アニメライターが選ぶ、2022春アニメ総括レビュー! 「パリピ孔明」「可愛いだけじゃない式守さん」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】
2022年春アニメの中から最終回を迎えたタイトルを総括レビュー! 「週刊ヤングマガジン」連載中の「パリピ孔明」、HoneyWorks原作の「ヒロインたるもの!~嫌われヒロインと内緒のお仕事~」、和菓子を題材にした「であいもん」、「マガジンポケット」連載中の「可愛いだけじゃない式守さん」、スーパーアニメイズム枠おしりの「じゃんたま PONG☆」をピックアップしました!
三国時代の名軍師・諸葛亮孔明が約1800年の時を経て現代日本に転生。普段は新人アーティスト・月見英子のマネージャーとして裏方に徹しているが、第6話では自らステージに上がってフリースタイルのラップに挑む。漢詩をリリックにした孔明の歌声を聴いていると背景美術はいつの間にか筆と墨で描かれたタッチに変貌。オーディエンスを山水画の世界へ誘って、アーティストとしても一流の手腕を誇る。
OPアニメが衣装を次々に変える孔明のカットから始まっていたように、劇中の多彩なファッションも印象的。英子がさまざまなステージ衣装を見せるいっぽう、後半にはプロデューサーの方針で不本意なコスチュームを着せられた覆面ガールズバンド・AZALEA(アザリエ)が登場。本編で最後に歌声を披露するのは英子ではなくAZALEAであり、過激な衣装に身を包んだまま本来の彼女たちらしさを見せつけるシーンに心奪われる。オリジナルアニメを多数手がけてきたP.A.WORKSが、本作を初のマンガ原作に選んだ理由がうかがえる希望に満ちたフィナーレだ。
クリエイターユニット・HoneyWorksの楽曲を原作とする学園アイドルアニメ。高校生ユニット・LIP×LIPのクラスメイトでありながらマネージャー見習いに採用されてしまった女子高生・涼海ひよりの奮闘を描く。地味なひよりは「うちなんて所詮モブだし」と自嘲するが、本作ではマネージャーをはじめ、ヘアメイクやライブスタッフなど、アイドルを支える名も無き人たちにもきちんとカメラが向けられているのがポイント。自分たちのパフォーマンスにしか興味のなかったLIP×LIPが、ひよりのがんばりを通じて、応援してくれるファンの大切さに気付く様子が全12話を通じてていねいに表現された。
友人たちに内緒でアイドルのマネージャーをしているというシチュエーションも魅力。ときには予期せぬトラブルが巻き起こり女子高生同士がグーパンで殴り合うという波乱の展開も勃発する。戦うヒロインのたくましさも垣間見られる一作。
京都の和菓子屋・緑松を舞台にしたハートフルストーリーをアニメ化。実家を継ぐために東京から戻ってきた納野和(いりのなごむ)と店の跡継ぎとして働いていた少女・雪平一果の交流を描く。和は元バンドマンの放蕩息子ながら、緑松のアルバイトや元カノからはモテモテという憎らしい好男子。しかしどこか惹かれてしまうのは誰に対しても分け隔てなく接するやさしい性格に加え、作中で話される京言葉のやわらかい雰囲気もあるだろう。
物語は春から始まっており、1話で1か月ずつ進んでいく。その季節感は水彩画タッチで描かれた京都の風景だけでなく、和菓子からも伝わってくる。初夏の雰囲気を感じられる若鮎や、秋に食べたくなる栗饅頭など、見た目も楽しい和菓子を見ていると、なんだかお腹が空いてきてしまうほど。初回の始まりと最終回の終わりがどちらも舞い散る桜の描写というのも実に春アニメらしい。
高校生カップルの式守さんと和泉くんの日常を描いたラブコメディ。不幸体質の和泉くんは街中を歩いているだけで、犬に吠えられたり、車に轢かれかけたり、看板が落ちてきたり……。そんなトラブルから華麗に守る式守さんのイケメン彼女っぷりが見どころの本作は、2人が横並びになって歩くシーンがとりわけ記憶に残る。下校時に夕日を浴びながら緩やかな坂を下ったり、夜道を一緒に歩いて家まで送ったりと、何気ない日々の描写がかけがえのないものに思えてくる。
EDアニメでは一緒に歩く下校時のひとときをSDキャラで表現。主題歌「Route BLUE」のテンポに合わせて、式守さんが和泉くんをピンチから救う様子がリズミカルに映し出されている。音ゲーのような軽快さがあり何度もリピートしたくなってしまう出来映えだ。
オンライン対戦麻雀ゲーム「雀魂 -じゃんたま-」の雀士たちがSDキャラになって大暴れする90秒のショートアニメ。麻雀アニメかと思いきや本格的な対局シーンは驚くほど少なく、川辺でソロキャンプを満喫したり、蟹工船に乗ってチンチロリンをしたりと、麻雀がまったく関わってこないエピソードさえあるフリーダムな作風だ。
麻雀アニメでは命をかけたやり取りをすることも珍しくないが、本作では地球に隕石が衝突したり、雪山で遭難したり、お菓子に毒を盛られたりと、麻雀以外で死を連想させる要素が不自然に多いのも気になるところ。それでいて目隠しをしたまま強い役を作る盲牌ゲームでは微妙にリアルな間違い方をしているなど、絶妙な匙加減が癖になる仕上がりだ。まるで雀鬼流の対局のようなテンポのよさに身を委ねたい。
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