【レビュー】「『超時空要塞マクロス』パッケージアート集」発売! 髙荷義之、アートミックが手がけた迫力のアート100点と歴史的資料が詰まった全176ページ!
1982年の発売以降、一世を風靡した「超時空要塞マクロス」のプラモデルシリーズ。そのパッケージに描かれた数多くのアートを収録した「『超時空要塞マクロス』パッケージアート集」が2023年2月20日に発売された。
「機動戦士ガンダム」および「ガンプラ」熱の冷めやらぬ中、業界内外が「ポスト・ガンダム」を求めていた1982年、「超時空要塞マクロス」は彗星のごとく、アニメシーンに登場した。本作では、実在のアメリカ軍の戦闘機「F-14」をモチーフとした可変戦闘機「バルキリー」が活躍。戦闘機のファイター形態から人型ロボットのバトロイド形態、そして戦闘機から腕と逆関節の脚が生えた中間のガウォーク形態へと変形するギミックは、多くのアニメファンに衝撃を与えたものである。
そのデザインを手がけたのは、今も総監督などのポジションで「マクロス」シリーズを手がけている河森正治氏。
そのほかの、主人公たちの母船となる宇宙戦艦「マクロス」や、重厚な陸戦マシン「デストロイド」、敵対する宇宙人ゼントラーディの運用する機動兵器といったさまざまなメカニックを、「スタジオぬえ」の宮武一貴氏が担当した。
リアリティとSFマインド、そしてアニメならではのケレン味が奇跡的なバランスで共存したデザインの数々は、後のロボットアニメ文化に多大な影響を与えたのである。
当時はガンプラ人気にけん引されて、アニメキャラクターのプラモデル人気が過熱していた時期である。そんな時期に発表された作品ということもあり、「マクロス」も数多くのキットが世に放たれた。イマイ、アリイ、ニチモと複数メーカーから発売された「マクロス」のプラモデルは、各メーカーとも非常に力を入れていたようで、いずれも高いクオリティの商品となっていたが、同時にそのパッケージにも強いこだわりが感じられた。
それまでアニメのキャラクターキットといえば、キャラクターやロボがカッコよくポーズを決める立ち絵であったり、セル画調だったりと「いかにもアニメグッズ」然としたものが主流だった。しかし、ガンプラブームでキャラクタープラモとミリタリーが急接近し、ユーザーの目が肥えてきた時期でのアイテムということもあり、「マクロス」のプラモデルのパッケージアートは重厚な厚塗りのイラストであり、ミリタリー系プラモデルのパッケージと並べても違和感のない大人っぽいものであった。
それもそのはず、パッケージアートを手がけたのは人気イラストレーターの髙荷義之氏。戦車、航空機、戦艦といった数多くのプラモデルのパッケージアートを描いた、人気・実力ともに申し分のない大家である。彼のイラストはいずれも写実的で、アニメに登場する兵器群を、まるで実在する兵器のように生き生きと描き出した。
そんな髙荷氏と並んで「マクロス」のパッケージアートを手がけたのは、鈴木敏充氏(2020年・没)。イラストレーターとしてだけでなく、アートミックの設立者として「機甲創世期モスピーダ」「メガゾーン23」などのプロデューサーを務めた才人である。彼もまた写実的なタッチながら、アニメの世界に軸足を置くイラストレーターらしく、ケレン味もあわせ持ったアートを多数生み出した。
「マクロス」プラモデルシリーズのパッケージアートは、この髙荷氏と鈴木氏を中心としたアートミックの面々によって制作されたのである。
本書は、彼らの手がけたパッケージアートから状態のよい原画を約100点収録。さらには商品化されなかったプラモデル用に描かれた未発表のパッケージアートも収録した、ファン垂涎の一冊となっている。
彼らの描くパッケージアートは、まるで戦場のワンシーンを切り取ったかのような、ドラマ性を持ったものばかりで、そのいずれもがひとつのアートとして完成されていた。
特に髙荷氏は、この後「超時空世紀オーガス」「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」といったキャラクタープラモのパッケージアートなどを手がけ、数多くのロボットの活躍をリアルに描き出した。つまり、「マクロス」のプラモデルは、アニメのキャラクターキットの世界に「写実的なパッケージアート」という新たな文化を持ち込むきっかけとなったのである。
本書には、そんなアートの数々が余すことなく収録されているだけでなく、パッケージではデザイン段階でトリミングされた部分も、制作時の画角で収録されている点がポイントだ。
また、アニメの設定画とは別に、パッケージアート用に河森正治氏や宮武一貴氏が機体のディテールやマーキングを書き込んだ設定画や、パッケージアート用に河森・宮武両氏が作成したレイアウトなど、一級品の資料が大量に収録されている。これらの資料からは、当時「マクロス」関係者たちがどのように劇中に登場するメカニックを見ていたのか。どんな活躍をさせようとしていたのかがうかがえる。
そのほか、インタビュー記事の充実ぶりも見逃せない。現在、「マクロス」関連のパッケージアートを多数手がける天神英貴氏が聞き役となって、髙荷義之氏と宮武一貴氏の初対面インタビューを行ったり、故・鈴木敏充氏の長男・山科厚友氏が「マクロス」時代の父親を回顧したりと、とにかく内容が濃い。
さらには小学館の学年誌や「コロコロコミック」に掲載された記事、模型店で頒布されたブックレットなど、「マクロス」のプラモデルに関係する資料なら全部掲載する勢いで網羅されているのである。
これらが全176ページにわたって、みっちり詰まっているのだから、読んでいて楽しくないわけがない(表紙カバー下にまで情報が詰め込まれているのには、ひっくり返った!)。
本書は、全「マクロス」ファンはもちろん、全てのプラモデルファンに読んでいただきたい一冊である。きっと、さまざまなメーカー、作品が「脱・ガンプラ」「ポスト・ガンプラ」を目指して粉骨砕身していた、キャラクターキットが熱く盛り上がっていた「あの時代」の空気を感じることができるだろう。
髙荷義之氏によるVF-1S。ニチモのパッケージ用に描かれたイラストで、
本書には髙荷氏のスクラップブックから複写・補正して掲載している。
【商品情報】
■『超時空要塞マクロス』パッケージアート集
・発売中
・定価:5,500円(税込)
・判型:A4
・176頁
・発行:小学館クリエイティブ/発売:小学館
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