「森久保さんの第一印象は“すごい鎖がじゃらじゃらしてる人”」!?「魔術士オーフェンはぐれ旅」森久保祥太郎×浪川大輔インタビュー

2020年1月7日(火)より、TVアニメ「魔術士オーフェンはぐれ旅」がスタートする。今回はオーフェン役の森久保祥太郎さんとチャイルドマン役の浪川大輔さんにインタビューを行なった。

「魔術士オーフェンはぐれ旅」は秋田禎信さんによって、1994年からスタートしたファンタジー小説。ライトノベルの草分け的タイトルのひとつであり、骨太でややダークな世界観と、コミカルなコメディ要素がバランスよく共存しているのが特徴だ。1998年には最初のTVアニメがスタートし、森久保祥太郎さん演じるオーフェンの「我は放つ光の白刃!」のフレーズは強いインパクトを残した。

そんな「魔術士オーフェンはぐれ旅」が2020年、完全新作として復活。オーフェン役は旧シリーズから森久保さんが続投、それ以外の配役は全て一新している。浪川さんが演じるのは、魔術士養成機関“牙の塔”において、オーフェンを鋼の強さに鍛え上げた謎多き教師・チャイルドマンだ。今回は作品や役柄への想いや、2人の関係性について語ってもらった。
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──お2人は森久保さんが年齢的には年上ですが、子役時代のキャリアも含めると浪川さんの方が芸歴は長いという関係ですね。実際の所、先輩後輩的な関係はどんな感じなんですか?

森久保 僕的にはもうね、うやまってうやまって。縦社会ですから。年齢じゃない、キャリアですよ。

浪川 言いながらニヤニヤしちゃってるじゃないですか! 僕的には(森久保さんが)先輩のイメージですね。芸人さんみたいに1日早ければ先輩って世界ではないので、普通に森久保さん、という感じです。

森久保祥太郎さん

──お2人のつきあいってどれぐらいになるんでしょうか。

浪川 僕が初めて森久保さんを見たのが19歳の時だから、24年前ですね。とあるOVAの現場だったと思うんですけど、じゃらじゃらと体中に鎖をつけている人が歩いてきて、すごい音だなと思いました。その時うえだゆうじさんと話してたんですけど、だんだんうえださんの声が聞こえないぐらいじゃらじゃらして、ぱっと見たら入ってきたのが森43283久保さんでした。すごい人だなと思ったんですけど、それ以前から「浪川くんはきっと森久保くんとは仲よくなれるよ」とは言われてたんです。

森久保 なんかね。会う前からお互いの名前は知っていて、先輩から「大輔と祥太郎はなんか似てるよね」って言われてたんです。似てるとは本当によく言われましたね。

浪川 僕も若い時こういう色してたんですよ。会ってみたらこんなに鎖つけてる人と仲よくなれるのかなと思いましたけど(笑)。

森久保 それから少し空いたんですよ。がっつり一緒になったのは「FREEDOM(2006)」の時だね。

浪川 日清カップヌードルのやつですね。最初に録ったのは30秒のCMなのに、2時間ぐらいかけて収録したんです。その時に狭いブースでずっと一緒に話していたのを覚えてます。

森久保 それからよく会うようになって、ライバルであったり、相方だったりをよく演じさせてもらうようになりました。

浪川大輔さん

──今回そんな2人が先生と生徒を演じるということで。

浪川 もちろん初めてなんですけど、僕から見るとスタジオにいるのは森久保さんじゃなくてオーフェンなんです。だからそこは意識せず、手がかかる生徒だなと思いながら自然に演じています。

森久保 演じる時は年齢を意識することはないんですが、感覚的には同級生のようなものなので、役者同士やりやすいなというのはあります。とても楽しめましたし、幸せなキャスティングでした。

──それでは「魔術士オーフェンはぐれ旅」の話に本格的に入っていきます。今回、約20年ぶりに「オーフェン」がアニメ化されると聞いてどうでしたか。

森久保 前シリーズが放送されたあとも秋田(禎信)先生が原作小説を書き続けて、20年間ファンが離れなかったということがまずあって。実は何年か前に前作の声優陣が集まって、小説につくCDドラマを収録したんです。そのCDドラマがファンの皆さんにも好評だったということで、オーフェンの火はまだ消えてないぞ、となって再アニメ化の計画が動き出したんです。だからファンの人の応援があったからこその新作だと思います。新人だった頃に演じたオーフェンを20年後に演じられるとは思っていなかったので、秋田先生と応援してきてくれたファンの皆さんには本当に感謝しています。

浪川 オーディションの知らせをもらって、20年ぶりにやるんだ、という驚きがまずありました。だから(オーディションをやる以上)キャスト変わるんだな、と思ったら森久保さんだけ続投ということで。しかも今回、キリランシェロ(オーフェンの少年時代の名前)も森久保さんがやるので、それは驚きました(笑)。

森久保 前回のシリーズではキリランシェロは別の方が演じてました。

浪川 僕は、20年前はアニメの声優をあまりやってなかった頃なので、その頃から愛されている作品で演じられるのは嬉しかったです。プレッシャーだったのは、前シリーズではチャイルドマン役を中田譲治さんが演じていたことです。中田さんと同じように演じることはできないので、自分の演技で楽しんで演じようと思いました。今見ても面白くてスピード感があって、20年たっても色あせないのはそれだけ土台がしっかりした作品なんだと思いました。

──前任者の中田さんの演技は意識しましたか?

浪川 往年のファンの人たちの中にはそのイメージが強いと思うので、試しに自分の家で中田さんに寄せた演技もしてみたんです。挑戦してみた結果、2秒ぐらいでこれは駄目だなとなったので、結果それは意識せず、自分で捉えたキャラクターとしてオーディションに臨みました。

──初めて「オーフェン」を見るファンの方もたくさんいると思いますので、改めて演じるキャラクターを紹介していただけますか?

森久保 オーフェンは腕の立つ魔術士で、元々はキリランシェロという名前で、牙の塔という魔術士養成機関の最高峰で英才教育を受けていました。彼が義姉として慕うアザリーにある事件が起こったことをきっかけに名前を捨てて、オーフェンとしてアザリーを追いかける旅に出たんです。腕が立つ魔術士ではあるんですが、普段は金貸しをしながら各地を転々としています。20年前に演じた時はニヒルでやさぐれた男のイメージがあって、それはたぶんマジクやクリーオウから見たオーフェンなんですけど。今の自分から見ると心が揺れることもあるし、未熟なところもあるし、それでも目的を持って戦っていく辛抱強い男なのかなと思うようになりました。

浪川 オーフェンは背負っているものが憎めない魅力につながってるなと思います。チャイルドマンは芯のある男で、皆さんが思い描く寡黙で堅い師匠のイメージに近いと思います。その中にやさしさももちろんあるんですが、基本的に厳しく、まっすぐな人物です。いろいろと話せないこともあるんですが、彼の行く末がどうなっていくのかを見守ってもらえたらと思います。それとナレーションもやらせてもらっているんですが、ナレーションとチャイルドマンが出てくるタイミングが結構近かったりするんですよ。

森久保 はっはっは(笑)。

浪川 ナレーションが世界観に忠実な、独特の文章なんです。原作をそのまま読ませていただいているような。だから突然チャイルドマンが話しだしたみたいになりかねないんですけど、そこはナレーションとしてやらせてもらってます。ただ僕がナレーションを始めると森久保さんが失笑するんですよね。

森久保 チャイルドマンが話してる時に、なぜナレーションも浪川なんだと(笑)。

浪川 もうちょっと台詞とナレーション離してもいいですよね(笑)。

森久保 チャイルドマンはね、物語のキーマンなので。

浪川 本当にいろいろ話したいことはあるし、もうご存知の方も多いと思うのですが、そのあたりは放送を楽しみにしてくださいということで。

──チャイルドマンのオーディションや、浪川さん流のチャイルドマンの解釈についてもう少しうかがえますか。

浪川 チャイルドマン役のオーディションを受けてみませんかというお話でお受けしました。オーフェンが森久保さんであることは知っていたので、絶対森久保さんの師匠になりたいなと思っていました(笑)。チャイルドマンは言葉が厳しいし、堅い性格なんですけど、その中にどこかやさしさがにじみ出ている感じが伝わればいいなと思っています。

──森久保さんから見た浪川さんのチャイルドマンはいかがですか?

森久保 浪川くんに決まった時はニヤッとしましたけどね。20年前はとにかく食らいついていくので精一杯だったんですが、今回は対役者という意識で一緒に作っていった気がしますね。(チャイルドマンは)存在感十分だと思いますよ。

──20年以上愛され続けた原作の魅力、ファンが離れなかった理由はどういうところにあると思いますか?

森久保 これは秋田先生とも話していたんですが、オーフェンはライトノベルのはしりの作品のひとつだったと思うんです。ライトノベルというムーブメントが盛り上がっていくきっかけのひとつで、その頃の読者に与えた衝撃は大きかったと思います。その作品が愛され続けたのはやっぱり秋田先生が書き続けてくれたことが大きくて、原作ではオーフェンやクリーオウたちが年齢を重ねた先が描かれていたりもするので。世界が止まらずに進み続けてきたことが、ファンを惹きつけ続けている理由だと思います。僕が20代の頃に原作を読んだ時と今では感じ方も違うし、キャラクターのとらえ方も違って、新しい解釈で楽しめる作品です。同時にアニメになってみると、25年前の作品だとは感じないんですね。今の時代でも新鮮に感じられるのは、それだけの魅力を持った作品なんだと思います。

浪川 軽妙なタッチの中に普遍的なものを込めているのかなと思います。アフレコで森久保さんがずーっと演じている姿を見ていると、胸がぎゅっとするようなシーンもあるんですけど、全体のベースとしてどこかはっちゃけていて、聞いていて気持ちいい感じがするんです。今もいろいろ嫌なことがある時代ですけど、そういう王道みたいなものは不変なんじゃないかと思います。森久保さんもぜいぜいしながら演じてますけど、それだけ命を張るに値するキャラクターだと思うし、オーフェンを見ていると元気をもらえる気がします。

──ほかのキャストさんについてもうかがえますか?

森久保 クリーオウ役の大久保瑠美ちゃんやマジク役の小林裕介君は「魔術士オーフェン」の前シリーズを見てくれていた世代なんです。特に瑠美ちゃんは原作からのファンで、アニメに目覚めたきっかけなんだそうです。色が変わるぐらい読みこんだ原作の1巻を現場に持ってきてくれて。僕なんかよりよっぽど原作を読みこんでいるので、一番オーフェンに詳しいのは彼女かもしれないです。シーンとシーンの間でここは原作ではどうなっていたっけ、とかこの言い回しどうだったっけ、みたいなことを聞いたら即答してくれるので、彼女は現場では「オーフェンペディア」と呼ばれています(笑)。

──オーフェンの姉的ポジションにアザリー役の日笠陽子さん、レティシャ役の伊藤静さんが並ぶと安心感があります。

森久保 日笠さんにしても静ちゃんにしても存在感があって。ふたりともデビュー当時から知っている2人なんですが、久しぶりに共演してお姉さんになってんなと思いながらやってます。初めて共演する若い子も多いんですが、前野君もいたりして。あとはボルカンとドーチンですね、渕上舞ちゃんも水野まりえちゃんもがんばってます。やっぱり前に先輩がやってた役を引き継ぐのってプレッシャーあるよね。

浪川 それはすごいあります。日笠さん、伊藤さんの安定感はまさにその通りで、若い人からベテランまで、すごくバランスのいい現場だなと思います。手練れが多いのでひとつひとつの台詞が面白い。とにもかくにもキリランシェロをやっている方がすごい。

森久保 よくやったべ。

浪川 声の張りがすごくて突き刺さりますね。

森久保 面白いのは、20代半ばで最初にオーフェンをやった時は、子供時代(キリランシェロ)は別の女性の声優さんが声を演じてたんですよ。40超えた今、なんで子供時代を自分でやってるんだろうと思いますよ。

浪川 絶好調でしたよ。

森久保 まだ行けるか。

浪川 行けますよ! そんな森久保さんを中心に一丸となって進んでいる現場だと思います。

──アニメとしては20年ぶりですが、オーフェンの演技にはすんなり入れた感じですか?

森久保 久しぶりだけど「やれるかな?」みたいなことは全く考えませんでした。オーフェンって僕の中ですごく特別な作品なので、ずっと生き続けている感じなんです。数年前にドラマCDで演じていたのもありますし。ただ僕が年を重ねて、原作の物語が続いていったことで、オーフェンというキャラクターに対する解釈やアプローチが変わってきた部分は当然ありました。

──20年前のシリーズを見返したりはするんですか?

森久保 いや、1998年だから、DVDですらなくてVHSなんですよ(笑)。実家に帰ったらデッキはある、のかな? でも見返さなくても自分の中にオーフェンは存在してましたね。それだけ、離れていてもデカい存在なんですよ。

──チャイルドマンの役作りについてもう少しうかがうと、垣間見えるやさしさや人間らしさ、が浪川さんのオリジナルになるんでしょうか。

浪川 そうですね。もちろん森久保さんが演じればそれがオーフェンなように、誰でもその人を通した演技にはなるんですが。前回のチャイルドマンがどこか超越したような存在だとすれば、それを知っている人にはちょっとチャイルドマン近くに来たな、と感じてもらえるようになっているのではないかなと思います。

森久保 前作は全体的に演出が重ためでダークな色調だったから、それに合う芝居というものがあったと思うんですね。今回は原作のテイストに寄り添っていく作り方なので、チャイルドマンとオーフェンの関係にしても、原作のファンにしっくり来るところがあるかもしれないです。

──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

浪川 本当に第1話から物語が動いていく見逃せない内容になっています。20年前から好きでいてくださる方も、初めての人も、必ず好きになれるキャラクターがいると思うので、推しを見つけてください。響き渡る森久保さんの詠唱も聞けますので楽しみに待っていただければと思います。

森久保 魔法ファンタジーやライトノベルはここからはじまったという時期の作品ですが、現代でも十分に楽しめるし、新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思います。魅力的なキャラクターたちと物語にのめりこんでもらえると思います。ずっと応援してくれている方々は、皆さんのおかげでまたアニメにすることができました。皆さんも知っているとおり、まだまだ膨大な物語がありますので、できれば僕もオーフェンと一緒にまだまだ旅をしていきたいと思います。本当にスタッフの愛情がこもった作品で、満足してもらえると思うので楽しみにしてください。

(取材・文/中里キリ)

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