【特別対談企画】出口博之×鮫島一六三が大放談! 2019年の総決算、これが今年のBESTアニメソングだ!
気が付けが2019年も今日でおしまい。いや~一年が経つのって早いですね。
ということで、アキバ総研の年末恒例企画となりつつある、出口博之さんと鮫島一六三さんによる、アニソン語りが今年も開催!
ベーシストにしてアニソンDJとしても活躍する出口さん、お笑いコンビ・BANBANBANのツッコミ担当にしてアニソンDJイベント「アニソンディスコ」を主催する鮫島さんのふたりが、2019年のアニメソングを振り返ります。
今回は昨年同様、2019年冬クールから秋クールまでの各シーズンに放送されたアニメからセレクトしたBEST3に加え、アニメ映画使用曲からBEST3をチョイスし、思う存分アニメソングについて語っていただいた。
それでは2万字オーバーのロング対談、はじまりはじまり~!
──まずはおふたりにとって、今年はどんな1年でしたか?
鮫島 今年、鮫島ヒロミから鮫島一六三に改名したんです。イベントで生誕祭をやって、163人集まらなかったら改名することになったんですよ。その結果、集まったのがたまたま136人! 逆かー!って。
出口 持ってますね~。80人とか中途半端な数じゃなくてよかったね(笑)。
──出口さんは、DJやいろんなバンドのサポートなど、音楽活動も精力的だったように思いますが。
出口 そうですね。DJとしてもけっこう立った気がしますね。我々が参加していたDJイベント「アニ神輿ッ!!」が復活したのも今年かな? だから意識的にアニソンを聴くことが増えた一年でした。現場で聴いて、こんなにいい曲なんだと気づく。そういう機会が多かったと思います。
──DJというと「D4DJ」という新コンテンツが出てきましたね。アングラと思っていたアニクラ(アニメーション音楽をクラブで楽しむイベントのこと)を題材にしたコンテンツがメジャーシーンで動き出しました。
鮫島 最初は「アニクラ界に黒船がきたー! こ、怖いよー!」と思ったんですけど、実際に会場に行ってみたら全然客層がかぶってなかったんですよ。だから「既存のアニクラが食われる!」ってことはないのかなー、と。「D4DJ」はアニソンのライブに行く人が集まる場所という印象です。いっぽうアニクラは、クラブでアニソンを聴きたい仲間が集まる場所ですね。この輪を大きくしていくのであれば、そういうアニソンのライブに行く人を取り込まないといけないんですが、現状の100人~200人のパーティをやるんであれば、そんなに恐れおののく必要もないかなと。こういう言い方もどうかと思うんですが、ああいう作品が「アニクラ」っていうのを広めてくれると、アニクラを知らなかった人たちが「ほかにもこんなイベントがあるんだ」って知ってくれると思うので、アニクラにとってはいいことだと思います。
2019年冬クール(1月~3月)
──そんな2019年のアニソンを振り返ろうという、企画なんですが、まずは1月スタートの冬アニメから振り返っていきましょう!
出口 この時期で印象に残っているアニメって何ですか?
鮫島 「かぐや様」の鈴木雅之ですよ。一つの事件です。まさかこんな大物新人が出てくるとは思いませんでしたよ! これは予備知識なしにアニメを観たんですけど、OPを見たら聴きなじみのある声だなと思って、クレジットを見たら「マジかよ!」って思いました。曲もよかったし、踊りやすいし乗りやすいしキャッチ―でしたよね。
出口 個人的には、全体で見ると「バーチャルさんはみている」が革新的というか、新しい試みのアニメだったかなって思います。ネットのインタラクティブ感みたいなのがテレビにもやってきて、これからどんどん混ざっていくのかなと思いきや、いい意味でそれぞれの畑が違ってたっていう気付きを得られたというか。
元も子もないことをいうと、テレビ側が相性が悪いと思っちゃったのかもしれない。そのせいか、今年後半になるとVtuberがテレビにあんまり出てこなくなったような気がします。
──確かに。
出口 テレビっていろんなセクションに、いろんなプロフェッショナルがかかわって、最終的にテレビ番組に仕上がるわけなんだけど、対してネットってそういったものをすっ飛ばして、個人の意思が中心にあるというのが見どころであり面白さなんですよね。でもそれをやるなら、別にテレビでなくてもよくね?って。
鮫島 YouTuberもようやくテレビにも出始めた段階なので、そこをすっ飛ばしていきなりVtuberがテレビのど真ん中に出てくるっていうのは、ちょっと早かったのかもしれないですね。
出口 今やってるYouTuberの編集のやり方は、普通にテレビ局でやってるような番組作りなんですよね。
鮫島 そう。YouTuberがカメラ一つを持って、スマホで見られるサイズで一人でしゃべってるっていうのがよかったのに、最近はひな壇芸人みたいなことやってるじゃないですか。でも、それやっちゃうとテレビでいいじゃんってなりますよね。
出口 逆説的にテレビの強さを感じるというか。「誰もテレビを見てないよ」と言いながら、結局みんなテレビを見るんじゃんって思う。
鮫島 やっぱりテレビは強いですよね。
出口 テレビに出たいよね。
鮫島 出たいです!
(一同爆笑)
──というわけで楽曲を見てみましょう。今回は、クール毎におふたりのアニソンBESTを発表していきます。
出口 悩まなかったな、俺は。
鮫島 僕も2019冬はそんなに悩まなかったですね。
■2019冬アニメ 鮫島BEST3
火炎(「どろろ」OP)
ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花(「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」OP)
RISE(「盾の勇者の成り上がり」OP)
■2019冬アニメ 出口BEST3
火炎(「どろろ」OP)
ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花(「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」OP)
破顔(「3D彼女 リアルガール(第2シーズン)」ED)
鮫島 おおー! ツーペア!
出口 どうすか? サメさん。
鮫島 今年初めて買ったCDは「ラブ・ドラマティック」でした。アニメ見て、曲を聴いて、これを買わなきゃってCD屋に行って。それでアニメのコーナーに行ったら、鈴木雅之さんの顔がドンと飾ってあって笑っちゃいました。
出口 先ほどもおっしゃられたように、これは事件ですよね。アニメ業界にすごい新人がきちゃったよって。そして作曲がいきものがかりの水野良樹さんで。プロデューサーのインタビューとか見ると、意図的に仕掛けたところがあったそうです。なんたってマーチン(鈴木雅之さんの愛称)はラブソングの王様なので。
鮫島 そうそう。恋愛アニメだからかわいい声の主題歌とかじゃなくて、こっちの方がいいだろうと。まんまと制作側の作戦に引っかかりましたよね。大石昌良さんがどこかで言ってたんですけど、今年のアニサマで、大石さんが出られる日の男性アーティストは自分だけかと思ってたら「もう一人決まりました! 鈴木雅之さんです」って聞いて驚いたって(笑)。さらに「アニソン界の大物新人」って公式がいじってたじゃないですか
出口 あのクラスの大物になるとなかなかいじられることもないから、逆に嬉しいんでしょうね。この曲、鮫島さんのやっているアニクライベントの「アニソンディスコ」でも相当かかっているみたいですね。
鮫島 かけまくってますね。それで、みんなで付け髭つけて踊ったりして(笑)。その後に「め組のひと」をかけたりしてます。若い子にも受けてるんですよ。
出口 「め組のひと」がTikTokでもはやりましたね。それこそアニソンと邦楽って実は仲良しで、アニソンのイベントでもアニソンと一緒にJ-POPをかけることってよくあるじゃないですか。それがすごく効果的に交わって、お客さんが喜んでくれたり面白い雰囲気になったりする。その中で鈴木雅之の「違う、そうじゃない」とかラッツ&スターが大ネタになっているところで、「マーチン、本当にアニソン歌っちゃったよ!」って。
これからどんどんこういうケースが増えていく可能性もあると思いますよ。例えば、すでにずっとやられているのが小林幸子。あの人は演歌畑の人だから、ポップス畑の人とは違う面白がり方になるけど。
鮫島 演歌というと氷川きよしさんの「ドラゴンボール超」ですね。やっぱかっこいいし、色気がある!
出口 うん。ビジュアル系かっていうくらいかっこいい。
──そして「どろろ」の「火炎」もかぶっています。
出口 これは正直、最初に聴いた時はすごく戸惑いました。アニメとしても全体的に、微妙に違和感があったのは覚えてる。「どろろ」もすごく好きな作品で楽しみにしてたんだけど、「こんなんだっけ? 大丈夫?」っていう。そして歌ってるのも女王蜂。もうちょっとガレージロックっぽくてハイテンションな曲を作る印象があったんだけど、今回のこの曲ってかなり暗くて盛り上がる曲ではないんだけど、じとーっとくっついてくるイメージ。その「何だろう、これ」っていう印象から、どんどん逆転して、最終的に「意外とこれはいいんじゃないか!」って評価になった。
「どろろ」自体が、まず間違いのない作品というのがあるから、なおのことアニメ本編のリファインぶりは好みの分かれる部分があるとはいえ、いい作品でした。曲もアニメも、トータルで「どろろ」になっていました。
鮫島 アニクラでも、誰がこれを一番うまくかけるか、って張り合っている人もいましたね。確かにかけ方が難しんですよね。どういう流れ、どういう繋ぎで「火炎」にいくか。僕は全然自信ないです!(笑)
個人的には、よくこのTVサイズにまとめたなと思うんですよね。フルで聴いたら超カッコいい。それでいてTVサイズで聴いてもかっこいい。制作陣の努力を感じました!
──そして、フジファブリックの「破顔」はいかがでしょうか?
出口 すげえいい曲。死ぬほどいい曲なんです。すごく正直に言うと、曲先行で知りました。連載コラムではBiSHのOPについて書いていたんですけど、あっちもよかった。で、フジファブリックが歌うEDも、これまたいいフジファブリックなんです。
またこれもアニソンっぽくないっていう表現になっちゃうんだけど、リズムの組み立て方がすごく洋楽っぽいというか。ベースが淡々と刻みつつ、ドラムがリズムの展開をうまく作ってメリハリをつけてくれるという、楽器をやってる人が聞くと「洋楽っぽい」と感じるアレンジ。(リズムを)大きく聴くとゆったりな曲なんだけど、受け取り方によってはすごく疾走感を感じられるというか。言葉ではうまく説明できないので、実際に聴いて感じていただきたいです。
アニメの壮大な世界観の受け皿になっているいい曲ですね。
──そして鮫島さんの最後の曲は、「盾の勇者の成り上がり」の「RISE」。
鮫島 歌ってるのはMADKIDさん。5人組のダンスボーカルユニットで、ご自身で作詞作曲されています。アニメの台本を見ながら書かれたようで、「成り上がり」と「RISE」がかかっているそうです。
出口 なるほど!
鮫島 最初に聴いた時、いきなりギターから入って「かっこいい曲」という第一印象でしたね。MAD KIDさんのことは全然知らなくて、バンドが歌ってるのかなって思ったんです。調べたらダンスユニットで、ライブではしっかりと生歌でやってるんですよね。
アニメ本編も面白かったですね。1~2話とか悲しいくらい主人公がいじめられてて、そこから強い心をもって成り上がっていくんです。アニメの世界観とストーリー、そしてOPテーマがすごくマッチしていました。2020年2月にはアニソンディスコに出てくれるので、ぜひ来てください!
ちなみに結構オタクなメンバーが多いみたいで、ツイッターを観たらアニメの話ばっかりしていました(笑)。
2019年春クール(4月~6月)
鮫島 このクールは強いですね。
──「フルーツバスケット」に「ワンパンマン」に「RobiHachi」。
出口 あと「みるタイツ」(笑)。
鮫島 わははは(笑)。その中でも、やっぱり「鬼滅の刃」ですよね。アニメ化で一気に大ブレイク。アニクラにも「鬼滅」のコスプレイヤーがめっちゃ増えました。服装もそうだし、口に竹をくわえたり、お面つけたりとか、作りこまなくてもワンポイントでコスプレできるのがいいんでしょうね。
アニソンディスコでは雑コス──その辺にあるものでコスプレしよう、っていう雑なコスプレがはやってたんですが、誰かがペットボトルを口にくわえて「禰豆子です」って(笑)。そしたら、どんどん「俺も。俺も」って盛り上がって雑コス大会になって、一番小さかったのがリップクリームでした。そういう風に真似したくなるのがいいんですよね。
──「キャロル&チューズデイ」もよかったですよね。
出口 これは良作でした。
鮫嶋 どれも音楽がよかったです。そして「キンプリ」(KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-)もよかった。毎回、TRFのカバーが流れるんですが、こんなにも「EZ DO DANCE」がアニメファンに受け入れられるとは!
出口 個人的にもう少し話題になるかなと思ってたのが「MIX」。観た人は面白いって言うんだけどやっぱりあだち充作品の文脈を知らないと、ピンとはこないのかな~って。OPもsumikaが歌ってて、すごくよかった。「南風」とか「タッチ」「ミックス」とか、作品に絡めた歌詞にもなっていて。
──ということで、BEST3の発表お願いします!
■2019春アニメ 鮫島BEST3
紅蓮華(「鬼滅の刃」OP)
どんなときも。(「八月のシンデレラナイン」ED)
survival dAnce 〜no no cry more〜(「KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-」第9話劇中歌)
■2019春アニメ 出口BEST3
レッツ!ゴンじろー(「けだまのゴンじろー」OP)
Bラッパーズのテーマ(「Bラッパーズ ストリート」主題歌)
スタンドバイミー(「さらざんまい」ED)
──やはり「鬼滅」きましたね。
鮫島 「紅蓮華」は曲がイイっていうのもあるんですけど、これを2クール使ったっていうところを評価してます。今や2クールアニメだったら前半と後半で変えてくるところ、「鬼滅」はこの曲だけで貫きました。スタッフインタビューとか読んだら、「鬼滅」の代表曲にしたいから変えなかったとお話されていて、矜持があるなと。
アニクラシーンでも、2クール流れたことでフロアの皆さんの反応もだんだん変わってきたんです。きちんと浸透しているし、ちゃんと愛着を持たせている。そういう作り手側の心意気が、自分は好きです。
1コーラスだけでもいいんですけど、フルサイズの方が全然よかったですね。どんどんグルーヴがあがっていく。
──アニメとしても展開がていねいな印象でした。修行だけで何話か使って。じっくりキャラクターの成長を描いていたところに、古きよきジャンプアニメの伝統を感じましたね。
出口 「ドラゴンボール」とか、悟空は1ヵ月くらいずっと蛇の道走ってましたからね(笑)。ああいう展開ってよかったと思うし、懐古趣味かもしれないけどDVDなどで繰り返し見ることを想定していない時代だったから、次はどうなる次はどうなるって毎週引っ張れたんだと思う。「鬼滅」の場合は、もしかしたら最初から25話という枠が決まっていたから、全体のバランスをとりつつ構成できたという面があるのかも。結果的に、2クールアニメをやるにあたっての好例になったかと思います。
──そして「ハチナイ(八月のシンデレラナイン)」の「どんなときも。」。これはキャストの西田望見さん、近藤玲奈さん、南早紀さん、井上ほの花さんが歌っていました。
鮫島 単純に女性が男性ボーカル曲をカバーしたり、男性が女性ボーカル曲をカバーするのも好きなんですよ。性別を超えたメッセージ性にグッときます。僕は今、西田さんと一緒にラジオをしているんですけど、そこで「どんなときも。」って曲は知っていたけど歌うとこんなに難しいと思わなかったとおっしゃってました。
あと「ハチナイ」でカバーソング集を出してるんですよね。「浪漫飛行」とか「My Revolution」といった80~90年代のポップスを含んだカバーアルバムで。全部よかったです。これをアニクラでかけると、おじさんたちが「これもアニソンになってるの?」って知って、そこからアニメに入る人もいますね。
出口 最近そういうのけっこうありますよね。「輪るピングドラム」だとARBをカバーしてた。
鮫島 「ローリング☆ガールズ」はブルーハーツでした。「バンドリ」もゲームでいろんな曲をカバーしていますよね。そういうところからでも、若い子たちが過去の楽曲に触れるのはいいことだと思います。
出口 ちょうど我々世代が決定権を持つようになって……。
鮫島 これ、いい曲だから声優さんに歌ってもらいたいって企画を通しちゃう(笑)。
出口 一時期自動車のCMとかで、やたら古い洋楽が流れまくった時期がありましたよね。当時は不思議だったけど、今にしてみればディレクターなんかが、当時自分が聴いていた曲で何か作りたいっていう思いがあったってことだとわかりますね。
鮫島 ちょうどうちの相方も「ドラゴンボール芸人」をやってるんですけど、制作陣が「ドラゴンボール」ドはまり世代だから使ってもらえるっていうのはあります。
鮫島 OPの「エチュード」も、THE BACK HORNのギター・菅波栄純さんが作ってるんですけど、あの人もオタクなんですよね。ツイッターを見たらアニメのことばっかつぶやいてました。
──バンドマンって意外とオタク多いですよね。
出口 もともとバンドで大成する人ってオタクなんですよ。機材が好きだとか、アーティストが好きだとか、「わー」っとのめりこんで知識の貯金をしていかないと作品って作れないから。そうすると、どうしてもオタク気質になるんです。
──そして問題の一曲「survival dAnce 〜no no cry more〜」。
鮫島 これもカバー曲で、「キンプリ(KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-)」9話で使われました。この作品って毎回ED曲が違っていて、各回のメインのキャラがTRFのカバーを歌っていたんです。ただ……、とにかく意味の分からないアニメでしたね。第9話は、大和アレクサンダーというマッチョなキャラが歌うんですけど、彼が地面でグルグル回る「ウィンドミル」というダンスを踊ると竜巻が発生するんですね。すると、対抗して香賀美タイガっていうキャラが乱入してくるんですよ。それでプリズムバトルが始まるんです。……言ってること、わかります?
出口 う、うん。
鮫島 でタイガが「天上天下唯我独尊剣」っていうのを出して、アレクサンダーを殺そうとするんです。でアレクサンダーはハンマーでそれを撃ち返すんです。これコンサート中ですよ? それをタイガは剣で受け止めて、今度はアレクサンダーの背中から攻撃しようとするんです。するとアレクサンダーの背中から斧が生えてくるんです。で、アレクサンダーは6人に分身して、タイガに向かって空中から攻撃するんです。今度は、タイガはバカでかいうちわであおいで、空から攻撃してくる6人のアレクサンダーを吹き飛ばそうとするんです。そしたらちゅどーん!って会場が大爆発するんです。……ついてきてます?
出口 おう。
鮫島 その後に「これは大和アレクサンダーのイリュージョンでした」って終わるんです。
出口 ……。
──でも「キンプリ」って全部このノリなんです。
鮫島 その後に、アレクサンダー役の武内駿輔さんがすごく低い声で「survival dAnce」を歌うんです。でEDは「Silver and Gold dance」。すごくねちっこ~く歌うんです(笑)。たまらないですよ。
出口 あの、すみません。自分真面目に追いかけてないので印象でしかないんですけど、今の話をまとめると、きっとこういう風に誰かに話しかけたくなるのが、「キンプリ」というアニメということですよね。
鮫島 「アストロ球団」みたいなもんですよ。
一同爆笑
出口 その面白さがきちんと世の中に伝わり切ってないところがあるかもしれないですね。思い出したんですけど、友達がバッグに香賀美タイガ君のキーホルダーを着けていたの「キャラ推しのアニメなのかな」と思っていたんです。でも、今鮫島さんからそういう話を聞くと、「マジか!」と。「そんな話だったんだ」って。どんなギャグアニメよりも尖った内容なんですね。
鮫島 でも話としてはまっとうな少年マンガノリなんですよ。登場人物はみんな真剣なんです。
──そうなんですよ。主人公側の事務所は多額の負債を抱えているところに、ライバルの事務所から勝負を挑まれて、歌とダンスで戦おうっていうストーリーです。
出口 その時点でおかしいでしょ(笑)! 事務所がやばいんだったら己を高めていく方向にいくはずなのに、なんで戦うんだってっていう。これがもうタツノコイムズってやつなんですかね。だって今の話も第9話だけなんでしょ?
鮫島 そうです。他の回だと突然石油が噴き出してきたり。
出口 パワーワードしか出てこない(笑)。俺も帰って観よう。
──ちょうど動画配信も行われているので、興味を持たれた方は、ぜひこの年末年始に一気見して、ヘンな世界を楽しんでいただきたいですね(笑)。そして出口さんの1曲目はCHAIの歌う「ゴンじろー」OPですね。
出口 はい。CHAIです。これもなかなか「アキバ総研」の読者の方は観ることのない作品だと思います。「コロコロコミック」連載マンガのキッズアニメです。ノリとしては「おぼっちゃまくん」とか「でんぢゃらすじーさん」みたいな、古きよきコロコロアニメ。いわゆる「ポケモン」とか「妖怪ウォッチ」みたいなハイブロウな作品ではなく(笑)。
鮫島 わはははは(笑)。
出口 そういうきちんとした作品というよりも、もう少し小学生男子が喜ぶような、駄菓子屋系アニメというか。我々もかつては「ともだちんこ」とか言ってゲラゲラ笑っていたじゃないですか。そのノリなんですけど、EDがデーモン閣下、OPが女の子4人組のバンドのCHAI。で、彼女たちがここ2~3年くらいフジロックとかに出ているバンドで、それが正しくアニソンを歌っているんです。
鮫島 いちいち歌詞に「毛」が入ってくるんだ(笑)。
──ちょっとニューウェーブ感がありますよね。
出口 まさにその通りで、音の作り方が洋楽テイストで、海外の音をそのまま天然で日本の女の子がやっちゃってるんです。かなり意図的ではあるんだけど、普通の日本のバンドが「ニューウェーブが好き」というだけではこの音は絶対に出ない。でも彼女たちはまだ二十歳そこらなのに、それができちゃったから大人たちはみんな度肝を抜かれてるわけです。
そういうバックボーンがあったうえで、「けだまのゴンじろー」を歌ってるんですよ。普通に考えるとミスマッチではあるんだけど、それを観てる小学校の男の子たちが大人になった時に「あれ? 俺が昔聴いてた音楽ってすごいんじゃね」って気づくと思います。その点では、もう一つの「Bラッパーズ」もそうなんですよ。
鮫島 これも知らない!
出口 これもコロコロです。4月はコロコロ月間でした。おいもを食べてラップをして、「おなラップ」なんです。
鮫島 おなラップ! バカですね~。
──ちなみに歌っているのは、主人公役の木村昴さんです。「ヒプノシスマイク」でも活躍していますね。
鮫島 (映像を見ながら)おお~! 確かに「ヒプマイ」だ。平普町(ひらふちょう)ディヴィジョンだ。すげえ~。……出口さん、これ本当にBEST3ですか?(笑)
出口 今年の春の3曲をあげろと言われたら、ゴンじろーとBラッパーは絶対に入るね!
大人になるとこういったアニメはまず観ないじゃん。でも、いざ観ると気づきがあって、「ゴンじろー」は我々が昔観ていたコロコロの伝統みたいなのがあって、そこで流れる音楽がカッコいいというミスマッチ。「Bラッパー」は、ラップがお茶の間にきちんと浸透している証拠だよなって。意図的にいろんなことを入れてるから、ここでラップを聴き始めたりとか、自分に韻を踏む才能に気づいたりとかして目覚める奴もいるんだよなって。
ラップの英才教育じゃないけど、そこから文化を盛り上げようとすると、かっこいいのもあるけど、くだらなくて笑える面白さみたいなものもちゃんとやらなきゃいけない。そういうところをきちんと引き受けて、ラップという文化の間口を広げるということを、「Bラッパー」はやっているんですよ。で4月だから、小学校に入って子供たちも「マイメン」とかラップ用語を使うようになってね。
鮫島 「マイメン100人できるかな」って(笑)。
一同笑
鮫島 でも確かに子どもの時に観ていた「キテレツ大百科」の曲とか、大人になって聴いたら全部カッコいいなって気づいたんですよ。ロックだったり、歌謡曲だったり、モータウンだったり、子どものころからすごいのを聴いてたんだなって。
出口 この2~3年は連載をやらせていただくことで、ちゃんとアニメソングを聴くようになったら、夕方とか朝にやっているキッズアニメって本当にいい曲が多いと気付きました。
──そして「さらざんまい」のED「スタンドバイミー」。歌うのはthe peggiesです。
出口 これは普通にいい曲っていうのと、ガールズバンドの次の時代が始まったなっていう曲かな。抜群に曲がいいし、今のバンドがやるアニソンらしい。これは曲も春っぽいし、いい曲だなと。
鮫島 「ゴンじろー」「Bラッパー」の後に出す曲じゃないですよ(笑)。
出口 話す順番を間違えちゃった(笑)。どうやってまとめようかなと。このままいくと「スタンドバイミー」を適当に入れた感じになっちゃいそうだけど(笑)
──CHAIとthe peggiesはガールズバンドというところで通ずるものはありますよね。
出口 そうそう。それが言いたかった。楽曲の振れ幅、バラエティの豊富さと、新しい感覚みたいなのがきちんと若いバンドにあるんだなというのがよくわかります。
自分の話になって申し訳ないけど、これを聴いて自分がアラフォーになってきたんだなって、自分の新しいものやいいものは更新していかないと気づいたら感性が古くなっていくという感じがしたかな。これは自分が20代の頃に先輩バンドに言われたんだけど、「大人の言うことを聞くな」と。「ロックは若いやつの音楽だから、極論すると俺の言うことも聞くな」「お前らがいいと思うものが一番新しくていいものなんだから」って。
そういう風に言ってもらったことを、きちんと身をもってわかってきたのが最近で、CHAIとかthe peggiesを見た時に「この感覚すごい!」「鮮烈!」っていう印象を受けました。だからもっとちゃんといろんなものを聴かないとなって思いました。
──キッズアニメなんて、一番若くて感性のみずみずしい世代が見るものですからね。カバー曲も温故知新じゃないですけど、過去の名曲を今の若い声優が歌って、再評価されるという価値があるわけで。春は若い世代向けのアニソンをどう更新していくか、というテーマがあったのかなと。
出口 そのまとめいいですね! 春はそういう季節でしたね。
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