【本日発売】「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」を先行レビュー! ラグナロクを止めるべく戦うクレイトスたち親子の物語と、9つの世界を股にかけた大冒険が楽しめる
2022年11月9日(水)に、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」が発売された。本作は2018年のゲーム・オブ・ザ・イヤーに選ばれたアクションゲーム「ゴッド・オブ・ウォー」の続編であり、クレイトスとアトレウスという親子を中心にした新たな物語が描かれている。
本作の発売に先駆けてPS4版を遊ぶ機会を得たので、今回は20時間ほどプレイしたうえでのレビューをお届けしよう。重要な部分はなるべく避けてはいるが、一部ストーリーの展開や描写に関しても言及しているので、ある程度のネタバレを含んでいることは了承してほしい。
なお、アキバ総研では前作のPC版のレビュー記事(※#)も掲載している。「ゴッド・オブ・ウォー」の内容が気になるなら、一度読んでみてほしい。
運命にあらがい、そしてすれ違う親子が描かれるストーリー
本作の舞台になるのは北欧神話の世界。前作で、死闘の末にバルドルを倒したクレイトスとアトレウスだが、その結果として主神オーディンに目を付けられてしまい、さらに「フィンブルの冬」が訪れてしまう。フィンブルの冬は、北欧神話の世界が滅亡する戦い「ラグナロク」の前触れ。ラグナロクを止める方法を求めて、クレイトスとアトレウスは9つの世界を冒険していく。
バルドルの母であるフレイヤは、仇のクレイトスを殺すために彼をつけ狙う
前作からどれほど時間がたっているかはわからないが、「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」でのアトレウスは、10代前半か、もう少し年齢が高めの姿に成長している。ゲーム開始直後のイベントシーンでは、狩った鹿を自分で背負って歩く様が描写され、いっぽうのゲームプレイ中では、かつて父に頼り切りだった崖登りを自分の力でこなせるようになるなど、アトレウスの成長をさまざまな面で見られたのが印象的だった。
前作で、なにかとクレイトス親子を助けてくれたフルドラ兄弟。兄のブロックと比べると、アトレウスの成長具合が見て取れる。以前はブロックと同じくらいの身長だった
とはいえ、前から描かれていたクレイトスとアトレウスの確執は、本作で収まるどころか、こじれてしまっている。息子が力をつけたことを内心では認めているクレイトスだが、怒るあまり大きな過ちを犯した自分と同じ思いをしてほしくないために、滅多なことでは褒めたりしない。そもそも無口な性格なので、圧倒的に言葉が足りず、アトレウスとのコミュニケーションはあまりうまくいっていないのだ。これは前作にもあった話だが、本作でもあまり変わらない。
アトレウスは年月を経て成長しただけでなく、自分の出自も知っている。自分がクレイトスという神と、フェイという巨人族のあいだに生まれた存在であること。そして自分が「ロキ」であることも影響して、ラグナロクを止めるために自分が力になれると信じている。ラグナロクを止めたいという思いが先走るアトレウスは、その方法を巡ってクレイトスとたびたび対立してしまう。
隠しごとにいらだって父を責めていた前作とは違い、力があるからこそ先走り、冷静なクレイトスと対立してしまうという展開は、本作の成長したアトレウスだからこそできる描写と言える。「食欲が失せた」と自室に閉じこもったり、あげくの果てに「クソオヤジ」と言い捨てたりするシーンの彼は、まさに反抗期の少年という感じだった。そうした親子のリアルな関係がたっぷり描かれているために、筆者自身も昔を思い出してほろ苦くなった。
アトレウスの描写は前作よりもさらに濃くなっていて、ストーリーの一部ではプレイヤーはアトレウス自身を操作することになる。
これまではクレイトスを通してのみ心情を推し量れたところを、本作ではアトレウスの独白なども直接聞けるようになった。偉大な父の前では遠慮がちになってしまう息子だが、父のいないところでは、自分の考えをはっきり述べたり、途中で出会った人と気さくに話している場面も見られて、父と子の対比というのがよりわかりやすくなったように感じる。成長はしてもやはりまだ幼いアトレウスを、人によっては毛嫌いするかもしれないが、もしそう思えるのなら、本作の彼は等身大の存在としてよく描かれていることになるだろう。なお、彼の冒険については物語でも重要な部分なので、本稿ではその内容は伏せておく。
そのほか、ストーリーを紐解くうえではゲーム内テキストも欠かせない。メインメニューの「知識」という項目では、道中で出会った人物や敵の説明を読めるのだが、この文章を書いているのは、クレイトスや仲間のミーミル。つまり書き手の主観が反映されていて、アトレウスやフレイヤなどに対するクレイトスの本音が読める貴重な機会にもなっている。冒険の進捗や発見した物品などに応じてテキストは増えていくので、本作を遊ぶ際はこまめにチェックしてほしいところ。
息子に対する父の思い。無愛想で無口なクレイトスだが、アトレウスを心から愛している
ちなみに、前作の話は本作のメインメニューから簡単に振り返ることができる。とはいえ、その内容はかなり簡略化されており、ストーリーの要所を把握するのは難しい。「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」の公式サイトでは、同じく前作の物語を振り返る映像が見られるのだが、こちらは要所がそれなりに詳しく掘り下げられている。前の冒険を知りたいのなら、そちらも見ておくほうがいいだろう。以下にそのトレイラーを掲載するので、興味があればぜひチェックしてみてほしい。
クレイトスとアトレウス、2人を操作できる爽快感抜群のバトル
本作では基本的にクレイトスを操作する。斧のリヴァイアサンと双剣のブレイズ・オブ・カオスという2つの近接武器を軸に戦う。攻撃に必要な操作ボタンはR1とR2くらいで、あとは「タメ」や「回避後に」といった特定の条件によって派生する技がほとんど。複雑なコマンド入力はなく、ただR1を連打しているだけでもそれなりに戦える。
リヴァイアサンは攻撃範囲こそ狭いものの、攻撃力の高い技が多い。リヴァイアサン自体を投げる技もあって遠距離攻撃も可能だ。いっぽうのブレイズ・オブ・カオスは通常攻撃の範囲が非常に広く、特に集団戦では力を発揮してくれる。単体向けのリヴァイアサン、集団戦向けのブレイズ・オブ・カオスという感じではあるが、スキルを習得して使える技が増えてくるとその区別もゆるくなっていき、やがてどちらも使い勝手のいい武器に変わっていく。
盾を使った防御やパリィも戦闘では欠かせない
敵にはHPとは別に「スタンゲージ」があり、これが満タンになった対象に近づいてR3ボタンを押すと、一撃必殺の強烈な技をくり出せる。首を刎ねる、胴体ごと真っ二つにするなど、豪快かつ過激な技がほとんどで、かつて戦いの神だったクレイトスならではといったところ。近接武器で派手に戦い、スタンした敵がいれば必殺の技で始末する。この流れをアクションゲームらしいハイテンポなバトルで実践するのだから、爽快感があって気持ちがいい。
さらにリヴァイアサンとブレイズ・オブ・カオスにはそれぞれ、「ノーマルルーンアタック」と「ヘビールーンアタック」という2種類の技が用意されており、セットするルーンによって内容も変化する。使うと再使用までに時間がかかるものの、広範囲の敵を巻き込む、威力の高い一撃を叩き込むといった強力なものが揃う。これらの技は、ノーマルルーンアタックならL1+R1、ヘビールーンアタックならL1+R2で出せる。通常攻撃のR1とR2、そして防御のL1との組み合わせなので慣れやすく、コンボの延長として使いやすいのもうれしいところ。
戦闘中はアトレウスに援護のタイミングを自由に指示できる。弓による攻撃は飛んでいる敵に当てやすいほか、ヒット時にスタンゲージを上げやすく、クレイトスとは違った活躍ができる
プレイヤーが操作するときのアトレウスは、弓を使った攻撃がメイン。矢による遠距離攻撃だけでなく、弓自体を振り回せば近くの敵を攻撃できる。全体的に重い一撃が多いクレイトスに対し、アトレウスの動きはスピーディーだ。スタン中の敵への一撃必殺や、盾を使った防御もあり、クレイトスを操作するときに覚えた要素をそのまま応用できる。
強力な弓術をくり出す「弓アビリティ」や、ルーンでさまざまな動物を召喚する「ルーン召喚」もあり、クレイトスと比べても遜色なく戦える。さすがに接近戦では劣ってしまうが、弓とルーンを中心にした立ち回りはアトレウスならではであり、圧倒的な力を振るうクレイトスとはまた違う、新鮮な気持ちで楽しめた。
今までサポートに徹していたアトレウスがメインに。本作ではブロックやシンドリといったほかの人物がサポート役を務めることもある
さまざまな技を駆使して敵を蹴散らせるいっぽう、敵の攻撃力も高いためにやられやすい。今回の先行プレイで、筆者は物語もアクションも両方楽しめる難易度として「バランス」を選んだが、雑に攻めていると弱い敵相手でもすぐに死ぬ。「蘇生石」を使えば一度だけ復活できるが、ひとつ作るにもお金が結構かかるので多用はできない。攻撃一辺倒ではなく、盾を使った防御やパリィ、間合いを意識した回避などが重要になる。
とはいえ、アトレウスやミーミルといった仲間たちが敵の位置や攻撃のタイミングを教えてくれるので、その都度対応していれば基本的に攻撃を受けずに済む。肩越しの視点で遊ぶ本作で背後は見えにくいので、この助言をうまく活用したい。
そのほか、本作にはさまざまな新要素が加えられているのもポイントだ。盾にはアクセサリーが装備できるようになり、さらに習得した一部のスキルは使い込むと「MOD」が解放され、攻撃力強化や属性強化といった追加効果を付与可能に。クレイトスの防具には最大9個の「アミュレット」を装備でき、本人のステータスを伸ばして専用のスキルを発動できる。「レイジゲージ」を満タンにすると発動できる「スパルタン・レイジ」の効果が選べるようにもなり、前作と比べて戦い方の幅も大きく広がった。バトルの楽しさもまた、前作以上と言えるだろう。
謎解きや収集要素が満載のフィールド探索
ラグナロクを止めるための旅の中で、クレイトスたちは北欧神話に登場するさまざまな世界を巡る。クレイトスとアトレウスが住んでいるミズガルズを始め、ドワーフたちが生きるスヴァルトアルフヘイム、灼熱の溶岩があちこちで噴き出しているムスペルヘイムなど、それぞれで地形や風景がまるで違う世界を冒険するのだから、ただ歩いているだけでも楽しい。
あまりに広いので勘違いしがちだが、本作は基本的に一本道のゲームだ。フィールドの広さならオープンワールドにも負けていないが、好きなところに自由に行っていいというわけではなく、基本的には決められた道をひたすらに進んでいくことになる。とはいえ、それにしても広い。ひとつの世界のメインストーリーをクリアするのに数時間は必要で、寄り道をするならもっと遊べる。ヴァナヘイムやスヴァルトアルフヘイムなど、前作では行けなかった世界も探検できるうえ、約108GBという本作のダウンロード版(PS4)の容量を鑑みれば、そのボリュームのすさまじさがうかがえる。
丸い板のついた装置にリヴァイアサンを当てると下の装置が移動し、それまでなにもなかった場所に足場が生まれ、その先の宝箱まで渡れるようになる。ブレイズ・オブ・カオスの炎で茨を焼くと、封印されていたはずの宝箱が開けられる。こんな感じに、本作では武器の能力を使った謎解きがそこら中に散りばめられている。
その謎のバランスがいいのが悩ましいところで、本格的な謎解きとは言えないが、かといってすぐ解決するにはちょっと時間がかかる。無視するべきか悩みはするが、けっきょく報酬にひかれて謎を解く。そしてそれをくり返していくうちに、あっという間に時間がたっていく。そこにサブクエストも加わるのだからなおさらだ。今回筆者が遊んだ約20時間のうち、少なくとも半分くらいは探索に費やしていたと思う。
ただ、謎解きを連続でこなしていると、どうしても移動の時間に空白が生まれる。黙々と進み続けるのは退屈だが、そこでほかの同行者や「知の巨人」であるミーミルが小話をしてくれる。物語や世界観の知識を補完できるだけでなく、訪れた地の豆知識なども教えてくれるので、聞いているだけでおもしろい。舟を上陸させて敵と戦闘になると話は中断されてしまうが、また戻れば途中から再開してくれる点もありがたかった。移動中の会話は前作にもあった要素だが、本作でも変わらずボリュームが多い。中断された話を再開するパターンも含めて、どれほど声にバリエーションがあるのかも気になるところだ。
散りばめられている謎解きといい、移動中に挟まれる小話といい、本作はプレイヤーの没入感を中断させないような配慮が凝らされている。重厚なメインシナリオを中心に、そこからやり込み・収集要素として派生する謎解き。散りばめられた謎解きが次から次へとプレイヤーの興味を引き、謎にたどり着くまでの空白を小話が埋める。本作は遊び始めてから止めるまでの流れが地続きなのだ。そのためにやめ時がわからなくなるのだが、ゲームを遊ぶ身としてはうれしい悲鳴と言えるだろう。
ラグナロクにあらがうクレイトスとアトレウスの物語、「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズらしい豪快で爽快感のあるバトルに加え、一本道の構造ながら、謎解きがところ狭しと敷き詰められたボリュームの多さもあり、本作は2018年に発売された前作以上のクオリティに仕上がっている。世界的なアクションゲームとして人気を博してきたシリーズの最新作を、ぜひ自身の手で体感してみてほしい。
(文・夏無内好)
- 【タイトル情報】
- ■「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」スタンダードエディション
- ジャンル:アクションアドベンチャー
- 対応機種:PS5/PS4
- 発売予定日:2022年11月9日(水)
- 販売形態:パッケージ/ダウンロード
- 価格:
- ・PS5パッケージ/ダウンロード版 8,690円(税込)
- ・PS4パッケージ/ダウンロード版 7,590円(税込)
- CERO:Z(18歳以上のみ対象)
- 開発元:サンタモニカスタジオ
- 発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- ■「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」デジタルデラックスエディション
- 対応機種:PS5/PS4
- 価格:9,790円(税込)
©2022 Sony Interactive Entertainment LLC. God of War is a registered trademark of Sony Interactive Entertainment LLC and related companies in the U.S. and other countries.
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