アニメライターによる2019年夏アニメ中間レビュー【アニメコラム】

2019年夏アニメの中からマンガ原作の5タイトルをピックアップ。「裏サンデー」「マンガワン」連載の「ダンベル何キロ持てる?」、「週刊ヤングマガジン」連載の「手品先輩」、「コミックNewtype」連載の「女子高生の無駄づかい」、「まんがタイムきららキャラット」連載の「まちカドまぞく」、「別冊少年マガジン」連載の「荒ぶる季節の乙女どもよ。」の5作品を紹介します。

ダンベル何キロ持てる?


太り気味の女子高生・紗倉ひびきがダイエットのためにトレーニングジムで肉体改造に励む筋トレアニメ。お嬢様で筋肉フェチの奏流院朱美、とある秘密を隠し持った教師の立花里美など、さまざまなキャラクターが登場するが、何といってもトレーナー・街雄鳴造のイケメン+ゴリマッチョという合わせ技がインパクト大。
本編のコーナー「街雄トレーナーの筋トレ講座」では、各筋肉の仕組みや働きまで知ることができ、人体のことはマンガの断面図表現でしか学んでこなかった人も楽しく筋トレに挑戦できる。原作者サンドロビッチ・ヤバ子の「ケンガンアシュラ」や、動画工房のオリジナルタイトル「多田くんは恋をしない」のキャラクターがさりげなく登場しているのもポイント。



手品先輩


手品大好きの女子高生「先輩」と新入生の「助手」が奇術部を舞台に騒動を繰り広げるショートコメディ。先輩が披露するマジックは失敗の連続で、タネがバレてしまうどころか、毎回あられもない姿を見せつけてしまうエッチな展開が見どころ。先輩の健康的なスタイルはもちろん、極度のアガリ症で汗っかきなところも妙な存在感があり、ブラウスを濡らして下着が透けるシーンに心躍らされる。男子キャラから性欲が消えたことが嘆かれる昨今、助手がよい感じにスケベなところも好感触だ。
手品の描写は意外にマジメ。コインマジックやスプーン曲げなどの仕組みを解説していて、知的好奇心も満たされていく。15分枠に4~5本のエピソードが詰め込まれ、テンポのよさが心地いい一作。



女子高生の無駄づかい


ちょっと残念な女子高生たちの日常を描いた学園コメディ。本能のままに生きる問題児のバカ(田中)、アニメやマンガが大好きなヲタ(菊池)、感情を表に出さないロボ(鷺宮)、さらに女子大生が大好きな担任・ワセダ(佐渡)など、登場人物はバカが考えたニックネームで呼ばれ、キャラの名前が直感的に分かる親切設計がうれしい。
各話には「あのさ 今からすごいこと言っていい?」というバカのセリフから始まる“「すごい」パートアニメーション”が用意されており、似たようなシチュエーションを異なる演出で見せるという手法を味わえる。引きの構図を効果的に挟んだり、パロディを入れたり、ほぼ1カットで見せたりと、多彩なアイデアが凝らされていて、次回はどんな風に見せるのか楽しみになってくる。



まちカドまぞく


闇の一族の力に目覚めた女子高生が、魔法少女の生き血を邪神像に捧げて一族の呪いを解こうと奮闘するマジカルコメディー。設定だけを読むとシリアスだが、角と尻尾が生えてもクラスメイトは気にしないなど、ほんわかとした世界観が魅力。「まぞく」だが別に強くはないシャミ子と、ダンプを片手で止める力を持つ魔法少女の桃との間にはしだいに友情が芽生えていく。
「まちカドまぞく」のタイトル通り、街の景色も印象的な仕上がり。とくに生活費月4万という呪いゆえに、シャミ子が住んでいるアパート・ばんだ荘がボロボロ過ぎてレトロな味わいが生まれている。個人的には原作にもある「ぶちころがす」というセリフを「魁!!クロマティ高校」の桜井弘明監督がアニメ化している点が感慨深い。



荒ぶる季節の乙女どもよ。


文芸部に所属する5人の女子高生が性に振り回されながらも成長していく青春群像劇。青春アニメといえば感情の高ぶった主人公が全力疾走するものだと相場が決まっており、OPアニメでは少女たちが逆光を浴びながら走り、原作コミックスのCMでウィリアム・テル序曲が流れる(運動会!)本作も例外ではない。だが「荒ぶる季節の乙女どもよ。」の疾走シーンは心地よい開放感とは無縁で、どこへも逃げられない閉塞感に包まれている。
第1話で思いがけず性に直面した主人公・和紗は、部屋から外へ飛び出していくが、目に映る街の光景すべてが性的なメタファーに見えて、ますます混乱するばかり。なんとか商店街から抜け出したものの、今度は列車がトンネルの中に入っていく様子を目撃して(ヒッチコック!)その場に座り込む。部屋で流れていたTHE BLUE HEARTSの「TRAIN-TRAIN」は、いつのまにか挿入歌となり、和紗をどこまでも追いかけてくる恐ろしい曲にしか思えなくなってしまう。はたして和紗が性から自由になれる日は来るのだろうか。



(文・高橋克則)

(C) 2019 サンドロビッチ・ヤバ子,MAAM・小学館/シルバーマンジム
(C) アズ・講談社/手品先輩製作委員会
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(C) 伊藤いづも・芳文社/まちカドまぞく製作委員会
(C) 岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会

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