【Steam】要チェック! 10月発売オススメ新作ゲーム&今冬発売の要注目ゲームレビュー

アキバ総研をご覧の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。ゲーム買いすぎちゃう系ライターの百壁ネロでございます。すっかり冷え込んできましたが、皆さま、体調は崩されていませんでしょうか?続々新作がリリースされるこの季節、なんといっても体はゲーマーの資本ですから、風邪など引かないようにしっかりとゲームに打ち込んでいきたいところです。というわけで今回は、10月にリリースされた新作ゲームと、これから発売される要注目タイトルをご紹介していきたいと思います。

1、世にも恐ろしい銭湯へようこそ……。
物語の考察も楽しめるレトロ風ホラーアドベンチャー「地獄銭湯」


  • 「[Chilla's Art] The Bathhouse | 地獄銭湯♨」(Chilla's Art)
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 2022年10月1日発売
  • 価格:820円(2022年10月25日時点)
  • コピーライト:(C) 2022 Chilla's Art

皆さま、最近は銭湯に行きましたか?このご時世もあって行きたくてもなかなか行けないという方もいるかと思いますが、自宅のお風呂とは違う銭湯の独特の空間には、そこでしか体験できない癒やしがありますよね。というわけで、ご紹介する「地獄銭湯」は、そんな銭湯が舞台の作品です。



本作「地獄銭湯」は、その名のとおり、銭湯を舞台にしたホラーアドベンチャーゲームです。これまでホラーゲーム特集記事で取り上げた「夜勤事件」や「赤マント」を手がけたChilla's Artの作品であり、同開発元の特徴であるVHS風の画質は今作も健在。どことなく懐かしさの漂う粗めのビジュアルで、プレイヤーに不安と恐怖を与えてくれます。Chilla's Art作品のファンにとっては、「そうそう、これこれ!」といったところではないでしょうか。



本作は、これまでにご紹介した「夜勤事件」や「幽霊列車」と同様の、ウォーキングシミュレータータイプのゲームとなっています。主人公による1人称視点で進行する点が大きな特徴。3Dで描かれたフィールドを歩き、気になるものを調べながら、身の回りに起こる奇妙で不気味な出来事を体験していく、没入感の高いプレイが楽しめます。

それではさっそく、本作のストーリーをご紹介していきましょう。

本作の主人公は、会社員の秋村舞伊奈(あきむらまいな)。会社での日々の仕事に疲れを感じていた彼女はある日、“銭湯で働いてくれたら家賃タダ”というチラシを見つけ、すぐに会社を辞めて、とある田舎町へと引っ越します。どことなく暗い空気が漂うその街で主人公は、家賃がタダという古びたアパートでの新生活を始めることになるのですが……おいしい話にはウラがありそうな雰囲気がプンプンしています。



“銭湯で働いてくれたら家賃タダ”という条件なので、主人公は引っ越し初日からさっそく、銭湯で働くこととなります。番台に座ってお客さんの対応をこなし、お客さんがはけたら掃除をして、仕事が終わったらアパートにはお風呂がないため銭湯を借りて1日の疲れを癒やします。これが、主人公の基本的な1日の流れ。

お客さん対応は、タオルやシャンプーなどお客さんが求めるものを渡して入浴料を受け取るというミニゲーム形式になっており、お仕事シミュレーターのような楽しさがあります。というか、やって来るお客さんもみんな、なんだかちょっと不気味な雰囲気。メインとなるストーリーの流れだけではなく、キャラクターの見た目や風景の薄暗さなど、細かい部分に「何かが起きそうな不穏な気配」をいろいろと盛り込んでいる点が、本作の魅力であると言えます。



掃除では、掃除道具を使って浴場の汚れを落としていきます。汚れている個所を見つけてマウスを左右に振って掃除をこなしていくという、こちらもお仕事シミュレーター風のミニゲームとなっていますが、注意しなければならないのは、男湯も女湯もどちらも掃除しなければならないという点。

1人称視点も相まって「銭湯で働いている主人公」の体験に没入できる作りとなっています。というか、浴場の様子も薄暗くてかなり不気味。本作のタイトルを見た第一印象では「銭湯×ホラー」というのは異色の組み合わせのように思いましたが、今にも何かが出てきそうなさびれた浴場をひとりで歩いていると、かなり“アリ”な組み合わせだなと実感します。



というわけで本作の基本的なゲームの流れは、「アパートを出て銭湯に向かい、番台でのお客さん対応や掃除をこなして、仕事終わりにシャワーを浴びる」という1日を繰り返していくこととなります。

と言いつつも、もちろん本作はホラーゲームなので、ただ毎日同じことを繰り返すだけではありません。その合間には当然、不穏な気配を感じさせるイベントや、恐ろしい“何か”と出くわしてしまうような事態も発生します。「何かが起きそうな気配」にビクビクして過ごしながら「恐ろしい何かの出現」に驚くというこの構造は、まさにおばけやしき。ゲームの中で、物語を楽しみつつ“おばけやしきのような体験”も擬似的に味わえるというのが、本作の醍醐味と言えるでしょう。



ネタバレを防ぐため本記事では物語の核心には触れませんが、本作の構造は、ゲーム中に巻き起こるイベントを始め、探索中に見つかる文書などの手がかりや、キャラクターたちのセリフなど、主人公を取り巻くさまざまな事柄から「つまり、この物語の真相はなんなのか」と、プレイヤー自身が考えていくような作りとなっています。得られたヒントを自分の中でつなぎ合わせて、作中で語られていない余白の部分を推理して、真相を自分なりにひも解いていくという本作の物語は、いわゆる「意味がわかると怖い話」のような作りとなっており、好きな方にはたまらないのではないでしょうか。マンガや映画などでも「考察すること」が好きという方には特にオススメの作品です。



不気味な田舎町の銭湯という一風変わった舞台で、考察が楽しめるストーリーと、おばけやしきのようなホラー体験が味わえる「地獄銭湯」。主人公が働く銭湯の、不気味でありながらもそこかしこにノスタルジーを感じられる精巧な作りも必見です。ホラーゲームが好きな方はもちろん、「意味がわかると怖い話」ファンの方にもぜひ遊んでいただきたいタイトルです。

2,戦場は紙の上!?
インクで描いた動物たちがバトルを繰り広げる新感覚ストラテジー「Inkulinati」


  • 「Inkulinati」(Yaza Games)
  • ジャンル:ストラテジー
  • 今冬発売予定
  • 価格:未定(2022年10月25日時点)
  • コピーライト:(C) 2022 Yaza Games

最近、何か絵を描きましたか?イラストレーターや漫画家の方、絵を描くのが趣味の方や絵を習っている方ならともかく、日常を普通に過ごしていると、なかなか絵を描く機会というのはないものかもしれません。ご紹介する「Inkulinati」は、そんな“絵を描く”という行為がキーとなる作品です。

なお、本作は今冬発売予定のタイトルとなっており、本記事は製品版とは異なるバージョンでの先行プレイレビューとなります。



「Inkulinati」は、中世の写本を舞台にした、一風変わったストラテジーゲームです。手描き風のグラフィックや「Inkulinati(インクリナティ)」というタイトルからも予想できるように、すべてがインクで描かれているというのが本作最大の特徴。プレイヤーは、描いたイラストに命を吹き込むことができる“命のインク”を操る「インクリナティマスター」となって、紙の上でバトルを繰り広げていくこととなります。ちなみにイラストを描く際は、リアルタッチの手とペンが現れるというこだわりの演出が見られます。



本作のメインとなるのは「旅」をするモード。これは、バトルをクリアしながらマップを進んでいき、クリア後の報酬や道中のショップで自軍を強化していきながら、マップの最終地点に待ち受けるボスの撃破を目指すという、ローグライク風の味付けがされたひとり用のモードです。


バトルを開始すると、紙でできたフィールド上に人間のキャラクターの姿が見えます。これは、“Tiny Inkulinati”と言って、プレイヤーの分身であり、将棋でいうところの「王将」。ペンで兵士を描いて紙の上に召喚し、1マス区切りとなっているフィールドを進みながら攻撃を仕掛けて、先に相手の“Tiny Inkulinati”を倒せば勝利となります。兵士たちを描くには「命のインク」というコストが必要であり、かつ自分の“Tiny Inkulinati”の近隣のマスにしか召喚することはできません。また、兵士たちは召喚したターンはすぐに「昼寝」をするため、行動を起こすことはできません。


ちなみに、兵士たちは武器を持ち、鎧を着ていますが全員、動物の姿をしています。紙にインクで描かれた擬人化動物たちの姿は、日本でいうところの「鳥獣戯画」を思わせる雰囲気があり、戦場が舞台でありながらも、どこかコミカルでかわいらしいムードが漂います。というか、戦場に召喚されてすぐ昼寝しちゃう動物、愛らしいにもほどがある……!



動物の兵種は、剣術使いや弓使いなどさまざまなものが用意されており、兵種によって攻撃方法や範囲が異なります。たとえば、剣なら隣りのマスにしか攻撃できず体力が高め、弓は遠くまで攻撃を当てられるものの体力が低めという具合に、どの兵種にも一長一短があるのが特徴。

さらに、動物の種類ごとにも異なる能力が設定されているのも面白いポイント。たとえばキツネなら攻撃時に敵の部隊から命のインクを盗むことができる「サディスティックな泥棒」という能力が使えたり、ウサギなら、ふわふわのお尻を見せつけて相手の動物を強制的に昼寝させてしまう(しかも状態異常の「頭痛」つき)「お尻がすぐそこに」というアクションが使えたりといった具合。


ウサギのかわいいふわふわのお尻にまさか頭痛を起こさせる効果があるとは……!


とにもかくにも、これらの動物と兵種の特徴をしっかり把握しながら、戦場に配置し、指示を出していくことが勝利のための絶対条件なのです。



本作のバトルは、自分と相手が交互に進行するターン制となっています。
兵士は攻撃を行うと昼寝をして行動終了となり、次は相手のターンになる……といった具合に進行していき、全キャラクターが昼寝をするとチャプターが終了、その後、全員が目覚めて次のチャプターが始まります。より多くの兵士を所持していれば、一方的に連続でターンを実行することができるので、どんどん兵士を召喚していきたいところですが、兵士を描くには「命のインク」が必要となるのです。



では、その生命のインクはどうやって手に入れるのかというと、ステージ上ににじみ出ている「インクの染み」の上にキャラクターを立たせることで抽出可能となっています。言うなればこのインクの染みは、自軍を強化するための貴重なエネルギー源。相手に奪われてしまう前に自分が上に乗るか、はたまた乗っている相手を倒して奪い取るか……といったような、命のインクをめぐる攻防も本作のアツい要素となっているのです。



というわけで、兵士を召喚し、進軍や攻撃をさせ、エネルギー源を確保しつつ自軍をさらに強化しながら、相手の王将を倒す、というのが本作のバトルの基本的な流れとなっています。



紙とインクと動物兵士という一風変わった演出は数あるものの、対戦型のターン制ストラテジーゲームとしては比較的わかりやすい王道スタイルである本作。武器攻撃のダメージにある程度のランダム性が設けられていたり、背後からのバックアタックが決まればダメージ量が増えたりと、シミュレーションRPGなどでおなじみの要素も含まれており、総じてなかなか手堅い作りとなっているのですが、実は本作には、ちょっとぶっ飛んだ特殊なバトル要素が存在しているのです。それは、ずばり「押し出し」。このワードだけ聞くと、急に相撲の決まり手の話かのような感覚になってしまうかもしれませんが、実際、この「押し出し」が戦況を分ける重要な決まり手となるのです。

本作のバトルにおいて、“Tiny Inkulinati”と兵士たちはみんな、隣接するキャラクターやオブジェクトを「押し出す」ことで、右か左に相手を移動させることができます。押し出された対象はどうなるかというと、空いたマスまでツツーッとノンストップですべっていきます。これが「押し出し」です。「なんだ、それだけか」と思うなかれ、押し出された方向に空いたマスがなかった場合どうなるかというと、なんと押し出されたキャラクターは床から飛び出して奈落へ真っ逆さまに落ちてしまい、戦場から消えてしまうのです。



この「押し出し戦法」、相手の残り体力も関係なく、さらには兵士だろうが“Tiny Inkulinati”だろうがおかまいなく実行可能、こつこつダメージを与えていかなくても、敵の王将を場外に押し出して消してしまえば勝利となるのです。


もちろん、押し出し勝利を掴み取るためには、完璧な盤面を作り上げなければなりません。そのために、相手の次の手を読んだり、相手に気付かれないように押し出し勝利が可能な布陣を築いたりといった頭脳プレイが必要です。これはまさに、将棋やチェスに近い面白さ。押し出しがうまく決まれば一発逆転が狙えるため、そしてもちろん逆に一発逆転される可能性もあるため、勝負の行方が最後までわからないハラハラ感を存分に味わえる仕組みとなっているのです。



押し出しのほかにも本作には特殊なバトル要素として「ハンドアクション」というものが存在します。これは、プレイヤーの分身である“Tiny Inkulinati”だけが使える能力で、その名のとおり、画面上にリアルタッチの手が現れてさまざまなアクションを行うというもの。先述の「押し出し」もできるほか、選択したターゲットを指で直接「トンッ!」と突いてダメージを与える「スワット攻撃」というものもあります。イラストの兵士をリアルな指が攻撃するというのは、なんだか反則じみたものを感じますが、とにもかくにも強力な一手。「インクで描いた世界」という本作ならではの設定を生かした、魅力的なバトルが楽しめる要素となっています。



中世の本という舞台に「インクで描いた兵士で戦う」というユニークな設定が融合した、唯一無二の世界観がクセになる「Inkulinati」。若干ルールは複雑で覚えることが多めではあるものの、都度ビジュアルつきで教えてくれるチュートリアルや、実戦を交えながらルールやテクニックを学べる「アカデミーモード」など、ていねいな作りがされているため遊びやすい印象でした。ストラテジーゲーム、シミュレーションRPG、将棋やチェスのような思考型対戦ボードゲームが好きな方ならハマること請け合いだと思います。気になる方はぜひ、Steamのウィッシュリストに本作を追加して、発売開始をお待ちいただければと思います。

新作&これから発売のオススメSteamタイトル、気になるものはあった?


というわけで、10月発売のSteamの新作タイトルと、これから発売予定のオススメタイトルをご紹介しました。
年末も近づき、コンシューマー機では大型タイトルのリリースが多数控えている時期ですが、Steamのインディータイトルも忘れずにチェックしておきたいところです。というわけで、今後も注目のインディータイトルをご紹介していきますのでお楽しみに!

筆者:百壁ネロ
ゲーム買いすぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)、「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)など。
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