可動美少女フィギュアの世界で“オリジナルキャラ”はどう勝負する? りゅんりゅん亭・遠那かんし氏、インタビュー!【ホビー業界インサイド第49回】
フレームアームズ・ガール、メガミデバイスといった「可動美少女フィギュア」(ガールズプラモ)がヒットしているホビー業界。これまで静観していたメーカーの新規参入が相次ぐ中、ガレージキットの世界でレジンキャストを素材に、可動美少女フィギュアを淡々とリリースし続けている人がいる。ガレージキットディーラー「りゅんりゅん亭」を主宰する遠那かんしさんはプロ原型師として活躍するいっぽう、フル可動のオリジナル美少女フィギュア「BikiniStyle」を3色のカラーレジンキットとして制作・販売している。
なぜカラーレジンなのか? ここまで可動美少女フィギュアが売れている理由とは? 遠那さんに聞いてみた。
カラーレジンを使い、パーツ段階で色分けする理由
──過去には、玩具やフィギュアの製造メーカーに勤めていたそうですが?
遠那 合計6年間、サラリーマンでした。会社では、ガチャガチャや食玩の原型を作っていました。
──なぜ会社を辞めることにしたのですか?
遠那 当時はまだ大きいフィギュアといえばガレージキットくらいしかなかったので、会社では食玩やカプセルフィギュアなど小さいものを作って、プライベートでワンダーフェスティバル(以下、ワンフェス)にも出展して大きなフィギュアを作っていました。ただ、年に1体発表できるかできないか、というペースでした。そんな中、ちょうどメガハウスさんが「美少女戦士セーラームーン」や「ワンピース」などの1/8スケールフィギュアを出しはじめ、仕事でも大きなフィギュアを作れる機会がめぐってきました。また、個人でも積極的にオリジナルキャラを発表したいという気持ちが大きくなり、退社してフリーランス原型師になりました。
サラリーマンでいる間にクライアントさんとは仲よくしてもらっていたので、会社を辞めても困ることはありませんでした。また、ワンフェスに参加することで人脈づくりができていたのも良かったです。
──すると、今は商業原型の仕事があるわけですね?
遠那 そうですね、今は商業原型がメインです。イベントでは版権モノのガレージキットをあまり作らなくなったので、それほど利益が出ているわけではありません。
──りゅんりゅん亭のHPを見ると、オリジナルキャラが多いようですが?
遠那 昨今は、オリジナルキャラに力を入れています。企画から販売まで自身でコントロールできるのが楽しいですし、オリジナルキャラを買っていただけたときは、とても嬉しいです。継続していくのはと大変ですけど、原型師ができる“6次産業”とでもいうんでしょうか、フリーランスゆえにできることだとも思っています。3年ほど前、オリジナルデザインのSFスロットカー「RRT(ツーアールティ)」を、ガレージキットで出していました。ディスプレイモデルとしても作れますが、市販のモーターを組み込めば走れる仕様でした。
──デザインも遠那さんですか?
遠那 いえ、僕は企画とフィギュア原型のみです。デザインは友人の門口ナオさんで、車はメカが得意な原型師のKuWa(FRAMEOUT MODELS)さんにお願いしました。仲間内で「3年は必ず続けよう」と決めて、門口さんの描いた同人誌も連動させました。ワンフェス会場でコースを広げて走らせたりしたのですが、これがなかなか儲からなくて(笑)。3年を終えて、今は再開のチャンスを伺っています。プラモデル化できるとよいのですが。
──このスロットカーが、初めてのオリジナルキットだったのですか?
遠那 いえ、フリーランス2年目の2005年から「ぷにカラー23」という、東京23区を擬人化したキャラクターを出していました。このとき、初めてカラーレジンを使いました。1体につき5色あると、型も5個必要になります。ひとりのキャラクターごとに5個ずつ型を作るのはコスト的に不可能なので、最初に5人の原型を作り、ピンクなら唇とピンク色の服を同じ型に入れるなど、5人それぞれに共通する色単位で型をつくったわけです。この方法なら、キットの単価を抑えつつ、多色成形が可能です。しかしデメリットとして、必ず5人セットで成形されてしまい、キャラクターごとの人気に差が出てきたとき、再販しづらいのが難点でした。
──今年、1体だけ(ぷにカラー23・スノ)再販しましたよね?
遠那 スノのみ肌着状態の素体と服とを別々に造形していたので、スノの服だけ新たに型を作り直したんです。10年以上も前の原型なので、その間に、型を作ってくれるRCベルグさんがグラデーションレジンを開発していました。見せてもらったら、きれいにグラデーションが出るので、以前に「モンスターハンター」のイベントキットで使わせてもらいました。素組み状態で塗装せずに、きれいなグラデーションを楽しめます。今回のスノの再販でも、同じ技法を使わせてもらっています。
──ユーザーがまったく塗装しなくても、瞳まで細かく色分けされているんですね。なぜ、色分けされたキットを目指したのですか?
遠那 ガレージキットやプラモデルを組まずに積んでおくことを、よく“押入れのこやし”なんて言いますよね。1万円近く出して買っていただいたのに、組み立てずに積んでおかれるとしたら、私にとっても買った人にとっても、あまり幸せな状況ではないと思うんです。また、初めての人にとっては「作る環境を整える」ことから、ものすごいハードルなのではないでしょうか。ですから、ガレージキットを組み立てるハードルを下げたかったことが大きな理由です。「綾波レイ スーパープラグスーツver.」では、ドリルを使った軸打ち加工も不要にしました。
また、僕は原型師の浅井真紀さんが好きなんですけど、浅井さんがRCベルグさんと一緒に、個人のディーラーがカラーレジンで成型できる環境をつくってくれたんです。ですから、浅井さんの影響と僕自身のストレス解消のため、カラーレジンを採用しました。白一色で成型されたガレージキットを組み立てて塗装して……という工程が、僕はあまり好きではありません。マスキングも大嫌いですから、自分で組み立てるなら、カラーレジンがいいですね。
それと、オリジナルキャラゆえに、カラーレジンで出している部分もあります。オリジナルキャラを買って組み立ててもらいたければ、カラーで成型するぐらいしないと厳しいだろう……と思うんです。オリジナルキャラだからこそ、版権キャラにはない武器というか、キットとしての目玉が必要だと思ったので、細かく色分けされたカラーレジンキットに挑戦しました。プラモデル感覚で、気軽にガレージキットを組んでほしいんです。
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