PC版「リターナル」をレビュー! 生と死をくり返しながら惑星アトロポスの謎に迫る、高難度の三人称視点シューティング

2023年2月16日から、三人称視点のシューティングゲーム「リターナル」の配信が始まった。本作は、2021年4月30日にPS5向けに発売された同作のPC版。押した際に重みも感じられるアダプティブトリガーや、環境の変化を振動で表すハプティックフィードバックといった、デュアルセンスコントローラーに搭載されている機能を再現しており、PC版ながらPS5版に近い体験も楽しめる。

惑星アトロポスで、セレーネは生と死をループする過酷な現象に襲われる



あるとき、宇宙飛行士のセレーネは任務中でありながら、謎の信号を発している惑星アトロポスを探索しようと試みる。しかし、乗船していたヘリオスが故障して不時着。自身が所属しているアトラス社とも連絡が取れなくなってしまう。



独自に調査を続けるセレーネは、道中で人間の死体を見つける。本人のヘルメットを調べてみると、そこには自分の名前が刻まれていた。その後、主人公は謎の敵に襲われて死亡。気が付くと、ヘリオスに乗ってアトロポスに不時着するという同じ展開をくり返していた。死ぬたびにループする現象に見舞われながら、セレーネは当初の目的である謎の信号を追ってアトロポスを探索していく。というのが「リターナル」のあらすじだ。



謎の信号もさることながら、本作のストーリーでは主人公がループしているのも重要な要素となる。「リターナル」の物語が始まった時点でアトロポスには、すでにセレーネの遺体があった。それはつまり、本編が始まる前からセレーネはこの惑星に来ていたことになる。


どれほど前からセレーネはここに来ているのか、ループの仕組みとはなんなのか。ミステリー作品のように大きな謎がプレイヤーを引っ張っていくので、ストーリーの展開を知りたいという好奇心が本作を遊ぶうえでの強力な原動力になってくれる。主人公とは別に宇宙服姿の人間の姿が垣間見えるという、ホラーじみた演出なども随所に盛り込まれているのも印象的だ。本作は三人称視点ではあるが、一部では一人称視点に切り替わるシーンもあり、プレイ中は怖くて進むのをためらうこともあった。



物語中のイベントは多めだが、物語に関する情報はかなり絞られている。すでに書いたループもそうだが、アトロポスの文明についても断片的にとどめられている。まだ最後までクリアできてはいないが、本作は道中で手に入るアイテムやフィールドにある痕跡から、ストーリーの背景や細かな展開を考察が求められる傾向が強い。分析などが好きなプレイヤーには、特に刺さりそうな作風だ。

リトライは当たり前 ループするたびに変化するマップで死にながら学ぶ



アトロポスは森や砂漠、要塞と言った大規模な複数のマップで構成されており、プレイヤーは謎の信号を追うために各マップを探索していく。道中でお金の「オボライト」などの資源を使ってスーツを強化し、「アーティファクト」と呼ばれるアイテムで新しい効果を得たりすることも。そうして自身の装備を充実させていき、やがてマップの最奥にいるボスを倒すのが目的となる。



「リターナル」の探索で重要なのは2つ。ひとつ目は、死んだら物語の最初まで戻されるという点。どこでどうやって死のうが、プレイヤーは必ず物語の冒頭、ヘリオスが墜落するシーンからやり直すことになる。この記事を執筆している時点で筆者は3つ目のステージまで進んだが、ボス戦で負けるとひとつ目のマップまで戻された。


物語の序盤から敵はかなり強い。体力自体はそこまで多くないが、群れてきたりいきなり飛びかかってきたりする場合も。場所によっては見上げるような大きさの敵を同時に2体以上相手取らなくてはならず、さらにそういうときに限ってエリア間をつなぐ扉がロックされる。ひとつのエリアを探索するにも、まったく気が抜けない。



さらに、一度死ぬとそれまで集めていた装備をほぼすべて失う。残るのは、エーテルのほかには物語を進めるのに重要な「恒久装備」くらいで、集めた武器もオボライトも丸々なくなってしまう。つまり、死にながら調えた装備で力押しするという戦法は採れないわけだ。



探索で重要な点の2つ目は、死ぬたびにマップの構造が変化すること。同じルートでも、ループ前と後では構造が変わっているため、プレイヤーはマップに合わせた柔軟な攻略が求められる。以前は簡単に行けたルートが難関になっているかもしれないし、逆に難所だった道をスイスイ進められる可能性もある。つまり構造がどう変わるかは運次第なのだが、決まったルートで攻略できないというだけでもかなりのプレッシャーだろう。



難しいゲームの場合、死にがちな代わりにプレイヤーが再挑戦しやすいようにチェックポイントを挟むのが一般的が、本作ではそうした計らいは省かれている。一応、「リコンストラクター」という施設を使えば利用時の状況を保ったまま復活できるが、これには「エーテル」という貴重なアイテムが6個も必要で、仮にたまっていても使うかと言われると悩ましい。


死ぬたびにループするという物語上の設定をゲームシステムに徹底的に落とし込んでおり、プレイヤーは主人公であるセレーネと同じ苦しみを噛み締めながらプレイすることができる。一度たりとも同じパターンがないため、何度死のうが新鮮な気持ちで遊べるほか、ループという設定とリンクしているおかげで臨場感も格別だ。

リスクとリターン、どちらを取るか



死と隣り合わせの難しさや、死んだら最初からという緊張感に加えて、本作ではリスクとリターンの選別も特徴と言える。探索中に手に入る「パラサイト」がよい例で、装備すると主人公のスーツに寄生し、さまざまな能力を授けてくれる。なお、パラサイトは同時に最大5個まで装備可能だ。


よい能力をくれるだけではなく、パラサイトはこちらになにかしらのデメリットも付けてくる。敵がアイテムを落とす確率が上がる代わりにこちらの近接攻撃のダメージが下がったり、スーツの耐久度が下がった際に一定値まで自動で回復するが、代わりに一部の武器が再使用できるまでの時間が増えたりと、デメリットだけでもさまざまな種類がある。



ここで悩ましいのが、それがデメリットになるかどうかは人によるところ。近接攻撃のダメージが下がるというマイナス効果で言えば、近接攻撃を多用する人にはきついが、逆に銃撃がメインの人にはあまり関係ない。プラスとなる効果と比較したとき、そのデメリットが許容できるかどうかを判別するのはプレイヤー次第になる。


少し前は高をくくって武器のリチャージ時間が増えるのを許容し、そのパラサイトを装備した結果、後で強敵と戦った際にトドメが間に合わず返り討ちにあうという事態も起こり得るわけで、リスクとリターンの取捨選択が非常に重要になってくる。普通のゲームであれば死んでもチェックポイントからまたやり直せるが、本作ではほぼすべてを失うとともに最初に戻されるのだから、パラサイトひとつの選別も決して軽視できない。



死んだ場合のデメリットを考えれば、なるべく敵と戦わず、パラサイトなどの一長一短なアイテムも拾わずに進めたほうがいい。だが、そうするとプレイヤーの装備は一向に充実しないために、エリアを封鎖されて強制的に敵と戦わされるときや、マップの奥で待つボスとの戦いで苦労することになる。


つまり、死にたくないなら死を覚悟のうえで敵と戦い、装備を地道に調えなければならない。安全に徹すればかえって自分を追い込むという構造には、リスクを取るかどうかの刺激や緊張感、葛藤が込められていて、本作のループという重い制約がゲームのシステムとしてしっかり機能していることの証しであるとも感じられた。

弾幕の撃ち合いがメインのバトル



ハンドガンやマシンガンなど、本作の武器種はさまざま。物語を進めていくとブレードも手に入るが、基本的には銃器がメインになる。どの武器にも若干の反動はあるが、視点を少し下げるだけで簡単に制御できるほか、プレイヤーの照準を補助してくれる「エイムアシスト機能」を3段階で設定できるため、シューティングがあまり得意ではない人も操作はしやすい。


さらに、弾を撃ち切ると自動でリロードするが、進捗を示すゲージが白い枠の中に到達した瞬間に射撃ボタンを押すと、即座に弾が再装填される。いわゆる「クイックリロード」という仕組みで、攻撃後の隙を大幅に減らせるのでなるべく活用したいところ。



弾を撃ってくるのは敵も同じで、ザコやボスを問わず、くり出してくる攻撃のほとんどは弾幕。撃たれては撃ち返すという弾幕の応酬になるので、敵の弾の軌道をしっかり確認していないと移動や回避をした先で簡単に当たってしまう。なかにはこちらの動きを読んだ偏差撃ちのようなことをしてくる個体もいる。安直に動いていると、あっという間に体力が減ってピンチに陥るだろう。


とはいえ、各マップには柱や木々などの障害物がたくさんあり、それらを遮へい物として利用できるため、隠れて敵の攻撃をやり過ごして反撃するという流れをくり返すだけでもけっこううまくいく。さらにダッシュを使うと移動中は無敵になれるので、相手の弾幕に近づきながら回避するという芸当も可能だ。



武器にまつわる要素で特に重要なのが「熟練度」。これが高いほど性能の高い武器を拾えるようになる。熟練度はメインの銃器を使うとたまっていき、満タンになると熟練度がひとつ上がる。同じ武器でも、入手したときの熟練度が1か15では性能に雲泥の差が出るため、なるべく熟練度は高めていきたい。



ダメージを受けずに連続で敵を倒していくと「アドレナリンレベル」が上昇し、段階に応じて攻撃力強化をはじめとするさまざまな恩恵を受けられるのだが、その中には武器熟練度の上昇率UPもある。


つまり敵をノーダメージで倒していくと主人公が単に強化されていくだけでなく、熟練度上げの効率がよくなって強い武器を入手しやすくなり、探索のハードルもぐっと下がる。こちらも先ほど説明した「リスクとリターンの取捨選択」と似ていて、物語を最初からやり直す可能性を承知のうえで危険を冒すことの意味をしっかり裏付けてくれていた。



死んだら装備をほぼすべて失うとともに最初からやり直し、挑むたびにマップが変化するのでワンパターンな攻略法が通用しないなど、「リターナル」は死をくり返すことの絶望感を徹底的に追求した、超高難度のゲームではある。とはいえ、敵をノーダメージで倒すことで得られるアドレナリンレベルや、メリットとデメリットの内在したパラサイトというアイテムなど、プレイヤーが危険を冒すことへの見返りも手厚い。より難しいゲームを求めていたり、腕に自信のある人など、ヘビーゲーマーたちには特にオススメできる1作だ。

(文・夏無内好)

  • 【ゲーム情報】
  • ■Returnal
  • ジャンル:ローグライク TPS
  • 対応機種:PS5/PC(Steam、epicgames)
  • 発売日:2023年2月16日(金)
  • 価格:
  • <通常版>
  • パッケージ版:7,900円(税別)
  • ダウンロード版:8,690円(税込)
  • <デジタルデラックス版>
  • 9,790円(税込)
  • CERO :C(15歳以上対象)
  • 発売元:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

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