【「クーロンズリゾーム」PILOT版リリース記念インタビュー】 木村央志監督が語る、伝説的ゲーム「クーロンズ・ゲート」を継承するプロジェクトの狙いと今後の展開

伝説的アドベンチャーゲーム「クーロンズ・ゲート」の、実に26年ぶりの続編「クーロンズリゾーム」。その第1巻にあたる「PILOT版」(プラットフォームはPC/MAC。全8巻の分冊販売を予定)が、2023年2月22日にリリースされた。

本作は、1997年にPlayStation用ソフトとして発売されたアドベンチャーゲーム「クーロンズ・ゲート」の続編にあたるタイトルで、「ゲート」において監督、脚本を手がけた木村央志氏が中心となって制作されている。

本作「リゾーム」は、陽界(つまり我々が生きる現実世界)のエージェントである主人公が、陽界と陰界が交わることによる世界の崩壊を防ぐべく、陰界の九龍城に潜入。さまざまなキャラクターとの出会いを通じてミッションを完遂することを目指す、という前作のフォーマットを踏襲したあらすじとなっている。しかしながら、一人称視点で九龍城を彷徨する「ゲート」に対し、「リゾーム」はテキストを読み込むことに重点を置いたムービーノベル形式のゲームとなっており、木村氏いわく「動くシナリオ」「動く設定資料」といての価値観を高めたタイトルとなっている。

ファンにとっては待望の。と同時に、もしかしたら予想外の続編となった「クーロンズリゾーム」。ここでは、第1弾「PILOT版」の発売を記念して、木村氏にインタビューを敢行。本作の開発経緯や、ゲームを通じてユーザーにどんな体験を届けたいのか。そして、九龍城なき今、「クーロン」というワードが象徴するものは一体何なのかをうかがった。

ぜひゲームとあわせてインタビューをお楽しみいただきたい。

(※記事中の画像は開発中のものとなります)

ファンが抱く十人十色の「ジブンクーロン」を再起動すべく

──「クーロンズリゾーム」第1巻リリースおめでとうございます。現在の心境を教えてください。

木村 ありがとうございます。2020年、ほぼ1年かけて執筆した約25万字のシナリオ実装の第1巻ということで、まだ最初の一歩を踏み出したばかりです。1巻あたり3万字見当で実装してきましたが、第1巻は強化した設定に触れるため5万字ほどになってしまいました──。最初に伏線の種を撒いてあとから回収する構成なので、後半はスピードアップできると思います。最大全8巻、努力目標はこれより少ない巻数に収めることです。

──本作を制作することになった経緯を教えてください。

木村 2019年に、20年以上放置していた「クーロンズ・ゲート」の「続編新作」を手がけるべく”KG/Project”を起ち上げました。私自身、まだ前職の従業員だったわけですが、「クーロン」は長らくユーザーの中で発酵し続けている、つまり十人十色の「ジブンクーロン」があるコンテンツなので、容易には手を出せないと判断しました。

その時、参考になったのが「ブレードランナー2049」です。この映画も世界中の「ジブンブレラン」の存在を大前提として作られていると思いました。そこでKG/Projectでは「ゲート」をリブート──つまりユーザーの中にある「ジブンクーロン」を再起動、再認識するというコンセプトを用意したのです。このことを実現するため、新コンテンツである「リゾーム」のテーマには「ゲート」の「伏線回収と設定強化」を定めました。このノウハウも「ブレードランナー2049」からヒントを得たものです。

──キックオフのクラウドファンディングは大成功に終わりました。20年以上経ても冷めない「クーロン」熱を目の当たりにした時のお気持ちを教えてください。

木村 クラウドファンディングで掲げたテーマは「共創」です。読んで字のごとく「共に創る」という意味です。これはユーザーに少しでも「中の人」へと踏み込んでもらおうと意図したものです。そのため、リターンアイテムにはTシャツなどのほかに、リリース前にもかかわらず「シナリオ全編(第一稿)」と「設定資料 LITE版」を含むプランも用意しました。ユーザーの中でうずく「クーロン」への熱量を「共犯者」へと変換(=熱交換)しようと考えたプロジェクトでした。

シナリオなどは実装時に推敲を重ねて最適化するので、「第一稿」は資料的な価値が出るとの判断もありました。また底本として「クーロンズ・ゲート アーカイブス」(シティコネクションより2015年に刊行)に書き下ろし掲載した「クーロンズ・ゲートif」があり、ストーリーとしてはすでに開示済みという認識でもありました。

──当初の「路地裏オープンワールド」から、ムービーノベルへとシステムが変更された理由を、教えてください。

木村 九龍城の大半を構成するアセットをコンシューマー機に最適化するには、かなり大がかりな作業が必要だとわかり、コンシューマー機移植を断念しました。それでもゲームPCで動く「3Dクーロン」を目指してプログラム委託を続けて評価版まで作りました。この完成した評価版を元にシナリオ実装と評価プレイを重ねるうちに「3Dクーロン」がつまらないと感じるようになったわけです。

25万字のシナリオは会話イベントとして実装されますが、次の会話相手を探してダンジョン歩き回るだけというプレイスタイルが退屈なのです。やはり3Dゲームにはアクションが不可欠です。銃撃戦をするようなアクションでなくても、3D空間を攻略するアクションは必要です。たとえば、目的地に向かうために箱を積み上げてフェンスを乗り越えるといったことです。しかし「クーロン」は、まるで魂が浮遊するかのようなゲーム性で、フィジカルなアクションとは相性が悪い──そう考えて、移動や演出をムービーに、会話を静止画にするムービーノベルに落ち着きました。

──開発には海外在住のスタッフが参加しているようですが、コロナ禍における、リモートでの開発はいかがでしたか? その苦労や、リモートゆえの利点。また、制作を成立できた要因を教えてください。

木村 UnityTA(TA:テクニカルアーティスト)は中国人の、前職の元同僚です。事情があって中国に帰ってしまったので、メールやクラウドを利用してリモートで制作しました。香港在住の日本人の方には商店などの店頭写真を依頼しました。当初、自分も香港へ弾丸出張する予定でしたが、民主化運動とコロナ禍が重なり渡航できる状況ではなかったので助かりました。また広東語翻訳はネイティブの方にお願いしました。前作では雰囲気優先の広東語(?)だったので、がぜんリアリティは増していると思います。



アドベンチャーゲームからムービーノベルへ……ジャンル変更の理由

──もともと「クーロンズ・ゲート」には、戦闘シーンが存在しなかったと過去のインタビューなどでも語られています。本作にも戦闘シーンが存在せず、ストーリーをじっくりと読み込むシステムとなっていますが、「リゾーム」の仕様は「ゲート」の原型に近いと言えるのでしょうか。

木村 「ゲート」は「MYST」や「Return to Zork」のようなクリック&ムーブ型システムのアドベンチャーゲームを目指していたので、バトルは完全に後付けです。プレステのウリであった「ポリゴン、ムービー、サウンド」を全部入れるという部署的事情があり、ポリゴン空間を用意することになったのですが、何もないのは辛い、ということで、急遽、鬼律(グイリー)とのバトルを追加したわけです。

「リゾーム」は「伏線回収と設定強化」をテーマとするので、「動くシナリオ、動く設定資料」という位置づけになっています。そのためバトル要素は外すことになりました。

ちなみに「ゲート」でのバトル敵の鬼律ですが、それは捨てられた物(ゴミ)に邪念が宿った存在としました。実はこの設定によるデザインがとても困難で、「ゲート」でも鬼律は40体くらいしか作れませんでした。

マップに表示されるポイントを選ぶと、そこに移動しイベントが発生する


──「PILOT版」をプレイさせていただきましたが、いきなり街に放り込まれて途方に暮れる感覚であったり、いつの間にか状況に取り込まれたプレイヤーと周囲がドライブし始める感覚は、まさに「クーロン」だと感じました。本作を制作するうえで、重視した要素はどんなことでしょうか。

木村 いきなり街に放り込まれる感は、陰界を漂流する九龍城に陽界から思念転移するからです。

「ゲート」では、冒頭、九龍城が出現する演出がありましたが、そうなると陰陽交合が起きてしまって手遅れなのです。陰陽交合を防ぐのがそもそものミッションなので、「リゾーム」では陰陽は絶対に交わってはいけないという設定を守っています。

また「リゾーム」では、鳴力(ミンリー。双子が共鳴することで発現する特殊な力のこと)を最初から強めに打ち出していて、龍脈の到来を巡ってそれぞれの思惑が交錯する作りです。そんな街で主人公の存在はやや異色であり、最初は距離を置かれながらもやがて協力を求められる方向へと進みます。

「ゲート」時代のエピソードですが、外資系航空会社で働く方から頂戴した手紙に、アジアの路地裏をさまようような体験に5日間も没入したと綴られていました。こうした終わらない「夜の旅」こそが「ゲート」と「リゾーム」を貫通する「クーロン」の本質なのだと考えています。

──本作の設定は、中華圏に由来するものだけでなく、ヨーロッパ由来の錬金術などをカバーしています。中華色が前面に出ていた「ゲート」に対し、「リゾーム」が東西の文化がより混合した世界観になったのはなぜでしょうか。

木村 風水によって世界に秩序がもたらされます。逆に風水が失われればカオスな世界に。このカオスを求めてやまないのは誰か──? そこを深掘りすると「悪魔」の存在に行き着きます。悪魔は人を殺(あや)めたりはせず、人をそそのかしてカオス世界をもたらす存在です。この悪魔や神、人智の及ばない領域に踏み込んだのが、ドイツが本場の錬金術なので、「リゾーム」の年表には「1701年 プロイセン王立錬金術アカデミー設立」とあるわけです。こういう部分で世界観ストレッチを実践しています。

そして思念のネットワーク──それをリゾームと呼ぶのですが、そのネットワークに時空を超えてカオスを求める邪悪な思念がからんでくることで重層的なシナリオ世界を構築しています。

ところで「ゲート」では、超級風水師の前に立ちはだかる連中の意図はあまり明瞭ではありませんでした。単によそ者を排除しようとする路地裏の住人みたいな扱いでした。いっぽう「リゾーム」では、カオス世界を希求する邪悪な思念を設定したことで、敵の存在感が際立ち、プレイヤーのモチベーションにもつながると考えています。

──随所に「クーロンズ・ゲート」のエピソードやその後、また設定を補完するような情報がちりばめられています。「リゾーム」は、かつて機会をうかがっていたという「クーロンズ・ゲート2」で使われるかもしれなかったエピソードや設定も、今後登場するのでしょうか。

木村 そもそも「リゾーム」の目的が「ゲート」の「伏線回収と設定強化」であるためです。「ゲート」自体は、あの頃、1990年代半ばの空気感、それを共有した制作者たちの属人性の賜物です。したがって、リリース当時から「2」はないことは自明のことでした。作るとすれば別アングルが必要と考え続けて四半世紀が過ぎました。その間、「ゲート」はユーザーの中で存在感を示し続けていたわけです。

「ゲート」の伏線回収や設定強化によって、また新たに伏線が生まれたり、それを辿っていくと結局「ゲート」に行き着いたりします。輪廻転生のようにいつまでも続く循環の中から、いろいろ切り出せるのではないかと考えています。

「ゲート」の重要人物・ガタリが「リゾーム」にも登場する! あの独特のセリフ回しは健在だ


2023年の陰界を作り上げたクリエイターとユーザーたち

──本作のキャラクターデザイナーについて教えてください。

木村 キャラクターデザインは、前職で制作した「デモンズゲート」でお願いした山本章史氏です。「リゾーム」ではビザール(奇妙)なキャラクターよりも、人間を描くということを重視しているため、人間の内面が透けて見えるようなキャラクターを描かれる山本氏に継続してお願いしたわけです。

ゲーム内で数名のネームドキャラだけが2Dなのは、彼らが陰界でのアウトサイダー、つまり他者性を備えた存在だからです。2Dキャラは、見た目、最も手前に表示され、背景にはなじんでいません。いっぽう、MOB(路人)やネームドMOBがデジタルグラフィック的なタッチなのは、彼らが陰界の路地裏的な土地の呪縛から抜け出せずに背景と一体化しているからです。

「リゾーム」の鍵を握るヒロイン・劉美鈴(ラオメイリン)。父の遺した、龍脈を繋ぐ機械「気機」を完成させようとしている

──キャラクター造作のテーマやコンセプトについて教えてください。

木村 「ゲート」作成時の技術では、CGキャラクターにはボーンが入っておらず、待機モーションもなく、まるで粘土細工のような造形でしたが、むしろこれが功を奏して一種独特の妖しい世界観を醸し出していました。無生のものに霊が宿ったようなすごみがありました。今の技術ではそういったキャラクターを作ることはかないません。

「リゾーム」はかなりシネマティックな背景になっているため、どんな造作の路人を配置すればいいか悩みました。結局、ゾンビのモデルとアニメーションを入手して、ホログラムのテクスチャをあてがうことで、人としての「実存感」を薄めることにしました。ゾンビなのにきっちりとボーンの位置で動くのは愛嬌です。

別の作品ですが、猫がサイバーパンク世界を冒険する「Stray」というゲームでは、MOBたちはすべてロボットです。歩いていたり打ち捨てられていたり──人間だと生々しくなりすぎてしまいますが、ロボットゆえに世界観になじめます。すぐれたクリエイティビティを感じる作品です。



聯盟(レンマン)と呼ばれるゲームキッズ集団のメンバー・二ッキー。生き別れの兄を探すことが目的

──音楽面は、前作から引き続き蓜島(はいしま)邦明氏が手がけています。25年ぶりの陰界の音楽は、どのように変化していましたか?もしくは変わることはなかったでしょうか?

木村 蓜島氏のサウンドは日々進化しているように感じました。とりわけ今回お願いしたサウンドは、どれも重層的で奥行きが増しています。

「ゲート」の時も、単なるBGMではなくサウンドスケープという位置づけでした。それは「リゾーム」でも同じですが、今回、思念という抽象的な概念が加わるので、どうしても世界観がストレッチしていきます。「リゾーム」のサウンドスケープについての打ち合わせは、まだシナリオ執筆中のときでしたが、「ドイツの秘密結社」「日本の長野」とか、設定だけをお話しして細かなことはほとんどお伝えしなかったにも関わらず、「リゾーム」の狙いと完全にフィットしたサウンドが上がってきて、正直、驚いています。クリエイターの方にはあまり細かな注文はつけないほうがいいというセオリーそのままです。あと、いわゆるBGMにはフリー音源やアセット音源を使うなどして、サウンドスケープとは扱いを変えています。

──KG/Projectでは、クラウドファンディングやフォトコンテストなど、ユーザーを巻き込んだ企画も催されています。2022年10月29日開催の25周年記念イベント「超級路人祭」では、それぞれのユーザーが抱く「クーロン」像を指す「ジブンクーロン」というワードが提示されましたが、ユーザーを巻き込んで展開することが「リゾーム」のコンセプトになるのでしょうか。

木村 この四半世紀、「ジブンクーロン」は時間をかけていい感じに発酵しているため、そこに手を付けるのは野暮というものです。それならば「ジブンクーロン」を見つめ直すきっかけづくりを──これが「ゲート」のリブートというコンセプトで、ユーザー参加型企画とは極めて高い整合性があります。ユーザー各自が「ジブンクーロン」を持ち出すという感覚で参加してもらうイメージです。

また、ユーザー参加を呼びかけることで相手の顔が見えてきます。そういう「知った仲間」に向けてコンテンツを作るという、小さくても確実な事業を目指しています。数多くを売ろうとはせず、特定少数のユーザーに対してオーダーメイドのようなコンテンツを提供することが理想です。カウンターだけの小料理屋のような事業形態です。

──ファンからの意見、アイデアが本作に与えた影響、仕様があれば教えてください。

木村 オンラインセッション参加のユーザーから「ゲート」の魅力は「街の人から自然と受け入れられていくプロセス」だったと聞くに及び、それを実現しようと努めました。「リゾーム」は「序破急」の構成のため、「受け入れられる」体験を前倒しにしています。これは「破」の部分でいかにもクーロンだなと言う展開があるからです。

また別のセッション参加者からは「細部を見たい」という意見もあり、これは「ゲート」の頃から信念とする「神は細部に宿る」の実践であるとして、さり気なく置いてあるボトルのラベル1枚にまでこだわりました。ラベルに貼る絵をどうするかで2日ほどかけてデザインしました。

──第2巻以降は、どの程度のペースでリリースされる予定でしょうか?

木村 申し訳ありませんが、「第2巻」には少し時間を頂戴します。というのも未着手のダンジョンが残っていて、またネームドキャラクターの外部発注もあるからです。ただ「第3巻」以降は徐々にスピードアップして、できれば2024年3月までには全巻リリースしたいと考えています。もっとも、あくまで希望的観測ですが──。

先述もしましたが、全8巻というのはシナリオ文字数でのざっくりとした分割なので、伏線回収をメインとする後半では巻数は予定より少なくなる可能性もあります。そうなれば実装完了のゴールは近づきます。

九龍城なき今、木村氏が思う「クーロン」とは

──今後の展開、企画についてお話しできる範囲で教えてください。

木村 「超級路人祭」で野中希さん(「クーロンズ・ゲート」のヒロイン・小黒役の声優)の朗読劇として披露した「小黒秘話」を底本としてシナリオ化してみたいですね。小黒の思念が路人たちに憑着するという設定で、「小黒秘話 Tale of Suzaku」(フルバージョン)の台本通りに路人会話で進行していくという構成です。小さめの作品としてスピンオフ企画として検討しています。

そして蓜島氏との音楽&映像のコラボライブも実現したいです。今後、ゲーム後半パートのダンジョン制作に取りかかり、蓜島氏の未発表曲も残っているので新しい音楽&映像体験を提供できます。

また、全巻リリースした際には、特典シナリオを含むアプリ全巻、それとサウンドトラック全曲をUSBメモリーに収録して、フォトブックを付けた物販も検討しています。

──九龍城が取り壊され、香港が中国に返還された今、「クーロン」というワードが象徴するものは何だと考えますか? あわせて、木村さんにとって「クーロンズ」「九龍城」はどんな存在、概念なのか、教えてください。

木村 九龍城は廃墟ではなくライブな生活空間であり、濃密な人間関係もある──壁や床には人々の残留思念が染み込んでいそうで、そのことに少なからず憧憬の念を抱いています。

そういった「クーロン」的なものは日常でも見付けることができます。都市の中に隠れるようにして存在する路地に分け入れば、そこには「都会の幽気」が漂っています。以下、引用ですが──

「恐らくは、大都会の無数の人間の息吹が、心の願望が、肉体の匂ひが、凝り固まつて朧ろな命に蘇へつたものであらう。」(「都会の幽気」豊島与志雄)

──地形まで変えてしまうような大規模開発の続く東京では、こうした残留思念の居場所がどんどん失われています。キラキラした真新しい商業施設で日本初出店と銘打つ無駄に高価なメニューのレストランなんかいらない、かつて路地裏にあったメンチカツのうまい洋食屋を返してくれ! そういう思いがあり、クーロンの街並みは私にとってまるでARフィルターのような役割になっています。再開発された人工的な街を見渡す度に、クーロンARが重なって見えてくる──クーロンは私にとって欠かせないビジュアルリソースなのです。

──最後に、ファンの皆さん。また本稿で興味を持った方へのコメントをお願い致します。

木村 「リゾーム」に「ゲート」の再来を期待する向きもあるようですが、「リゾーム」は「ゲート」の「伏線回収と設定強化」を目指す副読本という位置づけです。ユーザーの中にある「ゲート」をさらに長く燃やし続けるための燃料です。

とは言え、伏線を回収したはずが、また新たな伏線が生まれたりするなど、「クーロン」的な世界観はアメーバのように広がっていきます。皆さんには、そんな世界感に身をゆだねながら「ジブンクーロン」に磨きをかけてほしいものです。そして、いつかそのことを何らかのコンテンツにしてもらえると嬉しいです。

「リゾーム」のシナリオや設定資料については、ゆくゆくは著作権を気にせず誰もが自由に使えるようクリエイティブ・コモンズに準拠して公開しようと考えています。要するに「クーロン」はユーザー一人ひとりのものだということです。

近い将来、AIを使って小説やコミックを作成することも容易になるでしょう。現在でも試験的に行われていることが、もっと普遍的になるはずです。自力で作るか、AIを利用するか──皆さんの「ジブンクーロン」をカタチにする機会は広がっていきます。いつの日か、百花繚乱の「ジブンクーロン」をぜひとも眺めてみたいものです!


25年周年という節目を迎え、次のアニバーサリーを目指して再起動した「クーロンズ」。そしてそのフラッグシップとなるであろう「クーロンズリゾーム」。
待望の第1弾「PILOT版」は、2023年2月22日正午よりBOOTHにてダウンロード販売を開始している。ぜひ皆さんも新時代の陰界を体験していただき、ジブンクーロンを妄想してほしい!

【製品情報】
■クーロンズリゾーム【PILOT版】

・KG/Project

・ゲームジャンル:ムービーノベル

・プラットフォーム:PC版/MAC版

・発売日:2023年2月22日 

・販売プラットフォーム:BOOTH ダウンロード販売

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※販売ブースは2023年2月22日以降公開します

・販売期間:「パイロット版」は期間限定販売です(販売終了時期未定)

・販売価格:600円(税込) PC/MAC ダウンロード販売

※分冊巻数は見込みです。8巻より少なくなる場合があります。

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