これは“再演”ではない? 3つのキーワードで読み解く「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-#2 revival」ゲネプロレポート

2.5次元ミュージカル「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-#2 revival」が2019年7月12日~15日、舞浜アンフィシアターで上演された。ここでは12日に実施されたゲネプロ(本番同様の公開最終稽古)の模様をレポートする。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は“ミュージカルとアニメーションで紡ぐ二層展開式プロジェクト”で、ミュージカルのキャストとアニメのキャラクターボイスを同じ声優が担当するのが大きな特徴だ。

プロジェクトは2018年1月の舞台「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-#1」からスタート。両輪のもういっぽう、TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は2018年7月~9月に放送された。

ファンを驚かせたのは、2018年10月に上演された舞台「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE-#2」が、TVアニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の結末の続きとしてスタートしたことだ。アニメや舞台、前日譚コミックなどをひとつながりの物語として扱う姿勢が明確となった。

今回舞浜アンフィシアターで上演された「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE- #2revival」は、2018年10月に天王洲 銀河劇場で上演された「-The LIVE-#2 Transition」の再演だ。聖翔音楽学園のライバル校、青嵐総合芸術院の舞台少女たちが登場するストーリー、脚本は前回と共通ではあるが、舞浜アンフィシアターという舞台で、我々は全く新しい舞台を目にすることになる。



ギミック満載の半円形劇場

まずは舞浜アンフィシアターという特殊な劇場について紹介しておきたい。舞浜アンフィシアターは東京ディズニーリゾート内にある多目的ホールで、もっとも特徴的なのは半円形のせり出しステージだ。通常の劇場のメインステージの前に、縦横10m以上のオープンステージがせり出していて、客席はそのステージを取り巻くように180°の扇状に広がっている。すり鉢状の会場は、どこか「スタァライト」作中に登場する地下劇場に通じる気配がある。

せり出しステージが存在することによるシンプルかつ最大のメリットは、ステージが近く広大であることだ。聖翔音楽学園9人、青嵐総合芸術院3人の舞台少女。教師たちやさまざまな役回りを務めるアンサンブルメンバー。数多くのキャストが入り乱れて殺陣や歌唱とダンスを繰り広げるこの舞台において、スペースの広さはアクションの自由度を生む。青嵐総合芸術院の舞台少女や教師はアクションに長けたキャストが揃っているが、「一対多」のバトルのすごみはこのステージだから表現できたように思う。特に、小林由佳さん演じる八雲響子のアクションからは目を離さないほうがいい。

ステージと客席の関係性が平面ではなく、それぞれの客席位置と演者の立ち位置で見え方や角度が変わることで、印象ががらりと変化する。石動双葉(生田 輝)が戦いでうちひしがれるシーンでは彼女の痛みまでが伝わってくるようだったし、リミットを解除したような天堂真矢(富田麻帆)のダンスすさまじいキレ味や躍動感は、角度をつけた席から見たほうがより強く感じられた。

今回の公演を象徴する最初のキーワードが、記者会見で小山百代さんが口にしていた「99倍走ってる」という言葉だ。ステージスペースが広大になると当然キャストたちの移動距離は増えるのだが、楽曲の間や台詞の構成の基本は変わらない。イントロでフォーメーションを散開する時にも、全力で前に力強く踏み出し、走るアクションが入る。舞台少女たちが衣裳を翻して走る姿は、舞台に躍動感と心浮き立つ感じを与え、この舞台ならではの要素を感じさせた。

そして、特筆したいのは、舞浜アンフィシアターという劇場が、そもそも舞台を上演するために作られたホールであるということだ。舞浜アンフィシアターのステージには、円形ステージ中央の円形の大型せり上がり、ステージ奥の小型せり上がり、そして回転舞台のギミックが搭載されている。円柱がせり上がるような舞台装置はTVアニメでも頻繁に用いられている。舞台要素を取り入れたアニメ演出を再現するのに、本物の舞台装置を使うのが有効であることは言うまでもない。舞台の中央で演じるキャストの周りを、回転舞台に乗ったキャストが回る様子は、アニメでカメラが回りこんでいく感じを疑似的に表現しているようにも見えた。

2つ目のキーワードは、「どこを見ていいのかわからない」。これも会見で聞かれた言葉だ。キャストが客席から登場したり、動き回る演出はこれまでの「スタァライト」舞台でもおなじみ。だが舞浜アンフィシアターはライブなどにも使われる多目的ホールであり、通路スペースが広く余裕をもって取られており、客席を照らし出すラストも充実している。客席を舞台少女が通る際、さまざまな場所でステージ上と変わらない存在感のパフォーマンスが繰り広げられるのである。どっちも見たい、どこを見ていいのかわからない、という言葉自体は多人数舞台の定番だが、本当にどこを見ていいのか、目がもっと欲しい!と、ここまで感じる舞台は初めてだった。

もちろん、再演ならではの変化が楽しめる部分もある。舞浜アンフィシアターという舞台への最適化にカンパニーがどれだけの努力を払っているか、どれだけ進化したかは初演を見ていればこそわかる要素だ。そして、舞台でのキャラクター表現が安定してきた聖翔組に比べると、青嵐組のキャラクター表現に変化が見えた気がする。柳 小春(七木奏音)は無口で静かな口調と朗々たる歌唱のギャップが、いい意味でアニメ的にキャラ立ちしていたように感じたし、南風 涼 (佃井皆美)のさわやかな奔放さの奥にある危うさ、のようなニュアンスがよりクリアになった気がする。

聖翔について見ると、パフォーマンス面でハッとしたのが花柳香子役の伊藤彩沙さんで、彼女の歌声の伸びやかさと、芯にくっきり香子らしさがある感じに魅了される場面があった。「スタァライト」のメインキャスト陣には、舞台、アイドル、声優などさまざまなバックボーンがあって、富田麻帆さんのダンスでの完璧な身体コントロールにはミュージカル役者のすごみを感じるし、星見純那役の佐藤日向さんがライブ中にふと見せるジャンプが誰よりも高いことにアイドルの遺伝子を感じたりする。それと同じように、バックボーンが声優だからこそ、歌声にキャラクターを込めることなら誰にも負けない、と言いたくなるのが今回の彼女の歌声だった。たぶん、舞浜アンフィシアターの音響と声の相性がいい部分もあると思う。

そして、大きく変わったのは2部のライブパートだ。-The LIVE-#2 Transition上演後に発表された楽曲がセットリストに加わり、それらの楽曲にも舞浜アンフィシアターでしかできない見せ方の工夫が凝らされている。球の中に反射材と光源を仕込んだライトキューブを用いた幻想的な演出は、筆者が初めて見るものだった。

再演で大きく変わったこと、気づかないぐらいの変化、そして変わらないもの。最後のキーワードは「再演だけど再演じゃない」。記者会見で、アニメで再演の主を演じた大場なな役の小泉萌香さんに、今回の“再演”に臨む気持ちを聞いてみた。それは舞台少女たち全員の気持ちであろうことが、舞台からありありと伝わってきた。

「私と(ループを望んでいた頃の)ななちゃんの気持ちで違うかもしれないのは、私は再演でも前に進みたいと思っていることです。劇場も違うし、演出も違う。聖翔に通う高校生としての気持ちはそのままに、新しい未来に進みたいと思います」(大場なな役・小泉萌香)

(取材・文/中里キリ)

【上演情報】

■「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The LIVE- #2 revival」

期間:2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝)

劇場:舞浜アンフィシアター

公演の詳細は右記の公式HPをご覧ください。 #

ⒸProject Revue Starli

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