アニメ「BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー」配信スタート!──CG全盛の時代に、手描きのエフェクト作画にこだわった理由【尾崎隆晴監督インタビュー 後編】
Netflixにて、ついに配信を開始したアニメ「BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー」。
本作には、監督を務める尾崎隆晴さんの作家性が色濃く反映されている。それによって濃密なビジュアルと物語が見事にアニメとして発展したといえよう。
前回のインタビューでは、尾崎監督にアニメ「BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー」を制作するにあたって、そのルーツとなるものをじっくりとうかがった。
⇒「写実的に」「より渋い色彩で」──アニメ「BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー」をベースにあるものとは【尾崎隆晴監督インタビュー前編】
インタビュー後編では、アニメ「BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー」がいかにして作り上げられたのか。こだわりのポイントを具体的にうかがった。
クール数は定めずに、今できることを
――アニメ化に際して、原作エピソードの取捨選択という点は悩みどころだったのではないかと思いますが、ストーリー構成を担当する黒田洋介さんに何かオーダーはされましたか?
尾崎 乱暴な言い方ですが、「頭から全部外さないでくれ」、と。今まで原作物にもいろいろ携わってきた中で、構成に縛られて排除されてしまうシーンってすごくいっぱいあったんですよ。ファンから「なんでアニメでやらないんだ」って怒られるような(笑)。いや、もちろんこっちとしてもわかってはいるんですが、削らざるを得ない理由がいろいろあって。
――尺を筆頭に。
尾崎 そうなんですよ。面白い面白くないだけではなくて、いろいろな事情で。特に「BASTARD!!」には大河ドラマ的な流れもあるので、構成に縛られて間引くのではなく頭から順番にやってほしいとは伝えました。ワーナーさんと集英社さんの許諾もそれでもらって、黒田さんには区切りのいいところまでお願いしますという形でお願いました。黒田さんは、省略する構成でも全部を描く構成でも対応できるということで2プランあげてくれたんですが、今回としては、頭からきれいにやっていく構成を取りました。もしも、たっぷりと時間をとって描くことで間延びするようならば、内容に支障のない程度に補足としてオリジナル要素を入れるのは問題ないと思っています。せっかくアニメ化するわけですし。やっぱり削ることの方が問題だと思うんですよね。なので、自分としてはいい構成になったと思います。
――では、ワーナーさんから最初にクール数の指定はなかったということですか?
尾崎 ワーナーさんも今回は幅広い考えを持っていまして、僕も最初は2クールか1クールだと思っていたんですが、はっきりとおっしゃることはなかったですね。可能性を持たせてくれたというか、自分や黒田さんといったメインスタッフが話し合っていく中でクール数は決まりました。人気がなかったら打ち切りになるんじゃないかと、短くまとめた話を作ってしまうのは一番悲しいことだと思ったんですよ。打ち切られたらそれまでとして、とにかく頭からあるがままにやらせてもらいたかったんです。でも、関係者が「BASTRAD!!」世代ばかりということもあり、今できることをしっかりとやりましょう、という意識でまとまりました。
――打ち切られたとしても原作準拠で作っていれば、数年後に続きを描く可能性は残りますね。
尾崎 そうなんですよ。話をまとめてしまうと独自のものになるのでつながらなくなるんですよね。毎回リセットして描く作品もありますが、「BASTARD!!」は違う気がしました。ただ、今回のアニメ化は、ちょうどいいまとまりになっている実感はあります。
生き物を感じさせるエフェクト作画を見てほしい
――監督がコントロールした部分を教えてほしいのですが、キャラクターデザインや作画に関して意識した点はありますか?
尾崎 キャラクターデザインに関しても、リニューアルして今風に、とは考えず、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた1990年代前後の雰囲気を残したいと思っていました。原作のキャラクター造形が変化している点については、一番元気がいいときがいいと思っていて。
――「BASTRAD!!」という作品が「週刊少年ジャンプ」の看板タイトルとなった頃でしょうか。皆に広く知られた。
尾崎 はい。あとは安定性も考えました。多分、(原作者の)萩原(一至)さんとしても時代の流れによって試行錯誤したと思いますし、そもそも絵って進化するものなので。そういったことから、原作コミックス7巻から10巻前後を基準にデザインしてもらっています。ただ、難しいのが今のアニメは影付けといったディテールが少なくなっていて、濃いディテールの絵に対してとまどうアニメーターもいるんですよ。得意な方はベテランなので、ほうぼうのスタジオに散って集まりにくいということもあって、今の世代に昔のファン世代の絵をうまくすり合わせてもらう部分では少し苦労しました。しかも今回は物量がすごいので。
――かなりの作画枚数を費やしていると聞きました。
尾崎 キャラクター数が多いですからね。なので、その部分はずっと苦労しています。
――作画という意味では、動きに関して難しかった点や意識された点はありましたか?
尾崎 「BASTARD!!」は魔法バトルなので一発技が多いんですね。アクロバティックに体を動かして組み合うというよりは、技を一発繰り出してエフェクトがドン!という感じで。なので、エフェクト作監を立て、そこをていねいに見てもらっています。今はCGが入ってきたことで、作画でエフェクトが描ける方がすごく少なくなっていますが、「BASTARD!!」はモンスターも登場しますし、エフェクト専門に見る方が絶対必要だと考えていました。キャラクターの似てる、似ていないは最終的に作監が調整するとして、風が舞ったり電撃が出たり、というエフェクトアクションの部分では作画のような雰囲気を尊重したいと思いました。なので、もちろんCGを混ぜてはいますが、なるべく作画を多くするようにはしています。
――作画でエフェクトを描くよさは何でしょうか?
尾崎 やっぱり、機械的ではないというか、生き物感がすごく出てきますね。アニメのエフェクトにはキャラクターのように独特のタイミングがあって、CGで描くと実写に近くなり過ぎてしまうんです。ただ、個人的にはキャラクターもエフェクトも同じだと思っていて、物理法則的な流れの美しさや躍動感という意味では、キャラクターであろうがエフェクトであろうが、気持ちいいタイミングや動きって一緒なはずなんですよ。
ところが、煙や風やビームをどう描いたらいいのかわからないアニメーターが増えているんです。得意分野はあってもいいと思いますが、アニメーターなら煙でもキャラクターでも生き物のように表現する、個性を持って動かす、ということが大事だと思っています。
でも、描ける人間も教えられる人間も減っているので、そういった作画も今後減る可能性があるんですよね。自分も教えるのは得意なほうではないので心苦しいですが。
――では、今回の「BASTAARD!!」は作画エフェクトの最新教材という側面もあったり。
尾崎 そうなんですよ。「作画エフェクト描きてぇっ!」って思ってもらえれば(笑)。みんな、キャラクターは描きたいんですよ。でも、アニメーションにはそれ以外の要素もあります。むしろ、日本のアニメーションはその土壌があったからこそ今があると思います。
そういうアニメを見てきた自分としては、「エフェクト作画とはこう描くんだ!」というところを「BASTARD!!」でもっと知ってもらいたいですね。デジタル化が進んだとしてもアナログのよさは残しておきたいですし、そこがアニメーションのアニメーションたるゆえんだとも思うので。自分は撮影もCGもやってきたので、CGアニメがあってももちろんいいと思いますが、作画アニメとハイブリッドでうまくやっていければ、という気持ちですね。そういった職人には生き残ってほしいですし。
「BASTARD!!」感のあるキャスト陣
――今度はキャスティングに関する指針があれば教えてもらえますか?
尾崎 まずは、素の声に近い人がいいと思っていました。技術を駆使して声を変える、役を作るという考えもあるんですが。今回は、普段の話しぶりからそれっぽい人たちを集めた結果だと思います。だからアフレコの休憩時間を見ていると、役者さんがしゃべっているのではなく「BASTARD!!」のキャラクターたちがだべっているような気がしてくるんですよ。自然体でいいな、って思いますね。あとは、(シリーズが)長丁場になりそうだとも思ったので、素で済むようなところで決まったキャスティングですね。
――ダイ・アモン役の子安武人さんに関しては、特番でガラ役の安元洋貴さんが絶賛し、ほかの方々も同意されていました。ぜひ、ダイ・アモン役における意図も教えてください。
尾崎 ダイ・アモンはヴァンパイアなので気高いんですが、本人ではかっこいいと思っていても、はたから見ると滑稽なんですよね。その高貴な部分と面白い部分を兼ね備えていてほしかったんですね。原作でもすごくインパクトのあるキャラクターでしたし。
――子安さんはご指名ですか? それともオーディションでしたか?
尾崎 オーディションでしたね。各キャラとも4、5人ずつは受けてもらったと思います。でもその中でもベストかもしれないですね(笑)。「皆待っていました」って感じで。でも、本当にいいキャストに恵まれたと思います。声だけ聴いていても「BASTARD!!」感があります。
――最後に、監督として動かしがいのあるキャラクターを教えてください。
尾崎 難しいなぁ。でもやっぱりダーク・シュナイダーになるのかな。主役ですし。ど真ん中な答えになっちゃいますが。
――ということはダーク・シュナイダーを描いているときは楽しい?
尾崎 楽しいですよ。僕は作画ではないですが、コンテを書いていてもダーク・シュナイダーと女の子を書くのは楽しいです。やっぱり女の子を描けるということはいいことですね。ダーク・シュナイダーといった凶悪なキャラクターを描くのも好きですし。
――尾崎監督にとって「BASTARD!!」は性に合った作品ですね。
尾崎 合ってますね。描きたいキャラがいっぱいいますから。
(取材・文・撮影/清水耕司)
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