【プレイ80時間以上】「ゼノブレイド3」をクリアレビュー! 命をテーマにしたストーリーを始め、あらゆる要素が大ボリュームの大作RPG
2022年7月29日に、任天堂より「ゼノブレイド」シリーズの最新作である「Xenoblade3(ゼノブレイド3)」がNintendo Switch向けに発売された。前作以来5年ぶりの続編であり、初代「ゼノブレイド」と第2作「ゼノブレイド2」をつなぐ作品でもある。
今回は、そんな本作をエンディングまで遊んだうえでのレビューをお届け。世界観とストーリー、バトルシステム、フィールド探索、ノポンコインという4つのテーマに沿って解説していく。なお、物語に関しては極力ネタバレを避けているので、未プレイも安心して読んでほしい。
10年の命でなにを成すのか
本作の舞台になるのは、アイオニオンと呼ばれる広大な世界。「ケヴェス」と「アグヌス」という2つの軍事国家は、この地ではるか昔から戦いをくり広げていた。両勢力の者は生まれながらにして兵士であり、相手から奪った命を自分の糧として生きている。だが彼らの寿命は10年であり、たとえ命を奪って生き長らえても、そう遠くないうちに死んでしまう。
寿命をまっとうした者は「成人の儀」という儀式に臨み、女王に看取られながら最期を迎えることができる。成人の儀に浴することは、ケヴェス人やアグヌス人にとって最高の栄誉とされている。魂を送るのは「おくりびと」の役目であり、本作の主人公・ノアの役目でもある。
ある時、ノアたちはケヴェスの兵士として高エネルギー反応の所在を突き止め破壊する任務に就くが、そこでアグヌス軍の兵士であるミオたちと戦闘になる。途中、強大な敵が介入して窮地に立たされるノアたちだが、謎の男から託された「ウロボロス」という力を使ってどうにか撃退。しかし、ウロボロスの力を得たノアやミオはケヴェスとアグヌスから追われる身になってしまう。行き場を失った彼らは、謎の男が最期に言った「シティー」という場所に希望を見出し、アイオニオンを横断する長い旅に出る。物語序盤の展開はこのような感じだ。
戦争が日常になっているという世界観を始め、本作ではさまざまな点が私たちの現実とは違う点が示されている。物語冒頭からケヴェスとアグヌスの戦闘が始まり、おびただしい遺体から命が赤い粒子となって、互いの「鉄巨神」に吸収されていく。
成人の儀だけでなく、倒れた人々の弔いもまたおくりびとの務めなので、主人公のノアは戦いが終わった戦場で毎日のように仲間をおくっている。おくる際には笛を奏でるが、きれいな音色と戦場に転がっている遺体の姿が対照的で、美しくもあり少し怖くもあった。
10年という寿命はとくに衝撃で、人生100年とも言われる現実と比べると落差が激しく、実感がなかなか湧かない。物語が始まった時点で、ノアやミオたちはみな10期(本作では歳を期で表す)。1年もたたずに死ぬはずなのだが、みんな悲観はしても混乱することはなく、むしろ落ち着いている。犬の10歳が人間の50~60歳であるように、ケヴェスとアグヌスにおける寿命の計算がこちらの世界とは違う可能性もあるが、ノアたちは子子どもに見えるし、10期だからといって体が衰えているわけでもない。老いることもなく、ある日突然に死ぬのだ。10年の寿命が当たり前で、それを早いとも思わず、日々を戦争に捧げることを当たり前に感じる彼らの姿は、「ゼノブレイド3」の世界観を端的に表していると思う。
戦闘を終え、施設で混浴するノアたち。この後、ランツとユーニが立ち上がって口論になるのだが、なんの恥じらいもなく互いに裸をさらす。彼らはある程度成長した姿のまま、特殊な機械から生まれてくるので、性別や生殖という考え自体がないのかもしれない
60年生きているという謎の男の顔を見て「しわくちゃ」と表現するところも、老いに対する物珍しさがうかがえる
ストーリーでは最初から最後まで、ノアをはじめとする主要キャラクターたちの描写が中心となる。仕方なく敵と組み、ギスギスした空気のなかシティーを目指す序盤から、アイオニオンを旅し、時には対立しながらも徐々に仲を深めていく中盤、世界の謎を知り、仲間としてともに巨悪に立ち向かう終盤と、王道の冒険をなぞりながらもノアたちの心情や言動の移り変わりや成長具合がはっきりとわかった。
詳しくはバトルの項目で書くが、ウロボロスの力は二人一組で使う。そのため、パーティー内では自然とペアが出てくる。具体的にいうと、ノアとミオ、ランツとセナ、タイオンとユーニという組み合わせだ。男女で分かれているので恋愛要素もあるかと思ったが、実際はほとんどない。そのぶん重い話にボリュームが割かれるものの、「ゼノブレイド3」はとくに殺伐とした世界観であるだけに、そうした作風が合っていて、個人的に物語に集中することもできた。ウロボロスのペアで固まるわけではなく、6人が互いに分け隔てなく接してもいるので、ひとつのチームとしてしっかり描かれている。
右から、ノア、ミオ、ユーニ、タイオン、ランツ、セナ
6人のメインキャラクターの中で筆者がもっとも好きだったのはタイオン。端的に言うと、ノアとミアのチームが協力することになった際、ランツと並んで特に渋った人物だ。パーティーの頭脳役としてノアたちに助言し、ときにいさめるいっぽう、仲間たちのことを大切に思っている。感情に走りやすいユーニとは水と油ともいえる関係だったが、そのぶん敵から仲間になっていくまでの過程や変化がわかりやすく、ケヴェスとアグヌスの和解という側面が一段と強く出ていた。
ケヴェスとアグヌスが、殺し合う状況をどうにかしたいと思うノアたち。いっぽうで、ライバルとの再戦を願う者もいて、人によって残された命の使いかたに違いがある
ただ、キャラクターの描写がていねいになされているいっぽうで、世界観や物語の謎に対する説明はやや足りない気もした。あの人は何者なのか、この謎の真相はなんだったのかなど、そうした疑問が解決されることのないまま終わってしまったために、エンディングを迎えても謎は深まるばかり。
とはいえ、現在配信中のダウンロードコンテンツ「エキスパンションパス」の第4弾として、来年中にオリジナルのストーリーが実装されるので、謎解きは今後のお楽しみとして待つことにしよう。
パズルのように組まれた精巧なバトルシステム
本作のバトルはコマンド選択式となっている。通常攻撃自体はキャラクターが自動でやってくれるが、特殊な攻撃技である“アーツ”の発動タイミングは自分で決める。アーツを主体に、その合間に通常攻撃を挟むのが基本だ。ノアたちにはそれぞれ「アタッカー」、「ディフェンダー」、「ヒーラー」という役割が割り振られており、どのようなアーツが使えるかはあらかじめ決められている。
なかには「側面から攻撃するとブレイク」、「正面から攻撃すると威力が上昇」などの条件が付いているアーツもあり、特殊な効果を発動させるために敵味方の位置に気を配るのも欠かせない。なお、上記の「ブレイク」というのは相手の体勢を崩す効果のことで、ブレイクから「ダウン」→「スタン」(あるいは「ライジング」)→「バースト」(敵がライジング状態なら「スマッシュ」)というコンボが成立する。
アタッカーなら敵への攻撃やコンボのつなぎ、ディフェンダーなら敵の攻撃を引きつける、ヒーラーなら味方を回復するなど仲間がアーツを使って役割に沿った動きをすると、「チェインゲージ」が溜まっていく。このゲージが満タンになると「チェインアタック」をくり出せる。
アーツを再び使えるようになるまでの条件は陣営によって異なる。ノアたちケヴェス陣営は時間経過、ミオたちアグヌス陣営は命中させた攻撃の回数だ
チェインアタックでは、まず「チェインオーダー」という作戦のようなものを選択。その後、戦闘不能になっていない味方のなから任意で何人かを選び、順番にアーツを使っていく。その際、「TP」というものが蓄積されていき、これが100%以上になるとチェインオーダーは達成され、特殊な攻撃をくり出すことが可能だ。
チェインアタックでは、ゲージを消費してこの流れを数回くり返し、敵に大ダメージを与えられる。なお、TPが99%以下の状態で攻撃可能な仲間がいないと、チェインアタックはそこで終わってしまう。
チェインオーダーを成功させると、その時のTPの合計に応じて攻撃済みの仲間が何人か戻る。とはいえ、100%になった時点で1回目のオーダーは打ち切られるので、99%の状態から一気にTPを稼げるよう、攻撃する仲間を調整するなど、さまざまなテクニックが求められる。オーダーを発動した人間と同じ陣営であったり、クリティカルを発動させたりといった、TPにボーナスが入る組み合わせを把握するのも重要だ。1回のチェインアタックで与えられるダメージ量は、最初こそ数万がせいぜいだが、物語終盤では100万以上も珍しくない。
ヒーラーの場合、チェインアタック中にアーツで稼いだTPは、必ず99%で止まる。この特性を利用し、ヒーラーでギリギリまで溜める→TPを稼げるアタッカーやディフェンダーで締めるというコンボが成立する
物語の項目でも書いたウロボロスはバトルでも使える。基本的にはいつでも発動でき、ウロボロス専用のアーツも用意されている。畳みかけるときに有効なのはもちろんだが、変身中はHPの概念自体がなくなるので、あらゆる攻撃に耐えられるので防御にも向いている。また、チェインゲージと同様、役割に応じた行動を取って「インタリンク」のレベルを上げると、ウロボロスに変身した後に使えるアーツが強化。圧倒的な攻撃力を発揮できる。
ただ、1組がウロボロスになるとメンバーが一時的にひとり減るため、攻撃、防御、回復のいずれかに穴が開いてしまう。とくに、ユーニとタイオンは初期の役割がヒーラーであるために、安易にウロボロスになると回復役が減って、むしろ追い詰められることもある。また、ペアを組むキャラクターの片方が戦闘不能だと使えないほか、変身には時間制限があるため、使いたい放題というわけでもない。強力な半面、使いどころが重要だ。
ウロボロス発動中かつインタリンクレベルが3、あるいはウロボロスのペアとなる組み合わせのチェインオーダーをこなすと、チェインアタック中にウロボロス専用のオーダーやチェインを発動できる。通常と比べ、与えられるダメージは段違い
長く書いたが、「ゼノブレイド3」のバトルは、おおむねこのような流れとなる。
・アーツを使いこなしてコンボを狙う
・同時にチェインゲージとインタリンクレベルを上げていく
・ウロボロスの力を使いながらチェインアタックも混ぜて大ダメージを狙う
・チェインアタックが終わったら、再びアーツを軸にしてチェインゲージやインタリンクレベルを上げていく
ノアたち6人に「ヒーロー」というゲストキャラクターをひとり加えた7人パーティーでこれをやるのだから、バトルはもちろん難しい。筆者の場合、「ゼノブレイド2」ではバトルシステムを把握するのに物語3章分を費やしたので、過去作をやっていない人が本作のバトルで苦戦するのは容易に想像できる。
アタッカーなどの役割は、主人公たちがどの「クラス」を装備しているかによる。物語開始時点では無理だが、クラスを変えられるようになると一気に戦術の幅が広がる
そうした事情を想定してか、これまでに書いたバトルシステムは物語が進むにつれて少しずつ解放されていく。各要素が出てくるたびにチュートリアルで教えてくれるほか、「システム」の項目にある「訓練」では選んだ内容に沿ったバトルができるし、「TIPS」を読めば簡単に振り返ることもできる。
オートバトルも用意されていて、Switchのマイナスボタンを押すだけで後は勝手に戦ってくれる。アーツは使うし、コンボも狙う。ウロボロスもチェインアタックも自然に組み込んでくる。本作のバトルに欠かせない要素は軒並み使いこなすので、バトルに慣れないうちはAIの動きを見て流れを学ぶのもオススメだ。
オートバトルを多用してもいいが、本作のバトルはできるかぎり自分でこなしたほうがいいだろう。覚える要素が多く、使いこなすべきテクニックは複雑だが、それだけに戦っているときの優越感は大きい。これほどのバトルシステムを理解し、筋道立てて考えて動かせている自分に酔えるので、努力に見合った見返りはある。チェインアタックで敵を倒すと経験値にボーナスが入るため、元々経験値が多く手に入る「エリート」タイプの敵と組み合わせれば、レベル上げがやりやすいのもポイントだろう。
エリートタイプの敵。名前の両端に青い模様があるのが目印だ
広大な世界を練り歩く冒険感
モノリスソフトのプロデューサーでありディレクターの小島 幸さんは、任天堂公式サイトに掲載されている「開発者に訊きました」で、「歩ける場所は2のフィールドの5倍以上もあって」と語っている。実際、「ゼノブレイド3」のフィールドはオープンワールドと言うのにふさわしい規模だ。
ストーリーを進めるのに、次の目的地に行くのが大冒険とも言える広さで、雪山や砂漠、海といったフィールドが、大きく、どこまでも広がっているように思える。序盤でも、少し道をそれていくとレベル70くらいの敵がうようよといたり、なにかしら登る手段はあるだろう紫の植物で編まれたハシゴみたいなものを見つけたりして、ただ移動しているだけで発見は多い。敵によっては木から果実を取るなど、生態系の一部を思わせる習性なども描写され、アイオニオンにおけるリアリティが追求されているのが見て取れる。
フィールドには多数の「ランドマーク」があり、見つけた場所はファストトラベルの移動場所として、物語の都合で制限がかかっているとき以外はいつでも戻ってこられる。また、ランドマークを見つけると「ボーナスEXP」という専用の経験値が得られることも大きい。休憩できる場所で休んでいる際、「レベルアップ」を使うと、それまで溜めていたボーナスEXPを使って各キャラクターのレベルを上げられる。
チェインアタックによる経験値ボーナスや、手に入る経験値が多いエリートタイプの敵、そしてこのボーナスEXPによるレベルアップのおかげで、そこまでレベル上げをせずとも筆者はエンディングにたどり着くことができた。ちなみに、最終的なレベルは75だった。
ランドマークだけでなく、ケヴェスやアグヌスの拠点である「コロニー」もあり、そこではさまざまなクエストが発生する。とくに重要なのは「ヒーロークエスト」で、受注しているあいだは特定のヒーローが仮で加入し、クリアすると正式に仲間になる。
仲間になったヒーローのクラスはノアたちも使えるようになるうえ、ヒーロー自体をゲストキャラクターとしていつでもパーティーに入れられるので、フィールド探索や敵とのバトルにも協力してくれる。「ヒーロークエスト」では短めだがストーリーが展開し、本作の世界観やノアたちの心情などを深掘りできるので、ぜひ進めてほしいところだ。
各地のフィールドだけでなく、ランドマークやコロニーなど多くの見どころがあるために、探索中はどうにも迷いやすいが、「アクティブクエスト」に設定されたクエストの目的地はマーカーと誘導線で表示してくれるので、途方に暮れることがないのはありがたい。寄り道を切り上げてクエストをアクティブに選べば、すぐに本筋に戻ることができる。
ゲーム内課金アイテムとも言えるノポンコイン
各クラスにはレベルがあり、レベルを上げなければ性能は中途半端になる。休憩ポイントで料理を作るには材料が要るし、「コレペディアカード」というおつかいのようなクエストをこなすには各地の素材を集める必要がある。装備したキャラクターの性能を伸ばせる「ジェム」の作成も欠かせず、そうなるといつまでたっても終わりが見えてこない。
そうしたかゆいところに届くのが「ノポンコイン」だ。ノポンコインには金と銀があり、主な役目として、上記で書いたような要素で求められる材料を肩代わりしてくれる。ファストトラベルのおかげでマップ間の移動が簡単になっているとはいえ、特定の場所に行き、敵に近づくには歩くしかないので、こうした地道な作業はどこかで飽きがくる。なので、材料集めの部分を代わってくれるノポンコインにはずいぶん助けられた。
とくに恩恵が大きかったのはクラスのレベル上げ。ノアたちの初期クラスに加え、ヒーローの数だけバリエーションがあるため、そのたびにレベルを上げるのは時間がかかる。特に物語後半になると敵が強く、クラスのステータスは低いと苦戦はもちろん、全滅も起こり得るわけで、リスクも大きかった。ただ、いきなりレベル10まで上げるには多くのノポンコインがいる。そこまでするとコインがもったいないので、筆者の場合はレベル4か5までをコインで上げて、足りない分はメインストーリーやサブクエスト、ヒーロークエストを遊んでいる道すがらでレベルアップを行うようにした。
個人的には、ノポンコインというのは現代風のゲームデザインを取り入れた結果だと考えている。買い切り型のゲームでいう、収集アイテムやクリア特典をダウンロードコンテンツで販売するのと同じ。手間をお金で短縮する、ソーシャルゲーム的な要素だ。ストーリーやサブクエスト周り、フィールド探索など、「ゼノブレイド3」はさまざまな要素のボリュームが多いので、小さな部分はなるべく簡素にしようという考えなのかもしれない。
筆者が本作のクリアにかかった時間は約80時間。サブクエストやヒーロークエストはほどほどだったが、これでもやや駆け足気味だった。主人公たちのレベル上げやフィールドの踏破、クエスト網羅に裏ボスの撃破など、やり込もうと思えばいくらでも時間を吸い取られるだろうが、ていねいに作られた本作にはそうした労力をかけるだけの価値がある。「ゼノブレイド」シリーズの集大成とも言える本作だが、過去2作と本作の直接的なつながりは薄く、シリーズの予備知識がなくても十分楽しめる。腰を据えて大作RPGを遊びたい人には、うってつけの作品だろう。
(文・夏無内好)
【作品情報】
■Xenoblade3(ゼノブレイド3)
対応機種:Nintendo Switch
ジャンル:アクションRPG
発売日:2022年7月29日(金)
価格:
・ダウンロード版:8,700円(税込)
・パッケージ版:8,778円(税込)
CERO:C(15歳以上対象)
メーカー:任天堂
© Nintendo / MONOLITHSOFT
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