファンを大いに驚かせた。

今回、アキバ総研では、渡英直前の橘田さんに「留学」という選択に至った経緯や、イギリスでどんな生活を送る予定なのか。そして。これからの10年後の「橘田いずみ」像について、インタビューさせていただいた!

──橘田さんが英国留学を決めたのはいつ頃だったんですか?

橘田 決めたのは1年半ぐらい前です。2017年の終わり、ミルキィホームズのユニット活動のファイナルを聞いたのがその頃だったんです。ミルキィホームズとしての10年間を終えた、その先の10年のことを改めてじっくり考えてみたんですね。私、変化がない単調な人生を歩めない人間なんですよ! 性格的に同じ家に1年以上住めないくらいで。変化と刺激がないと生きていけないんです。

──変化を求めた先が海外留学だった。

橘田 当時、私は姉の結婚式でハワイに行ったのですが、姉の旦那さんが海外の方なので、結婚式は基本的にオンリーイングリッシュ! ある程度のコミュニケーションはできるんだけど、やっぱり英語がちゃんと話せないから向こうのかわいい子供ちゃんとも話せなかったりして、超ストレスに感じたんですよ。その時ちょうどミルキィホームズのファイナルの話を聞いたタイミングだったので、海外でゆっくりと自分の今後を見つめ直したときに、スキルとして伸ばしたいのはなんだろうと考えて、それがやっぱり英語だったんです。

──海外イベントで、サンキューとしか返せないのが悔しいとは、以前から言ってましたよね。

橘田 そうですね、海外に行くたびに言っていた気がします。向こうのファンの方が「好きです」とかいろんな思いを伝えてくれるのに「サンキュー」としか言えないし、英語で返す勇気がまずないんですよ。そんな自分が嫌でした、かっこわるくて。

──響でやっている「HiBiKi StYle」では、橘田さんが英会話に挑戦する動画も多いです。それは留学の意志を受けてのことなんですか?

橘田 いえ、それは留学を決める前に、向こうから来た企画でした。単なる偶然? ほかのメンバーもやってるのかと思ったら橘田さんだけですって言われました。私が英語話せるようになりたいって話はずっとしていたので、何かを察せられていたのかもしれません(笑)。

──学生時代、英語は得意でしたか?

橘田 小学校では英語の塾に通っていたし、中学校までは英語が得意な子だったんです。でも高校から、ザ・理系に進んでしまったんですね。理科数学の科目ばかりで、英語の授業がほとんどない感じで。その後、語学はフランス語を勉強したりしていたので、平均より英語力はなかったと思います。だからまずは(日本人のレベルで)普通に英語ができるようになりたかったです。

──留学を決めてからは英語の勉強を?

橘田 してます! 英会話の学校に1年ぐらい通っています。

──上達の実感はありますか?

橘田 めっちゃあります! イギリスに渡る荷造りをしていた時、1年半前に英語の集中講座に通った頃のノートが出てきたんです。自分めっちゃ馬鹿でした(笑)。「現在完了」って何?って感じだったし、単語も全然知らないし。それがわかるぐらいには上達したと思います。

──百合、オタク、餃子といった橘田さんの専門分野にまつわる言葉は、学校教育ではあまり学ばないですよね。

橘田 レッスンではそういうこともめっちゃ話してます! 私の仕事のこととかもわかったうえで紹介してもらった先生なので、こういうことを話したい、学びたいということは全部伝えてあるんです。

──マンツーマン的な感じなんですね。餃子って英語でなんて言うんですか?

橘田 “Gyoza”です。

──国際語ですね!

橘田 でも4年前にシカゴに行った時はGyozaが通じなくて、(ポーランド料理の)「ピエロギ」のほうが通じました。「like Chinese dumplings」だよって言ってようやく通じる感じで。今はどうなのかなぁ……LA(ロサンゼルス)はGyozaで通じました!

──英語を学べる場所は数ある中で、イギリスを選んだ理由は?

橘田 いろいろ理由があるんですが、シャーロックホームズが生まれた場所だから! とオフィシャルには言ってます(笑)。ミルキィホームズとして活動を始めた頃に行ったのがイギリスで、やっぱり10年やってきた作品ゆかりの地としての思い入れがあります。あと、私の姉はアメリカ在住が長いのでフランクな英語を話すんですけど、私は(本格的でていねいで慇懃な)感じが悪いお高い英語を話す人間になりたかったんです(笑)。

──もし橘田さんが声優として英語で演じるとしたら、そういう英語がハマる役が合いそうですね。

橘田 たしかにそうですね! ありがとうございます(笑)。そういう感じに憧れがありました。あとは現実的な話をすると、私が行く学校はいろんな国にあるんですけど、アメリカの学校の近くの部屋は家賃がとんでもなく高くて、とても無理だったというのもありますね。



ミルキィファイナルライブへの特別な想い

──改めてうかがいますが、海外留学を決断したのは、やはりユニット・ミルキィホームズのファイナルが大きかったんですね。

橘田 1年も日本を離れるということが、それまでは無理だと思ってたんですよ。みんなに忘れられちゃうかもしれないし、仕事に迷惑をかけてしまうだろうし。

──条件的に行けるかもしれないとなってから、決意はすぐ固まりましたか?

橘田 私は思い立ったら即断即決なので、すぐでした。行くぞと思った時にシンガポール出張があって、現地で響の社長や木谷さんに会ったので、その場で留学したいと話しました。

──木谷さんたちの反応はどうでしたか?

橘田 会社や事務所的には、英語が話せる人間がいるとすごく助かるというのはあったみたいなんです。「今から行きなよ」と言われて、ミルキィとかもあるのにすぐ行けるわけないじゃん!って(笑)。

──きちんとミルキィホームズを最後までやりきってからということで。大きな節目になった日本武道館の「ミルキィホームズ ファイナルライブ Q.E.D.」はどうでしたか。

橘田 ファイナルライブは、最高でした。メンバーみんなが言っていることですが、思い残すことが1ミリもなくて、全部をやりきった、そういうライブでした。自分の想いも手紙という形で全部伝えることができました。

──メンバーだけでなく、帰っていくお客さんまでがみんな楽しそうな笑顔で、こんなファイナルってあるんだなと思いました。

橘田 そうなんですよね、みんなそう言ってくださって嬉しいです。最初にファイナルライブを発表したイベントでみんなが悲しい顔をしていたことがすごくつらかったので……。それからの1年はライブやイベントに出ても、「またね」とか「ずっと応援してね」の言葉を言えなくて、なんて挨拶したらいいのかわからなかったです。だから最後のライブはもう、爆発しました。

──笑いあり涙ありのライブで。ミルキィホームズでああいうウェットな時間があったのはファイナルならではという気がしました。

橘田 さようなら~って。終盤のくだりはリハーサルでやりたくなかったですもん。心がきゅーってなっちゃって、1回しかできませんでした。挨拶でひとりになるのも寂しくて。

──このライブが終わったら留学を含めた新しい活動に向かうことは意識していましたか?

橘田 環境が大きく変わることがわかっていたので、特別な想いはありましたね。最後の「バイバイエール!」もすごく感動したし、「行ってきます」という気持ちになりました。そのあたりはほかのメンバーともちょっと違った心境だったかもしれません。

──最後のメッセージで、橘田さんのお手紙が巻物だったのはインパクトがありました。

橘田 あれはちゃんと理由があるんです! ライブが終わった後、手紙はタイムカプセルに入れて保存するという話があったんですね。便箋だと劣化しちゃうかもしれないじゃないですか。巻物だと長くもちそうだし、時間がたっても味があると思って、通販で探しました。

──ちょっと枝の話になりますが、佐々木さんが円陣のかけ声の前に「大きな声出します」と前もって言ったのは、地方公演でかけ声にすごくびっくりした橘田さんに頼まれたから、と聞きました。

橘田 私言ったのかな、覚えてない! 「最終道」の途中から「声出します」と言い始めたなぁ、と思ってました(笑)。でも最初はたしかにすごくびっくりしました、あんなにおっきな野太い声を出すと思わなかったので、おぉってなりました。佐々木は宴会部長なので、いつも飲み会で挨拶するのは佐々木です。

──ファイナル後も、ライブ後は焼肉で牛タンを?

橘田 行きました! 牛タンはひとりひと皿以上食べました!

──「一番いい牛タンを全員注文する」って風習はいつ生まれたんですか?

橘田 最初からです。結成した時から頼んでました。

──こう言ってはなんですが、お金がかかる新人ユニットですね(笑)。

橘田 かかりましたかかりました! 私たちは食にはこだわりすぎなんですよ。ポピパ(Poppin’Party)ちゃんたちとかに聞くとそんなことないので、ミルキィは食費のかかるユニットでした。最初はまだ会社(ブシロード)も小さいころで、打ち上げは社長のポケットマネーだったりしたので、遠慮がなかったのかもしれません(笑)。それもあって、ミルキィホームズのライブ打ち上げは少人数が多かったです。



イギリスでの生活や活動は?

──貴重なエピソードありがとうございます。英国留学の話に戻りますが、現地で橘田さんがどんな風に過ごす予定なのかについても少しうかがえますか?

橘田 もう1週間、語学学校の授業やレッスンがびっしりです。間に自由選択授業も入れたので、あれこれ1日中、学校じゃない? みたいな感じで。

──大学受験前最後の夏みたいな感じですね。

橘田 ほんとそんな感じなので、ちょっとびびってます。登録も英語だったので、授業の細かいところは実際に飛びこんでみてオリエンテーションで聞こうかなと思ってます。

──食にこだわりありの橘田さんですが、イギリスと言えば食事の評判があまりよくありません。以前ミルキィホームズとして渡英した時の食事はどうでした?

橘田 まずかったです。すっごいまずかったです! スープパイみたいなのとかも食べたんですけど、おいしくなかったことしか覚えてないぐらいまずかったですね。

──そこに住むのは大丈夫ですか?

橘田 ちゃんとしたキッチンがついた部屋を借りたので、基本は自炊でがんばろうと思っています!

──そういえば、イギリスでも最近焼き餃子が流行っているんだとか。

橘田 イギリスに限らず、ヨーロッパですごく餃子がブームみたいなんです。だからイギリスに行って落ち着いたら、周りの人を招いて餃子パーティーをやろうと思ってます。せっかく餃子ブームなんだから、現地のお店にコラボしたいですって言いに行ってみようかなとか、いろいろ考えてます。

──最初留学と聞いて、海外に餃子のお店でも出す下準備かしらと思ったんですよ。

橘田 やりたいです。この前NHKのラジオに出た時に、10年後の自分はヨーロッパで100店舗の餃子チェーンを経営していたいって。海外に日本の文化を広めたいという思いが強いので。餃子、百合、広げていきたいです。

──声優として、餃子評論家として、百合専門家として。留学でマスターした英語をこう生かしたい、といったイメージを聞かせてください。

橘田 餃子のお店は出したいし、英語版の餃子の本も出してみたいですね。パラダイス山元さんが英語で餃子本を出したりしてるんですよ。あと、私のお姉ちゃんの旦那さんが顔出しできる人なので、一緒に餃子ユーチューバーになりたいです。

──義理のお兄さんはどんな人なんですか?

橘田 アメリカ人なんですけど料理が大好きで、日本食の本をあげると毎日試作品の写真が送られてくるんです。一緒に日本食紹介しない?って言ったらノリノリだったので、いつかやってみたいですね。餃子に限らず、日本の食文化を発信したいです。

──英語と百合、についてもうかがいたいです。

橘田 海外のイベントに行くと、ファンの人はみんな百合の話をしてくれます。私が連載する雑誌とかもどこからともなく手に入れてくれていて。だから各国に百合好きはちゃんといると思うんですけど、なかなか現地で百合の本を手に取る機会はないと思うんですね。だからレインボープライドとか、海外のイベントで百合ブースを出展して本を売りたいです。

──海外の百合ファンとの交流のエピソードなどがあれば教えてください。

橘田 アメリカに「百合おばさん」という人がいるらしいと人づてに聞いて、検索してみたら私のツイッターアカウントをフォローしてくれてたんですよ。(橘田さんが原作を担当する)「リバティ」についてもぶわーっと感想を書いてくれていたりして。アメリカの各地で百合イベントに参加したり、展示をしたりしているらしいので、そういう人たちとコンタクトを取れたらいろんな可能性が広がるんじゃないかと思ってます。自分が英語を話せるようになることで、そういうコミュニケーションの幅も広がればなと思っています。逆に、海外のオタク事情を日本に伝えたりもしたいです。

──声優としてやMCとしても、英語ができれば世界が広がりそうです。

橘田 英語でナレーションができるようになりたいんです。それに自分が出ている作品の英語版が制作されるときに、声が変わらないっていいなと思って。今、NHKでも日本人が英語で演じる番組があったりするんです。留学しますって公表してから、収録スタジオの関係者の人たちから、今英語で演じたりナレーションしたりする仕事がすごく増えてるって教えてもらったりするので、そういう仕事ができる人になりたいです。

──逆に外画の英語を日本語に吹き替えるのにも、きっと役立ちますよね。

橘田 原語のニュアンスがわかるのはすごく大きいと思います。声優としてもそうだし、海外イベントの司会ができるようにもなりたいんですよね。日本のアニメ業界の事情がわかる英語の司会者ってそんなにいないと思うので。

──たくさんの夢のためにも、1年がんばらないとですね。

橘田 ほんとです。物おじせずに、発音もちゃんとかっこよく話せるようになりたいです。

──では最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。できれば英語でひと言もいただけると。

橘田 1年間行って、自分がどこまで成長できるかはまだわからないので、橘田さんならすぐに英語話せそうって言ってもらえるのが結構プレッシャーだったんです。でも渡航の日が近づいて、あ、このプレッシャーもパワーにできるんだと思うようになりました。だから私にしかできないことをして、あ、普通の留学とはちょっと違うんだね、と思ってもらえる面白い話を持ち帰りたいと思います。たくさん人生経験を重ねて、海外の、世界の人の価値観を持てるようになりたいと思います。日本と海外のものをお互いに伝えられる声優兼餃子研究家兼百合評論家になります! 半年後に一度帰ってきた時に近況は報告したいとは思いますが、1年後も橘田いずみを忘れずに、成長した私を見に来てくれたら嬉しいと思います。行ってきます! I can do it!!

(取材・文/中里キリ)


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・賞品発送:2019年8月末までに発送予定

・応募方法:以下の専用応募フォームにて受付


<注意事項>

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