【本日発売】新作「SEASON: A letter to the future」ゲームレビュー! 移ろいゆく季節を記録に残す旅を描いた、雰囲気重視のアドベンチャーゲーム

2023年1月31日より、PS5/PS4/PC向けタイトル「SEASON: A letter to the future」が発売されている。本作は終わりつつある「季節」を記録に残すために旅する主人公を描いたアドベンチャーゲームだ。

本作(PC版)の序盤を遊ぶ機会を得たので、今回はそのプレイ・インプレッションをお届け。物語や世界観、システムなどに焦点を当てて紹介していく。

季節を記録に残すため、主人公は自転車に乗って各地を旅する



物語の舞台になるのは、「季節」が終わり、新たな時代に入ろうとしている世界。主人公はその季節に記録したものを「芸術と記憶の宮殿」に届けるための旅に出る。本作を遊ぶために必要な動作は移動とダッシュ、自転車の操縦のほか、カメラやレコーダーを使った記録くらい。敵が出てくることもなく、謎解きの要素もない。記録と移動に特化した、まさにアドベンチャーといった感じのゲームになっている。



ストーリーは序盤から急展開だ。旅に出る前、まずは自分を守ってくれるペンダントに力を注ぐのだが、そのために必要なのは主人公にとっての思い出の品。使えば、その品にまつわる母の記憶は消えてしまう。思い出の品は実家にたくさん置かれていて、プレイヤーはどれを代償にするか選ばなくてはならない。


それぞれにはエピソードも用意されており、調べると主人公から詳細を聞けるのだが、当時の話を愛おしそうにやさしく話す口調が印象的で、どうしたものか少しばかり悩んだ。ストーリー上のなりゆきで奪われるのなら、物語の展開として諦めもつく。だが本作の場合はプレイヤーに選ばせるのだから、その責任は当然自分に回ってくる。ゲームらしい演出であると同時に、選択に重みを感じた。



主人公の母



母と別れて家を出た主人公は、その後さまざまな場所を巡りながら風景や音を記録していくことになる。今回筆者がプレイした範囲では、主人公の故郷であり、真っ赤な夕陽に照らされているキャロ村や、巨大なクレーンが打ち捨てられている湿原、雷雨が吹き荒れる海岸、霧の立ち込めるダムなどがあった。本作は移動と記録をくり返すというシンプルなゲーム性ではあるが、代わりに、行く先々で目にする地域はそれぞれで印象ががらりと変わるので、毎回新鮮な気持ちであたりを探検することができる。


トゥーンレンダリングのような描画法が使われているためか、青空や夕陽は水彩画のように鮮やかで、陰影もはっきりしているので、光の加減が世界の奥行きをよく表現している。おかげで、あそこになにがあるのか、ここを別視点から見たらどうなるのかなど、こちらの冒険心を刺激してくれた。


カメラとレコーダーに残した記録を、日記に残す



本作で欠かせないのがカメラとレコーダーだ。カメラであればその場の光景を収められるので、自然や建物、オブジェクトなど、さまざまなものを写真にできる。カメラを構えると、視界のズームインとアウトはもちろん、ピントの調整も可能。モノクロやセピア調といったフィルターも挿入できるので、同じ風景でもアイデア次第で多彩な写真を記録できる。


筆者お気に入りの1枚


いっぽうのレコーダーは、川のせせらぎや虫の鳴き声といった音を収録することが可能。音のする方向へマイクを向けて録音ボタンを押すだけでいいので、使いかたは非常にシンプルだ。マイクを向けている間、音はプレイヤーが近くなるほど大きくなるため、収録し損ねることがないのもうれしい。


特定の記録を手に入れると主人公の感想が入り、物語や世界観の手がかりが得られる。本作は具体的な説明の少ない、いわゆる雰囲気ゲーのような作風になっていることもあり、物語や世界観への理解を深めるためにも、関連性がありそうなオブジェクトは積極的に調べるのがオススメだ。



とはいえ、すでに説明したように、本作では訪れる場所ごとに大きく異なる風景が見られるのも特徴だ。たとえゲーム的な利点がなかったとしても、興味のおもむくままに探検してもいい。旅の相棒となる自転車を被写体に、なにげない風景と合わせてこれまでの軌跡を表現するのもありだし、生えている植物を片っ端から撮影し、場所ごとの生態系の違いを確かめてみるのも面白い。自由度の高いプレイが可能な本作では、ゴールを目指して淡々と進むよりも、こうした自分なりの遊び方を見つけて気ままに楽しんだほうがいいだろう。



集めた情報は日記として自由につけられる



集めた写真や音、主人公のコメントなどは、記念品として日記に自由に貼り付けられる。訪れた場所ごとに見開きのページが用意されており、自分の旅の証しとして、レイアウトを好きに決められる。


記念品は拡大や縮小、回転ができるほか、主人公のコメントは、サイズをいじることで、改行もある程度自分で調整できる。さらに、動物の足跡を模したスタンプをはじめとする飾りも充実しており、カスタマイズの幅は広い。写真を小さく並べて写真集にしてみたり、少し傾けて手作り感を出すのもいい。ほかにも、スタンプを組み合わせて絵を作り、ちょっとしたスケッチのようにすることもできる。自由度が高い分、作り手のセンスやこだわりが反映されるので、ほかのプレイヤーと比べるのも楽しそうだ。



記念品を日記に貼り付けるたびに画面左上のゲージがたまっていき、満タンになると日記を眺める映像とともに、主人公の独白が挿入される。自分の日記が物語の演出として組み込まれているため、レイアウトを考えるプレイヤー側も気合いが入る。



日記を作っていて少し気になったのが、ゲージのたまり具合。インスピレーションをためるには記念品を4~5個ほど貼り付ければよく、そこだけを見るとお手軽ではある。ただし、両開きのページを埋めるにはそれでは足りず、主人公が独白をする時点での日記は、中身がまだ不足していることが多かった。

時間誤認などの不穏な要素が蔓延した世界観



カメラを使った撮影やレコーダーによる録音は、日記を作るだけでなく、物語を知るうえでも欠かせない要素となる。というのも、物語の序盤から明かされる「季節」を始め、文明が滅んだかのようにも思える退廃的な街並みなど、本作には謎がとても多い。時間の感覚を狂わせる「時間誤認症」などの病気も各地で蔓延しており、自転車を漕いで旅するのどかな印象とは裏腹に、どこか得体の知れないミステリアスな一面もある。


どこに行こうとほとんど人がいないのも特徴で、主人公がいたキャロ村を出た後に見つけた人といえば、作業服を着た男性ひとりだけだった。物語が進むにつれて、新しい人物が出てくるだけでなく、回想で前の季節に関する話が聞けたりと、徐々に世界の内情がわかるような感じではあったのだが、今回の試遊で全容を把握することはできなかったので、ぜひ本編をプレイして確認してほしい。




情報を集めていくという意味では、プレイヤーには地道な作業が求められる。だが、世界の謎を解明することも本作の目的のひとつであり、なにより旅の足跡として周囲の風景や音を記録するというシステムが、地道な積み重ねが重要なゲーム性に噛み合っている。



大手が作るAAAタイトルのような派手さはないが、ゲーム性をストーリーや探索に絞った本作には、雰囲気ゲーにふさわしい重厚な作風に加えて、簡潔な操作で楽しめるお手軽さがある。アドベンチャーものが好きな人はもちろん、ふだんゲームをあまりプレイしないようなライト層にも安心してオススメできるタイトルだ。

  • ■作品情報
  • SEASON: A letter to the future
  • 対応機種:PS5/PS4/Steam/Epic
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 発売日:2023/1/31
  • 価格:
  • PS4&PS5版 4,389円(税込)
  • PC(Steam&Epic)版:2,800円(税込)
  • メーカー:Scavengers Studio

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