【本日発売】幕末を舞台にした「龍が如く」が9年越しに復活! グラフィックのパワーアップや新キャストなどを加えた「龍が如く 維新!極」レビュー
2023年2月22日、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/PC向けに「龍が如く 維新!極」が発売された。本作は2014年発売のアクションアドベンチャー「龍が如く 維新!」をベースに、グラフィックを始めさまざまな点を改良したパワーアップ版となる。
ここでは本作のPS4版を遊ぶ機会を得たので、物語や世界観、登場するフィールドにバトルシステムなど、さまざまな点をレビューしよう。
幕末の日本をベースに描かれるオリジナルの物語
物語の舞台となるのは、幕末時代の日本。徳川幕府の衰退と列強諸国の影響によって情勢が揺らぐ中、江戸での剣術修行を終えた坂本龍馬は、1年ぶりに土佐藩へ帰還する。育ての親である吉田東洋からの頼みで、自身の兄弟分である武市半平太が結成した土佐勤王党に入った龍馬は、土佐に根付く身分制度を打破するための決起に協力することに。しかし、龍馬たち3人が決起について会合をしていたところ、突如として現れた覆面の男の手で吉田東洋が暗殺されてしまう。
折が悪く吉田暗殺の容疑をかけられた龍馬は、追っ手から逃げる中で武市と別れ、暗殺犯を見つけ出すために土佐藩からの脱藩を決意。
その後、京の町に流れ着いた龍馬は、仇が「天然理心流」の使い手であること、その流派を使う剣士が「新選組」にいることをつかむ。龍馬は斎藤一という偽名で新選組に潜入し、育ての父を殺した犯人を突き止める、というのが本作のあらすじだ。
幕末をベースにしているため、実在した人物・組織が登場するのが本作のポイント。尊王攘夷を掲げて活動していた坂本龍馬や、京都の治安維持を任せられていた新選組など、幕末を題材にした作品では定番とも言える要素があるだけに、歴史が好きな人も物語に入り込みやすい。
いっぽうで、坂本龍馬の顔を見ればわかるように、重要人物のほとんどには「龍が如く」シリーズのキャラクターのモデルが使われている。声優も元となったモデルのまま。たとえば、坂本龍馬のモデルは「龍が如く」初代の主人公である桐生一馬で、声優は黒田崇矢さんだし、岡田以蔵の場合、モデルは桐生一馬の親友である錦山彰で、声優は中谷一博さんとなる。
坂本龍馬と斎藤一が同一人物という設定が象徴的だが、「龍が如く」の要素が合わさることで、幕末を描いた物語とはいえ、史実とオリジナルが入り混じることで、ストーリーは先が読めない。ほかに例をあげると、物語の序盤には新選組の参謀として伊東甲子太郎が登場するが、史実での彼は後に賛同者たちとともに隊を離脱し、やがて新選組の隊士たちによって殺されてしまう。
しかし本作の伊東甲子太郎のモデルは、「龍が如く0 誓いの場所」に登場した久瀬大作。同作での彼は絵に描いたような武闘派で、参謀として頭を使うイメージはない。そうしたギャップなどから、「龍が如く 維新!極」の伊東甲子太郎は史実の伊東甲子太郎と同じ末路をたどるのかという疑問が出てくる。歴史をなぞるのか、本作ならではの動きを見せるのか。どちらの可能性もあるために、歴史と「龍が如く」という2つの視点からストーリーを楽しめるのは印象的だった。
久瀬大作を始め、「龍が如く0」に登場した阿波野大樹、渋澤啓司がモデルに使われているのも本作の新要素となる
店もならず者も集まる京の町 アンリアルエンジンで質感も向上
本作で主な舞台となるのは京。帝のお膝元ということもあって、さまざまな人や店が集う繁華街として昼夜を問わずにぎわっている。本作は「アンリアルエンジン」というゲームエンジンを用いて再構成されており、オリジナル版の「龍が如く 維新!」よりも人物や建物の質感や陰影といった表現が大幅に強化されたこともあって没入感は高い。特に昼間や夕暮れ、夜更けといったそれぞれの時間帯で同じ場所を眺めるだけでも、描写の違いは鮮明だ。
町を歩いていると、敵に絡まれてバトルになることも
リアルなグラフィックで描かれてはいるものの、京の中身は「龍が如く」としてアレンジされているのもポイントだ。八百屋や質屋といったそれらしい店があるいっぽうで、「ドン・キホーテ」が普通に街に溶け込んでいる。品揃えもよく、HPの回復に欠かせない回復薬からお弁当、武器の作成に使う鉄くずなどの素材まで並んでおり、プレイ中はよくお世話になった。
どん・きほーて
町の人々と交流したり店舗を利用したりしていると「徳」がたまっていき、やがて住人からの評判がよくなっていく。さらに「絆」を深められるキャラクターもおり、彼らと売買をして依頼のやり取りをこなしていくと、商品の追加や値引き、戦闘中の手助けなど、さまざまなメリットが得られる。人々とのこうしたつながりも、町の息遣いを感じられるだけでなく、時代劇でよくある人情もののような側面もあって、なかなか楽しい。
ミニゲームも充実。うどん屋の手伝いやカラオケ、飲み比べに丁半博打など、その種類はさまざまだ
ギャグからシリアスまで多彩なジャンルを含んだサブストーリー
メインストーリーとはあまり関係ないものの、本作には主人公や町の住人を巻き込んだサブストーリーが散りばめられている。作中で確認したところによると総数は72個で、サブストーリーだけでも相当なボリュームだ。
サブストーリーの内容はさまざまで、江戸時代末期に起こった「ええじゃないか」運動のような史実にからんだものを始め、ケガをしたおばあさんの介抱、服を盗んだ相手とくり広げる追跡劇など、シリアスからギャグまでジャンルが詰め込まれている。
とくに印象的だったのは、「五の中の二の嘘」というサブストーリー。勝手にまんじゅうを食べた犯人を見つけ出すのが目的で、関係者たちの証言から矛盾を暴いて真相を突き止めるという、論理的思考が試されるイベントだ。こうしたたぐいのイベントは個人的に苦手だったので、とりあえず話は聞いて後は勘で犯人を選んだところ、予想どおり不正解。すると被害にあった人物が、次に主人公が選んだ相手は誰だろうが犯人として連行すると言い出したので、正解を教えてくれると踏んだ筆者としては当てが外れ、その後1時間近く悩んでどうにかクリアした。
ほかにも、物語の主人公の設定に悩んでいる夏見という文筆家に、3つあるうちのテーマから明らかにネタと言えるものを提案してみたら、不正解になってやり直しかと思いきやそのまま話が進んでいくパターンがあった。まんじゅうの盗み食いや文筆家への提案のように、内容が分岐するタイプのサブストーリーがちらほらあるので、実際に遊ぶ際は少し真面目に考えてみたんほうがいいだろう。
4つのスタイルを切り替えて戦うバトル。ボス戦は入念な準備を
本作のバトルは格闘アクションだ。□ボタンを使った弱攻撃と、△ボタンによる強攻撃を合わせたコンボが基本で、選択中のバトルスタイルによってその攻撃方法は変化する。バトルスタイルには「格闘の型」と「一刀の型」、「短銃の型」に「乱舞の型」があり、戦闘中はリアルタイムで変更可能だ。
「格闘の型」は、文字どおり格闘技が中心のスタイル。刀や銃ほどのリーチはないが、代わりにすばやい攻撃が可能で、敵の攻撃に合わせて防御をすると「受け流し」が発生するほか、さらに周囲にあるものを武器として活用することができる。スピーディーに戦えるのは魅力的だが、本作の敵はほとんどが刀か銃で武装しているのでリーチではかなり不利。素手で優位に立つためには、相手との間合いや、環境の活用といった作戦が欠かせない。どちらかというと、アクションが得意な人向けのスタイルと言える。
「一刀の型」は一刀流で戦うのが特徴。刀を振るうごとに若干のすきがあるものの、垂直の振り下ろしやなぎ払い、突きに回転斬りなど、シンプルな技が多く扱いやすい。1対1から集団戦まで、そつなくこなせるのが魅力だ。また、○ボタンで相手のガードを崩す「五月雨崩し」が強力で、刀や槍でこちらの攻撃を防ごうとする相手にはとくに効く。
ただし、攻撃判定が作り込まれているためか、少しでも間合いを誤ると空振りしてしまう。特にカメラに対して主人公が背を向けている状態だと陥りやすいミスなので、一刀の型を使っている最中は、若干近づいてから攻撃するといいかもしれない。
「短銃の型」は、銃を使った遠距離攻撃がメイン。刀よりも遥かにリーチが長く、遠くから撃っているだけで敵を一方的に攻撃できる。ボス相手では倒しづらいが、少なくともザコ戦では短銃の型の強攻撃で相手をダウンさせ、そこに弱攻撃による追撃で倒せるまで撃ち続けるというコンボが通る。そのため、個人的にはこの短銃の型が一番強かった。
とはいえ、銃なので相手と十分に距離を取らなければならず、小部屋や路地といった狭い場所では満足に使えない。状況によって使い分けられるかが短銃の型の要になるだろう。
「乱舞の型」は、刀と銃を交えたコンボが強力なスタイル。□ボタンで射撃、○ボタンで斬撃をそれぞれ使い分けられる。近距離から遠距離までカバーできるため、雑に使っても十分強い。とくに○ボタンによる斬撃は回転しながらの攻撃が多く、集団戦にも向いている。ザコ戦は一度に複数の敵を相手にすることが大半なので、迷ったら乱舞の型を使っておくといいかもしれない。ただし、両手がふさがっていることから防御ができないという弱点もあるため、そこは回避で補うのがオススメだ。
特定のスタイルを使い込んでいると経験値が手に入り、一定までたまると段位が上昇。同時に獲得できる「魂球」を使えば、体力を伸ばして新しいスキルを覚えられる。この経験値と魂球はスタイルごとに異なるため、まんべんなく育てるならスタイル自体もバランスよく使いたい。そのほかにも、新たなスキルを解放可能な施設である「道場」を利用すれば、より多彩な戦い方ができるようになるので、ぜひとも活用すべきだろう。
主人公の強化と育成は、「龍が如く 維新!極」では特に必要不可欠となる。というのも、本作のボス戦は非常に難しい。物語序盤、新選組の入隊試験として永倉新八と斬り合うのだが、本作の物語の始まりとも言えるこのボス戦で、筆者は持っていた回復薬を使い切り、さらに一度ゲームオーバーになった。相手は刀を使って適確に防御してくるうえ、こちらの攻撃にもひるみにくい。そのため力押ししていると手痛い反撃を受けるほか、攻撃と防御の使い分けを意識しなければ、そもそも相手にろくにダメージを与えられなかった。強敵との勝負に勝つためにも、ステータスの強化やスキルの習得はしっかりこなしておきたい。
永倉新八。本作では「龍が如く4 伝説を継ぐもの」で初登場した冴島大河がモデルになっている
「龍が如く 維新!極」は、幕末と「龍が如く」を融合させた挑戦的なタイトルであり、史実とオリジナル要素を絡めながら進む先の読めないストーリー、現代的な要素を取り込みつつ構築された京の町、4つのスタイルを切り替えて戦うメリハリのあるアクションが楽しめる。キャラクターたちのモデルこそ「龍が如く」シリーズを踏襲しているが、内容自体は幕末なので過去作の知識は必要ない。そういう意味でも、シリーズファンはもちろん、「龍が如く」を知らない人にもオススメできる1作だ。
(文・夏無内好)
■「龍が如く 維新! 極」
対応機種:PlayStation 5・PlayStation 4・Xbox Series X|S・Xbox One・Windows・ PC(Steam)
発売日:2023年2月22日
価格:
【スタンダードエディション】6,990円(税込7,689円)
【デジタルデラックスエディション】7,990円(税込8,789円)※デジタル版のみ
ジャンル: アクションアドベンチャー
プレイ人数:1人
発売・販売:株式会社セガ
CERO:D区分(17歳以上)
(C)SEGA
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