40年近く変わらないデザイン……「装甲騎兵ボトムズ」をプラモデル化しつづけるウェーブの熱意と誠意【ホビー業界インサイド第54回】

1983年に放送されたロボットアニメ「装甲騎兵ボトムズ」。このアニメほど、放送当初から「プラモデル化」「模型化」と密接に関わり続けたアニメはないだろう。
旧タカラのプラモデルシリーズ終了直後、商品化されなかったAT(アーマードトルーパー。「ボトムズ」に登場するロボットの総称)の改造パーツを、いち早く発売したのが株式会社ウェーブだ。しばらく製品化されなかったATをガレージキットとして立体化。後には旧タカラのプラモデルの金型に手を加えた製品を開発するなど、ウェーブの「ボトムズ」にかける熱意はとどまるところを知らない。2014年から展開中の1/35プラモデルシリーズを担当するウェーブ開発部の朝比奈祥和さんに、お話をうかがった。

「設定画に忠実に再現」とは、具体的にどういう仕様なのか?


──10月下旬に「ダイビングビートル」のPS(プロスペック)版 が発売され、来年2020年2月下旬には待望の「ベルゼルガWP」が発売されます。ということは、しばらくクメン篇のATが続くのでしょうか?

朝比奈 いえ、今月下旬にはOVA「赫奕たる異端」の「バーグラリードッグ」が発売になりますし、クメン篇に集中しようというつもりはないんです。

──だけど、第1弾がクエント篇の「ラビドリードッグ」でしたよね。てっきり、テレビシリーズを後ろから辿っていくラインアップなんだろうな……と思っていました。

朝比奈 「スコープドッグ」はバリエーションが多いので、スコープドッグ系ばかり続くとお客様が飽きてしまうんです。ですから、スコープドッグ系を出したら、次は別のATを入れるようにしています。例えば、OVA「ザ・ラストレッドショルダー」に登場した「スコープドッグ ターボカスタム」を発売した後に、対峙する相手として「ブラッドサッカー」が必要だろう、という考え方でラインアップを決めています。


──ブラッドサッカーはレジンキットでは発売されていましたが、インジェクションキットでは初めての立体化ですね。

朝比奈 テレビの制約を離れたOVAに登場した機体なので、デザイナーの大河原邦男さんも自由にデザインされたようです。よく言われることですが、「蒼き流星SPTレイズナー」に近いラインなんですよね。

──しかし、設定のうえではブラッドサッカーが後に、「ストライクドッグ」へと繋がるんですよね? プラモデル化にあたって、開発系統の整合性をつけようとは考えませんでしたか?

朝比奈 設定上の系統は、特に気にしていません。あくまでも、各ATの設定画ごとの立体化に注力しています。開発系統を意識して勝手な自己解釈を入れてしまわないよう、気をつけています。

──テレビに登場したATでも、「マーシィドッグ」とスコープドッグは下半身のみ違うはずですよね。ところが設定画を見ると、マーシィドッグは少し太めです。以前にバンダイさんのガシャプラを取材したとき、マーシィドッグの大腿部を少し太くしたと聞きました。

朝比奈 もし放送当時、「大河原さん、マーシィドッグの大腿は太く描いてください」という発注があったのだとしたら、太くすると思います。だけど、よく見ると頭の形もスコープドッグより扁平気味ですし、レンズの付いているバイザーの形も違う。つまり、大腿の太さも手で描いているための誤差の範囲ではないでしょうか。

──旧タカラの1/24 マーシィドッグは、印象として足が細めでしたよね。

朝比奈 マーシィドッグの元になった「1/24 スコープドッグ」は、キャラクタープラモデルの歴史に残る逸品でした。しかし、設定画と比べると同じ部分がまったくなく、あくまでもプラモデルとして完成されている。しかし、今あのスコープドッグと同じ理屈でアレンジすることは難しいです。こちらとしては設定画に準拠しつつ、サンライズさんから意見が出れば反映させていくスタンスです。最初にこちらで三面図を書いてから打ち合わせが始まるのですが、今やっている「スナッピングタートル」ですと、まず胴体の横幅。それから、曲率。ご協力いただいているのは「ボトムズ」のスタッフだった井上幸一さんです。井上さんは三面図に赤線を入れてくれて、「もっとカッコよく」「とにかく強そうに」などの抽象的な指示がないので、とても助かっています。
今回の1/35キットでは、「こうしたほうがもっとカッコよくなるから変えよう」という考え方はしていません。同じアングルで写真を撮ったら設定画と寸分たがわず重なる……というほどではないにしても、「この絵を立体にすれば、確かにこうなるな」という最大公約数を狙っています。

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