斉木楠雄役・神谷浩史が照橋さんに「おっふ!」──「斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編」桜井弘明監督が明かすアフレコ時のテンションの上げ方

麻生周一さんのギャグマンガが原作のアニメ「斉木楠雄のΨ難(さいきくすおのサイなん)」の新シリーズ「斉木楠雄のΨ難 Ψ始動編」が、Netflixオリジナルアニメシリーズとして12月30日より独占配信開始! 

新キャラクターも加わり、さらに早くなったセリフスピードは圧巻のひと言! テレビアニメシリーズに続き、Ψ始動編でも監督を務めた桜井弘明さんに、新シリーズの見どころや新キャラクターの魅力、アフレコ現場の様子やシリーズ通しての思い出などをたっぷりと語ってもらった。

ーー 最初にごあいさつさせていただいてから、ソファに座るまでずっとお話しし続けていましたが……。

桜井 僕、よくしゃべるんです。アフレコが始まる前に、ブースに行って前説のようなことをやっていましたね。みんなの緊張をほぐそうと無駄話をするのが僕のスタイルです。

ーー それが作品にも反映されているんですね(笑)。監督のお話でリラックスができました! では本題へ。まずは、人気シリーズがΨ始動すると聞いたときの率直な感想を教えてください。

桜井 「人気シリーズ」って言われるのは、本当にうれしいです。週刊少年ジャンプの最終回で「終わっちゃった」と思っていたら、その後があると聞いて、その話は絶対やりたいと思っていました。原作がある限り作りたいというのが僕の願いでした。それが今回の新シリーズでは、他にも数本アニメ化できると聞いて、「待ってました!」という気持ちと「来ると思った」という気持ちが同時に押し寄せてきました。高校生と小学生の子どもがいるのですが、みんな斉木楠雄が大好きで。公式の発表があるまで続きを(アニメで)やるとは言えないから、隠しているのが大変でした。嬉しいことは、言いたくなるんだよね(笑)。

ーー 新シリーズの魅力を教えてください。

桜井 やっぱり、新キャラクターの井口工(CV.鳥海浩輔)先生と、(鈴宮)陽衣ちゃん(CV.東山奈央)です。やっと動いたこのキャラクターがどんな声を出すのだろうって、すごく楽しみでした。物陰から見ている井口先生のポーズとか、ほんといい絵を描くな、麻生さんって思いました。

ーー ここまで個性的で濃いキャラクターがすでにいる中で登場する新キャラって、相当インパクトが必要ですよね。

桜井 そうなんです。でも声を聞いたら予想以上にハマっていたので、びっくりしました。もちろん、今までのキャラクターもすべてそうだけど、「斉木楠雄のΨ難」にキャスティングされた時点で、声優さんたちも覚悟を決めていると思います(笑)。セリフのテンポ的なこともそうだけど、キャラクターを演じるうえで僕から変な要求されるぞ、みたいなね。

ーー 変な要求とはどんなものなのでしょうか?

桜井 「ダイナミックレンジを広げてくれ」とかかな。もしかしたら、こんなこと言ってないかもしれないけれど、意味合い的にはそんなよくわからないことをリクエストするんです。とか言いながら、自分が言ったことはよく覚えてないんだけどね(笑)。基本的には声優さんに解釈をまかせています。難しいことかもしれないけれど、みんな主役もやっている人たちばかりだから、彼らがきた段階で「大丈夫」って安心しています。キャラ作りはおまかせです。

ーー よくしゃべるけれど、芝居については何も言わないんですね(笑)。では、例えば前説をするというアフレコブース内では、何をしゃべっているのですか?

桜井 基本的には、どうでもいいことばかりしゃべっています。場を和ませることが目的なので。訂正したセリフがきちんと伝わっているかどうかを確認するくらいしかしません。例えば「Look here!」というセリフが新シリーズで出てくるのですが、そこは細かくリクエストしたくなりましたね。実際にはしなかったけれど。Queenのファーストアルバムの「Modern Times Rock'n'Roll」に出てくる「Look out!」の雰囲気でとかって……。あ、また話が脱線していく(笑)。結局そのセリフは、「ネイティブっぽく言って」とお願いしただけだったけど。

ーー 神谷(浩史)さんが「もはやアフレコで楽しそうにしているのは監督だけになりました」とコメントしていましたが、実際の現場はいかがでしたか?

桜井 本当に楽しんでいました。楠雄の仲間たちが出てくる話って、やっぱり楽しくて「こいつら揃うといいよな」って思ってしまいます。なので、今回、楠雄だけの話や、その回限りのキャラクターのお話はアニメ化していません。神谷くんも一人じゃ寂しいだろうしね(笑)。できるだけみんなを出すようにしています。原作では出ていなかったメインキャストが、アニメでは出ているので、違いを楽しんでいただきたいです。

ーー 実は、原作が終わるのが寂しいので、原作(コミック版)は最後の3巻が未読だったんです。でも、アニメで一気見してしまったので、見比べてみます。

桜井 アニメならではの付け足しがあるので、楽しんでください。脳内補完されて原作をより楽しめると思います。「私には、視える!」みたいな気持ちになる部分がありますから。

ーー 「透視」能力を使った気分になれますね、楽しみです。これだけたくさんのキャラからお気に入りを伺うのは心苦しいのですが……。あえて選ぶとしたら?

桜井 照橋さんです! 照橋さんは、僕と神谷くんのテンションを上げてくれます。第1期のときなんて、その日の話に照橋さんが出ていないことを告げると神谷くんは「ああ、やる気なくなった」とか言ってましたからね。僕も同じ気持ちだったので、「できるだけ出すようにするよ!」なんて励ましていました。僕の娘もそうですが、照橋さんは女子にも人気があります。あとは、海藤瞬。吉沢亮くんの「かいどうしゅんです」というイントネーションも好きです。(実写版のモノマネを披露する監督)

ーー ちなみに実写版はいかがでしたか?

桜井 実写版も監督をやってみたかったです(笑)。勝手が違うから難しいかとは思うけど、アニメ版も実写版もやってみたいという気持ちはありました。やってほしいという話があれば、ですけどね。いただける仕事はなんでもやりますよ、楽しい仕事であれば! 

ーー ちょっと観てみたい気はします!

桜井 2Dと3D(CG)ってだけで、同じアニメでも違いがあるから、実写とアニメはもっといろいろ違うと思うけど、のぞいてみたいし(実写の)監督の話とか聞いてみたいなと思います。

ーー ワクワクしますね。ワクワクといえば、世界190カ国での配信をどう感じていますか?

桜井 すごいですよね。8カ国語の吹き替えがあって、28カ国語で字幕版ができるなんて想像もつきません。楽しみですし、観てみたいです。

ーー 字幕版や吹き替え版の制作について、オリジナル版の監督からのアドバイスはありますか?

桜井 ないです! どんな演出をするのかが特に楽しみです。多分「すごいね」「よくやったね」といった感想しか出てこないだろうけど。あとはどんな声になるのかも聞いてみたいです。燃堂の「お?」は、どの国でも変わらないのかな(笑)。

ーー ラーメンも今や世界で通じる単語ですしね。

桜井 でも、発音が違うからやっぱり変わるのかな? そういう細かいところもすごく楽しみです。アドバイスは「ない」というより「できない」が正しいかな。

ーー これまでのシリーズ通して印象に残っていることや、思い出はありますか?

桜井 やっぱり「週刊少年ジャンプ」ってすごいと思いました。子どもの友達からたくさん質問もされたし、知り合いのお父さんには「うちの子どもも観ています」と言われることもしょっちゅうでした。そういう言葉を聞くたびに「子どもに悪い影響を与えないように、セリフに気をつけなくちゃ!」と気を引き締めていました。と言いながらも、一番気をつかっているのは「原作の味を残すこと」ですけどね。

ーー Ψ始動編では、セリフの速さがこれまで以上にスピードアップということで、一番大変そうだったのはどなたでしょうか? 

桜井 先日、ちょうど第2期を観たときに、普通の速さで録ったはずなのに早回ししているような速さでしゃべっているな照橋さん、って思いました。セリフ量や言い回しなど、全部ひっくるめて考えるとやっぱり楠雄が一番大変だと思います。

ーー 明智(透真)(CV.梶裕貴)とか、慣れてしまって速さを感じなくなっています。原作で出てきたときは「字が多いよ!」と思っていたので、アニメにしてもらってありがたかったです。速くても聴き取りやすくて、ありがたいんです。ヘッドフォンで聴いています。

桜井 明智に関しては、アニメ第1期後の原作登場だったので、麻生さんに「アニメへの挑戦でしょう?」と思わず質問しましたよ。「そうです」とニッコリされましたけどね。梶(裕貴)くんのおかげです、本当に。ヘッドフォンで聴くのは本当におすすめです!

ーー 最後に、全世界に向けてメッセージをお願いします!

桜井 本当に楽しい作品です。そして、私たちも楽しんで作りましたので、楽しんで観ていただきたいです。僕自身、「斉木楠雄のΨ難」のおかげで、何気ない日常の大切さやありがたさがわかりました。迷惑だと言いながら、友達思いの楠雄は日常生活を楽しんでいます。つらいことがあっても、「斉木楠雄のΨ難」を観れば楽しい時間が過ごせます。ぜひ、楠雄たちと一緒にこの世界を楽しんでください。

(取材・文/タナカシノブ)

おすすめ記事