ジブリを遠く離れて――。「鹿の王 ユナと約束の旅」で初監督、アニメーター安藤雅司の歩んだ20年の軌跡【アニメ業界ウォッチング第93回】
スタジオジブリ出身でありながら、富野由悠季監督や今敏監督のもとで腕を振るい、「君の名は。」(2016年)では新海誠監督をサポートしたアニメーターの安藤雅司さん。その安藤さんが、初めてアニメ映画を監督した。先月2022年9月28日に、映像ソフトが発売された「鹿の王 ユナと約束の旅」(宮地昌幸氏と共同監督)がそれだ。原作は上橋菜穂子氏によるファンタジー小説。疫病の流行する世界で、不思議な力を授かった男と彼が救い出した孤児との絆を丹念に描く。キャラクターたちの手堅く、血の通った芝居が印象に残る硬派な作品だ。
「もののけ姫」(1997年)、「千と千尋の神隠し」(2001年)の作画監督として頭角を現わし、ジブリを離れた後は今敏監督の「パプリカ」(2006年)などでキャラクターデザインも手がけた安藤さんに、これまでの足跡を振り返ってもらった。
富野由悠季作品を経て、今敏監督の「妄想代理人」でキャラクターデザインへ
──安藤さんは「千と千尋の神隠し」の翌年、富野由悠季監督の「OVERMANキングゲイナー」(2002年)で原画を描いていますよね。第1話で、キングゲイナーが初めて登場するシーンだと思いましたが……。
安藤 ええ、主人公がキングゲイナーに乗り込むシーンですね。吉田健一さんに誘われて参加したのだと思いますが、富野さんの絵コンテに従って作画しました。富野作品にはもちろん初参加で、「機動戦士ガンダム」のころの絵コンテを書籍などで見たことがある程度でした。実際に作画したらどうなるんだろうと思っていましたが、やりづらいコンテではありませんでした。ただ、富野さんのコンテは、情報量がとても多いんです。「どうせ後の工程で刈り取られていくんだから、コンテの段階で、なるべくいっぱい要素を詰め込んでおこう」という考え方なのだと思います。作画する側としては、コンテに書かれている情報をすべて描こうとしますから、「この尺には入りきらないな」と感じてしまうのですが、そこも織り込みずみなのでしょう。たとえば、その当時の富野作品では「∀ガンダム」がありましたが、ポーズとポーズの間の動きを抜いて、中飛びでコミカルに見せるようなシーンがありましたよね。そうした演出によってアニメーションがシリアスになりすぎないようにして、なおかつ盛りこんだ情報を消化しているんだと思いました。つまり、富野さんの経験値の中で「先にこうしておけば、後からこういう物が得られる」という計算の入った絵コンテなんです。もちろん、参加して面白かったです。
──その頃は、「アニマトリックス」(2003年)で渡辺信一郎さんが監督した「キッズ・ストーリー」、押井守監督の「イノセンス」(2004年)でも原画を描いていますね?
安藤 「東京ゴッドファーザーズ」(2003年)で原画をやることが決まっていて、その前後であちこちの作品に参加していた時期ですね。「東京ゴッドファーザーズ」のキャラクターデザイン、作画監督は小西賢一さんと聞いていたので、そのツテをたどって自分から門を叩いたというか、みずから原画をやらせてくださいと申し出ました。
──今敏監督の「妄想代理人」(2004年)と「パプリカ」(2006年)では、キャラクターデザインも務めますね。
安藤 「東京ゴッドファーザーズ」の後、「次はテレビシリーズをやるんだけど、キャラクターデザインやってみない?」と今さんから声をかけられたんです。僕はよく、「ちょっと考えさせてください」とペンディングする場合があって、そのときも「採用するかしないかは別として、ちょっと描いてみます」「それを見て判断してください」と答えて、試しに描いてみたキャラクターが今さんに喜んでもらえたんです。「妄想代理人」のときは楽しかったんですけど、「パプリカ」は作画監督も兼ねていたので、ちょっとプレッシャーを感じていましたね。
──「妄想代理人」はキャラデだけで、作画監督はやらなかったわけですね。
安藤 話数ごとに作画監督を立てていましたので、僕はたまに手伝う程度でした。「妄想代理人」は今さんならではのシニカルな視点の作品なので、いかにもアニメファン向けのキャラクターは期待されていないだろうと思ったので、そういう方向でデザインしました。放送の終わるころだったと思いますが、今さんから「や・ちまた:王たちの回廊」などで有名な鬼海弘雄さんの写真集を教えてもらったんです。鬼海さんの写真を見て、視線はシニカルなんだけど、それだからこそ人間は面白いんだな……と感じました。今さんの作風に通じるものがあって、興味深かったです。
──すると、今監督とは相性がよかったわけですね?
安藤 相性がよかったというか、自分にとっては実りのある仕事でした。「妄想代理人」のようなキャラクターデザインを許してくれる、採用してくれるのは今さんだけだったでしょうね(笑)。僕にとっては、とてもありがたかったです。
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