ジャンルを飛び越えるボーダレスなバンドサウンド!アニメ「とある科学の一方通行」EDテーマ「Parole」を歌う「sajou no hana」インタビュー!【新人さん、いらっしゃい!第14回】
日々多くのアニメが発表される今日この頃、期待のニューカマーも続々シーンに登場している。そこで、アキバ総研的に気になる「新人さん」に突撃インタビューする連載! それが「新人さん、いらっしゃい!」。
今回お話をうかがうのは、sanaさん、渡辺翔さん、キタニタツヤさんの3人のアーティストによるバンド「sajou no hana」だ。
渡辺翔さんは数多くのアニメソングを生み出し、声優やアイドルをはじめさまざまなアーティストに楽曲を提供するヒットメーカー。キタニタツヤさんもまた、若くしてソロアーティストとして活躍するいっぽう、ベーシストとしてさまざまなアーティストをサポート。さらに作家としても精力的に楽曲提供を行う俊英。そしてボーカルのsanaさんは、2014年にスマイルカンパニー主催の「アニメ限定オーディション」に合格したのち、シンガーや声優のコーラスを担当。2016年に「モブサイコ100」オープニングテーマのボーカリストに抜擢されデビューを果たしている。
そんな強烈な個性と才能にあふれた3人による「sajou no hana」は、2018年8月にアニメ「天狼 Sirius the Jaeger」のEDテーマ「星絵」でデビュー。以降、コンスタントに作品を発表し続け、2019年7月31日に2019年夏クール放送のアニメ「とある科学の一方通行」EDテーマ「Parole」をリリースする。
デビュー1周年を目前にリリースされる新曲は、果たしてどのようにして生まれたのか。また、そもそも「sajou no hana」とは何者なのか? そんな気になるあれこれをたっぷり聞いてみた。
意外な進路選択から始まった音楽人生
──「アキバ総研」では初めての取材ということで、まずはバンド結成に至るまでのお話をうかがいたいと思います。まず渡辺さんというと、「コネクト」(ClariS)、「oath sign」「crossing field」(LiSA)など、2010年代のアニメソングシーンを代表する楽曲を多数作られたクリエーターという印象があるのですが、それ以前はバンド活動などをされていたのでしょうか。
渡辺 いえ、それが一切やったことがなくて。そもそも音楽を始めたのも遅くて、高校を卒業してからでした。なんならピアノの鍵盤を見てどこがドか知ったのも19歳の頃なんです。作曲家としてデビューさせていただいたのが22歳の時なんで、その3年間の間はバンドはやらず、作曲のみをしていたという感じです。
──そうなんですね。では、その作曲活動を開始したのは、どういう経緯からなんでしょうか。
渡辺 わりと間違えてスタートしたというか(苦笑)。もともと音楽は好きだったので音楽の学校には行きたかったんですが、特に楽器とかをやっていたわけではないので、当初は音楽を作ろうとは思っていなかったんです。音楽学校に行って宣伝とか売り方のプロデュースを勉強しようと思ってたんですが、その学校のプロデュース科って、実際は小室哲哉さんとかみたいなプロデューサーを育てる科だったんです。
キタニ 作曲・編曲するプロデュースね。
渡辺 そう。楽器なんて弾けないのに。一発目の授業は「いろんな打楽器の音が入っている音源を使って、好きなリズムを組んでください」というもので、その時に僕が作ったのが16分でひたすらウィンドチャイムを鳴らすっていうものでした。
(一同笑)
渡辺 この音がなんか好きだなと思って(笑)。そしたら周りはみんな、なんか8ビートのかっこいいのとか作ってるんです。そんな感じで間違えて入ってしまったんですが、やっぱり音楽を聴くのは好きだったので、やがて自分で曲を作れるようになった時にものすごく道が開けたというか。その道にどっぷりとはまっていったわけです。
──そこから作家デビューを果たし、音楽業界で活躍されるようになるわけですが、このタイミングで改めてバンドをやりたいと思ったのはなぜでしょうか。
渡辺 自分の一番好きな音楽がバンドでやっている音楽だったんです。自分たちでコンセプトを決めて、曲も自分たちで作って、戦略を立ててみたいな活動に対して、だからたぶんずっと憧れは抱いていたんですね。
そのいっぽうで自然とキャリアを重ねて、自分で自由な音楽活動をやりたいと思った時に、特にバンドという形態で、とは決めてはなかったんですが、バンドみたいな動きができるような活動ができれば。なんなら自分はプロデューサーのような立場で前に出ず、自由に曲を作れたら楽しいだろうなと考えていた中で、このメンバーでやるならバンドが一番いいなということで今に至ります。
──対するキタニさんは、もともと若いころからバンドをやられていたそうで。
キタニ 僕は高校の頃からみんなでコピーバンドを作って、オリジナル曲を作るようになって、ライブハウスに出るようになってという、いわゆるバンドキッズでした。
渡辺 バンドだ……。
キタニ そういう活動をやりつつ仕事としても音楽をやりたいから、作曲家としてスマイルカンパニーにお世話になってがんばっていこうと思っていたら、翔さんに首根っこをつかまれて「バンドをやるぞ!」って連れてこられました(笑)。
渡辺 作曲家としてもいい音を持っているんだけど、作曲家だけにしておくにはもったいないオリジナリティがあったんです。
キタニ アーティスト寄りなんですかね。
──クリエイターであると同時に、プレイヤーとしての魅力も感じた?
渡辺 そうですね。後から演奏者でもあることを知るんですが、そこに華を感じました。
──キタニさんは、渡辺さんというビッグネームから声がかかった時はどう思いましたか?
キタニ まあ、変なことにはならないだろうとは思いました(笑)。面白そうだし、間違いないだろうと、わりとサクッと決めた感じです。
──sanaさんはどのような音楽活動をされていたのでしょうか。
sana 小さいころからずっと歌うことを続けていました。唯一できたことが歌だけだったというのもあるんですけど、自分の歌のレベルを上げることが楽しくて、中学校の時も部活には入らずに、放課後は毎日カラオケとかで練習していました。それと、とにかくアニメがすごく好きでしたね。で、アニメソングが好きな人に向けたオーディションっていうのを高校受験の頃に見つけて、「こんなに面白そうなのはなかなかない!」と思って、とりあえず参加してみたんです。
──そのオーディションがきっかけでスマイルカンパニーに所属することになったわけですね。そのころには渡辺さんは、sanaさんの存在は知っていたんですか?
渡辺 はい。その審査会場にもいました。ただ僕がsanaちゃんに対してすごいなと思うようになったのってけっこう後で、実はそのオーディションの時、僕はチェックをしていなかったんです。それから何年か経って歌を聴く機会があって、「あれ? めちゃめちゃ成長しているぞ」と驚いたんです。
──ちなみにsanaさんは、バンド活動の経験はあるのでしょうか?
sana 今回が初めてのバンドです。
──固定のメンバーとの作品つくりはいかがですか?
sana 私ひとりだけではわからないこともあるし、いろいろと挑戦できる機会もいただけて、楽しいです。
いっぱい寄り道をして、徐々に形成されていったバンドのカラー
──そういったメンバーが集まって「sajou no hana」が結成されたわけですが、最初に集まった時のことは覚えていますか?
キタニ いきなり最初から、後にED主題歌をやらせていただく「天狼」というアニメがあって、その曲を作ってもらうことになるから作って、みたいな感じだったよね。
渡辺 僕だけ先行して1~2曲くらい作っていたのかな? キタニタツヤの音楽性とsanaちゃんの声を聴き、自分がやりたいことを加味したうえで、さらに何が今の時代において一番気に入ってもらえるのかを研究していたんです。そのあとに、「天狼」の話をいただいて楽曲を詰めていったという感じです。
──「sajou no hana」として作った最初の曲はどんな曲でしたか?
渡辺 一発目にできた曲は、正直に言ってまったく手ごたえがありませんでした。
(一同笑)
渡辺 よくわからないボコーダーを使ってたり、サビがどこにあるのかわからなったり。
キタニ でもバンドとして完成させた曲ってわけじゃなかったからね。
渡辺 そうだね。ひとまず作ってみたけど奇をてらいすぎたというか、聴く人に向けても、自分の作品としても、歌う人にとっても、どれも中途半端な感じになってしまって没になりました。
キタニ 「sajou no hana」としてどういう作品を作っていくか、迷っていた時期かもしれません。最初は。だからいくつも曲を作って、いっぱい寄り道をして、「こういうこともできるね」みたいになんとなく形成されていきました。
渡辺 「やっていいこと」という扉が開いていった感じはあるよね。今回の「Parole」も結成当初じゃ絶対に作らない曲だったと思うんですよね。徐々に今のスタイルに仕上がっていった、という感じがあります。最初はとにかく考えていましたね。
──1stシングルの「星絵」ができたあたりからバンドの方向性が見えてきた感じですか?
キタニ いや、今もわからないです。
渡辺 単純に楽曲にぴったりあうアニメと、なおかつバンドの楽曲としてこれがいいというところに毎回落とし込んで、という形で作っています。
──「sajou no hana」の楽曲は、歌はポップなのに、バックで流れるトラックはすごく作りこまれている、という印象です。具体的にはどういう風に楽曲は作られているのでしょうか?
渡辺 曲によってさまざまですね。僕が作曲する時は、最初にデモ曲と一緒に(キタニに)テキストで資料を渡しつつ、彼のエッセンスを加えてもらいたいときはひっくり返して全然違うアプローチをしてもらったりしています。
キタニ 僕が作る時はもう勝手に作ってます(笑)。翔さんが作る楽曲を僕が編曲する時は、設計図的なものが最初にきて、その通りに作ったら成立するものを、ちょっとひねくれてその通りに作ったり作らなかったり、というのを僕の裁量で決めていって、そうやってできた曲をsanaさんが歌うと、もう「sajou no hana」になる。
なんとなく今までの曲を見直してみたら、それぞれ曲調は違うけど、なんか全部「sajou no hana」感はあるよね。それはたぶんボーカルの持っている力が大きいと思います。
──sanaさんは、お2人の作る曲にはどんな印象がありますか?
sana アレンジ前と後だとイメージが全く変わりますね。
キタニ そんなに変わる?
sana けっこう変わってると思います。
渡辺 僕はデモ段階である程度詰めるけど、アレンジでけっこう変わるし、キタニ君も最初から完成形で出してこない。まずラフを出してくるんです。だから最終的には、けっこう変わってますね。
sana でも翔さんの音源のほうが、(アレンジ後のイメージが)わからないことが多いんです。だいたい最初に聴いたものと完成形のイメージが全然違うものになっています。私の中では。
渡辺 あれ? 本当? そんなに変わってないと思ってたなあ、僕の中では。
キタニ 我々も見えてなかったなあ(笑)。でもそれってレコーディングの時に困らない? こうやって歌おうと思っていたのに、上がってきたものが違うから歌い方を変えなきゃ、とか。
sana そういうのもありますね(笑)。
キタニ あ~、あるんだ。でも僕たちはそんな苦労を少しも気づかず……。
sana いや、苦労までは(笑)。
──先ほどの渡辺さんの話だと、キタニさんもアレンジを設計図通りに返したり、別物にしたりといろいろあるそうですが。
キタニ たとえば仕事として僕が作曲、編曲することになったら、翔さんからもらった設計図をきちんと清書すると思います。そこに自我を出すのはよくないじゃないですか。でも我々はバンドなので、「俺が、俺が」っていう自我をある程度は出すべきだと思うんですよね。
渡辺 話し合う余地もあるからね。曲ができあがってからも話し合えばいいし。
キタニ だから一回思い切って何も考えずに作って、それから翔さんに聴いてもらって、そのコミュニケーションの中でちょっとずつ変わっていって……という形でやっているのかな。
だからあんまり最初に上がってきたデモを、素直になぞらないようにしているかもしれない、最近は。
──作家として長年活動してきた渡辺さんにとって、そういうバンドメンバー同士のしかけ合いについてはどう思われますか?
渡辺 ふだんの作曲活動の中でもアレンジがガラッと変わるのはよくあることなので、わりと僕は楽しいなと思っているんですが、確かにそれとバンドの楽しさはまた別物だと思いますね。キタニ君みたいな人は本当に僕の周りにいないタイプだったので、毎回アレンジが楽しみなんです。
こうくるだろうなって期待しても、その通りに返ってきたことは一回もないですね。もちろん僕がリクエストしたことはやってくれるんだけど、それでもやっぱりちょっと斜め上からきてくれるのがうれしいですね。
キタニ やった!
──そこは作家活動では体験できない感覚?
渡辺 そうですね。普通の作曲活動では足踏みするようなところも、バンドや個人活動だとやりやすいので、そこがいつもと違うところだと思っています。
アニメソングとバンドとしての楽曲のバランスのとり方
──ニューシングル「Parole」は、今までの「sajou no hana」にはないハードな楽曲ですね。
キタニ 確かに。
渡辺 また今までの自分たちにはないジャンルの楽曲に飛び込んだのかな、という感覚はあります。
──「sajou no hana」のアニソンの作り方をうかがってもよろしいでしょうか?
渡辺 もともと僕は作曲家としても、原作をしっかりと読み込んで作品の世界観をけっこう楽曲に落とし込んでいくタイプなので、そこは変わらずなんですが、歌詞の作り方に違いがありますね。作曲家として作る時は歌うアーティストさんのことを考えつつ、アニメのことも考えて一番いいところに落とし込むという形でやっていたんですが「sajou no hana」だと単純に自分の持っているものと作品のリンクを探すということを考えて作っています。
──歌詞を見ると一方通行(アクセラレータ)を連想させるフレーズが含まれていますね。
渡辺 そうですね。人って結局誰かしらに依存して生きるのだけど、それはいやだな。だけど、そう生きていくのがいいよね、っていう彼のパーソナルな部分に共感できると思ったので、そこをフィーチャーした歌詞になっています。これがアニメの方向から見た楽曲のイメージです。
──アニメソングであると同時に、バンドの楽曲としてのメッセージも共存している。
渡辺 はい。アニメから入る人もいるけど、音楽から入る人もいる。音楽から入った人にとっても歌詞を見て、リスナーとリンクする部分を用意しておきたいと思っています。かといってアニメから離れるのもいやだったので、アニメを観た人からも「めちゃめちゃアクセラレータが好きだろ」って言わせたかったんです。だから物語をなぞる歌詞というよりは心情をえぐる歌詞を書きたいと思って、言ってしまえばキャラソンと言っていいくらいまで作品を深堀りしたつもりです。
──編曲はキタニさんです。アレンジはどういうところがポイントでしょうか。
キタニ 作ったのはだいぶ前だからなあ(笑)。どういうところが裏切られたと思いました? いつもそうなんですが、わりと翔さんの作ってきたデモでいいところは、そのまま使わせていただいています。
渡辺 今回、結果的によかったと思ったのは、もともとはけっこう長いイントロがあったんですが、そこをアレンジ段階でバッサリ切ってもらったところ。あとイントロに声を加工したフレーズが入っているんですが、このアプローチも合うんだなって発見がありました。
キタニ 確かに、最初あの音素材はなかったですね。ただイントロのシンセサイザーは、翔さんが打ち込んだものをそのまま使ってます。
──曲の展開もめまぐるしくて、アクション作品の主題歌らしいというか。
キタニ ただあの展開の仕掛けというか、いきなり落ちるというのも最初から翔さんのアイデアとしてあって、それをどう完成形にするのか、というのが僕の仕事でした。
渡辺 一番大変だったのはsanaちゃんだったと思います(笑)。
sana 今回の曲は、翔さんの気合を感じました(笑)。だからレコーディングでは失敗できないなと思って臨みましたね。私も原作コミックを読ませていただいたんですけど、アクセラレータはダークヒーロー。そしてアクションシーンも多い作品だと思ったので、エンディングテーマだからと言って落とすんじゃなくて、最後にまたグッと上げられるように伝えられたらなと思っていました。それでいて繊細な感情も歌詞の中にあるので、かっこよさと繊細な感情を歌の中で両立できたらなと思いました。
──あとはしっかり各楽器の見せ場があるのも印象的です。
渡辺 ベースがソロになるところとかですよね。あと、シンセのフレーズとか。
──絶対にライブでやると盛り上がるところですよね。
渡辺 言われてみたら確かに! 今まで気づかなかった。
キタニ ただ、僕らはライブを想定した曲作りっていうのを、おそらくしたことがないんです。
──ファーストライブ(2019年5月4日開催のファーストワンマンライブ「沙上の夜 act1」)で受けたインスピレーションが曲つくりに反映された、というのはないですか?
キタニ 全然意識しなかった(笑)。ライブの前にはもうできていたと思いますから。まあ、僕たちはバンドらしいバンドではないから。ライブハウスでたたき上げられてきたってわけではないですし。
渡辺 意識しているのはアニメとバンドの方向と、アニメを観ない人が音楽を聴いた時にどう思うか、というバランスですね。
「一方通行」の世界観に寄り添った1枚になった
──カップリング曲についてもうかがいたいと思います。まずは「Hedgehog」からお願いします。
キタニ 「Hedgehog」は僕が作詞・作曲なんですけど、これは「Parole」のカップリングとして作ったので、「とある科学の一方通行」を意識した曲です。とはいえ、ちょっと意識したくらいで、原作のコミックを読んで「こういうことを考えている人がいるんだな」と。登場人物に思うところがあったんですが、ただそれをそのまま書いてもしょうがないし、「ヤマアラシのジレンマ」という有名な話に似ているなと思ったので、それについて歌詞を書いてたら、アニメとは全然違う内容になって、みたいな。だからエッセンスとしてアニメの要素を取り入れて、「Parole」に寄り添うようなカップリング曲として書いたつもりです、「ex」のほうは……。
渡辺 これはもともとあった曲で、いつか出したいと思っていた曲です。「僕を嫌いだ」っていうフレーズとかが今回のシングルのテーマに近いものを感じて、このタイミングで盤に入れさせてほしいと提案して、収録曲がこの3曲に決まりました。
──結果的に、「とある科学の一方通行」という作品のイメージに沿った楽曲で統一された1枚になりましたね。
渡辺 自分も「一方通行」っぽさがある盤になったなと思いました。強いキャラなんだけど、誰がどう見ても内面が弱いじゃないですか。音は強いけど、歌詞の面ではその弱さをフィーチャーした1枚になったかなという印象です。
──今回の楽曲に限らず「sajou no hana」は、内面をすごく掘り下げて描いている曲が多いと思います。
渡辺 確かに僕の書く歌詞は内向的かも。風景よりも内面の描写が多いと思います。ハードな曲でも、それは変わらず。
キタニ 普通にそうなるのが自然だと思っています。人の内面について書きたいんですよ。
渡辺 痛々しいというかリアルになりすぎないようにしようとも気を付けています。もっとリアルにいく人もいるじゃないですか。主人公の姿とか風景とかが思い浮かぶような。まだそこまではいってないですかね。
キタニ あんまり説明的な歌詞はしらけちゃうので、
渡辺 想像力をじゃましないように、ある程度のところで止めることを心がけています。
──ところで先ほど、アニメを見ない人にも届けたいということをおっしゃいましたが、「sajou no hana」は配信という形でノンタイアップ曲をコンスタントにリリースされていますよね。そこにタイアップありきではない、というバンドとしての意思表明を感じます。
渡辺 それもありますし、僕自身が好きなアーティストを見つけてもけっこうすぐ忘れちゃうんです。だから、「ここにいるよ!」って常に手をあげている状態にしていたいんです。
──自分もこれまで配信された楽曲は全部買わせていただいてるんですけど、何回も購入しているうちに「次はいつ出るんだろう」って公式サイトを見る機会が増えました。
渡辺 それ、すごくいいサイクルだと思います(笑)。そうしていくうちにきっと聴いてくれる人も、もっともっと自分たちを必要としてくれるようになるのかなと思ってます。まだデビューして1年足らずなので、どうしたら自分たちがリスナーの「メインの好きなアーティスト」に入っていけるのかって考えています。そこでリリースが1年に1回とかだと、まずそこに入ってはいけないので、常に存在をアピールし続けることが大事だと思っています。
もちろんアニメから入ってくれた人を裏切らないものを常に作り続けていきたいですし、アニメファンも音楽ファンも最終的にごっちゃになってほしいです。ジャンルの壁を超えて楽しんでくれたらいいなって思います。
──近年は、けっこう音楽ファンとアニメファンがボーダレスになっていますよね。
キタニ 両者の垣根がある意味はあまりないと思うので。バンドもアイドルもアニソンもネット音楽系も、全部聴けばいいと思います。
──それは、お2人がこれまでいろんなアーティストに楽曲を提供したり、さまざまな場で発表してきたからこその実感ですか?
渡辺 それはありますね。僕、けっこうSNSとかで皆さんの感想を読んだりするんですけど、たとえば僕が書いたアイドルの楽曲について書いてくれる人のページに飛ぶと、プロフィールが全然違うんですよ。アニソンの歌詞をひたすら書いてあったりとか、わりとそういうことがあるから、今の音楽ファンって本当にメインの場所はちゃんとありつつも、いろんなものを聴いてると思います。
──「sajou no hana」自体がジャンルレスなバンドですよね。
キタニ 特定のジャンルに固執する必要はないかなって思っています。だからもしかしたら。来年は別のジャンルの音楽が好きになって、そういうのばっかりやってるかもしれない(笑)。めっちゃR&Bやってるかも。
sana あははは(笑)。
渡辺 そういうのはありだと思う。その時にいいと思ったものをやっていきたいです。
sana うん。どんなジャンルでも歌いたいですね。
──ちなみにsanaさんは、好きな音楽ジャンルはありますか?
sana う~ん。特別こだわりはないかな。今は、なんでも歌いたいんです。
1年後、その時に自分のやりたいことをやれていたら
──今後の活動については、何か決まっていることはありますか?
キタニ いったんこれを作って落ち着いちゃったから……これからどうするんですか?
渡辺 楽曲はこれからも書いていきたいです。タイアップあるなしにかかわらず、年内に何かしら出せたらいいな~と……。
キタニ よし、出しましょう! あとは次のライブにも来てほしいかな。
──そういえば、ファーストライブは楽しかったですか?
キタニ 楽しかったですよね。
渡辺 僕は初めてのライブ経験でした。
sana 私もほぼ初めての経験でした。でもメンバーとステージに立てたという安心感はありましたね。今までひとりで歌うことはたまにはあったんですけど、仲間に支えてもらってるという感覚が新鮮でした。
キタニ MCで何を話そうか~とか、直前まですごい緊張してたよね。でもいざ始まったらちゃんとできてたよ。
sana 始まるまではすごくおびえてましたね。でも、いつもいざ出てみたら大丈夫なんです。
──本番に強いタイプなんですね。
渡辺 お客さんも初めて僕らのライブを見るから、どうノッていけばいいのか、どう盛り上がればいいのかわからないので、そこはお互い様だったね。
キタニ でもそこにいた人はみんな「sajou no hana」が好きな人ばかりだったから。
sana 皆さん、すごくオープンだったので、おびえててすみませんでしたって思いました(笑)。
キタニ でも次のライブは怖いですよ、THE SIXTH LIEさんとの対バンですからね。向こうはわりと骨太でバンドらしいバンドなので、アウェイな部分もあると思います。前回はワンマンだったからホームって感じだったけど。今回はどうですかね。向こうさんのファンを、味方につけられるかな?
sana わからない……。
(一同笑)
──バンドをやってると、対バンでのファンの食い合いって避けて通れないですからね。
渡辺 そうですよね。でもそこも楽しんでいきたいですね。
キタニ THE SIXTH LIEのベースのRyusei君と2人で飲んでいる時に、彼から「ライブしようよ」って話をもらったんです。この2人はライブに慣れてないから、骨太なバンドとやらせたら面白いだろうと思って、乗っからせてもらいました(笑)。
──他バンドとの交流の場を、バンド経験者のキタニさんがセッティングしてくれるのはいいですよね。
渡辺 楽曲制作のレベルが上がっても、まだまだライブに関してのレベルは1のまんまですからね。あとこれからの話だと、アルバムの姿がそろそろちらつき始めているような気がします。
キタニ そうだ! アルバムだ。アルバム作りたいですね、作りましょう! ただ今までけっこうたくさん曲を出してるから、それを集めただけでもけっこう盛りだくさんになっちゃいそう。あ、でも僕らって1曲当たりの時間が短いから、けっこう新曲とかも作れるかも。
sana この前のライブ、16曲もやったのに40数分とかでしたよ。
渡辺 そうそう(笑)。時間が埋まらないっすよ!って大変でした。でも、また聴きたいって思わせるくらいでいいのかなって。
キタニ 物足りないって思わせるくらいのバランスでいいのかもね、
──まるでパンクバンドみたいですよね。
(一同笑)
渡辺 こんな曲調なのにアルバムが20曲入りとかだったら、それは新しいよね。まあ、自分たちが一番気持ちいい長さを追求したら、このくらいになったんですよね。
キタニ うん。だから6分くらいある曲とか絶対に聴けないんですよ。自分がやられたらいやだから、自分の曲でもやらないですね。
──「自分たちにとって気持ちいい音楽の追求」というのも、バンドならではですよね。
渡辺 そうですよね。仕事の曲だったら「さすがに2番で急にメロディを変えたら不親切かな」と思ってちゃんと2番も作るんだけど、バンドだったら「いや、2番いらないんじゃない?」って思ったり。
キタニ それでおかしかったら、他のメンバーが言ってくれるからね。J-POPのお決まりを意識したうえで、あえて外していく感じが僕たちなのかな。
渡辺 ワンコーラスまではちゃんとやるよね。サビに向かっていく流れは、日本人だから好きなので。
キタニ でも、もしアルバムを作るとしたら、ヘンな曲も作りたいですよね。
渡辺 確かに。
──そのひと筋縄でいかない感じが「sajou no hana」の魅力だと思います。最後に、1年後はどうなっていたいですか?
渡辺 僕は流れに身を任せて、その時その時で考えていくので、「無」です。
キタニ 1年後どうなっているか、というか、まず周りの環境がどうなっているかも読めないので。
渡辺 自分の考えも変わっているかもしれないし。
キタニ うん。だからその時に自分のやりたいことをやれていたらいいですよね。無茶苦茶ライブをやってるバンドになってるかもしれない。ハイエースで全国を回るバンドになってたら面白いかも(笑)。でもそれがその時にやりたいことだったら、全然ありだと思う。
「僕らはこういうバンドだから」って決めつけて、そこにい続ける必要もないと思います。
もしくは僕らが一切表に出なくなって、sanaさんひとりでステージに立ってるかもしれない。それが面白いと思ってやっているところがあるので、それがいいならいいんじゃないかな。
sana 私も同じく。ただ元気に生きていたらいいなって。
(一同笑)
渡辺 その通りです(笑)。元気でいられるのが一番です。
キタニ 心も体も元気でいたいです。健全なバンドでありたいですね(笑)。
【CD情報】
■Parole/sajou no hana
・発売日:2019年7月31日
・価格:1,500円(税別)
<収録曲>
1.Parole
2.Hedgehog
3.ex
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