複数の透過光が引き立てる「勇者エクスカイザー」の変形シークエンス【懐かしアニメ回顧録第62回】

2020年、サンライズのオリジナルロボットアニメ「勇者シリーズ」が誕生から30年を迎える。本シリーズは玩具会社のタカラ(当時)が玩具のコンセプトを考案し、サンライズが玩具と同様に変形合体するロボットをアニメ番組の中で魅力的にアピールするという、伝統的な王道マーチャンダイジングとして展開された。
玩具と連動した巨大ロボットアニメは、しばしば「30分のCM」と揶揄される。しかし、CMにはCMなりの価値があるはずだ。勇者シリーズの第1作目となった「勇者エクスカイザー」(1990年)の第1話を見てみよう。

車がロボットに変形し、しかもロボットには意志がある


宇宙海賊ガイスターが、宝を求めて地球を狙う。彼らを追う宇宙警察カイザースも地球に潜入し、カイザースの隊長であるエクスカイザーは、星川コウタの家の自家用車と一体化。その日から星川家の車は、巨大ロボットに変形するようになる。
ストーリーが進むにつれて、新幹線が変形するロボット、戦闘機やドリル戦車が変形するロボットなど、カイザースのロボットは種類が増えていく。しかし、第1話で活躍するのは、車から変形するエクスカイザーだけだ。では、エクスカイザーの変形プロセスを見てみよう。

(1) 車体の中央部分が折れて、前半分が前方へ伸びる。
(2) 後部ガラスが180°折れて、車体の裏側へ回る。
(3) 後輪部分が左右に割れ、さらに後方に回転する。
(4) 車体全体がぐるりと回転すると、ロボットの顔がある。
(5) (3)で左右に割れた車体後方の一部が下に伸びて、ロボットの手首が出てくる。
(6) 車体中央が回転して、ライオンの顔が出現する。

文章ではわかりづらいだろうが、映像をコマ送りで見ると、自動車のシャシー側がロボットの正面となる。(1)で折れた車体前部が両足となり、(3)と(5)で車体後部が腕となる。(6)で出現するライオンの顔は、ロボットの胸部分に位置する。
このシーンでは、商品(変形玩具)を魅力的にアピールするため、自動車が人型ロボットになるまでのプロセスを具体的かつ魅力的に見せねばならない。同時に、エネルギー生命体であるエクスカイザーが「意志のあるロボット」として活躍する以上、不思議なエネルギーで変形が行われることも印象づけねばならない。
そのために活用されるのが、透過光である。この変形シーンでは、変形の合い間に透過光が多用されているのだ。


黄色い光は【機能】、緑の光は【意志】を表わす?


まず、(1)で車体が折れる瞬間、黄色い透過光が折れた隙間から、パーッと放射状に伸びる。車体前部はそのままロボットの足になるが、ヒザにあたる部分から左右に向けて、ピシッと黄色い透過光が走る。足が完成した瞬間、足の輪郭線が白い透過光でピカッと光る。
(2)で後部ガラスが折れた瞬間、シャシーとの密着部分から黄色い透過光が放射状に伸びる。
(4)でロボットの頭部が現れたとき、目の上のヒサシ状の部分に、紫色の稲妻が小さく走る。さらに額の金色の飾りに、黄色い透過光がピカッと光る。
(5)で手首が出る直前、穴から黄色い透過光がシャーッと放射状に伸びる。
(7)でライオンの顔が現れた瞬間、ライオンの緑色の目から、同じ色の稲妻がピカピカッと散る。

ロボットへの変形が完了し、決めポーズをとったエクスカイザーの背部から、緑色の透過光が画面全体に、パーッと放射状に伸びる。
黄色い透過光は車の各部が変形する瞬間瞬間に多用されるので、【機能を表わす光】と言えそうだ(戦闘中にロボット→車→ロボットと高速で変形をくりかえす際、やはり黄色い透過光が使われている)。
緑色の透過光は、エクスカイザーの目、胸のライオンの目と同じ色だ。したがって【意志を表わす光】と解釈できるだろう。

さて、第1話で主人公のコウタは祖父のカメラを大事にしていたが、カメラは敵に狙われたあげく、戦闘で破壊されてしまう。ションボリするコウタを見て、エクスカイザーの瞳の中に金色の光が走り、額の金色の飾りにキラリと黄色い透過光が入ると、オレンジ色の光線がカメラに当たる。すると、カメラは元通りに直る。
壊れたメカニックを直すこともエクスカイザーの機能のひとつなので、【機能を表わす色】である黄色い透過光が使われている……と考えると、メインストーリーとは別の、光と色のかもすドラマが見えてこないだろうか。


(文/廣田恵介)

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