「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」リマスター版をプレイレビュー!「ペルソナ」シリーズ最新作が、最新ハードを含めたさまざまな機種に対応して帰ってきた

2022年10月21日(金)に、アトラスが手がける「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のリマスター版が発売される。本作は、2019年に登場したPS4向け「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」をベースに、PS5/Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/Windows/Steamという各種プラットフォームに移植したもので、過去のDLCも合わせて実装されている。

今回、そんな「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のリマスター版(Xbox Series X版)の序盤までをひと足早く遊ぶことができた。本稿ではそのうえで「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」が持つ魅力のほか、リマスター版の強みが特に出ていた部分などをピックアップして紹介していこう。

ジュブナイルでありながら社会派でもある「ペルソナ5」



ある出来事が理由で前歴がついてしまった主人公は、保護観察中の身となったあげく地元の高校を退学させられてしまう。受け入れ先を探した結果、私立秀尽学園高校への編入が決まり、彼は佐倉惣治郎という男が経営する喫茶店、ルブランに居候(いそうろう)することになる。


新しい学校生活が始まったのもつかの間、主人公はもうひとりの自分である「ペルソナ」を操る力を手に入れ、同じ力を持つ仲間たちと「心の怪盗団」を結成。学生として生活するかたわらで、世間で幅を利かせる悪い大人を改心させていく。最初は比較的規模の小さい事件から手を付けていくが、怪盗団の知名度が上がるとともに、扱う事件はより重く、大きくなっていき、やがて日本を巻き込む騒動にまで発展する。というのが本作のあらすじだ。



「ペルソナ」シリーズらしい「ジュブナイル」と、「ペルソナ5」の核になっている「ピカレスクロマン」、この2つを合わせ、本作のジャンルは「ピカレスク・ジュブナイル」とされている。ジュブナイルは十代や若者のこと、ピカレスクロマンは悪漢やアウトローを主人公とした小説を示しており、前歴持ちの高校生である主人公とその仲間たちが、悪い大人を成敗するという物語にぴったりのジャンル名となっている。


主人公のもとに集まる仲間も、さまざまなことや人から拒絶されたはみ出し者たちだ


秀尽学園の教師である鴨志田卓にはじまり、本作のストーリーではさまざまな悪い大人が主人公たちの前に立ちふさがる。暴力や盗作など、表立つよりは裏で横行していそうな生々しい事件が多く、暴力団の武力抗争とか、連続爆破事件みたいな、派手だが現実味の薄い事件よりむしろリアリティがある。


「ペルソナ4」を遊んでいたときは未成年だった筆者も、「ペルソナ5」をプレイする頃にはすっかり大人になっていたので、怪盗団によって改心して心情を吐き出す彼らの姿に、思うところはなくもない。鴨志田であれば、物語で描かれる姿こそ最悪の反面教師ではあるが、あれでもバレーボールのメダリストであり、かつてはまっとうな人間だった。現役の頃は輝いていたのだろうが、どこかで何かがあったのだろう。


とはいえ、彼らの身の上話は被害者たちからポツポツと聞けるくらいにとどめられていて、変に持ち上げられているわけではないのもポイント。あまり長々と話されると言い訳がましく聞こえるし、過去がどうあれ今の彼らは罪を犯しているのだから、悪人には違いない。



いっぽう、正義の味方である主人公たちも、決して潔白なわけではないという点も本作では描写されている。心の怪盗団は悪人たちを改心させるが、その仕組みとは、本人の心の具現化した場所である「パレス」に潜入し、パレスの核である「オタカラ」を奪うこと。つまり相手の心に潜り込んで心の歪みを奪いとってしまうのだ。怪盗団の掲げる改心は、いっぽうで改心を強いる行為でもあり、考え方によっては犯罪になってしまうかもしれない。



主人公たちの行動がどのような意味を持つのかは、劇中でもたびたび言及されている。法を超えて相手を裁く怪盗団に対し、探偵の明智吾郎は批判的で、新島冴などの検察や警察側の人間は敵視している。


明智たちの言うように、法に従えば秩序は守れるが、法を悪用する者がのさばるので救えない人が出てくる。怪盗団のように直接手を下せば、悪人を懲らしめて一部の人を助けることはできる。ただ、それは私刑と変わらず、やがて復讐や報復につながり秩序が崩壊してしまう。


本人にとっては正しいことでも、見方を変えれば罪になるというような、そうした善悪の基準の曖昧さが本作で描かれている意味は大きい。単純な勧善懲悪にとどめていないために、物語にも説得力があった。「ペルソナ」は基本的にジュブナイルだが、「ペルソナ5」や「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」に限っては、社会派という一面も強いように感じた。



物語もそうだが、個人的に驚いたのは、守りに入らず、むしろ尖った作品を生み出したアトラスの姿勢だ。前作「ペルソナ4」は2008年に発売されたゲームだが、4年後には新キャラクターのマリーなどの追加要素を含めた「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」が登場。それだけにとどまらず、外伝として格闘ゲームやリズムゲームも出た。「ペルソナ4」と「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」でそれぞれ別のアニメが放映されていたこともある。


こうした一連の展開を見るだけでも、「ペルソナ4」がアトラスにとってどれほど大きな存在であるかは簡単に想像できる。それでも、「ペルソナ5」や「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」で作風やテーマを大きく変えたのは、純粋におもしろいゲームを作ろうとするアトラスのこだわりなのだと思う。


保護観察が解けるまでの1年間をじっくり過ごす



パレスに潜入してオタカラを奪うのと同じくらい重要なのが日常パート。つまり学校生活だ。主人公がルブランにやって来た4月から翌年の3月にかけて、本作では約1年間を過ごすことになる。


本作のベースとなっている「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」では、芳澤かすみと丸喜拓人という新キャラクターが追加。「ペルソナ5」の物語をベースにしつつも、2人の描写を加えて再構成されている。さらに3学期が実装されたことで自由に動ける期間が延び、より濃密な学校生活が送れるようになった。





日常パートでなにをするかはプレイヤー次第。放課後には乗り換えで降りる渋谷で本屋や映画館に立ち寄ったり、自宅で筋トレに勤しんだりと、そのバリエーションは多い。怪盗団の仲間たちや、自分らに協力してくれる人とは「コープ」というイベントが発生し、互いに絆を深め合うことも可能だ。


「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」で追加されたキャラクター、芳澤かすみ


コープを進めるとレベルが上がり、相手との絆が深まるだけでなく、バトルで取れる行動が増えたり、日常生活でできることが増えたりと、さまざま恩恵を受けられる。ならコープのみに集中すればいいかというとそうはいかず、主人公のステータスである「知識」、「度胸」、「器用さ」、「優しさ」、「魅力」を伸ばすための自分磨きもかかせない。これらの能力は、コープの進行にも大きく関わるからだ。そのステータスを伸ばすためには、自主勉強や読書、映画鑑賞に筋トレも、当然選択肢に入る。


攻略のために機械的に遊ぶだけではやや気が滅入るという場合は、ルブランの近くにあるバッティングセンターや吉祥寺にあるダーツ&ビリヤードBARといったスポットで息抜きするのもオススメだ。


芳澤かすみと同じく、「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」の新キャラクターである丸喜拓人。芳澤かすみと丸喜拓人には、それぞれ専用のコープも用意されている


ただ、できることが多いのはうれしい半面、どれを選べばいいか迷いがちになりやすい。いずれかの行動を取ると時間が進むので、1日で全部をこなせるわけではない。ここが日常パートのおもしろいところで、どのタイミングでなにを選ぶのかはすべてプレイヤーに託されている。日常パートのかたわらでは怪盗団の活動も並行しているため、ターゲットのパレス攻略も頭の片隅に入れておく必要がある。


毎日をていねいに進められるのは、高校生活を追体験しているようで楽しい。いっぽうで、1年間をスケジュール立てて進めようとしたところでうまくいくはずもなく、コープをするのを忘れてスポットに行ったり、遊びほうけたあげくレベルが足りずにパレスで苦戦したりと、楽しさに劣らず後悔も付いて回る。ただ、そうした踏んだり蹴ったりな毎日こそが学校生活の醍醐味なのではないだろうか。学生時代をもう一度楽しむとともに、日常パートとパレス攻略という宿題を課された少し長い夏休みを過ごしているような感覚で、筆者の場合は成功も失敗も含めて大いに楽しめた。


期限内にパレスを攻略できないとゲームオーバーになってしまう。日常パートを楽しむのはいいが、ほどほどにしておきたい


弱点を突いて戦うバトルシステムでテンポもいい



パレスには主のオタカラを守る番人「シャドウ」がおり、広場や通路など、あらゆる場所を守っている。本作はシンボルエンカウント制なので、シャドウと接触するとバトルに移行。プレイヤーは近接攻撃と銃撃、そして使役しているペルソナが持つ力などを使って対抗する。


パレスの種類によって攻略にかかる時間はまちまちだが、基本的には1回の潜入でオタカラがある最深部にたどり着くのは難しい。ギミックを利用した謎解きでパレス内を走り回ることもあるし、中ボスとの避けられない戦闘などもある。奥を目指していけば、大なり小なり消耗してしまう。


とはいえ、「ペルソナ5」、「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」を問わず、両作のバトルは、まず徘徊している敵に先制して優位な状況を作る→相手の弱点を突くと再度行動できる「1MORE」を駆使して敵全員をダウン→敵全員をダウンさせると発動可能な「総攻撃」でトドメ、という流れが基本となる。つまり一方的に敵を攻撃するのがほとんどでテンポがいい。戦闘が長くなるのはボス戦くらいで、流れさえつかめればほかはサクサク進められる。なお、これは知る人ぞ知るテクニックというわけではなく、ゲーム中で公式に推奨されている戦い方でもある。


一見すると単調なバトルに思えるが、実際はそうでもない。1MOREは敵も使ってくるために、弱点を突かれると逆にこちらが追い詰められる恐れもある。なかには「反射」や「吸収」といったステータスを持つ敵もおり、種類の違うシャドウが一度に出てくると、攻撃する対象や順番を慎重に選ばなければならないことも。弱点を突いて連続行動という仕組みはシンプルだが、敵も味方を使えることから、ただボタンを連打すればいいわけではない点も刺激的だ。



バトルに関連する新要素としては、本作に標準で収録されているDLCもある。コスチュームやアイテムのほかに追加のペルソナも含まれていて、なかにはタナトスや伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)など、序盤に使えばバランスブレイカーとなる ような強力なものも。ゲームが苦手な人には攻略の助けになるし、過去に「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」を遊んでいる人はサクサクプレイするうえでも有用だろう。こちらもある意味では、バトルのテンポをよくしてくれるかもしれない。


個人的には、追加ペルソナのラウールが最初から使えるのはうれしい。説明文によれば、ラウールはアルセーヌ・ルパンの本名とされていて、赤と黒で構成されたシンプルなスーツ姿をしている。設定といい見た目といい、主人公の初期ペルソナであるアルセーヌの進化版ともいえる存在で、「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」でDLCとして登場したときはすぐ購入したのを覚えている。


ラウール


追加要素はほかにもあり、「ペルソナ3」や「ペルソナ4」の主人公と戦える「チャレンジバトル」も楽しめる


原作版の「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」と比べて、ストーリーやキャラクターの追加といった大きな変化があるわけではないが、機種の選択肢が増えたことやDLCの標準実装など、原作版にはなかった細かな調整の結果、本作は「ロイヤル」をさらにブラッシュアップした作品に仕上がっている。PS5やXbox Series Xといった最新のゲーム機を始め、SwitchやSteamなど多くの機種にも対応しており、本作に触れるハードルも大きく下がった。2020年の日本ゲーム大賞・優秀賞にも選ばれた作品を、この機会にぜひ触れてみてほしい。


(文・夏無内好) 


  • 【商品情報】
  • ■ペルソナ5 ザ・ロイヤル(リマスター版)
  • ジャンル:RPG
  • 対応機種:PS5/Switch/Xbox Series X|S/Xbox One/Windows/Steam
  • プレイ人数:1人
  • 価格:7,678円(税込)
  • 発売日:2022年10月21日(金)
  • CERO:C(15才以上対象)
  • 各種ダウンロード版一はこちら

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