「BIRDIE WING -Golf Girls’ Story-」Season1放送終了記念!「ゆるふわゴルフアニメ」から唯一無二のオリジナル作品への大転換! 【關山晃弘プロデューサーインタビュー前編】

2022年春クールアニメでどれが一番面白かった? と問われれば、「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」と即答しよう!

女子ゴルフをモチーフにしたオリジナルTVアニメとして2022年4月から放送を開始した本作「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-(バーディーウイング ゴルフガールズストーリー)」(以下、「BIRDIE WING」)は、監督に「ジュエルペット サンシャイン」「タイムボカン24」などを手がけた稲垣隆行氏、シリーズ構成に「機動戦士ガンダム00」をはじめ多数の人気作品を生み出してきた黒田洋介氏を起用。

賭けゴルフで生計を立てていたイヴと、大企業の令嬢でエリートゴルファーである天鷲葵が織りなす物語は、ドラマティックなストーリー展開、熱い必殺ショット、衝撃的な演出、小ネタの妙が相まって、毎回小気味いい楽しさと興奮にあふれていた。

スラム街を舞台にしたハードな序盤から一転、Season 1後半は日本の学園を舞台に王道スポ根もの的な展開に突入。先の読めない展開や魅力的なキャラクターが続々登場し、ますます盛り上がってきた……というところでSeason 1の放送は幕を下ろした。

アキバ総研では、そんな話題の「BIRDIE WING」をフィーチャー。Season 1が終わり、直後に発表されたSeason 2への期待感がつのる中で、企画の立ち上げから全てを見てきたバンダイナムコピクチャーズ(以下、BNP)プロデューサーの關山晃弘(せきやま あきひろ)氏を直撃。本作の狙いや制作裏話から、衝撃を与えた仕掛けや小ネタの真実まで時間の許す限りうかがった。

最初は「ゆるふわゴルフアニメ」を考えていた

――「BIRDIE WING」、めちゃくちゃ面白いですね! 反響はいかがですか?

關山 見ていただいた方に「面白かった」と言ってもらえて、すごく嬉しいです。僕も、業界外の友達に「アマプラ(Amazonプライム・ビデオ)でも見られるから」と伝えたらドハマリしたみたいで、続きが気になると言っていました。Season 2までに、さらにいろんな方に届けたいですね。

――ゴルフは日本でも世界でも知名度のあるスポーツでありますが、実はアニメって少ないですよね。昭和の時代から考えても「プロゴルファー猿」「あした天気になあれ」「DAN DOH!!」、あとは短編の「空色ユーティリティ」ぐらいしかないように思います。そんな中でなぜいま、女子ゴルフをテーマにしたアニメをやろうと思ったのですか?

關山 企画の発端は僕ではなく、同じくBNPで企画営業を担当している乾(雄介)アソシエイトプロデューサーなんです。僕はゴルフをやらないタイプだったんですけど、乾がゴルフを始めてすごくハマっちゃったらしく、彼のゴルフ熱にあてられました(笑)。BNPと、その親会社であるバンダイナムコフィルムワークスはオリジナル作品に力をいれており、「作るならやっぱり自分たちが好きなものを!」という社風があって。乾と「ゴルフのアニメをやりたい」「じゃあ一緒にやろうか」となったのが始まりです。

僕もこれまでいろいろな作品を作ってきましたが、確かにゴルフのアニメは近年ほとんどないなと思って。それでゴルフのアニメをどう形にしようかとイメージした時に、皆さんがあまり見たことのない面白い映像が作れると感じたんですね。緑の深い木々やグリーン、青空があるだけでも、見ていて気持ちのいいアニメが作れるんじゃないかと。


――具体的にどのような内容にするかは、監督やシリーズ構成を決める前に考えたのですか?

關山 そうですね。だいぶ社内でもみました。実は、最初は「ゆるふわゴルフアニメ」で考えていたんですよ(笑)。「けいおん!」のように部室で女の子がわちゃわちゃして、たまにゴルフをやるみたいな。どちらかというと、「愛でるアニメ」を考えていたんです。

――なんと!

關山 でも、(現在はバンダイナムコフィルムワークス内のブランドである)サンライズの血を引く会社、ひいてはバンダイナムコグループの一員として本当にこれでいいのか?と。当時の上役などにゴルフをやっている方も多かったので、いろいろな方に意見をうかがいに行きました。そんな中で、当時バンダイナムコホールディングスの顧問を務めていた石川(祝男)さんにまで持っていったんです。そうしたら「こういう企画はBNPが作らなくても、ほかの会社やスタジオが作るだろう。バンダイナムコで創る作品は、王道な作品であるべき」と一喝されまして。

「僕らは女の子がわちゃわちゃしたゆるふわアニメを作りたかったんだけどなぁ……」「でも石川顧問に言われると説得力あるなぁ……」と思いましたね。それまではオリジナルだし、外したくないし、そこそこの制作費の回収がちゃんと読めるもの――変な話「ポテンヒットでいいかな」と考えていたんです。でも、そう言われて企画を練り直し、結果として現在の内容へとつながる原型ができあがりました。

――石川さんはさすがですね。お話を聞いていて、仮に「ゆるふわゴルフアニメ」だったとしたら、やはりポテンヒットに落ち着いて、埋もれてしまった気がします。その路線に行かなかったからこそ、我々もすごい作品が来たと思ったわけで。

關山 “ゴルフを題材にして、女性キャラを出したい”という核は変えずに、どうやったらもっともっと面白くなるか。もっともっとサンライズやBNPらしさ、バンダイナムコグループとして広がりのあるタイトルにできるのか。そうしたことを、僕と乾と当時のBNPの社長の3人でめちゃくちゃ考えました。頭から煙が出るぐらい、あーでもないこーでもないと。自問自答みたいな感じですよね。

「BIRDIE WING」は、女性版「スクライド」? 令和の「プロゴルファー猿」?

――内容的には、ナフレスのスラム街を舞台にした第8話までと、イヴが日本に来て雷凰女子学園を舞台に活躍する第9話以降では、かなり毛色が違いますよね。両方とも最初から考えていたのですか?

關山 「BIRDIE WING」は実は当初から2クール作品として考えていて、最初は「ナフレス編」だけで2クール作れると思っていたんですが、やっぱりもう少し早い展開で構成しようとなりました。今ってアニメも実写ドラマもだいたい展開が早くて、それで視聴者がついて来られないかというと、ついて来られるんですよ。だから実際に2クールやるとなった時に、ひとつの縦軸で引っ張るよりは、場面もしくはキャラクターの配置転換をして、短いお話が複数ある構成にしたいと稲垣監督や黒田さんにお願いしました。

――その稲垣監督や黒田さんの名前を見て、アニメ好きの人はざわついたわけですが、この座組でやろうと考えた理由を教えてください。

關山 黒田さんは言わずもがな、ヒットメーカーですよね。僕自身、前々からご一緒したいと思っていましたし、企画を立てた乾ももともとサンライズで「機動戦士ガンダム00」や「ガンダムビルドファイターズ」に携わっていた経験がありましたので、今回の企画に黒田さんは間違いないと。それに、ハードボイルドだったり学園モノだったり、女の子をかわいく描きながらも切れ味の鋭い脚本を書ける方となると、黒田さんしか頭に思い浮かばなかったんですよね。それで、黒田さんにお願いしつつ、稲垣さんにもお話をしました。

稲垣さんは僕が前の会社にいた時に「ジュエルペット サンシャイン」などでご一緒していて、彼の演出はよく知っていました。今回はオリジナル作品で、ゆるふわにはしないと決めていましたが、仮にゆるふわに転んでもハードボイルドに転んでもうまく料理してくれるのは稲垣さんしかいないと思ったんです。実際に、黒田さんの構成があがってきた時に、前半は「ナフレス編」でハードボイルドな雰囲気、イヴが海を渡ってからの「日本編」は、時にはちょっとゆるふわな雰囲気も醸し出す学園モノだったので、監督は稲垣さんにお願いしてよかったと思います。

――ちなみに、イヴはどの段階から〈直撃のブルー・バレット〉などの必殺技(ショット)を叫んでいたのですか?

關山 最初からあれでした(笑)。

――あれを聞くと、どうしても「スクライド」(黒田さんが脚本を務めたSFアクションアニメ。TVアニメは2001年7月〜12月放送)が頭に浮かんじゃって(笑)。

關山 そこは、視聴者の心を揺さぶるような内容にしたいと思い、正直、黒田さんに発注する時に「『スクライド』のストレイト・クーガーや『機動戦士ガンダム00』のグラハム・エーカーのように、登場キャラクターを特徴的にしたい。キャラ立ちさせたい」とお話しました。

――そのいっぽうで、イヴは賭けゴルフで生計を立てているし、必殺技を使うし、令和の「プロゴルファー猿」じゃないかと評する人もいました。そう思われることについては正直いかがですか?

關山 「プロゴルファー猿」「あした天気になあれ」「DAN DOH!!」は僕も昔見ていました。その中で、「プロゴルファー猿」まではいかないよね、というのが稲垣監督や黒田さん、僕、乾の共通した線引きだったんです。スーパーショットを打つとしても、“プロゴルファーが100回チャレンジしたら、もしかしたら1回ぐらい成功するかも”というぐらいのファンタジー感というか、リアル感を求めていきましょうと。なので、令和の「プロゴルファー猿」を狙ってはいなかったですけど、言われること自体は嫌じゃないですね。監督もたびたび名前を出していますし、それで見ていただけるのであれば嬉しいかなと思っています。

――確かに、あそこまでの超次元的な必殺技ではないですからね。彷彿とさせるものはありましたが。〈天空のレッド・バレット〉は「プロゴルファー猿」で言えば〈モズ落とし〉ですし。

關山 第7話だったと思いますが、オンエア後にたまたまTwitterを見たら「素直に旗つつみ(「プロゴルファー猿」の主人公・猿谷猿丸が使う代表的な必殺技)をやれよ」みたいなツイートがありましたね(笑)。ピンの真上に当たっているんだからと。

――近しいことをやっても不思議じゃないなと正直思いました。

關山 そのようなところも含めて、シナリオ段階からプロコーチで世界ジュニアゴルフ選手権・日本代表監督でもある井上透さんを中心に、協力でクレジットされているグローバルゴルフメディアグループ(ゴルフ雑誌「ALBA」「Regina」等を展開)の社員さん、さらにはバンダイナムコグループ内のゴルフ経験者の方々に監修していただいたのですが、「こんなの現実じゃありえないよ」といった議論ではなく、「物理的におかしくないものであればいいんじゃないですか?」とわりと協力的に言っていただくことが多かったです。むしろ井上さんには「アニメなんだから、こんなことをやったらいいんじゃないですか?」「こういう描き方もありますよ」といった提案までしていただいて、非常に助かりました。

――アニメですから、非現実的な方向に突き抜けるやり方もリアルを追求する方向も考えられる中で、監修の方たちからも提案があったのですね。

關山 監修で言えばマナーの部分も大きかったですね。ルールとマナーは違うじゃないですか。ルールは基本的にネットや本を見れば載っていますし、僕らも企画をやり始めて勉強しましたけど、マナーは難しい部分が多かったので助かりました。

――稲垣監督も黒田さんもゴルフはしていなかったそうですね。

關山 はい。この作品をやるにあたり、ゴルフ漫画をいっぱい読み、取材がてら一緒にゴルフ場に行って少しプレイしてみましたが、そのぐらいでした。

――実際の大会やツアーも見に行きましたか?

關山 もちろん見に行きました。ゴルフの大会・ツアーはどういうものなのか、実際にどれだけ暑いのか、どれだけ歩くのか、お客さんはどれぐらいいるのか……そういったことがわからなかったので、いくつかの大会にいち観客として行って見てまわりました。

――アニメの制作はかなり前から始まっていたと思いますので、おととし(2019年)の全英女子オープンで渋野日向子さんが優勝したのがきっかけではないわけですよね。

關山 そうですね。企画がスタートしたのは、4年半か5年ぐらい前だったと思います。

――そうすると、渋野さんが樋口久子さん以来の優勝をしてゴルフ界が盛り上がったのは、タイミングがよかったのでは。

關山 めちゃくちゃよかったです。日本でオリンピックがあってゴルフが正式種目に選ばれたのもよかったなと思いますね。企画を進めるにあたって非常に追い風になってくれたと思います。

後編へ続く!


(取材・文・撮影/千葉研一)

【作品情報】

『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』 Season 2 制作決定!

2023年1月 テレビ東京ほかにて放送予定!

公式サイトにて、新PV&ティザービジュアルを公開中

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配信サービス「GYAO!」にて『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』 Season 1の一挙無料配信を実施中!

期間:6月29日(水)正午~7月6日(水)正午まで

配信URL:#

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©BNP/BIRDIE WING Golf Club

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