令和の世に舞う太正桜! 「サクラ大戦」シリーズ最新作「新サクラ大戦」をレビュー
2019年12月12日(木)、PS4向けアクションアドベンチャー「新サクラ大戦」が発売された。「サクラ大戦」シリーズは、1996年にセガサターンで第1作が発売されて以来、続編はもちろん、ゲームとしての枠を越え、漫画や小説、アニメに舞台などさまざまな媒体に登場し、注目を集めてきた。そんな長い歴史を持つ本シリーズの最新作のレビューをお届けする。
約14年ぶりの新作「新サクラ大戦」
本作は、プレイステーション2で発売された「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」から約14年ぶりの新作。だが、私が「サクラ大戦」について知っていることといえば、子どもの頃にテレビCMで聞いた一節「走れ 光速の帝国華撃団」と、ネットミームとしてやたらネタにされている「体が勝手に……」、くらいなもので、「“新”サクラ大戦」と言われても、そもそも何が新しいかを比べるための経験や知識がない。
シミュレーションからアクションになったとか、キャラクターが3Dで描写されるようになったとか、実感は湧かない。そういう意味では、私にとっての「新サクラ大戦」は、初めて触れる「サクラ大戦」とも言える。
本作の舞台は、「太正」と呼ばれる時代の日本。かつて起こった「降魔大戦」の勝利と引き換えに、帝都、巴里(パリ)、紐育(ニューヨーク)華撃団の全隊員を失った後、世界各地に誕生した華撃団は、「降魔」と呼ばれる敵から人々を守るいっぽう、「華撃団競技会」で歌劇と戦闘を競い合い、互いの力を磨き合っていた。
それから10年後、主人公の神山誠十郎は、新たな帝国華撃団・花組の隊長として帝国劇場に赴任。落ち目となっていた花組の再建と、世界中から集まった華撃団が頂点を目指して戦う「世界華撃団大戦」での優勝を目指す。 本作の物語は、各話ごとに花組の特定の隊員を掘り下げる構成になっており、さらに、神山を操作して大帝国劇場や銀座を巡り、花組の隊員たちとの交流などを行うアドベンチャーパートと、「霊子戦闘機」と呼ばれる機体に乗り、華撃団大戦に挑んだり、襲い来る降魔と戦うバトルパートにそれぞれ分かれている。
真面目な神山隊長を見守るアドベンチャーパート
アドベンチャーパートでは、自由に大帝国劇場内や帝都を探索することができる。物語序盤に渡される「スマァトロン」では、各地にいる人物や、発生しているメインイベント、サブイベントなどをひと目で確認できるため、サクサクと進められる。ファストトラベル機能はないものの、探索できる場所はそう広くなく、ダッシュで移動すればすぐに端まで行ける。ロード時間も短めで、とくにストレスを感じることはなかった。
おもしろいのが、「LIPS」というシステムだ。主要人物たちと会話をしていると、時おり選択肢が出現、制限時間内に、返答の内容を選ぶというもの。提案に対する感想を求められたり、悩みを打ち明けられたりと、話のバリエーションはじつに多いのだが、神山の返事も負けていない。真摯に答えることもできるし、冗談を言ったり、からかうことも可能だ。プレイヤー次第で、神山は硬派、軟派、天邪鬼、なんにでもなれるわけだが、彼も兵学校主席卒業、20歳にして帝国海軍特務艦艦長を歴任したエリート中のエリート。将来を考え、なるべく真面目な返答を選んであげたい……が。
当の選択肢があからさまに狙っているので、どうにも「間違える」。隊員に詰め寄られる主人公も、真面目な口調で素っ頓狂な言い訳をするものだから、温度差がおかしくて笑ってしまう。とは言え、LIPSで選んだ返事によって相手の「信頼度」が上下するため、あまりふざけていると後のバトルパートで痛い目を見ることも(こちらは後述)。
ちなみに、あえて選択肢を選ばないことが答えにもなるほか、スティックを上下させて神山の姿勢や声量を調整するタイプも存在する。さらに、同じ人物のサブイベントが連続した場合、前回の選択肢が新しいイベントに影響するという作り込みぶり(入浴中のアナスタシアを覗いた後、部屋にいる彼女に会いに行ったら怒られた)。欲望に従うか、誠実にいくかは、プレイヤーのさじ加減だ。ちなみに、物語の合間に入るセーブのための小休止で、登場人物たちの信頼度を確認できる。あまりに低いキャラクターに対しては、接し方を少し考える必要があるかもしれない。
信頼度の確認画面。シールとか出ないだろうか。
簡単操作でド派手なアクションが楽しめるバトルパート
アドベンチャーパートが終われば、バトルパートへ。主人公および同行しているヒロインひとりの機体を操作し、現れる敵を全滅させていく。バトル自体はアクションとなっており、〇ボタンと△ボタンを組み合わせて攻撃をくり出す。
基本は〇攻撃だが、△攻撃を挟むタイミングで後のアクションが変化。コンボによっては、空中へ敵を打ち上げることも可能だ。攻撃はすべてふたつのボタンで完結しているため、とくに技術を求められるわけでもなく、ただ連打しているだけでも案外どうにかなる。
「霊力ゲージ」が満タンになれば、□ボタンを押すと必殺攻撃を出すことも可能だ。ただ、本作にはロックオン機能がないので、攻撃対象を絞りにくい。戦闘中は、回避や機体のブーストを使った高速移動を主体に動くため、移動速度を制御しきれず、攻撃を空振りしてしまうことが多い(私が未熟なだけかもしれないが)。
敵を倒すという点では、対降魔戦も華撃団大戦も同じだが、華撃団大戦はやや特殊。ダンジョンのようなフィールドを踏破していく降魔戦とは違い、プレイヤーは主人公以外にヒロインを2人選抜し、3人1組で試合にのぞむ。一定時間内にできるだけ多くの敵を撃破、獲得したポイントで勝敗を決めることになる。要は視界に入る対象を片っ端から撃破していけばいいのだが、物語が中盤に入ると一転、より多くの敵がいる場所へ移動したり、高ポイントを持つ金色の敵を優先して狙ったりと、戦術的な立ち回りが重要になってくる。とくに、倫敦華撃団との戦いは、そういった要素を理解しているのか問われているようで、かなり接戦となった。
また、「ジャスト回避」も勝つための重要な要素だ。敵の攻撃をタイミングよく回避することで発動し、一定時間、自分以外の動きが遅くなる。このあいだに相手を集中攻撃できるというわけだ。効果中は、神山機のみ、体力が一定まで減っている敵を一撃で倒す専用の攻撃も可能なので、効率が求められる華撃団大戦ではとくに重宝する。
ジャスト回避の判定はけっこうゆるく、若干遅くなっても成功するうえ、敵は攻撃の直前に赤く光るので、それが目印にもなる。本作のバトルには防御がないため、ジャスト回避にはなるべく慣れておきたい。物語が進むと地下格納庫で、“いくさちゃん”を使った仮想空間での戦闘訓練をいつでも体験できるので、そちらで練習するのもオススメ。
また、ヒロインたちの機体にはそれぞれ特徴がある。神山機、さくら機、初穂機は接近戦特化、クラリス機は遠距離攻撃特化、あざみ機は1対1向き、アナスタシア機は遠近に対応できるバランス型、といった具合。また、神山機とヒロインの機体は、「絆ゲージ」の影響をつねに受ける。
絆ゲージは、戦闘中にさまざまな条件を満たすと上昇し、一定値に達するたびに攻撃、防御力が強化されるというもの。敵の攻撃を受けたりすると逆に低下してしまうので、いかにダメージを受けずに戦えるかも重要になる。ちなみに、バトルパートへ突入する前に、アドベンチャーパートで対象のヒロインの信頼度を上げておくと補正が入り、絆ゲージがある程度上昇した状態で始めることができる。
さらに、神山・ヒロイン機は、一定時間、両機の性能が大幅に強化される「合体攻撃」を行うことが可能だ。バトルパートにつき1回しか使えないので、強敵との戦闘時や、追い込まれた場合など、切り札的な運用が求められる。この合体攻撃、パートナーとなったヒロインによって発動時の演出が異なる。下の画像が、その一部だ。そもそもこれは、「攻撃」なのだろうか?
ふだんアクションやRPGばかりプレイしているせいか、キャラクターたちといちゃいちゃするタイプの作品はなじみがなく、いざ手に取っても主人公の軟派な態度に歯ぎしりすることも多いのだが、神山誠十郎は違った。名は体を表すという言葉に違わず、絶滅危惧種とも言える「誠」実ぶりのおかげで、LIPSシステムを用いた会話で起こる隊員たちとの不祥事も見ていて清々しい。
各話で異なる主要人物にスポットを当てる構成、シンプルなアクションや、敵を闇雲に倒すだけでは勝てない華撃団大戦など、とっつきやすく、また奥深い要素も多い。冒頭でも書いたとおり、私にとってはこれが初めての「サクラ大戦」で、新しいも古いもない。だが、長く続いてきたシリーズを新参が楽しめることもまた、本作が「『新』サクラ大戦」である所以なのだろう。
(文・夏無内好)
- 【商品概要】
- ■ 新サクラ大戦
- 対応機種:PlayStation 4
- 発売日:2019年12月12日(木)
- 価格:
- 通常版・ダウンロード版 8,800円(税別)
- 初回限定版・デジタルデラックス版 14,800円(税別)
- ジャンル:ドラマチック3Dアクションアドベンチャー
- プレイ人数:1人
- 発売・販売:株式会社セガゲームス
- CERO:C(15歳以上対象)
- 【スタッフ】
- メインキャラクターデザイン:久保帯人
- ゲストキャラクターデザイン:堀口悠紀子、BUNBUN、島田フミカネ、杉森建、副島成記
- 音楽:田中公平
- ストーリー構成:イシイジロウ
- 原作:広井王子
- キャスト:阿座上洋平、佐倉綾音、内田真礼、山村響、福原綾香、早見沙織、梅原裕一郎、上坂すみれ、島﨑信長、沼倉愛美、水樹奈々、釘宮理恵 他
(C)SEGA
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