【アーカイブ視聴は11日まで!】シリーズ最終回に押井守監督も登場!「パトレイバー」をアカデミックに考察するWebセミナー「パトレイバー塾」第4回「パトレイバー世界のハッキング」リポート
「機動警察パトレイバー」で描かれる10年後の近未来、日本の社会環境のあり方をアカデミックに考察するWebセミナー「パトレイバー塾」の第4回が、2022年8月21日にインターネット配信された。
第4回のテーマは「パトレイバー世界のハッキング」。エンタメの世界では悪者として描かれがちな多国籍企業。パトレイバー世界でも多国籍企業「シャフト・エンタープライズ」が暗躍。アニメでもコミックでも特車二課の前に立ちはだかった。そんなわけで、実在する多国籍企業、IBMの日本法人にあたる日本IBMより、フューチャーデザインラボ チーフプロデューサーの岸本拓磨さんをゲストに迎えてトークが展開した。
さらに押井守監督もVTRで出演。「都市」「東京」「戦争」をキーワードに、深い考察を語ってくれた。
そのほかの出演者は、レギュラーの矢部俊男さん(森ビル 都市開発本部 計画企画部 メディア企画部)、小林あずささん(女優、アナウンサー)、廣瀬通孝さん(東京大学名誉教授)。
今回も、硬軟取り混ぜた話題で盛り上がった。
今回の配信は、矢部さんと押井監督による対談映像と、その内容を受けてのスタジオトークという構成。「パトレイバー」ファンにはたまらない、アニメ製作当時の裏話と最新の科学技術を踏まえたパトレイバートークのセッションは、非常に見ごたえがある。
「パトレイバー」で東京を舞台にした背景を尋ねられた押井監督は、「当時は湾岸戦争があって、リアルタイムで空爆の映像が流れていた。これ(空爆を受けている都市)を東京に置き換えたらどうなるか。(そしたら)空爆にさらされることを1ミリも想定していない街(だと感じた)」「つくづく東京は面白い街だと思った。映画でも描き切れない」「過去も含めて考えないと東京って街は理解できない」「『パト2』はそのために作ったと言ってもいい」と当時を振り返る。
これを受けて、廣瀬さんは「あれだけ平和だった時代に、戦争が起こるとどうなるのかというスペキュラティブデザイン(未来について深く考えるきっかけを与える問題提起型のデザインのこと)的な作品を作ったのはすごい」と「パトレイバー2」を評価。
矢部さんも、「日本中が平和な時代に、東京で戦争が起こるかもしれない。それをビジュアルで見せられたのはインパクトが大きかった」とリアルタイム世代ならではの感想を述べる。
このように、今回は押井監督の言葉に対して出演者たちが解説なり、補足なりを添えていくというイメージだ。
そのいっぽうで、「パトレイバー塾」で一貫して語られてきた「狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会を経て、今後超スマート社会へと移行していく」という「Society5.0の位置づけ」の話題が今回も登場。
矢部さんは、「パトレイバー」が工業社会から情報社会の過渡期に製作されたアニメであることを踏まえ、今後のクリエイターは現在の「情報社会から超スマート社会への変遷を意識したらいいのでは」ともコメントした。
また、多国籍企業シャフトを悪の組織として描いた経緯について、押井監督が「グローバルででかい会社はもれなく悪なんですよ(笑)。なにやってるかわからないから。たぶん、とんでもないことやって大きくなったんだろうというイメージがあった」「これからの悪の組織は多国籍企業だというイメージが、漫画とアニメーターの世界ではほぼ定着していた」とかなりの暴論を放つ一幕も。
これにはゲストにして、多国籍企業IBMに連なる日本IBMの岸本拓磨さんは苦笑するばかりであった。
さて、今回のトークのメインテーマは「パトレイバー世界のハッキング」。
世界最初のコンピューターを開発したIBMの歴史を振り返りつつ、パトレイバー世界におけるハッキングの描かれ方について掘り下げられた。
その中で、岸本さんは「IBMと『パトレイバー』は似ている」と語る。
「10年先の未来の技術を描く話」「英雄譚ではなく、技術力と人間力をかけあわせた現場力でさまざまな問題を解決する話」「女性が主人公、幹部を務め、多様な国籍の人間が登場するところにダイバーシティを感じさせる」という点が、IBMの目指すビジョンデザインや共創、ダイバーシティ&インクルージョンの考え方と重なるそうだ。
これを踏まえたうえで、これまでの「パトレイバー」では21世紀初頭までの日本が描かれ、今後公開が予定されている新作『機動警察パトレイバー EZY』では2030年頃の日本が描かれることが示唆されている。ということは第3次AIブームの描写が「パトレイバー」世界では、丸ごと抜け落ちているわけで、「このミッシングリンクを考えるのは面白い」と、パトレイバーファンでもある岸本さんはコメントした。
そのほか、配信後半では押井監督が「レイバーをPCに見立てた」「なぜレイバーを有人機にしたのかという理由」「当時、パソコンのワープロソフトで“神”という言葉を入力しようとすると必ず動きが止まるという現象が起きて、ゾッとした。その意外な原因」など、パトレイバーファンなら気になる話題が飛び出し、終始トークは大盛り上がり。
最後に岸本さんは、「今はいろんな人がいろんなこと思ってよくしたいと思っても、グッと踏み込めない時代。錦の御旗みたいなものがないと人はがんばれないし、描く未来がそれぞれ違う時代だけど『パトレイバー』はそれ(ひとつの未来像)を描いてくれていたのではないか」「今から10年後がどうあるべきか。と、勇気づけられるものを、問題点も含めてきちんと描くものをご一緒したい。IBMは、世界をよりよくしようと思っている会社なので(笑)」と、とかく悪の組織的に描かれがちな多国籍企業の社員としてのフォローを交えつつ、自身にとっての「パトレイバー」を語ってくれた。
なお、もともと全4回の予定で「パトレイバー塾」がスタートしたということで、今回で配信はひとまず最終回となる。しかし、矢部さんいわく「皆さんの反響次第で第2部もないわけではない」そうなので、続きを見たいという方は、ぜひアーカイブ配信などを視聴し、応援のメッセージを送ろう!
【配信情報】
■パトレイバー塾第4回「パトレイバー世界のハッキング」
・開催日時:2022年8月21日(日)15:00~17:00
※アーカイブ配信あり。
生配信終了後 2022年9月11日(日)23:59まで
※視聴チケット販売は2022年9月10日(土)23:59まで
・会場:Fanbeatsパトレイバー塾(第4回)webセミナー視聴ページ
・出演者:
廣瀬 通孝(東京大学名誉教授)
岸本拓磨(日本アイ・ビー・エム フューチャーデザインラボ チーフプロデューサー)
小林 あずさ(女優、アナウンサー)
矢部 俊男(森ビル 都市開発本部 計画企画部 メディア企画部)
・VTR出演
押井守(映画監督)
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