【8月7日まで開催!】東京タワーで特撮の魅力を感じる! 「特撮のDNA/東京タワーSOS ゴジラ・モスラ・東宝特撮展」レポート

特撮文化の「技術」と「継承者たち」にスポットを当て、撮影に使われた着ぐるみやミニチュアの数々を間近で見ることができる展示イベント「特撮のDNA」。

2016年以降、ゴジラ、ウルトラマン、ガメラなど、さまざまなテーマをもとに各地で行われてきた展示イベント「特撮のDNA」。現在「東京タワーと東宝特撮」をテーマにした「特撮のDNA/東京タワーSOS ゴジラ・モスラ・東宝特撮展」が、東京タワーで開催中だ(8月7日まで)。

東京タワーといえば、特撮作品には欠かせないランドマークであり、1958年の開業以来、昭和の時代には、「モスラ」(1961年)では中盤の山場となる幼虫が繭を作る場所として登場し、「キングコングの逆襲」(1967年)ではキングコングVSメカニコングのクライマックスの決戦場となったほか、近年では「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005/2007/2012年)シリーズでの登場を記憶している人も少なくないだろう。

また、スーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーシリーズでもその景観が生かされる機会があり、直近では「ウルトラマントリガー」(2021年)最終回で倒壊シーンが描かれるなど、現在も特撮作品の華として注目を集め続けている。

マスコミ向け内覧会当日は、「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」(2003年)を手掛けた手塚昌明監督がスペシャルゲストとして登壇。劇中で東京タワーの倒壊シーンが描かれた本作だが、3式機龍(メカゴジラ)と背景の東京タワーの2ショットをアピールするとともに、久々に対面を果たした3式機龍については「これまでの展示では自重で寸詰まりになっていたのですが、今回はワイヤーで吊っており、ベストな状態、本来あるべき姿です」と満足げな笑みを浮かべた。

また、ゴジラシリーズでは、「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」(2000年)、「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年)、そして「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」(2003年)と3作品でメガホンを取った手塚監督。本編と特撮の2班に分かれて撮影を行う特撮映画については、「ゴジラ映画の場合は当然、特撮の比重があがるわけですが、そもそも監督はみんなにやりたいことを伝えるのが仕事なので、たとえ特撮作品であっても監督としてのスタンスは一緒です。自分の狙いを確実に伝えることが大事」と語った。3作では、それぞれ鈴木健二氏、菊地雄一氏、浅田英一氏と3名の特技監督(※クレジットは特殊技術)と組んだが、「三者三様でどの仕事もとても面白かった」そうで、なかでも「東京SOS」は、「浅田さんとは年齢も近く、お互い理解し合って仕事ができました」と振り返った。

さて、ここからは会場の展示を紹介していきたいと思う。会場は東京タワーのB1にある「タワーホール」で、階段手前にはモスラと3式機龍のパネルがお出迎え。続いて階段を下ると、踊り場には、第一作「ゴジラ」(1954年)~「シン・ゴジラ」(2016年)と歴代のゴジラシリーズ全29作品のポスターが展示されている。フォントや写真素材、キャッチコピーなどから作品毎のコンセプトや時代の変遷を読み取ることができ、これだけでテンションが上がる。

全ての原点となる初代「ゴジラ」(1954年)の貴重な資料。左は円谷英二監督が使用した台本で、表紙には「G作品 ゴヂラ」と書かれている。その隣は紙焼きで記録された画コンテのスクラップブック。さらにその右隣は、日本映画技術協會から本作の特殊技術に対して贈られた楯。最後が35ミリフィルム缶。オリジナルは全10巻からなることがわかる。

初代ゴジラの造形に携わった、利光貞三氏が後年に製作したゴジラ像。眠たそうな顔付きが独特の印象を与えるが、耳の付き具合や鼻先のラインなどに初代ゴジラに通じる特徴を見出すことができる。過去に特撮誌「宇宙船」(朝日ソノラマ→ホビージャパン)に掲載されたこともあるので、覚えているファンもいるのではないだろうか。本イベントは、その実物を間近で見ることができる、またとない機会となっている。

「メカゴジラの逆襲」(1975年)からメカゴジラII。実際に撮影で使われたオリジナルのスーツだ。多少の劣化は見られるものの、こうして現存していること自体が奇跡である。また正面から見ると、左右のバランスが微妙に崩れているが、こうした部分もまた味と言えよう。

昭和メカゴジラ関連のプロップ展示。左から「ゴジラ対メカゴジラ」(1974年)の獅子の置物。キングシーサーの封印を解く重要な小道具で、今回が初の展示となる。中央はメカゴジラIIの人工頭脳。基部はよく見るとプラモのランナーなどが流用されている。右はメカゴジラIIの足。履き口が末広がりとなっており、撮影に際して不用意に脱げない構造となっていることがわかる。全身スーツは部分的に補修されているが、これは当時のままの状態で、今回が初の展示となる。

特撮監督の中野昭慶氏による「メカゴジラの逆襲」(1975年)の画コンテ。「56~58」のナンバーが振ってあるのはクライマックスのバトルの一連で、チタノザウルスを取り押さえたゴジラがブラックホール第3惑星人の円盤を放射能火炎で撃墜させる#123-3には、『ゴジラ「畜生!」とばかり放射能を!』と書かれているのが面白い。また画面右下の「62」は、ラストシーンの画コンテ。脚本上も夕陽が指定されているが、「夕焼け空――ゴジラ、夕陽に映えながら立ち去って行く……」と書かれたこのコンテを経て、大プールのオープンで撮影された抒情的な名シーンが具現化された。

会場では、天井にもさまざまな造形物が展示されているので見逃せない。写真は「大怪獣バラン」(1958年)からバランの飛行形態。展示されているのは撮影用のオリジナルを復元したもの。造形の村瀬継蔵氏はビニールホースを加工してバランの透明のトゲを生み出したことでも知られ、平成ゴジラシリーズでも「ゴジラVSキングギドラ」(1991年)のキングギドラ、「ゴジラVSモスラ」(1992年)のモスラの造形などを手がけた。

アニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」(2021年)でリファインされるなど、近年人気沸騰中のジェットジャガーの飛び人形。もちろん、「ゴジラ対メガロ」(1973年)の撮影で使用された本物である。なお、別途展示されているFRP製のマスクにはアンテナの伸縮及び展開ギミックが内蔵されており、そちらもぜひ会場にて確認してもらえればと思う。

「東京タワーと東宝特撮」と題したパネル展示では、東宝特撮作品に登場した東京タワーが撮影エピソードを交えて詳しく解説されており、必見&必読。なお、写真右下にタイトルが紹介されている「電脳警察サイバーコップ」(1988年)は東宝制作の特撮ヒーロー番組。同作の第13話「衛星が落ちる!! ジュピター殉職!?」では、主人公が操るバイク型のメカ・ブレードライナーが衛星を破壊するため、東京タワーを疾走してジャンプ台代わりにする驚愕の場面がある。

展示ならではの夢の対決、平成モスラVSミレゴジ!? 鮮やかな翅(はね)の色彩に目が引かれるレインボーモスラは平成モスラ3部作中、「モスラ2海底の大決戦」(1997年)、「モスラ3キングギドラ来襲」(1998年)の2作品に登場。そして、新たなイメージを打ち立てたミレゴジは「ゴジラ2000ミレニアム」(1999年)を経て「ゴジラ×メガギラス」(2000年)の際に改修されたもので、モスラ&ゴジラ共に造形は若狭新一氏による。

ラドン関連の展示。手前の3体は「ゴジラVSメカゴジラ」(1993年)に登場したもので、左2つはサイズ違いの2種、右側がファイヤーラドンで、いずれも若狭新一氏による造形。奥は「空の大怪獣ラドン」(1956年)の小道具イラスト。60年以上前のものとは思えない良好な保存状態には驚かされる。劇中、このイラストと、偶然写真に映りこんだラドンの羽根と思わしき断片が重なる場面を思い出す人もいるかと思う。

冒頭でも紹介した3式機龍は「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ」(2003年)をオマージュした精巧なミニチュアセット込みで展示。ミニチュアセットは特撮の花形。ある意味ではもうひとつの主役と言える存在だ。お気に入りのアングルを探って思う存分撮影してみよう。

3式機龍が初登場した「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年)から20年が経ち、「機龍(メカゴジラ)20周年記念」として、イラストレーター・東京幻想氏(左)による描き下ろしイラスト「機龍(メカゴジラ)/品川幻想」も今回の目玉展示のひとつ。コンセプト・プロットは東宝の山中和成氏からの「機龍を復活させよう」との依頼を受けて手塚昌明監督が執筆。イラストとともに掲示されている手塚監督による長文のプロットを読めば、イラストもさらに味わい深く感じられるかと思う。この日の会見では「世界観的には描きやすかったですけど、ゴジラとメカゴジラ、モスラの存在が大きすぎて、自分の中でどう解釈するかが難しかったです。何度か修正指示をいただきながらなんとか描きあげることができました」と語る東京幻想氏に対して、手塚監督が「夕陽に浮かび上がった情景がとても美しく、さすが東京幻想さん。夕陽に浮かんだ景色は郷愁があり、人間の心を震わせる絵にしてもらえました」とエールを送った。

会場入り口付近には、特撮作品に縁深い物故者の追悼コーナーも設置。左から、安丸信行氏は「キングコングの逆襲」(1967年)のゴロザウルス、「ゴジラ」(1984年)のゴジラなどを手がけた造形師。宝田明氏は「ゴジラ」(1954年)、「獣人雪男」(1955年)、「モスラ対ゴジラ」(1964年)など、特撮映画にも数多く出演した東宝が誇る映画スター。村石宏實氏は平成ウルトラマンシリーズや「電脳警察サイバーコップ」(1988年)など、多数の特撮ヒーロー作品で手腕を発揮した監督。中野昭慶氏は「日本沈没」(1973年)を代表作に持つ特技監督。円谷英二氏亡き後の東宝特撮を率い、今回の展示でもフィーチャーされていた「ゴジラ対メカゴジラ」(1974年)、「メカゴジラの逆襲」(1975年)でも特技監督を務めた。彼らの偉業に今一度思いを馳せてほしい。

物販コーナーも充実。昨年、惜しくもコロナ禍で中止となってしまった「特撮のDNA ~ゴジラ、富士山にあらわる~」の公式パンフレット&図録も販売されている。この機会にぜひとも手に入れよう(※在庫要確認)。

なお8月11日からは同じ東京タワーを会場に「平成ガメラ3部作展 東京タワーにギャオス飛来!」が開催されるので、こちらもお楽しみに。

(取材・文・撮影/トヨタトモヒサ)

【イベント情報】

■特撮のDNA/東京タワーSOS ゴジラ・モスラ・東宝特撮展

・会期:2022年7月16日(土)~8月7日(日)

・開場時間

土~木:11時~19時(最終入場は18時30分)

金:11時~21時(最終入場は20時30分)

・会場:東京タワーB1タワーホール(東京都港区芝公園4丁目2-8)

・入場料(税込)

一般(高校生以上):当日入場券/1,700円

小・中学生(6~15歳以下):当日入場券/800円

ペアチケット(一般2名分):当日入場券/3,200円

※料金は全て税込

※未就学児無料

※入場券または招待券を持たない方への、入場特典のお渡しはありません。また、グッズの購入もできません。

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(C)特撮のDNA製作委員会

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